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番外編
西方見聞録 33
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「お、皇子、アンタまた何をバカな事言ってんですか・・・!」
僕、謝れって言ったよね?誰がもう一回求婚しろって言った?
ジェン皇子の言葉にユーリ様はあの綺麗な瞳をパチパチ瞬いて、今自分が何を言われたのか頭の中で反芻しているみたいだった。
その面食らったような顔は普段ユーリ様が周りに見せている姿よりも幾分幼く見える表情で、それすらなんだか可愛らしい。
現にジェン皇子も「わあ、やっぱりかわいいねぇ・・・」と呟いている。
と、そこでやっと皇子からの面と向かっての不意の求婚から我に返ったユーリ様が
「むっ、無理です!ごめんなさい、お気持ちは嬉しいですけどお断りします‼︎」
と言い切って頭を下げた。そりゃそうだ。
だってあのガラス鉢に仕込まれていた皇子の求婚メッセージを聞いた時からユーリ様はこれ以上旦那様を増やすつもりはないって言ってたからね。
皇子の横ではシグウェル様も腕を組んで仁王立ちしたまま、元から冷たく見えるあのアメジストの瞳を更に冷たく光らせてこちらを見下ろし
「交渉中にもこれ以上ユーリは伴侶を増やすつもりはないとそちらには伝えていたと思ったが聞いていないのか?」
と言った。なんていうかその態度、とてもじゃないけど他国の王侯貴族に対するものじゃないけどそれだけ苛立っているって言うか怒ってるのかな・・・?
だけど育ちが良すぎておおらかな皇子はそんなシグウェル様の態度にも腹を立てるでもなく、なんなら苛立っていることすら気付いてないのか
「聞いてはいたさ、だけど直接会ってみたら思わず言っちゃったっていうか・・・だってこんなにも笑顔が素敵でシーリンにも優しく声を掛けてくれるお姫様だよ、好きになってどこが悪いの⁉︎」
とまるで開き直ったかのようにそう言った。やめてくれ、何でそう話をこじらせるような事を言うのかなぁ⁉︎
「皇子、この際もう謝らなくてもいいんでちょっと黙っててくれませんか・・・?」
ぐったりしていたのは肉体的な疲れだったはずが、なんだか精神的にも疲れてきたような気がする。すると皇子は
「シーリンまで!人に好意を持ってそれを伝えるのを非難するなんて!なんて悲しいことを言うんだよ、ボクはキミをそんな子に育てた覚えはないよ・・・!」
と本当に悲しそうにかぶりを振った。
「いや、そもそも皇子に育てられた覚えはないですから。むしろ僕の方がお世話してるし。それに相手が独り身ならともかく、ユーリ様はこれから大事なお式を控えている上にもう伴侶を増やすつもりはないんですよ?そんな人に好意を伝えるのはちょっと」
常識で考えてくれ。なんだか頭痛までしてきたような気がして額に手を当てたら、
「なんだか大変ですねぇ・・・」
とすぐそばでユーリ様の声がして僕の肩にそっと手が触れた。
うん?と思っているとその手が触れたところがほのかに温かく感じて、同時に体に感じていた重苦しい疲労感がすうっと消え失せてしまう。
あれ、これって。横を見ればユーリ様が
「はい、これで疲れはなくなりましたよね?」
とあの眩しい笑顔を僕に向けて笑っている。癒しの力を使ってくれたんだ。
その力は前に工房にシェラザード様が持ち込んだ加護付きの果物を食べて経験済みだったけど、食べ物を介さずにユーリ様の手で直接癒してもらうとその効力は桁が違うような気がした。
あの時よりももっと早く、文字通り瞬時に疲れが消え、なんだか気分まですっきりと晴れやかだ。それに魔力の純度が上がって少し強くなったような感じがする。
それは体力や魔力を回復させたり治癒する魔法とよく似てはいるけど性質が少し違うような・・・なんていうか、何か大きな存在の持つ力の一部を分け与えてもらったような。
「あ、ありがとうございます・・・」
恐縮してそう言えば
「いいえ、気にしないでください!」
とまたニコッと笑いかけられて、そんなユーリ様と僕を見た皇子が
「ずるいよシーリン!」
と声を上げている。ずるいも何も、アンタのせいで僕は疲れてたんですけど?と言いたくなりながら皇子を見れば、
「ボクもユーリ様に癒して欲しい!」
と言って近付こうとしていたのをレジナス様にがっちり肩を掴まれて制止されていた。何やってんの・・・。
そして他国の皇族の肩を掴んで静止するという行為に申し訳なさそうな顔をしているレジナス様の隣ではリオン王弟殿下が
「ジェン皇子、それ以上ユーリに近づかないで欲しいとお願いしましたよね?」
とあの優しいのになんだか圧を感じる笑顔でにっこり微笑むとユーリ様の手をぐいと引いて皇子から距離を取った。そして続けて
「そもそも今回はシーリン殿の身の安全を見せて、ルーシャ国へ対する補償の具体的な中身について詰めるための話し合いと魔導士の派遣だったはず。まずはそちらについて交渉するべきでは?」
と本来の目的を思い出させた。すると皇子は
「そうだよ、ボクのせいでなんだか話がおおごとになってしまってシーリンに迷惑を掛けたから、その責任を取ろうと思って交渉の場にボクも同席させてもらったんだ。だけど久しぶりにシーリンの顔を見たらつい、居ても立っても居られなくなって・・・!」
と僕を見た。それはありがたいけど、その後がね・・・。まさかいきなりルーシャ国に乗り込んでくるとは思わなかった。
そう思っている僕の前で皇子はリオン王弟殿下に
「どうかシーリンは返してくれないか?シーリンはボクの大事な兄弟同然の側近だし、ボクの乳母やにも随分と心配をかけてしまって心が痛いんだ。責任を取って交渉がきちんと済むまで、シーリンの代わりにボクがここに残って軟禁されてもいいからさ!勿論、父上にも相談して許可は得ているよ‼︎」
なんて訴えている。え、その大事な側近を単なる好奇心で海の向こうにいきなりほっぽり出したのはどこの誰だっけ?それにさあ。
「皇子、騒ぎの責任を取るって言ってますけど僕が国に帰ってアンタがここに残るのって皇国にあんまり不利益はないですよね?」
切々とした皇子の訴えについ突っ込みを入れてしまった。
「むしろそれってちょっとした遊学みたいな感じになって、しかもユーリ様の側に堂々と居られる理由にまでなるから不利益どころか利益・・・?」
そう言えば「え、言われてみればそうなのかな?」と皇子は首を傾げている。天然か。どうやらそこまで計算して話していたわけじゃないらしい。
だけど皇帝陛下が皇子のこの相談に許可を出したのなら、陛下はそこまで考えていてあわよくば皇子をなし崩しにそのままユーリ様の婿にして、ルーシャ国との友好を深めようとまで思ってそうだけど。
「でもそうか、シーリンの言う通りだね。もし僕がここに残れば、その期間はユーリ様とも他の伴侶の人達とも親交を深められるしボクのことももっと理解してもらえるかも!そうしたらユーリ様も気が変わってボクをお婿さんに迎えたくなるかも知れないね、さすがシーリン!」
そう言って空気を読まずに笑顔を振りまいた挙句、皇子は僕にねっ!とウインクしてきた。
やめてやめて、アンタの婿入りを進めようと思って話したわけじゃないから!何余計な事を言ってるんだってリオン王弟殿下とシグウェル様の僕を見る目が怖くなってるから!
するとさすがにそこでたまらずユーリ様も
「いえ!私はもう本当に、これ以上伴侶を増やすつもりはありませんから!気が変わるとかないですよ⁉︎」
と声を上げた。だけどジェン皇子はあの端正な顔を悲しげにして
「でもボクはユーリ様の今までの伴侶の方々とはまた違ったタイプだよ・・・?」
と言うとまだ自分の肩を掴んでいるレジナス様を見上げて
「レジナス殿はボクよりも一回り近く歳上で、まるでボクの叔父上みたいに落ち着いて頼り甲斐のある大人の男性で、」
その言葉にレジナス様が
「叔父・・・」
と小さく呟いて軽くショックを受けている。
うわあホント申し訳ない!皇子的にはそれ、褒め言葉なんだけど噂ではユーリ様との歳の差を気にしているらしいレジナス様にとってはあんまり言われたくない事だよね⁉︎
青くなった僕と、なぜか吹き出しそうになって笑いを堪えているユリウス様に構わずジェン皇子は続けて
「大国の王子に相応しい気品と知性を備えていて、国民にも慈悲深くユーリ様にその身を治してもらったリオン殿に、」
と自分から遠ざけるようにしてユーリ様の肩を抱いているリオン王弟殿下を羨ましそうに見るとそのままシグウェル様に視線を向けた。
「稀に見る膨大な魔力を持っていてそのためにユーリ様の魔法の導き手も務め、かつその美しい顔立ちでユーリ様が自ら求婚したシグウェル殿。」
そう言われたシグウェル様が片眉をちょっと上げてユーリ様は
「私が顔でシグウェルさんを選んだって他国でも噂になってるんですか⁉︎ていうか私から求婚しましたっけ⁉︎」
とリオン王弟殿下の陰から悲鳴のような声を上げた。
そしたらついにそれに耐え切れずに吹き出したユリウス様が、
「噂ってのは怖いっすねぇ。ユーリ様が団長の顔に弱いのはホントですけど、求婚は団長がしたのに対してユーリ様が逆ギレ気味に答えただけでムードも何もないやつだったのに!」
と笑い、シグウェル様はそれに対して
「おおむね合っている事実なのに何故笑う?」
と嫌そうな顔をしている。そんな二人を「何か間違っていたかな?」と皇子はちょっと不思議そうに見た後、それに構わず続けて
「それから、今ここにはいないけど周りの神官達に大反対される中、ユーリ様に全て捧げるって誓いを立てて求婚したらそれが女神様にも祝福されて認められたって言うやたらと色気のあるシェラザード殿だっけ?その面々にはない魅力がボクにはあるからきっとユーリ様もそのうち好きになってくれると思うんだよね。」
と一人納得したように頷いている。そんな皇子にユーリ様は
「え?周りに大反対される中でシェラさんが求婚して認められたとか、まだファレルでのあの話が大袈裟に伝わったままなんですか・・・?」
と呆然としていた。
僕、謝れって言ったよね?誰がもう一回求婚しろって言った?
ジェン皇子の言葉にユーリ様はあの綺麗な瞳をパチパチ瞬いて、今自分が何を言われたのか頭の中で反芻しているみたいだった。
その面食らったような顔は普段ユーリ様が周りに見せている姿よりも幾分幼く見える表情で、それすらなんだか可愛らしい。
現にジェン皇子も「わあ、やっぱりかわいいねぇ・・・」と呟いている。
と、そこでやっと皇子からの面と向かっての不意の求婚から我に返ったユーリ様が
「むっ、無理です!ごめんなさい、お気持ちは嬉しいですけどお断りします‼︎」
と言い切って頭を下げた。そりゃそうだ。
だってあのガラス鉢に仕込まれていた皇子の求婚メッセージを聞いた時からユーリ様はこれ以上旦那様を増やすつもりはないって言ってたからね。
皇子の横ではシグウェル様も腕を組んで仁王立ちしたまま、元から冷たく見えるあのアメジストの瞳を更に冷たく光らせてこちらを見下ろし
「交渉中にもこれ以上ユーリは伴侶を増やすつもりはないとそちらには伝えていたと思ったが聞いていないのか?」
と言った。なんていうかその態度、とてもじゃないけど他国の王侯貴族に対するものじゃないけどそれだけ苛立っているって言うか怒ってるのかな・・・?
だけど育ちが良すぎておおらかな皇子はそんなシグウェル様の態度にも腹を立てるでもなく、なんなら苛立っていることすら気付いてないのか
「聞いてはいたさ、だけど直接会ってみたら思わず言っちゃったっていうか・・・だってこんなにも笑顔が素敵でシーリンにも優しく声を掛けてくれるお姫様だよ、好きになってどこが悪いの⁉︎」
とまるで開き直ったかのようにそう言った。やめてくれ、何でそう話をこじらせるような事を言うのかなぁ⁉︎
「皇子、この際もう謝らなくてもいいんでちょっと黙っててくれませんか・・・?」
ぐったりしていたのは肉体的な疲れだったはずが、なんだか精神的にも疲れてきたような気がする。すると皇子は
「シーリンまで!人に好意を持ってそれを伝えるのを非難するなんて!なんて悲しいことを言うんだよ、ボクはキミをそんな子に育てた覚えはないよ・・・!」
と本当に悲しそうにかぶりを振った。
「いや、そもそも皇子に育てられた覚えはないですから。むしろ僕の方がお世話してるし。それに相手が独り身ならともかく、ユーリ様はこれから大事なお式を控えている上にもう伴侶を増やすつもりはないんですよ?そんな人に好意を伝えるのはちょっと」
常識で考えてくれ。なんだか頭痛までしてきたような気がして額に手を当てたら、
「なんだか大変ですねぇ・・・」
とすぐそばでユーリ様の声がして僕の肩にそっと手が触れた。
うん?と思っているとその手が触れたところがほのかに温かく感じて、同時に体に感じていた重苦しい疲労感がすうっと消え失せてしまう。
あれ、これって。横を見ればユーリ様が
「はい、これで疲れはなくなりましたよね?」
とあの眩しい笑顔を僕に向けて笑っている。癒しの力を使ってくれたんだ。
その力は前に工房にシェラザード様が持ち込んだ加護付きの果物を食べて経験済みだったけど、食べ物を介さずにユーリ様の手で直接癒してもらうとその効力は桁が違うような気がした。
あの時よりももっと早く、文字通り瞬時に疲れが消え、なんだか気分まですっきりと晴れやかだ。それに魔力の純度が上がって少し強くなったような感じがする。
それは体力や魔力を回復させたり治癒する魔法とよく似てはいるけど性質が少し違うような・・・なんていうか、何か大きな存在の持つ力の一部を分け与えてもらったような。
「あ、ありがとうございます・・・」
恐縮してそう言えば
「いいえ、気にしないでください!」
とまたニコッと笑いかけられて、そんなユーリ様と僕を見た皇子が
「ずるいよシーリン!」
と声を上げている。ずるいも何も、アンタのせいで僕は疲れてたんですけど?と言いたくなりながら皇子を見れば、
「ボクもユーリ様に癒して欲しい!」
と言って近付こうとしていたのをレジナス様にがっちり肩を掴まれて制止されていた。何やってんの・・・。
そして他国の皇族の肩を掴んで静止するという行為に申し訳なさそうな顔をしているレジナス様の隣ではリオン王弟殿下が
「ジェン皇子、それ以上ユーリに近づかないで欲しいとお願いしましたよね?」
とあの優しいのになんだか圧を感じる笑顔でにっこり微笑むとユーリ様の手をぐいと引いて皇子から距離を取った。そして続けて
「そもそも今回はシーリン殿の身の安全を見せて、ルーシャ国へ対する補償の具体的な中身について詰めるための話し合いと魔導士の派遣だったはず。まずはそちらについて交渉するべきでは?」
と本来の目的を思い出させた。すると皇子は
「そうだよ、ボクのせいでなんだか話がおおごとになってしまってシーリンに迷惑を掛けたから、その責任を取ろうと思って交渉の場にボクも同席させてもらったんだ。だけど久しぶりにシーリンの顔を見たらつい、居ても立っても居られなくなって・・・!」
と僕を見た。それはありがたいけど、その後がね・・・。まさかいきなりルーシャ国に乗り込んでくるとは思わなかった。
そう思っている僕の前で皇子はリオン王弟殿下に
「どうかシーリンは返してくれないか?シーリンはボクの大事な兄弟同然の側近だし、ボクの乳母やにも随分と心配をかけてしまって心が痛いんだ。責任を取って交渉がきちんと済むまで、シーリンの代わりにボクがここに残って軟禁されてもいいからさ!勿論、父上にも相談して許可は得ているよ‼︎」
なんて訴えている。え、その大事な側近を単なる好奇心で海の向こうにいきなりほっぽり出したのはどこの誰だっけ?それにさあ。
「皇子、騒ぎの責任を取るって言ってますけど僕が国に帰ってアンタがここに残るのって皇国にあんまり不利益はないですよね?」
切々とした皇子の訴えについ突っ込みを入れてしまった。
「むしろそれってちょっとした遊学みたいな感じになって、しかもユーリ様の側に堂々と居られる理由にまでなるから不利益どころか利益・・・?」
そう言えば「え、言われてみればそうなのかな?」と皇子は首を傾げている。天然か。どうやらそこまで計算して話していたわけじゃないらしい。
だけど皇帝陛下が皇子のこの相談に許可を出したのなら、陛下はそこまで考えていてあわよくば皇子をなし崩しにそのままユーリ様の婿にして、ルーシャ国との友好を深めようとまで思ってそうだけど。
「でもそうか、シーリンの言う通りだね。もし僕がここに残れば、その期間はユーリ様とも他の伴侶の人達とも親交を深められるしボクのことももっと理解してもらえるかも!そうしたらユーリ様も気が変わってボクをお婿さんに迎えたくなるかも知れないね、さすがシーリン!」
そう言って空気を読まずに笑顔を振りまいた挙句、皇子は僕にねっ!とウインクしてきた。
やめてやめて、アンタの婿入りを進めようと思って話したわけじゃないから!何余計な事を言ってるんだってリオン王弟殿下とシグウェル様の僕を見る目が怖くなってるから!
するとさすがにそこでたまらずユーリ様も
「いえ!私はもう本当に、これ以上伴侶を増やすつもりはありませんから!気が変わるとかないですよ⁉︎」
と声を上げた。だけどジェン皇子はあの端正な顔を悲しげにして
「でもボクはユーリ様の今までの伴侶の方々とはまた違ったタイプだよ・・・?」
と言うとまだ自分の肩を掴んでいるレジナス様を見上げて
「レジナス殿はボクよりも一回り近く歳上で、まるでボクの叔父上みたいに落ち着いて頼り甲斐のある大人の男性で、」
その言葉にレジナス様が
「叔父・・・」
と小さく呟いて軽くショックを受けている。
うわあホント申し訳ない!皇子的にはそれ、褒め言葉なんだけど噂ではユーリ様との歳の差を気にしているらしいレジナス様にとってはあんまり言われたくない事だよね⁉︎
青くなった僕と、なぜか吹き出しそうになって笑いを堪えているユリウス様に構わずジェン皇子は続けて
「大国の王子に相応しい気品と知性を備えていて、国民にも慈悲深くユーリ様にその身を治してもらったリオン殿に、」
と自分から遠ざけるようにしてユーリ様の肩を抱いているリオン王弟殿下を羨ましそうに見るとそのままシグウェル様に視線を向けた。
「稀に見る膨大な魔力を持っていてそのためにユーリ様の魔法の導き手も務め、かつその美しい顔立ちでユーリ様が自ら求婚したシグウェル殿。」
そう言われたシグウェル様が片眉をちょっと上げてユーリ様は
「私が顔でシグウェルさんを選んだって他国でも噂になってるんですか⁉︎ていうか私から求婚しましたっけ⁉︎」
とリオン王弟殿下の陰から悲鳴のような声を上げた。
そしたらついにそれに耐え切れずに吹き出したユリウス様が、
「噂ってのは怖いっすねぇ。ユーリ様が団長の顔に弱いのはホントですけど、求婚は団長がしたのに対してユーリ様が逆ギレ気味に答えただけでムードも何もないやつだったのに!」
と笑い、シグウェル様はそれに対して
「おおむね合っている事実なのに何故笑う?」
と嫌そうな顔をしている。そんな二人を「何か間違っていたかな?」と皇子はちょっと不思議そうに見た後、それに構わず続けて
「それから、今ここにはいないけど周りの神官達に大反対される中、ユーリ様に全て捧げるって誓いを立てて求婚したらそれが女神様にも祝福されて認められたって言うやたらと色気のあるシェラザード殿だっけ?その面々にはない魅力がボクにはあるからきっとユーリ様もそのうち好きになってくれると思うんだよね。」
と一人納得したように頷いている。そんな皇子にユーリ様は
「え?周りに大反対される中でシェラさんが求婚して認められたとか、まだファレルでのあの話が大袈裟に伝わったままなんですか・・・?」
と呆然としていた。
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