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第十九章 聖女が街にやって来た
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「もう少しすれば父上や兄上も到着して晩餐会が始まるからね」
そう言って私の左隣でリオン様がにっこり微笑む。
レジナスさんはその反対側の右隣で
「ユーリ、服の手首の部分がテーブルに触れて食べる時邪魔にならないか?汚れそうなら少し腕をまくるか?」
と座った私のドレスの裾を整えてくれながら料理を取りにくくないかとその腕部分も気にしてくれている。
そして私の背後・・・リオン様の後方ではシグウェルさんが
「確かに。美しく着飾ったその衣裳を汚すのを気にして食べるのを控えては、食べる事が好きな君の晩餐会への出席意義も薄れるだろうな。何より俺も君が美味しそうに食べている様子を見られないのは残念だ。」
と頷いていた。そしてシェラさんはレジナスさんの後方から私の横へと顔を覗かせてにっこりと
「ではユーリ様のご衣裳が汚れないようにオレが食べさせてあげますよ」
とこれ幸いとばかりに嬉しそうに微笑んだ。
そしてシェラさんのその言葉を受けて今度はリオン様とレジナスさんが、
「いやシェラ、それなら別に君じゃなくてもユーリの隣に座っている僕がユーリに食べさせてあげるから!」
「そうだシェラ、お前がわざわざ後ろから手を出すこともない」
と声を上げて・・・って、なにこれ?
私を取り囲んでなんだかワイワイと四人それぞれ好き勝手なことを言っている。
みんなの見ている前で私の食事の世話がどうとかやり合われるのはすごくいたたまれない。過保護すぎるでしょ⁉︎
「えーと・・・え?これ本当に陛下が考えた席次ですか?シグウェルさんとシェラさん、私の後ろじゃないですか!」
特にシグウェルさんなんて今日はユールヴァルト家の当主代理だという話なのに。
そんな人が私の後ろに侍従よろしく控えているなんておかしい。
だけど当の本人はそんなことは全く気にならないらしく
「君の伴侶だからな。君の側にいて当然だ。ユールヴァルト家の当主代理も名目上その立場で出席する人間が必要だったというだけだから気にするな」
と言って、シェラさんと先日の国境沿いでの獣の討伐についての話をし始めてしまった。
「はいユーリ、リーモのジュースだよ。乾杯にはこれを飲んで。他にも飲みたいジュースがあれば持ってこさせるけど」
リオン様は私の目の前に淡いピンク色のリーモのジュースのグラスを置くと自然な仕草で私の髪の毛が邪魔にならないよう横髪を耳にかける。
そしてそのままレジナスさんは取り分けた一口サイズのキッシュやミートパイの乗ったお皿も私の手の届きやすいところに置いてくれた。
周りを見れば、晩餐会が始まるまでの空き時間で軽食をつまみながら歓談している人達も多かった。
だけど甲斐甲斐しく私の食事の世話をするリオン様という光景はやっぱり物珍しいらしく・・・いや、そりゃあ一国の王子様がそんな事してるから当たり前なんだけど、こちらに向けられる視線の多さが気になる。
「ご覧になって、殿下のあの溺愛ぶり・・・」
とか
「あのシグウェル・ユールヴァルトが他人をあのような目で見つめているのは初めて見るな」
やら、
「それを言ったら殿下の護衛騎士のレジナスが笑っているらしい表情も初めて見るぞ」
みたいな声もあちこちから聞こえてくる。
ちなみにシェラさんを見ている人達は例のあの色気垂れ流しな笑顔にぽうっとなってしまっていて言葉も出ないでいた。
うう、いつまでこんな注目を集めていればいいんだろう。リオン様達、よく平気でいられるよね⁉︎
そう思っていた時だった。会場で楽団の人達が演奏していた曲が変わり、入り口に立つ侍従さんが陛下や大声殿下、ヘイデス国王の来場を声高らかに告げた。
晩餐会に出ると決まった時最初に教わっていたように私も含めその場にいる全員が立ち上がり頭を下げて礼を取る。
そして陛下の声掛けで皆が一斉に頭を上げた。
入場してきた陛下達を見つめていると、陛下はアラム陛下と一緒で大声殿下は聖女のエリス様をエスコートしている。
大声殿下、エリス様を警戒しているという話だけど一応賓客ということもあってかにこやかな対応をしているようだった。
ちなみに陛下は私がリオン様達四人に囲まれているのを見てニヤリと「これが見たかった!」とでもいうような笑みを浮かべて満足そうに頷いていた。
そんな父親を見たリオン様は
「ユーリと一緒の席なのは嬉しいけど父上のああも満足気な顔を見るとそれはそれで面白くないよね・・・」
と複雑そうに呟いていたけど。
そうして入場してきた陛下の左隣にはアラム陛下、そのアラム陛下の隣には大声殿下が着席した。
エリス様は陛下の右隣でリオン様の左隣に座った。
リオン様は左にエリス様、右に私が座る形になりそれを見たシェラさんは後ろから私にこっそりと
「殿下をエリス様の話し相手に取られないようにしませんとね」
と囁いて来たけど、そこはそんなに張り合うところでもないと思うんだけどなあ・・・。
むしろお客様だからエリス様の相手をしないといけないんじゃないかな?
入場して来た時、エリス様はじっと私達を見ていたけど特に嫌そうな顔をしていたわけでもないし、むしろ少し穏やかな微笑みを浮かべていたくらいだ。
まだ何を考えているのかよく分からない人だけど、私も少しでも話をして打ち解けられれば・・・なんて事を考えているうちに晩餐会は始まった。
そう言って私の左隣でリオン様がにっこり微笑む。
レジナスさんはその反対側の右隣で
「ユーリ、服の手首の部分がテーブルに触れて食べる時邪魔にならないか?汚れそうなら少し腕をまくるか?」
と座った私のドレスの裾を整えてくれながら料理を取りにくくないかとその腕部分も気にしてくれている。
そして私の背後・・・リオン様の後方ではシグウェルさんが
「確かに。美しく着飾ったその衣裳を汚すのを気にして食べるのを控えては、食べる事が好きな君の晩餐会への出席意義も薄れるだろうな。何より俺も君が美味しそうに食べている様子を見られないのは残念だ。」
と頷いていた。そしてシェラさんはレジナスさんの後方から私の横へと顔を覗かせてにっこりと
「ではユーリ様のご衣裳が汚れないようにオレが食べさせてあげますよ」
とこれ幸いとばかりに嬉しそうに微笑んだ。
そしてシェラさんのその言葉を受けて今度はリオン様とレジナスさんが、
「いやシェラ、それなら別に君じゃなくてもユーリの隣に座っている僕がユーリに食べさせてあげるから!」
「そうだシェラ、お前がわざわざ後ろから手を出すこともない」
と声を上げて・・・って、なにこれ?
私を取り囲んでなんだかワイワイと四人それぞれ好き勝手なことを言っている。
みんなの見ている前で私の食事の世話がどうとかやり合われるのはすごくいたたまれない。過保護すぎるでしょ⁉︎
「えーと・・・え?これ本当に陛下が考えた席次ですか?シグウェルさんとシェラさん、私の後ろじゃないですか!」
特にシグウェルさんなんて今日はユールヴァルト家の当主代理だという話なのに。
そんな人が私の後ろに侍従よろしく控えているなんておかしい。
だけど当の本人はそんなことは全く気にならないらしく
「君の伴侶だからな。君の側にいて当然だ。ユールヴァルト家の当主代理も名目上その立場で出席する人間が必要だったというだけだから気にするな」
と言って、シェラさんと先日の国境沿いでの獣の討伐についての話をし始めてしまった。
「はいユーリ、リーモのジュースだよ。乾杯にはこれを飲んで。他にも飲みたいジュースがあれば持ってこさせるけど」
リオン様は私の目の前に淡いピンク色のリーモのジュースのグラスを置くと自然な仕草で私の髪の毛が邪魔にならないよう横髪を耳にかける。
そしてそのままレジナスさんは取り分けた一口サイズのキッシュやミートパイの乗ったお皿も私の手の届きやすいところに置いてくれた。
周りを見れば、晩餐会が始まるまでの空き時間で軽食をつまみながら歓談している人達も多かった。
だけど甲斐甲斐しく私の食事の世話をするリオン様という光景はやっぱり物珍しいらしく・・・いや、そりゃあ一国の王子様がそんな事してるから当たり前なんだけど、こちらに向けられる視線の多さが気になる。
「ご覧になって、殿下のあの溺愛ぶり・・・」
とか
「あのシグウェル・ユールヴァルトが他人をあのような目で見つめているのは初めて見るな」
やら、
「それを言ったら殿下の護衛騎士のレジナスが笑っているらしい表情も初めて見るぞ」
みたいな声もあちこちから聞こえてくる。
ちなみにシェラさんを見ている人達は例のあの色気垂れ流しな笑顔にぽうっとなってしまっていて言葉も出ないでいた。
うう、いつまでこんな注目を集めていればいいんだろう。リオン様達、よく平気でいられるよね⁉︎
そう思っていた時だった。会場で楽団の人達が演奏していた曲が変わり、入り口に立つ侍従さんが陛下や大声殿下、ヘイデス国王の来場を声高らかに告げた。
晩餐会に出ると決まった時最初に教わっていたように私も含めその場にいる全員が立ち上がり頭を下げて礼を取る。
そして陛下の声掛けで皆が一斉に頭を上げた。
入場してきた陛下達を見つめていると、陛下はアラム陛下と一緒で大声殿下は聖女のエリス様をエスコートしている。
大声殿下、エリス様を警戒しているという話だけど一応賓客ということもあってかにこやかな対応をしているようだった。
ちなみに陛下は私がリオン様達四人に囲まれているのを見てニヤリと「これが見たかった!」とでもいうような笑みを浮かべて満足そうに頷いていた。
そんな父親を見たリオン様は
「ユーリと一緒の席なのは嬉しいけど父上のああも満足気な顔を見るとそれはそれで面白くないよね・・・」
と複雑そうに呟いていたけど。
そうして入場してきた陛下の左隣にはアラム陛下、そのアラム陛下の隣には大声殿下が着席した。
エリス様は陛下の右隣でリオン様の左隣に座った。
リオン様は左にエリス様、右に私が座る形になりそれを見たシェラさんは後ろから私にこっそりと
「殿下をエリス様の話し相手に取られないようにしませんとね」
と囁いて来たけど、そこはそんなに張り合うところでもないと思うんだけどなあ・・・。
むしろお客様だからエリス様の相手をしないといけないんじゃないかな?
入場して来た時、エリス様はじっと私達を見ていたけど特に嫌そうな顔をしていたわけでもないし、むしろ少し穏やかな微笑みを浮かべていたくらいだ。
まだ何を考えているのかよく分からない人だけど、私も少しでも話をして打ち解けられれば・・・なんて事を考えているうちに晩餐会は始まった。
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