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第十六章 君の瞳は一億ボルト
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私の力で地面が裂けて谷が出来てしまった。
裂けた場所と城壁に沿って少し歩いてみて確かめた
けど結構な広範囲に渡って谷間が出来ている。
「溶岩の流れと全然関係ないところまで裂けて
しまってるとか・・・」
レジナスさんは力を使いこなしているんじゃないか
と言ってくれたけど、これはどうだろう・・・。
ユリウスさんはペンで報告書に使うらしいメモを
取りながら、
「まあこれだけの裂け目が出来ていれば、もし
次にまた噴火があって溶岩が今回と違う方向に
流れてもそれも防げると思うっすよ。」
そう話してくれた。
「それに元々この城壁って魔物がこっち側に侵入して
くるのを防ぐためのものだけあって、危険だから
この城壁の向こう側に住んでる人はいないんで生活
に困ることもないはずっす。むしろ谷を越えて
こなきゃいけない分、飛行能力や跳躍力に優れた
魔物以外の侵入は難しくなって良かったかもしれない
っすよ?」
ぐるりと辺りを見回しながら言ったユリウスさんに
シェラさんも同意する。
「そうですね。もし向こうに渡るために必要という
のなら、橋でもかけておけばいいのです。魔物を
警戒して城壁に常駐する見張り番も、この谷が出来た
おかげで魔物の侵入に対する気苦労もだいぶ減るはず
ですよ。良いことをされましたねユーリ様。」
みんな酔っ払いのやらかしたことに対して寛容
過ぎる。だけどそれでは私の良心が痛みっぱなし
なのだ。
「じゃあせめて、向こうに繋がる橋をかけるお手伝い
くらいは私にさせて欲しいです・・・!」
レジナスさんにお願いしてその腕から降ろしてもらい
適当な場所を選んで地面に手を付く。
イメージするのは童話のジャックと豆の木みたいな
太くて大きなツルだ。
あれは空に向かって大きく伸びていくものだった
けど、今回はそれが横へと伸びて谷間のこちらと
あちらを繋ぐように。
目を閉じてそうイメージして豊穣の加護の力を
使う。
むくむくと、手の下の地面が動く振動を感じながら
そのまま続ければユリウスさんがどんな状況か
教えてくれる。
「うわ、凄いっすよユーリ様。あっという間に
向こう側まで植物のツルが伸びて届いちゃった
っす。え?橋?もしかして橋を作ろうとしてる
んすか?」
その通りだよ。「かなりしっかりした作りだな」と
言うレジナスさんの声も聞こえたので、もういい
かなと目を開ける。
目の前には馬車が一台余裕で通れそうなくらいの
幅を持った立派な吊り橋が出来上がっていた。
太くて硬そうな植物のツルがしっかりと絡み合って
出来ていて少しくらいの振動にもびくともしない
感じだ。
「この橋を渡って魔物が来るかも、と言う心配は
ありますけどそれはどうしましょう?」
問題があるとすればそれくらいだろうか。
悩んだ私に、レジナスさんが提案してくれた。
「コーンウェル領に来るまでに使った魔物避けの
香を帰りの分としてまだ残してある。それを何かの
入れ物に分けてユーリの力で減らないように加護を
付けられないか?それをここに常備して橋のたもとで
絶やさず常に焚き続ければいいだろう。香の管理は
城壁の見張り番の仕事にさせればいい。」
そういえば私達がオーウェン様のお城につくまで
馬車で焚いていた魔物避けの香があったっけ。
確か別宮があるこの場所へ移動する時にも使って
やって来た。
あれは効き目がある分、高価だから普通の人達は
なかなか買えないって話だったなあ。
それを四六時中焚き続けるには普通なら量も金額も
かなりのものになるだろう。
だけどそれを私がパン籠へ力を使うように増やして
いつまでも減らないように出来れば在庫を気にせず
この橋でずっと使える。
「それいいですね!ぜひやらせてください!」
いいアイディアだ、さすがレジナスさん。
「あ、それじゃその準備が整うまでは俺がこの橋に
魔物が入れないように防護魔法をかけとくっすよ。」
ユリウスさんが、言うが早いか橋に手を添えて
魔法をかけてくれた。
「いやあ良かったっす。昨日ユーリ様に話を聞いて
からここを確かめた時は、説明と違う様子だったから
どうしようかなと思ったんすけどかえっていい結果に
なりましたね。温泉も出来ちゃったし!」
あとはこれを団長と王宮に報告して終わりっす、と
ユリウスさんは上機嫌だ。
「良かったですねユーリ様、お疲れ様です。さあ
帰りましょう。これでようやくゆっくり出来ますよ」
シェラさんはそう言って私に微笑んだけど、その
顔を見れば「ゆっくりとオレのことを考えて返事を
下さい」とでも言いたそうだ。
「・・・帰りましょうか。」
いつまでも返事は先延ばしに出来ないだろうなあ。
むしろ引き伸ばせば引き延ばすほど、露天風呂で
かちあった時のような返事の迫られ方をするような
気がする。
シェラさんのことは好きだけど、それが恋愛的な
意味なのか単に親しみを感じているだけなのか、
いまだによく分からない。
さて、どうしよう?
来た時と同じくおとなしくレジナスさんの腕の中に
収まりながら馬のところまで運ばれていれば、私は
難しい顔でもしていたのかレジナスさんは
「シェラが近くにいてあれこれ言うせいで考えが
まとまらないなら、答えが出るまであいつをユーリ
から離して辺境にでも飛ばしてもらうか?いつでも
リオン様に言えるし、リオン様も喜んでそうして
くれるはずだ。」
なんて言ってきたけど、それって私を気遣うという
より単純にレジナスさんがシェラさんを遠ざけたい
だけだよね・・・?
耳ざとくそれを聞きつけたシェラさんが、
「なんて心の狭い男でしょう、大きいのは体だけ
ですか?」
なんて嫌味を言ったのでケンカにならないように
また二人の間に入ってなだめた。
いや、こんなんじゃゆっくり返事を考えるどころ
じゃないんですけど?
裂けた場所と城壁に沿って少し歩いてみて確かめた
けど結構な広範囲に渡って谷間が出来ている。
「溶岩の流れと全然関係ないところまで裂けて
しまってるとか・・・」
レジナスさんは力を使いこなしているんじゃないか
と言ってくれたけど、これはどうだろう・・・。
ユリウスさんはペンで報告書に使うらしいメモを
取りながら、
「まあこれだけの裂け目が出来ていれば、もし
次にまた噴火があって溶岩が今回と違う方向に
流れてもそれも防げると思うっすよ。」
そう話してくれた。
「それに元々この城壁って魔物がこっち側に侵入して
くるのを防ぐためのものだけあって、危険だから
この城壁の向こう側に住んでる人はいないんで生活
に困ることもないはずっす。むしろ谷を越えて
こなきゃいけない分、飛行能力や跳躍力に優れた
魔物以外の侵入は難しくなって良かったかもしれない
っすよ?」
ぐるりと辺りを見回しながら言ったユリウスさんに
シェラさんも同意する。
「そうですね。もし向こうに渡るために必要という
のなら、橋でもかけておけばいいのです。魔物を
警戒して城壁に常駐する見張り番も、この谷が出来た
おかげで魔物の侵入に対する気苦労もだいぶ減るはず
ですよ。良いことをされましたねユーリ様。」
みんな酔っ払いのやらかしたことに対して寛容
過ぎる。だけどそれでは私の良心が痛みっぱなし
なのだ。
「じゃあせめて、向こうに繋がる橋をかけるお手伝い
くらいは私にさせて欲しいです・・・!」
レジナスさんにお願いしてその腕から降ろしてもらい
適当な場所を選んで地面に手を付く。
イメージするのは童話のジャックと豆の木みたいな
太くて大きなツルだ。
あれは空に向かって大きく伸びていくものだった
けど、今回はそれが横へと伸びて谷間のこちらと
あちらを繋ぐように。
目を閉じてそうイメージして豊穣の加護の力を
使う。
むくむくと、手の下の地面が動く振動を感じながら
そのまま続ければユリウスさんがどんな状況か
教えてくれる。
「うわ、凄いっすよユーリ様。あっという間に
向こう側まで植物のツルが伸びて届いちゃった
っす。え?橋?もしかして橋を作ろうとしてる
んすか?」
その通りだよ。「かなりしっかりした作りだな」と
言うレジナスさんの声も聞こえたので、もういい
かなと目を開ける。
目の前には馬車が一台余裕で通れそうなくらいの
幅を持った立派な吊り橋が出来上がっていた。
太くて硬そうな植物のツルがしっかりと絡み合って
出来ていて少しくらいの振動にもびくともしない
感じだ。
「この橋を渡って魔物が来るかも、と言う心配は
ありますけどそれはどうしましょう?」
問題があるとすればそれくらいだろうか。
悩んだ私に、レジナスさんが提案してくれた。
「コーンウェル領に来るまでに使った魔物避けの
香を帰りの分としてまだ残してある。それを何かの
入れ物に分けてユーリの力で減らないように加護を
付けられないか?それをここに常備して橋のたもとで
絶やさず常に焚き続ければいいだろう。香の管理は
城壁の見張り番の仕事にさせればいい。」
そういえば私達がオーウェン様のお城につくまで
馬車で焚いていた魔物避けの香があったっけ。
確か別宮があるこの場所へ移動する時にも使って
やって来た。
あれは効き目がある分、高価だから普通の人達は
なかなか買えないって話だったなあ。
それを四六時中焚き続けるには普通なら量も金額も
かなりのものになるだろう。
だけどそれを私がパン籠へ力を使うように増やして
いつまでも減らないように出来れば在庫を気にせず
この橋でずっと使える。
「それいいですね!ぜひやらせてください!」
いいアイディアだ、さすがレジナスさん。
「あ、それじゃその準備が整うまでは俺がこの橋に
魔物が入れないように防護魔法をかけとくっすよ。」
ユリウスさんが、言うが早いか橋に手を添えて
魔法をかけてくれた。
「いやあ良かったっす。昨日ユーリ様に話を聞いて
からここを確かめた時は、説明と違う様子だったから
どうしようかなと思ったんすけどかえっていい結果に
なりましたね。温泉も出来ちゃったし!」
あとはこれを団長と王宮に報告して終わりっす、と
ユリウスさんは上機嫌だ。
「良かったですねユーリ様、お疲れ様です。さあ
帰りましょう。これでようやくゆっくり出来ますよ」
シェラさんはそう言って私に微笑んだけど、その
顔を見れば「ゆっくりとオレのことを考えて返事を
下さい」とでも言いたそうだ。
「・・・帰りましょうか。」
いつまでも返事は先延ばしに出来ないだろうなあ。
むしろ引き伸ばせば引き延ばすほど、露天風呂で
かちあった時のような返事の迫られ方をするような
気がする。
シェラさんのことは好きだけど、それが恋愛的な
意味なのか単に親しみを感じているだけなのか、
いまだによく分からない。
さて、どうしよう?
来た時と同じくおとなしくレジナスさんの腕の中に
収まりながら馬のところまで運ばれていれば、私は
難しい顔でもしていたのかレジナスさんは
「シェラが近くにいてあれこれ言うせいで考えが
まとまらないなら、答えが出るまであいつをユーリ
から離して辺境にでも飛ばしてもらうか?いつでも
リオン様に言えるし、リオン様も喜んでそうして
くれるはずだ。」
なんて言ってきたけど、それって私を気遣うという
より単純にレジナスさんがシェラさんを遠ざけたい
だけだよね・・・?
耳ざとくそれを聞きつけたシェラさんが、
「なんて心の狭い男でしょう、大きいのは体だけ
ですか?」
なんて嫌味を言ったのでケンカにならないように
また二人の間に入ってなだめた。
いや、こんなんじゃゆっくり返事を考えるどころ
じゃないんですけど?
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