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番外編
なごり雪 10
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岩場の陰から騎士さん達にお願いしますと声をかけたついでにエル君にも隠れて見てるから安全と私はアピールをした。
「ほらエル君、こうやってちゃんと隠れてるから私は大丈夫ですよ!だからあの狐がこっちに気付く前にレジナスさんやシェラさん達を手伝ってあげて協力して倒しちゃって下さい!」
その言葉にエル君は「ユーリ様がそう言うなら・・・」と渋々かぶりを振り、それを励ますようにシェラさんが
「剣ならば主の命令に従いませんとね。見たところ大きめの魔狐ですし、うまく倒せばユールヴァルト家がユーリ様へ献上したよりも立派な毛皮を贈ることが出来ますよ、頑張りましょう。」
とエル君の背中をぽんと叩いて励ました。
その言葉に、さっき私の加護を受けたのに合わせてレジナスさんやシェラさんもいるから大丈夫と言ったことでだいぶ魔狐への怯えが消えていた王都からついて来た騎士さん達やダーヴィゼルドの騎士さん達がハッとした。
「そ、そうだ、これはユーリ様へ魔狐の毛皮を贈るチャンスじゃないか?」
「王都へ帰ったら他の奴らに自慢出来るぞ」
「我々ダーヴィゼルドの騎士にとってもユーリ様へご恩返しの贈り物を献上出来る良い機会だ!」
「そうすれば俺たちの働きにヒルダ様もきっと満足されるに違いない」
と口々に言っている。そんなみんなを見てシェラさんは
「何にせよ魔物を恐れず士気が揚がるのは良いことです。全体の指揮はレジナス、貴方に任せてオレも従いますのでよろしくお願いいたします。・・・さあそれでは皆さん、ユールヴァルト家も献上した事がないような立派な毛皮をユーリ様に捧げるために頑張りましょう。」
と声を掛けた。その言葉に騎士さん達がおお!と気勢を上げる。
そんな騎士さん達にレジナスさんも命令を下すと、銀毛魔狐を半円形に取り囲むようにして剣を構えた騎士さん達を先頭にその後方には魔導士さん達が素早く二重三重に陣を組んだ。
その様子に魔狐がまたさっきの鋭い啼き声を響かせて尻尾を震わせれば、空気がピリピリ震えて今度は空から雷が降り注いできた。
さっきと同じような、啼き声から発せられるダメージをぐっと堪らえた魔導士さん達が騎士さん達目掛けて降り注ぐ雷を防ぐ防御魔法を展開したのが見える。
と、その隙間から黒く大きなものが物凄い速さと勢いで雷の隙間を縫って飛び出して来た。レジナスさんだ。
両手に構えた剣の白銀の輝きがまるで大きな獣の牙みたいに見える。魔力のある人がダメージを受けるあの啼き声は、魔力のないレジナスさんには効かない。
そしてそんな魔力のない相手に物理的なダメージを与えるために降り注ぐ雷さえも見切って全て躱したレジナスさんは、その双剣を思い切り魔狐の頭に振り下ろした。
それは前に騎士団の演習で擬似魔物の氷瀑竜の首を落とした時みたいな動きでやった、倒した!と思ったのに、次の瞬間レジナスさんの体は弾き飛ばされていた。
「レジナスさん⁉︎」
思わず声を上げたら魔狐から距離を取って私の側に立っていたシェラさんが大丈夫です、と教えてくれる。
「首を落とそうとした瞬間、尾が飛んで来ましたがうまく見切ってその尾を足場に飛んで距離を取っただけですよ。ほら、ピンピンしているでしょう?」
促されて見てみれば、確かに魔狐を見下ろすように岩場に立つレジナスさんは少しも慌てていない。
それどころかいつの間にかそのすぐ側にいるエル君に何か話しながら大きく深呼吸すると両手の剣をくるりと手遊びをするように翻した。
銀毛魔狐はそんなレジナスさんに苛立つようにまたブンと尻尾を振ると、今度は竜巻みたいな風が巻き起こる。
「あれも魔法ですか⁉︎」
魔力のある人に影響を与える啼き声や物理的な雷魔法だけじゃなくて風魔法まで使えるなんて。しかもこちらの攻撃魔法は弾かれてしまう。
こちらが使える魔法は銀毛魔狐のそんな魔法を防ぐための防御魔法や回復魔法くらいで、攻撃出来るのは比較的魔力の少ない騎士さんや全く魔力なしのレジナスさんの剣やエル君くらいだ。
「これじゃレジナスさんだけでなくシェラさんも攻めあぐねますよね・・・⁉︎」
騎士さんや魔導士さん達の様子を見ながら地面についた手にぐっと力を込めて私も癒しの力をみんなに流し込みながら言えば、
「大丈夫ですよ。オレは今レジナスからの指示でユーリ様のお側にいながらタイミングを見計らっているのでご心配なく。見たところやはりエルのあのグノーデル神様の加護が付いた武器は銀毛魔狐の魔法に影響されていないようですし、思ったよりも早く決着がつくでしょう。」
そうニコリと微笑まれた。さっきの魔狐の啼き声に苦しめられていた姿に比べて随分と余裕がある。
その首にはさっき渡したシグウェルさんの結界石が淡く輝いているので余裕そうなその姿を見るにどうやらきちんとその効果は発揮されているらしい。
「今魔導士達と魔法剣を使える騎士達がレジナスの命令でわざと隙を作り劣勢に見せながらあの狐をユーリ様から離し、かつ身動きしずらい場所へと誘導しています。ほら、レジナスの立っている岩場も平面の草地が少ない足元の悪い場所でしょう?」
見れば確かに魔狐は段々と私のいる場所から遠ざかっていて、雷や風魔法も遮られやすい岩場の方へと誘導されているみたいだった。
「後はエルやレジナスのタイミングに合わせてオレも同時に攻撃するだけです。さて、なるべく毛皮を傷付けずに倒せれば良いんですがねぇ・・・」
ふーむと思案顔をしたシェラさんにいやいや、と声を掛ける。
「私のために毛皮を取るとかどうでもいいんですよ?それよりも、私もまだ癒しの力を完全に使えるほど回復していないので長丁場の戦いになるとみんなを癒しきれないかもしれないし、それで怪我を治せない方が心配ですから!」
だから毛皮のことは気にせず早く決着をつけてほしい。ただでさえシェラさん達も滅多に見ない上級クラスの魔物だ、決着が長引けば何があるか分からない。
するとシェラさんはそうだ良いことを思いつきました、と魔狐やレジナスさん達から目を離すと私に向き直った。
「ユーリ様から勝利のための祝福をいただいてもよろしいですか?そうすればあの魔狐の魔法攻撃もものともせずあっという間に倒せてしまえそうな気がします。」
「え?勝利の祝福・・・?」
そんなの今までしたこともなければ聞いたこともない。それって癒しの加護とか傷付かないようにする加護と何か違うんだろうか?
聞こうとしたちょうどその時だ。シェラさんの背後からレジナスさんの
「シェラ‼︎」
と呼ぶ声がした。どうやら攻撃に加わるタイミングらしい。
すると地面に手をついたまま見上げている私に膝をついて目線を合わせたシェラさんはあの金色の瞳を艶然と笑ませた。
「目を閉じて、あの魔狐のように魔法攻撃を弾く結界のような加護の力をイメージして下さい。」
あ、なるほどそれで魔狐が繰り出す魔法を弾きながら攻撃するってことかな?じゃあそのイメージを地面を通じてシェラさんに流して・・・と言われた通り目を閉じて想像する。
と、さっきよりも近くでシェラさんの声がした。
「そうそう。そのままオレに直接加護の息吹を吹き込んでくださいね。」
へ?とその言葉の意味を理解する前に唇が柔らかなもので塞がれた。
「ふぁっ⁉︎」
びっくりして目を開ければ、ちょうどシェラさんの唇が離れたところだった。
「確かにオレの女神から勝利の祝福をいただきました。それではすぐに女神に捧げる素晴らしい毛皮をお持ちしますので楽しみにお待ちくださいね。」
「な、な・・・!」
この緊迫した状況でどさくさに紛れて一体何をしてるの⁉︎
すると
「お前、何をしてるんだ‼︎」
前方からレジナスさんの怒気がぶわりと膨れ上がって飛んで来た。
その勢いにあの銀毛魔狐も一瞬怯んで動きが止まる。
するとしてやったりとばかりにフッと笑ったシェラさんは
「エル、今ですよ!」
と魔狐の方へ向き直り、剣をしまうとあのいつもの鞭の魔道具をその手に出した。
魔道具は魔法を弾く魔狐とは相性が悪いはずなのに、と思っている間にもそれはヒュンとしなやかに伸びて魔狐の足元を打つ。
するとレジナスさんの気迫に気圧されて動きを止めていた魔狐はその鞭に弾かれるようにバランスを崩してよろめいた。
私がシェラさんに吹き込んだ結界の加護の力を鞭に乗せて打つことで、魔狐はその結界の力に反発して弾かれたらしい。
そこをすかさずエル君が、魔狐が尻尾を振り回せないようにその尻尾をぎゅっと縛り上げた。
そしてそのタイミングに合わせて魔狐の頭上高く大きく飛んだレジナスさんは体を回転させその勢いと体重を双剣に乗せながら
「お前は後で説教だ‼︎」
とシェラさんへの怒りを込めて魔狐の首へと剣を振り下ろした。
さっきと違い尻尾を封じられてバランスを崩した魔狐の首は鈍い音を立てながら今度こそ落ちる。
頭を切り離された魔狐の体がどう、と倒れ込み、辺り一面に一瞬ぶわっと大きく風が吹く。そうすれば高山植物の可憐な花がまた雪のように白く舞い散った。
「ほらエル君、こうやってちゃんと隠れてるから私は大丈夫ですよ!だからあの狐がこっちに気付く前にレジナスさんやシェラさん達を手伝ってあげて協力して倒しちゃって下さい!」
その言葉にエル君は「ユーリ様がそう言うなら・・・」と渋々かぶりを振り、それを励ますようにシェラさんが
「剣ならば主の命令に従いませんとね。見たところ大きめの魔狐ですし、うまく倒せばユールヴァルト家がユーリ様へ献上したよりも立派な毛皮を贈ることが出来ますよ、頑張りましょう。」
とエル君の背中をぽんと叩いて励ました。
その言葉に、さっき私の加護を受けたのに合わせてレジナスさんやシェラさんもいるから大丈夫と言ったことでだいぶ魔狐への怯えが消えていた王都からついて来た騎士さん達やダーヴィゼルドの騎士さん達がハッとした。
「そ、そうだ、これはユーリ様へ魔狐の毛皮を贈るチャンスじゃないか?」
「王都へ帰ったら他の奴らに自慢出来るぞ」
「我々ダーヴィゼルドの騎士にとってもユーリ様へご恩返しの贈り物を献上出来る良い機会だ!」
「そうすれば俺たちの働きにヒルダ様もきっと満足されるに違いない」
と口々に言っている。そんなみんなを見てシェラさんは
「何にせよ魔物を恐れず士気が揚がるのは良いことです。全体の指揮はレジナス、貴方に任せてオレも従いますのでよろしくお願いいたします。・・・さあそれでは皆さん、ユールヴァルト家も献上した事がないような立派な毛皮をユーリ様に捧げるために頑張りましょう。」
と声を掛けた。その言葉に騎士さん達がおお!と気勢を上げる。
そんな騎士さん達にレジナスさんも命令を下すと、銀毛魔狐を半円形に取り囲むようにして剣を構えた騎士さん達を先頭にその後方には魔導士さん達が素早く二重三重に陣を組んだ。
その様子に魔狐がまたさっきの鋭い啼き声を響かせて尻尾を震わせれば、空気がピリピリ震えて今度は空から雷が降り注いできた。
さっきと同じような、啼き声から発せられるダメージをぐっと堪らえた魔導士さん達が騎士さん達目掛けて降り注ぐ雷を防ぐ防御魔法を展開したのが見える。
と、その隙間から黒く大きなものが物凄い速さと勢いで雷の隙間を縫って飛び出して来た。レジナスさんだ。
両手に構えた剣の白銀の輝きがまるで大きな獣の牙みたいに見える。魔力のある人がダメージを受けるあの啼き声は、魔力のないレジナスさんには効かない。
そしてそんな魔力のない相手に物理的なダメージを与えるために降り注ぐ雷さえも見切って全て躱したレジナスさんは、その双剣を思い切り魔狐の頭に振り下ろした。
それは前に騎士団の演習で擬似魔物の氷瀑竜の首を落とした時みたいな動きでやった、倒した!と思ったのに、次の瞬間レジナスさんの体は弾き飛ばされていた。
「レジナスさん⁉︎」
思わず声を上げたら魔狐から距離を取って私の側に立っていたシェラさんが大丈夫です、と教えてくれる。
「首を落とそうとした瞬間、尾が飛んで来ましたがうまく見切ってその尾を足場に飛んで距離を取っただけですよ。ほら、ピンピンしているでしょう?」
促されて見てみれば、確かに魔狐を見下ろすように岩場に立つレジナスさんは少しも慌てていない。
それどころかいつの間にかそのすぐ側にいるエル君に何か話しながら大きく深呼吸すると両手の剣をくるりと手遊びをするように翻した。
銀毛魔狐はそんなレジナスさんに苛立つようにまたブンと尻尾を振ると、今度は竜巻みたいな風が巻き起こる。
「あれも魔法ですか⁉︎」
魔力のある人に影響を与える啼き声や物理的な雷魔法だけじゃなくて風魔法まで使えるなんて。しかもこちらの攻撃魔法は弾かれてしまう。
こちらが使える魔法は銀毛魔狐のそんな魔法を防ぐための防御魔法や回復魔法くらいで、攻撃出来るのは比較的魔力の少ない騎士さんや全く魔力なしのレジナスさんの剣やエル君くらいだ。
「これじゃレジナスさんだけでなくシェラさんも攻めあぐねますよね・・・⁉︎」
騎士さんや魔導士さん達の様子を見ながら地面についた手にぐっと力を込めて私も癒しの力をみんなに流し込みながら言えば、
「大丈夫ですよ。オレは今レジナスからの指示でユーリ様のお側にいながらタイミングを見計らっているのでご心配なく。見たところやはりエルのあのグノーデル神様の加護が付いた武器は銀毛魔狐の魔法に影響されていないようですし、思ったよりも早く決着がつくでしょう。」
そうニコリと微笑まれた。さっきの魔狐の啼き声に苦しめられていた姿に比べて随分と余裕がある。
その首にはさっき渡したシグウェルさんの結界石が淡く輝いているので余裕そうなその姿を見るにどうやらきちんとその効果は発揮されているらしい。
「今魔導士達と魔法剣を使える騎士達がレジナスの命令でわざと隙を作り劣勢に見せながらあの狐をユーリ様から離し、かつ身動きしずらい場所へと誘導しています。ほら、レジナスの立っている岩場も平面の草地が少ない足元の悪い場所でしょう?」
見れば確かに魔狐は段々と私のいる場所から遠ざかっていて、雷や風魔法も遮られやすい岩場の方へと誘導されているみたいだった。
「後はエルやレジナスのタイミングに合わせてオレも同時に攻撃するだけです。さて、なるべく毛皮を傷付けずに倒せれば良いんですがねぇ・・・」
ふーむと思案顔をしたシェラさんにいやいや、と声を掛ける。
「私のために毛皮を取るとかどうでもいいんですよ?それよりも、私もまだ癒しの力を完全に使えるほど回復していないので長丁場の戦いになるとみんなを癒しきれないかもしれないし、それで怪我を治せない方が心配ですから!」
だから毛皮のことは気にせず早く決着をつけてほしい。ただでさえシェラさん達も滅多に見ない上級クラスの魔物だ、決着が長引けば何があるか分からない。
するとシェラさんはそうだ良いことを思いつきました、と魔狐やレジナスさん達から目を離すと私に向き直った。
「ユーリ様から勝利のための祝福をいただいてもよろしいですか?そうすればあの魔狐の魔法攻撃もものともせずあっという間に倒せてしまえそうな気がします。」
「え?勝利の祝福・・・?」
そんなの今までしたこともなければ聞いたこともない。それって癒しの加護とか傷付かないようにする加護と何か違うんだろうか?
聞こうとしたちょうどその時だ。シェラさんの背後からレジナスさんの
「シェラ‼︎」
と呼ぶ声がした。どうやら攻撃に加わるタイミングらしい。
すると地面に手をついたまま見上げている私に膝をついて目線を合わせたシェラさんはあの金色の瞳を艶然と笑ませた。
「目を閉じて、あの魔狐のように魔法攻撃を弾く結界のような加護の力をイメージして下さい。」
あ、なるほどそれで魔狐が繰り出す魔法を弾きながら攻撃するってことかな?じゃあそのイメージを地面を通じてシェラさんに流して・・・と言われた通り目を閉じて想像する。
と、さっきよりも近くでシェラさんの声がした。
「そうそう。そのままオレに直接加護の息吹を吹き込んでくださいね。」
へ?とその言葉の意味を理解する前に唇が柔らかなもので塞がれた。
「ふぁっ⁉︎」
びっくりして目を開ければ、ちょうどシェラさんの唇が離れたところだった。
「確かにオレの女神から勝利の祝福をいただきました。それではすぐに女神に捧げる素晴らしい毛皮をお持ちしますので楽しみにお待ちくださいね。」
「な、な・・・!」
この緊迫した状況でどさくさに紛れて一体何をしてるの⁉︎
すると
「お前、何をしてるんだ‼︎」
前方からレジナスさんの怒気がぶわりと膨れ上がって飛んで来た。
その勢いにあの銀毛魔狐も一瞬怯んで動きが止まる。
するとしてやったりとばかりにフッと笑ったシェラさんは
「エル、今ですよ!」
と魔狐の方へ向き直り、剣をしまうとあのいつもの鞭の魔道具をその手に出した。
魔道具は魔法を弾く魔狐とは相性が悪いはずなのに、と思っている間にもそれはヒュンとしなやかに伸びて魔狐の足元を打つ。
するとレジナスさんの気迫に気圧されて動きを止めていた魔狐はその鞭に弾かれるようにバランスを崩してよろめいた。
私がシェラさんに吹き込んだ結界の加護の力を鞭に乗せて打つことで、魔狐はその結界の力に反発して弾かれたらしい。
そこをすかさずエル君が、魔狐が尻尾を振り回せないようにその尻尾をぎゅっと縛り上げた。
そしてそのタイミングに合わせて魔狐の頭上高く大きく飛んだレジナスさんは体を回転させその勢いと体重を双剣に乗せながら
「お前は後で説教だ‼︎」
とシェラさんへの怒りを込めて魔狐の首へと剣を振り下ろした。
さっきと違い尻尾を封じられてバランスを崩した魔狐の首は鈍い音を立てながら今度こそ落ちる。
頭を切り離された魔狐の体がどう、と倒れ込み、辺り一面に一瞬ぶわっと大きく風が吹く。そうすれば高山植物の可憐な花がまた雪のように白く舞い散った。
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