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第十八章 ふしぎの海のユーリ
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「さっきのおばさんの話だと、子供を夜中に攫う
魔物がリオネルには昔からいるってことじゃない
ですか?」
お屋敷に戻って来てお茶を飲んで落ち着いた後に
改めて聞く。
私の言葉にシェラさんもうーん、と考えていた。
「ですが危険な魔物がいるようであればさすがに
耳に入って来ますからね。まあ確かに、それほど
詳しく調べたわけではないですがそんな危険とは
無縁そうでしたのでオレもユーリ様のためにここの
島を買ったわけですし」
・・・ん?島を買ったって何の話?しかも私のため
って今言わなかった?
「シェラさん、私のために島を買ったって何のこと
ですか?」
「あ、いえお気になさらず。それについてはまた
後でお話いたします。」
にっこり笑ってかわされたけど気になるよ!
まさか私に対する無駄遣いがドレスやらアクセサリー
やらを超えてついに不動産にまで・・・⁉︎
大丈夫?それ、騙されて変な土地の売買とかに手を
出してないよね?
シェラさんは有能なのに私のことになるとたまに
盲目的になるから心配だ。
大金が絡む土地取引とかウソだよね?
本当だったらシェラさん、自分の全財産を私に貢ぐ
勢いで怖い。
もしそれでお金を使い果たしてたりしたら、私には
シェラさんを養っていかなければならない責任が
生じる。
「お金は計画的に使って、堅実な人生設計をして
ください・・・⁉︎」
「なんの話でしょう?」
「いえ、そりゃあ確かに世間では奥さんが旦那さんを
養って生計を立てているおうちもありますけど。
いざとなれば私が癒し子としてシェラさんを養うのも
やぶさかではないですよ?でもそれってつまり、私に
お金を貢いで一文無しになった人を養うってことで
それはもう伴侶を養うって言うかヒモでは・・・⁉︎」
あわわ、と慌てた私をシェラさんはキョトンと小首を
傾げて見ている。
「オレはいつでもオレの全てをユーリ様に貢ぐつもり
でいますが、そうするとユーリ様はオレを養って
くださるのですか?毎日オレのためにお勤めをして
くれて、オレのことを考えていただけると?」
それはそれで魅力的ですね・・・と思案顔をされて
しまった。
あれ?そこまで考えてなかった?一応全財産は
つぎ込まない方向で考えてくれてたのかな、
それなら話は別だ。
「いえ、やっぱり今のはナシで!私がシェラさんを
養う話は聞かなかったことにして下さい‼︎」
「そうですか・・・」
なぜか残念そうな顔をしたシェラさんとやり取りを
しているとシグウェルさんがユリウスさんを伴って
部屋へやって来た。
「せっかくダラダラ出来ると思ったらまたなんか
厄介そうな出来事を拾って来たっすね?」
やれやれとユリウスさんは呆れたように私を見て
いる。
「別に私から首を突っ込んだわけじゃないですよ?
私はただ座ってジュースを飲んでいただけです!」
まるで探偵の行く先々で殺人事件が起こるように、
トラブルは向こうからやって来るのだ。
「おばさんはお守りがないと知らないうちに子供が
家からいなくなるみたいな事を言ってましたけど、
ここは大丈夫なんですか?」
シグウェルさん達にも一応聞けば、心配には及ばない
と言われた。
「君の滞在が決まってからここには強力な結界を俺が
直接付けている。俺の力を越えて結界を破りたいなら
炎殺竜や三つ首竜辺りでも連れて来なければ無理だ。
だから安心して過ごせばいい。」
フンと鼻で笑うシグウェルさんをユリウスさんは
厄介なものを見るような目で見た。
「何をどうすればたかが3日の休暇にそんな国防並み
の結界を張るんすか・・・。魔力の無駄遣いもいい
とこっすよ、力の注ぎどころがおかしいっす!」
「お前は俺の魔力がその程度で枯れるとでも?
昨日は無人島にも同じような結界を張ってついでに
新しい防御魔法もそこに付けてきたが、まだまだ力は
有り余っている。余計な事を言ってユーリに気を
遣わせるんじゃない」
シグウェルさんはジロリと冷たくユリウスさんを
見やったけど・・・。
無人島って、夜市でシェラさんが言っていた売りに
出ていた島のこと?
なんでそこにシグウェルさんが結界を?何かの実験
だろうかと思ったところでシェラさんのついさっきの
『島を買った』発言を思い出す。
そういえば昼間、ここに着いてすぐに二人一緒に
用があるからと無人島へ出掛けていた。
「まさかシェラさん、無人島を買ったんですか⁉︎」
夜だというのに思わず大きな声を出してしまった。
ユリウスさんはええっ、と驚いているからその事は
知らなかったらしい。
「やはりユーリ様は食べ物が絡まないとカンがいい
ですねぇ」
なんて言って悪びれずもせずシェラさんはニコニコ
している。
「しかもシグウェルさんまで一緒になって、何してる
んですか!」
シェラさんに声を上げたついでにシグウェルさんにも
文句を言おうとしたら開けた口にすかさずふかふかの
甘い蒸しパンを入れられた。
口の中の水分を持っていかれて声を出すどころか
黙って咀嚼するしかない。甘くておいしい。
「落ち着け、夜だというのにそんなに興奮したら
眠れなくなるぞ」
むっつりした顔で蒸しパンを堪能する私を眺めながら
口にパンを突っ込んだ張本人のシグウェルさんは
面白そうな顔をしている。
「団長、段々とユーリ様の扱い方がうまくなって
来てるっすね・・・。最初は頭一つ撫でるのも
ぎこちなかったのに・・・」
「人は常に学び成長するものだ」
なんてやり取りをシグウェルさんはユリウスさんと
してるけどこれは扱い方がうまくなったんじゃない、
誤魔化すやり口がうまくなっているのだ。
やっと口の中の蒸しパンをごくりと飲み込み、エル君
に差し出されたお茶を飲んでから
「私に島を買うとかやり過ぎですよ⁉︎リオン様に
怒られても知りませんからね!」
と改めて怒れば、シェラさんもシグウェルさんも
問題ないと頷いた。ほんとこういう時は気が合う
んだから。
「この事は殿下もレジナスも知っておりますよ?
ユーリ様のための場所ですからね、島の見取り図から
そこに立てる館の図案まで全て報告して許可を得て
おります。建て替え中の館の内装については殿下にも
いくつかご指示と希望を伺っておりますし。」
とシェラさんは言い、シグウェルさんも
「俺も結界や魔法陣など島に付与する魔法については
リオン殿下にも相談の上で警戒レベルを決めた。
レジナスも島の周囲に巡らす見張り用の砦について
その位置にあれこれダメ出しをしてきたぞ。」
などと言う。
「リオン様やレジナスさんまで知ってるんですか⁉︎」
しかも話に聞く限りだと随分と乗り気だ。
「みんなで集まって、私の知らないところで一体何を
しているんです・・・⁉︎」
頭を抱えた私にまあまあとシェラさんがあやすように
背中を撫でた。
「この滞在中に一度ユーリ様をお連れしてそこで
話して驚いていただこうかと思っていたのですが、
予定が少し早まりましたね。島に本格的に滞在できる
ようになるにはもうしばらくかかりますが、楽しみに
お待ちください。それに今はそれよりも先に確かめて
おいた方がいいことが出来ましたしね。」
そう言ったシェラさんの目がきらりと金色に鋭く
煌めいてユリウスさんを見た。
その視線に気付いたユリウスさんはため息をつく。
「分かってるっすよ。さっき団長に見せられたあの
魔石、間違いなく海の魔物のモノっす。なんであんな
モノがここに流れ着いているのかとか魔物はホントに
いないのかとかは、俺が調べるんで明日の昼間まで
待って欲しいっす。」
「ユリウスさんが調べてくれるんですか?」
「だってこの二人がリオネルの町に降りて事情を
聞きに行ってもこの不遜な態度と破壊力のある顔面
ですよ?みんなビビって何か教えてくれるどころか
口を開けるかどうかも怪しいですって」
こういう時は俺くらい平凡な見た目の人間が動くのが
丁度いいんす、なんて自虐めいた事をユリウスさんは
言っている。だから、
「ユリウスさんは人好きのする愛想の良さもあるし
人当たりもいいから、初めて会う人の懐に入り込む
のもうまそうでそういうのに向いているかも!」
本当に思っていることだけど励ましの意味も込めて
言えば
「ユーリ様、オレも諜報活動は得意ですよ?」
と構ってもらいたそうに主張したシェラさんが
私の前に回り込んでユリウスさんを押し退けた。
そしてシグウェルさんは
「ユリウス、お前は明日に備えてもう出て行け」
とそのユリウスさんの首根っこを掴んで私の視界から
消すように追いやった。
「何なんすかアンタらのその息の合った行動は!
マジで碌でもないっすね、ユーリ様の事が絡むと
最悪の組み合わせっすよ!あっ、痛い‼︎」
二人のやる事に堪らず突っ込みを入れたユリウスさん
が突然悲鳴を上げて、シェラさんが
「失礼、あなたが無駄にうろついているので避け
切れずに踏んでしまいました」
としれっとして言った。
レジナスさんに対してよくやるようにわざと足を
踏んだに違いない。
ちょっとユリウスさんを励ましただけなのに。
なんかごめん・・・。
魔物がリオネルには昔からいるってことじゃない
ですか?」
お屋敷に戻って来てお茶を飲んで落ち着いた後に
改めて聞く。
私の言葉にシェラさんもうーん、と考えていた。
「ですが危険な魔物がいるようであればさすがに
耳に入って来ますからね。まあ確かに、それほど
詳しく調べたわけではないですがそんな危険とは
無縁そうでしたのでオレもユーリ様のためにここの
島を買ったわけですし」
・・・ん?島を買ったって何の話?しかも私のため
って今言わなかった?
「シェラさん、私のために島を買ったって何のこと
ですか?」
「あ、いえお気になさらず。それについてはまた
後でお話いたします。」
にっこり笑ってかわされたけど気になるよ!
まさか私に対する無駄遣いがドレスやらアクセサリー
やらを超えてついに不動産にまで・・・⁉︎
大丈夫?それ、騙されて変な土地の売買とかに手を
出してないよね?
シェラさんは有能なのに私のことになるとたまに
盲目的になるから心配だ。
大金が絡む土地取引とかウソだよね?
本当だったらシェラさん、自分の全財産を私に貢ぐ
勢いで怖い。
もしそれでお金を使い果たしてたりしたら、私には
シェラさんを養っていかなければならない責任が
生じる。
「お金は計画的に使って、堅実な人生設計をして
ください・・・⁉︎」
「なんの話でしょう?」
「いえ、そりゃあ確かに世間では奥さんが旦那さんを
養って生計を立てているおうちもありますけど。
いざとなれば私が癒し子としてシェラさんを養うのも
やぶさかではないですよ?でもそれってつまり、私に
お金を貢いで一文無しになった人を養うってことで
それはもう伴侶を養うって言うかヒモでは・・・⁉︎」
あわわ、と慌てた私をシェラさんはキョトンと小首を
傾げて見ている。
「オレはいつでもオレの全てをユーリ様に貢ぐつもり
でいますが、そうするとユーリ様はオレを養って
くださるのですか?毎日オレのためにお勤めをして
くれて、オレのことを考えていただけると?」
それはそれで魅力的ですね・・・と思案顔をされて
しまった。
あれ?そこまで考えてなかった?一応全財産は
つぎ込まない方向で考えてくれてたのかな、
それなら話は別だ。
「いえ、やっぱり今のはナシで!私がシェラさんを
養う話は聞かなかったことにして下さい‼︎」
「そうですか・・・」
なぜか残念そうな顔をしたシェラさんとやり取りを
しているとシグウェルさんがユリウスさんを伴って
部屋へやって来た。
「せっかくダラダラ出来ると思ったらまたなんか
厄介そうな出来事を拾って来たっすね?」
やれやれとユリウスさんは呆れたように私を見て
いる。
「別に私から首を突っ込んだわけじゃないですよ?
私はただ座ってジュースを飲んでいただけです!」
まるで探偵の行く先々で殺人事件が起こるように、
トラブルは向こうからやって来るのだ。
「おばさんはお守りがないと知らないうちに子供が
家からいなくなるみたいな事を言ってましたけど、
ここは大丈夫なんですか?」
シグウェルさん達にも一応聞けば、心配には及ばない
と言われた。
「君の滞在が決まってからここには強力な結界を俺が
直接付けている。俺の力を越えて結界を破りたいなら
炎殺竜や三つ首竜辺りでも連れて来なければ無理だ。
だから安心して過ごせばいい。」
フンと鼻で笑うシグウェルさんをユリウスさんは
厄介なものを見るような目で見た。
「何をどうすればたかが3日の休暇にそんな国防並み
の結界を張るんすか・・・。魔力の無駄遣いもいい
とこっすよ、力の注ぎどころがおかしいっす!」
「お前は俺の魔力がその程度で枯れるとでも?
昨日は無人島にも同じような結界を張ってついでに
新しい防御魔法もそこに付けてきたが、まだまだ力は
有り余っている。余計な事を言ってユーリに気を
遣わせるんじゃない」
シグウェルさんはジロリと冷たくユリウスさんを
見やったけど・・・。
無人島って、夜市でシェラさんが言っていた売りに
出ていた島のこと?
なんでそこにシグウェルさんが結界を?何かの実験
だろうかと思ったところでシェラさんのついさっきの
『島を買った』発言を思い出す。
そういえば昼間、ここに着いてすぐに二人一緒に
用があるからと無人島へ出掛けていた。
「まさかシェラさん、無人島を買ったんですか⁉︎」
夜だというのに思わず大きな声を出してしまった。
ユリウスさんはええっ、と驚いているからその事は
知らなかったらしい。
「やはりユーリ様は食べ物が絡まないとカンがいい
ですねぇ」
なんて言って悪びれずもせずシェラさんはニコニコ
している。
「しかもシグウェルさんまで一緒になって、何してる
んですか!」
シェラさんに声を上げたついでにシグウェルさんにも
文句を言おうとしたら開けた口にすかさずふかふかの
甘い蒸しパンを入れられた。
口の中の水分を持っていかれて声を出すどころか
黙って咀嚼するしかない。甘くておいしい。
「落ち着け、夜だというのにそんなに興奮したら
眠れなくなるぞ」
むっつりした顔で蒸しパンを堪能する私を眺めながら
口にパンを突っ込んだ張本人のシグウェルさんは
面白そうな顔をしている。
「団長、段々とユーリ様の扱い方がうまくなって
来てるっすね・・・。最初は頭一つ撫でるのも
ぎこちなかったのに・・・」
「人は常に学び成長するものだ」
なんてやり取りをシグウェルさんはユリウスさんと
してるけどこれは扱い方がうまくなったんじゃない、
誤魔化すやり口がうまくなっているのだ。
やっと口の中の蒸しパンをごくりと飲み込み、エル君
に差し出されたお茶を飲んでから
「私に島を買うとかやり過ぎですよ⁉︎リオン様に
怒られても知りませんからね!」
と改めて怒れば、シェラさんもシグウェルさんも
問題ないと頷いた。ほんとこういう時は気が合う
んだから。
「この事は殿下もレジナスも知っておりますよ?
ユーリ様のための場所ですからね、島の見取り図から
そこに立てる館の図案まで全て報告して許可を得て
おります。建て替え中の館の内装については殿下にも
いくつかご指示と希望を伺っておりますし。」
とシェラさんは言い、シグウェルさんも
「俺も結界や魔法陣など島に付与する魔法については
リオン殿下にも相談の上で警戒レベルを決めた。
レジナスも島の周囲に巡らす見張り用の砦について
その位置にあれこれダメ出しをしてきたぞ。」
などと言う。
「リオン様やレジナスさんまで知ってるんですか⁉︎」
しかも話に聞く限りだと随分と乗り気だ。
「みんなで集まって、私の知らないところで一体何を
しているんです・・・⁉︎」
頭を抱えた私にまあまあとシェラさんがあやすように
背中を撫でた。
「この滞在中に一度ユーリ様をお連れしてそこで
話して驚いていただこうかと思っていたのですが、
予定が少し早まりましたね。島に本格的に滞在できる
ようになるにはもうしばらくかかりますが、楽しみに
お待ちください。それに今はそれよりも先に確かめて
おいた方がいいことが出来ましたしね。」
そう言ったシェラさんの目がきらりと金色に鋭く
煌めいてユリウスさんを見た。
その視線に気付いたユリウスさんはため息をつく。
「分かってるっすよ。さっき団長に見せられたあの
魔石、間違いなく海の魔物のモノっす。なんであんな
モノがここに流れ着いているのかとか魔物はホントに
いないのかとかは、俺が調べるんで明日の昼間まで
待って欲しいっす。」
「ユリウスさんが調べてくれるんですか?」
「だってこの二人がリオネルの町に降りて事情を
聞きに行ってもこの不遜な態度と破壊力のある顔面
ですよ?みんなビビって何か教えてくれるどころか
口を開けるかどうかも怪しいですって」
こういう時は俺くらい平凡な見た目の人間が動くのが
丁度いいんす、なんて自虐めいた事をユリウスさんは
言っている。だから、
「ユリウスさんは人好きのする愛想の良さもあるし
人当たりもいいから、初めて会う人の懐に入り込む
のもうまそうでそういうのに向いているかも!」
本当に思っていることだけど励ましの意味も込めて
言えば
「ユーリ様、オレも諜報活動は得意ですよ?」
と構ってもらいたそうに主張したシェラさんが
私の前に回り込んでユリウスさんを押し退けた。
そしてシグウェルさんは
「ユリウス、お前は明日に備えてもう出て行け」
とそのユリウスさんの首根っこを掴んで私の視界から
消すように追いやった。
「何なんすかアンタらのその息の合った行動は!
マジで碌でもないっすね、ユーリ様の事が絡むと
最悪の組み合わせっすよ!あっ、痛い‼︎」
二人のやる事に堪らず突っ込みを入れたユリウスさん
が突然悲鳴を上げて、シェラさんが
「失礼、あなたが無駄にうろついているので避け
切れずに踏んでしまいました」
としれっとして言った。
レジナスさんに対してよくやるようにわざと足を
踏んだに違いない。
ちょっとユリウスさんを励ましただけなのに。
なんかごめん・・・。
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