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番外編
夢で会えたら 4
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王都の森林の中、湖を見下ろす場所にある別邸へシャル君はリオン様に抱かれたまま入って行くと辺りを興味深そうにきょろきょろしている。
「さあ、おやつにしようか。たくさん用意はしたけど夕食に響かないようあまり食べ過ぎないようにね。」
そう言ったリオン様に、
「レジーとうさまが怒るからですよね!だいじょうぶです、おやつを食べたらレジーとうさまと一緒に運動しますから!」
とシャル君は笑った。どうやらさっきの馬車の中でのリオン様とレジナスさんのやり取りは、二人の間ですでに未来でもされているらしい。
「だってさ、レジナス。」
参ったね、というようにおどけて肩をすくめてみせたリオン様に対してレジナスさんは
「聞き分けの良さと素直さはリオン様譲りですね」
いい子だ、とシャル君の頭を撫でる。
そのまま案内された部屋へと行けば、大きなローテーブルいっぱいにケーキやプリン、果物まで様々な種類のおやつが並べられていた。
「わあ、すごいです!ラーズもいないのにこれ全部ボクがひとりで食べてもいいんですか⁉︎」
目をキラキラさせて卓上のお菓子を見つめるシャル君をソファの真ん中に座らせると、シャル君を挟んでその両側にレジナスさんと座ったリオン様は
「見た?今の表情、ユーリそっくりだったよ。」
と私に笑いかけてきた。
「食い意地が張ってるってことですか?」
むう、とテーブルを挟みシャル君の正面に腰掛けると
「とんでもない、かわいいって言いたいだけさ」
とリオン様は自ら紅茶を淹れる準備をする。すると果実水を飲んでいたシャル君がその動きを止めると私やリオン様達をきょろと見比べ始めた。
「シャル?どうかした?」
一体どうしたのかと不思議に思い手を止めたリオン様の言葉に、
「ちがうでしょ?」
とシャル君はぴょんとソファを飛び降りた。
そのままぐるりとテーブルを回り込んで私の手を取ると、自分が今まで座っていたところへ私の手を引いていく。
「え、ええ?」
「かあさまはこっち!」
導かれるままにリオン様とレジナスさんの間に座らせられると、シャル君は私の膝の上によじ登ってきてちょこんと座った。
「これでよし!いつもこうやって座るのにどうして今日はまちがえたんですか?」
そう言ったシャル君はさらにレジナスさんにも手を出すように促すとその片手を私の手に握らせた。
「ええ⁉︎」
なにこれ。レジナスさんもうっすらと赤くなり、困惑しながらもシャル君のした事を無下にするわけにもいかず私の手を握ったままだ。
「とうさまは紅茶を淹れたらかあさまと手を繋いであげてください!」
目を丸くしてその様子を見ていたリオン様にそう指示したシャル君は
「これでいつもどおりです!良かった、かあさまがとうさま達と離れて座るからケンカでもしたのかと思いました!」
と私を振り仰いでえへへと笑った。
「い、いつもどおり・・・」
これが?この、両側にリオン様達を座らせて手を繋ぎながらおやつの時間を楽しむのが?
しかもテーブルを挟んで座っただけなのに、離れて座ったからケンカして距離を取っていると思われるとか、未来の私達はどんだけ・・・と頭の中でぐるぐる考えていればリオン様も、
「へぇ・・・あの恥ずかしがり屋のユーリが何のてらいもなく僕らと手を繋いでくっついているのが日常になるなんて、すごく嬉しいね。」
と紅茶を私の前に置くとそのままきゅっと手を握って微笑んだ。
「こ、これだと私はおやつを食べられないんですけど⁉︎」
両手をリオン様とレジナスさんのそれぞれに握られたまま恥ずかしくなって思わず声を上げれば、
「ボクがあーんってしてあげるから大丈夫です!それにとうさま達もかわりばんこに食べさせてあげるし!」
とさらにシャル君が恥ずかしさに輪をかけるような事を言った。それを聞いて、
「俺もユーリに食べさせるのか?」
と、私の手を握るレジナスさんの手に少し力が入ったような気がする。シャル君はそれにこくりと頷き、
「かあさまだけじゃなくてボクにもです!今日はラーズがいないからレジーとうさまのお膝が寂しいかもしれないけど、その分かあさまのお世話ができますね!」
とレジナスさんにもリオン様のような輝く笑顔を見せた。
ということは普段のおやつの時間、両側をリオン様とレジナスさんに挟まれて手を繋いでいる私はシャル君を膝に乗せ、レジナスさんは自分の息子のラーズ君を膝の上に乗せているんだ。
そしてリオン様とレジナスさんの二人は自分の息子達や私の口に交互におやつを運んで食べさせてあげてると。
「これ、本当にこの先ある出来事で私の身に起きることなんですか・・・⁉︎」
仲が良いのは結構だけど、仲が良過ぎないかな⁉︎未来の私はよくこれを甘んじて受け入れているよね?それともそういう状況に慣れさせられたんだろうか。
近い将来、まさか自分がそんな事を平気でしているかと思うと恥ずかし過ぎて顔から火を吹きそう。
だけどそんな私をシャル君はキョトンとして見つめている。
「かあさま・・・?なんだか嫌がっていますか・・・?」
「あっ、いえ!そんなことはないですよ⁉︎」
まずい、シャル君に不信感を抱かせてしまう。慌てて否定すると、
「そうだよ、お母様が嫌がるわけないじゃないか。ほらユーリ、このクッキーは焼き立てでまだ温かいよ、食べてみて。」
リオン様が調子を合わせるように私の手を握ったまま、すいと口元にいい香りのするクッキーを寄せてきた。
くっ、シャル君の手前これを食べないわけにはいかない。
リオン様に何かを食べさせられるのも久しぶりで気恥ずかしさも増したけど仕方ないのでそれを口にする。
「かあさま、おいしい?」
無邪気にそう聞いてくるシャル君に、クッキーを咀嚼しながら無言で頷く私の顔はきっと赤い。
だけどそんな私に機嫌良さそうに微笑んだリオン様は
「さあ次はシャルに食べさせてあげようね。何から食べる?ああ、僕がシャルに食べさせてあげている間はレジナス、君がユーリにお菓子を食べさせてあげるんだよ。」
とレジナスさんに目配せした。その発言にレジナスさんはぐっと言葉を詰まらせて無言で頷く。
「レジーとうさま、また赤くなってる!どうして今日はそんなにもすぐ赤くなるんですか?」
子供は正直だ。いつもなら小さい子達に怖がられているレジナスさんが、血は繋がっていないけれど自分の父親だからか恐れもせずに思ったことを全部聞いてくるシャル君にたじたじになっている。
「あ、赤くなってなんかいない」
「お耳まで赤いですよ!まるでかあさまにキスされた時みたい‼︎」
その言葉にくっ、と目を見開いたレジナスさんが
「ユーリ!」
と声を上げた。
「はい⁉︎」
「お前、子供の前でそんな事をしてるのか⁉︎シャルの前でお、俺に口付けを・・・⁉︎」
「なんで私が怒られるんです⁉︎」
理不尽だ。まだしてもいない未来の私の行動のせいでレジナスさんに照れ隠しで怒られてしまった。
ていうか、それを聞いて恥ずかしいのはレジナスさんだけじゃなくて私もなんですけど⁉︎
「シャル、お母様はどんな時にレジナスに口付けてたか教えてくれる?」
まるでカティヤ様のように興味津々といった風にリオン様がシャル君にお菓子を食べさせながら聞く。
「「リオン様⁉︎」」
私とレジナスさんが二人同時に声を上げたけど、父親の興味を惹いたのが嬉しいのかシャル君は嬉々としていい返事でそれに答えた。
「はい!この間はラーズやレジーとうさまと一緒におさんぽをしている時、お花をつんでプレゼントしたラーズに可愛いって言ってキスをして、そのお花をかあさまの髪にさしてあげたレジーとうさまにもありがとうってキスしてました!」
あ、ボクにも可愛いってキスしてくれましたよ!と膝の上でシャル君は私にも笑顔を向けた。
「そ、そうですか・・・」
もうなんにも言えない。何それ・・・。自分でなければ微笑ましい親子でありいつまでもラブラブな夫婦だけど、それが自分だと思うと途端にいたたまれない。自分の左隣りに座るレジナスさんの顔をまともに見られない。
「へぇ・・・。それは僕も見て見たかったなあ。」
揶揄うように目を細めたリオン様が私とレジナスさんを見る。その様子に焼きもちを焼いたと思ったのかシャル君が慌てて両手を振った。
「だ、だいじょうぶです!とうさまもかあさまと毎日キスしてるじゃないですか!」
「子供の前で⁉︎」
ついまた声を上げてしまえば、
「ボクをまんなかに挟んでキスしてる時はとうさまがボクの目をふさいでるから、ボクはなんにも見てません!ボク、いい子だから大丈夫‼︎」
とシャル君は言うけれど。見えてないからいいとかじゃなく、節度と倫理観の問題だ。
「リオン様⁉︎」
今度は私がレジナスさんばりにリオン様を非難した。だけどリオン様は
「ええ?ただの愛情表現でしょ?なんなら今も試してみる?ほら、真ん中にちょうどシャルもいるし。」
とふざけた事を言い、シャル君も「どうぞ!」とその小さな手で自分の顔を自主的に覆った。何その息の合った親子連携プレー。
その仕草はかわいいけど、だからと言って今ここでリオン様とキスする流れになるのは違うでしょ⁉︎
すると覆った手の隙間から私をちらりと見たシャル君が
「まだですか・・・?早くキスしてくれないと、ボク、ずっとこのままでおやつを食べられないです・・・」
と言ってきた。
「そっ、そんなの待たなくてもいいんですよ!それより、せっかくの出来立てお菓子が冷めちゃいますからね、早く食べましょう‼︎」
リオン様にキスするかわりに小さなシャル君のつむじに口付けを一つ落とす。
日なたの良い匂いがする柔らかな金髪にそのまま顎を乗せてぐりぐりすれば、あはは、と笑い声を上げたシャル君が
「かあさま、何するんですか!くすぐったいです、ふざけないで!」
と喜んだ。良かった、なんとなく誤魔化されてくれたみたいだ。私の隣ではリオン様が、
「せっかくユーリから口付けてもらえるいい機会だったのに残念だなあ」
なんてうそぶいていたけどそれは聞こえなかったことにした。
「さあ、おやつにしようか。たくさん用意はしたけど夕食に響かないようあまり食べ過ぎないようにね。」
そう言ったリオン様に、
「レジーとうさまが怒るからですよね!だいじょうぶです、おやつを食べたらレジーとうさまと一緒に運動しますから!」
とシャル君は笑った。どうやらさっきの馬車の中でのリオン様とレジナスさんのやり取りは、二人の間ですでに未来でもされているらしい。
「だってさ、レジナス。」
参ったね、というようにおどけて肩をすくめてみせたリオン様に対してレジナスさんは
「聞き分けの良さと素直さはリオン様譲りですね」
いい子だ、とシャル君の頭を撫でる。
そのまま案内された部屋へと行けば、大きなローテーブルいっぱいにケーキやプリン、果物まで様々な種類のおやつが並べられていた。
「わあ、すごいです!ラーズもいないのにこれ全部ボクがひとりで食べてもいいんですか⁉︎」
目をキラキラさせて卓上のお菓子を見つめるシャル君をソファの真ん中に座らせると、シャル君を挟んでその両側にレジナスさんと座ったリオン様は
「見た?今の表情、ユーリそっくりだったよ。」
と私に笑いかけてきた。
「食い意地が張ってるってことですか?」
むう、とテーブルを挟みシャル君の正面に腰掛けると
「とんでもない、かわいいって言いたいだけさ」
とリオン様は自ら紅茶を淹れる準備をする。すると果実水を飲んでいたシャル君がその動きを止めると私やリオン様達をきょろと見比べ始めた。
「シャル?どうかした?」
一体どうしたのかと不思議に思い手を止めたリオン様の言葉に、
「ちがうでしょ?」
とシャル君はぴょんとソファを飛び降りた。
そのままぐるりとテーブルを回り込んで私の手を取ると、自分が今まで座っていたところへ私の手を引いていく。
「え、ええ?」
「かあさまはこっち!」
導かれるままにリオン様とレジナスさんの間に座らせられると、シャル君は私の膝の上によじ登ってきてちょこんと座った。
「これでよし!いつもこうやって座るのにどうして今日はまちがえたんですか?」
そう言ったシャル君はさらにレジナスさんにも手を出すように促すとその片手を私の手に握らせた。
「ええ⁉︎」
なにこれ。レジナスさんもうっすらと赤くなり、困惑しながらもシャル君のした事を無下にするわけにもいかず私の手を握ったままだ。
「とうさまは紅茶を淹れたらかあさまと手を繋いであげてください!」
目を丸くしてその様子を見ていたリオン様にそう指示したシャル君は
「これでいつもどおりです!良かった、かあさまがとうさま達と離れて座るからケンカでもしたのかと思いました!」
と私を振り仰いでえへへと笑った。
「い、いつもどおり・・・」
これが?この、両側にリオン様達を座らせて手を繋ぎながらおやつの時間を楽しむのが?
しかもテーブルを挟んで座っただけなのに、離れて座ったからケンカして距離を取っていると思われるとか、未来の私達はどんだけ・・・と頭の中でぐるぐる考えていればリオン様も、
「へぇ・・・あの恥ずかしがり屋のユーリが何のてらいもなく僕らと手を繋いでくっついているのが日常になるなんて、すごく嬉しいね。」
と紅茶を私の前に置くとそのままきゅっと手を握って微笑んだ。
「こ、これだと私はおやつを食べられないんですけど⁉︎」
両手をリオン様とレジナスさんのそれぞれに握られたまま恥ずかしくなって思わず声を上げれば、
「ボクがあーんってしてあげるから大丈夫です!それにとうさま達もかわりばんこに食べさせてあげるし!」
とさらにシャル君が恥ずかしさに輪をかけるような事を言った。それを聞いて、
「俺もユーリに食べさせるのか?」
と、私の手を握るレジナスさんの手に少し力が入ったような気がする。シャル君はそれにこくりと頷き、
「かあさまだけじゃなくてボクにもです!今日はラーズがいないからレジーとうさまのお膝が寂しいかもしれないけど、その分かあさまのお世話ができますね!」
とレジナスさんにもリオン様のような輝く笑顔を見せた。
ということは普段のおやつの時間、両側をリオン様とレジナスさんに挟まれて手を繋いでいる私はシャル君を膝に乗せ、レジナスさんは自分の息子のラーズ君を膝の上に乗せているんだ。
そしてリオン様とレジナスさんの二人は自分の息子達や私の口に交互におやつを運んで食べさせてあげてると。
「これ、本当にこの先ある出来事で私の身に起きることなんですか・・・⁉︎」
仲が良いのは結構だけど、仲が良過ぎないかな⁉︎未来の私はよくこれを甘んじて受け入れているよね?それともそういう状況に慣れさせられたんだろうか。
近い将来、まさか自分がそんな事を平気でしているかと思うと恥ずかし過ぎて顔から火を吹きそう。
だけどそんな私をシャル君はキョトンとして見つめている。
「かあさま・・・?なんだか嫌がっていますか・・・?」
「あっ、いえ!そんなことはないですよ⁉︎」
まずい、シャル君に不信感を抱かせてしまう。慌てて否定すると、
「そうだよ、お母様が嫌がるわけないじゃないか。ほらユーリ、このクッキーは焼き立てでまだ温かいよ、食べてみて。」
リオン様が調子を合わせるように私の手を握ったまま、すいと口元にいい香りのするクッキーを寄せてきた。
くっ、シャル君の手前これを食べないわけにはいかない。
リオン様に何かを食べさせられるのも久しぶりで気恥ずかしさも増したけど仕方ないのでそれを口にする。
「かあさま、おいしい?」
無邪気にそう聞いてくるシャル君に、クッキーを咀嚼しながら無言で頷く私の顔はきっと赤い。
だけどそんな私に機嫌良さそうに微笑んだリオン様は
「さあ次はシャルに食べさせてあげようね。何から食べる?ああ、僕がシャルに食べさせてあげている間はレジナス、君がユーリにお菓子を食べさせてあげるんだよ。」
とレジナスさんに目配せした。その発言にレジナスさんはぐっと言葉を詰まらせて無言で頷く。
「レジーとうさま、また赤くなってる!どうして今日はそんなにもすぐ赤くなるんですか?」
子供は正直だ。いつもなら小さい子達に怖がられているレジナスさんが、血は繋がっていないけれど自分の父親だからか恐れもせずに思ったことを全部聞いてくるシャル君にたじたじになっている。
「あ、赤くなってなんかいない」
「お耳まで赤いですよ!まるでかあさまにキスされた時みたい‼︎」
その言葉にくっ、と目を見開いたレジナスさんが
「ユーリ!」
と声を上げた。
「はい⁉︎」
「お前、子供の前でそんな事をしてるのか⁉︎シャルの前でお、俺に口付けを・・・⁉︎」
「なんで私が怒られるんです⁉︎」
理不尽だ。まだしてもいない未来の私の行動のせいでレジナスさんに照れ隠しで怒られてしまった。
ていうか、それを聞いて恥ずかしいのはレジナスさんだけじゃなくて私もなんですけど⁉︎
「シャル、お母様はどんな時にレジナスに口付けてたか教えてくれる?」
まるでカティヤ様のように興味津々といった風にリオン様がシャル君にお菓子を食べさせながら聞く。
「「リオン様⁉︎」」
私とレジナスさんが二人同時に声を上げたけど、父親の興味を惹いたのが嬉しいのかシャル君は嬉々としていい返事でそれに答えた。
「はい!この間はラーズやレジーとうさまと一緒におさんぽをしている時、お花をつんでプレゼントしたラーズに可愛いって言ってキスをして、そのお花をかあさまの髪にさしてあげたレジーとうさまにもありがとうってキスしてました!」
あ、ボクにも可愛いってキスしてくれましたよ!と膝の上でシャル君は私にも笑顔を向けた。
「そ、そうですか・・・」
もうなんにも言えない。何それ・・・。自分でなければ微笑ましい親子でありいつまでもラブラブな夫婦だけど、それが自分だと思うと途端にいたたまれない。自分の左隣りに座るレジナスさんの顔をまともに見られない。
「へぇ・・・。それは僕も見て見たかったなあ。」
揶揄うように目を細めたリオン様が私とレジナスさんを見る。その様子に焼きもちを焼いたと思ったのかシャル君が慌てて両手を振った。
「だ、だいじょうぶです!とうさまもかあさまと毎日キスしてるじゃないですか!」
「子供の前で⁉︎」
ついまた声を上げてしまえば、
「ボクをまんなかに挟んでキスしてる時はとうさまがボクの目をふさいでるから、ボクはなんにも見てません!ボク、いい子だから大丈夫‼︎」
とシャル君は言うけれど。見えてないからいいとかじゃなく、節度と倫理観の問題だ。
「リオン様⁉︎」
今度は私がレジナスさんばりにリオン様を非難した。だけどリオン様は
「ええ?ただの愛情表現でしょ?なんなら今も試してみる?ほら、真ん中にちょうどシャルもいるし。」
とふざけた事を言い、シャル君も「どうぞ!」とその小さな手で自分の顔を自主的に覆った。何その息の合った親子連携プレー。
その仕草はかわいいけど、だからと言って今ここでリオン様とキスする流れになるのは違うでしょ⁉︎
すると覆った手の隙間から私をちらりと見たシャル君が
「まだですか・・・?早くキスしてくれないと、ボク、ずっとこのままでおやつを食べられないです・・・」
と言ってきた。
「そっ、そんなの待たなくてもいいんですよ!それより、せっかくの出来立てお菓子が冷めちゃいますからね、早く食べましょう‼︎」
リオン様にキスするかわりに小さなシャル君のつむじに口付けを一つ落とす。
日なたの良い匂いがする柔らかな金髪にそのまま顎を乗せてぐりぐりすれば、あはは、と笑い声を上げたシャル君が
「かあさま、何するんですか!くすぐったいです、ふざけないで!」
と喜んだ。良かった、なんとなく誤魔化されてくれたみたいだ。私の隣ではリオン様が、
「せっかくユーリから口付けてもらえるいい機会だったのに残念だなあ」
なんてうそぶいていたけどそれは聞こえなかったことにした。
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