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第十六章 君の瞳は一億ボルト

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ふわふわした頭のままレジナスさんに運ばれて、
ベッドの上に降ろされた後もなんだか色々とクダを
巻いた気がする。

いいから!とか何とかレジナスさんが言って、あの
大きな手で頭を撫でられていたような。

目が覚めてぼんやりとしたままそんな事を思い出して
いると、シンシアさんの声がした。

「おはようございますユーリ様。お目覚めですか?
もうすっかりいつものお姿に戻っておりますが、
お腹はすきませんか?ご希望であればすぐに朝食も
ご用意できますよ。」

「おなか・・・すきました。ご飯食べます!」

どうやらいつものように寝ている間に縮んでしまった
らしい。

起き上がり、着替えをしながらシンシアさんに
尋ねる。

「昨日はここまでレジナスさんに運んでもらった
みたいなんですけど、レジナスさんに迷惑をかけて
いませんでしたか?」

私の言葉にシンシアさんの手がちょっと止まった。

「何かしました⁉︎」

焦った私にシンシアさんがふふふ、と笑った。

「迷惑というか随分と甘えておられましたよ。
暖かいから隣で一緒に寝て欲しいとおねだりされて
いましたね。」

大変可愛らしかったです、と言われて愕然とする。

「ええ・・・何ですかそれ、思いっきりレジナスさん
に迷惑をかけてるじゃないですか。」

うっすらと覚えている、いいから!というアレは
もしかしてその誘いを断った時のやり取りなのかな。

「最終的にレジナス様はユーリ様が眠りにつくまで
ずっと頭を撫でながらそばにおられましたよ。」

は、恥ずかしい。なんだそれは。まるで駄々っ子だ。

「それはまた・・・レジナスさんの睡眠時間も奪って
しまって申し訳ないです。後で謝らないと。」

本当に、酔った自分ほど信用できないものはない。

と、その時軽いノック音と共にユリウスさんが
姿を現した。

「おはようございますユーリ様。もうすっかり
いつものお姿っすね!えーと、朝食を食べたら
ちょっと昨日ユーリ様が雷を落とした現場まで
一緒に来て欲しいんすけど・・・」

「何かありましたか?」

そういえばユリウスさんには私がグノーデルさんの
力を使った場所を確かめて欲しいとお願いしていた。

こうなるといいなと思ったものと落ちた雷の様子が
少し違ったみたいで気になっていたのだ。

グノーデルさんの力はイリューディアさんの癒しの
力ほどまだ私も使いこなせていない。

「もしかして、止め方が緩くてまた溶岩が流れ出し
たりしてますか⁉︎」

ハッとしてフォークを置いて聞く。それなら
もう一度力を使いに行かなければ。

だけどユリウスさんはそんな私に慌てる。

「いえ、食べ終わってからでいいんすよ!それじゃ
よろしく頼んだっす!」

なんだか物言いたげなユリウスさんの態度に首を
傾げながら朝食を終える。

・・・シェラさんに会ったらどんな顔をしようかと、
そればかりが気になっていた朝食後だったけれども
当のシェラさんはいつもと全く変わらない態度で私に
朝の挨拶に訪れた。

こっちは突然の告白やら温泉での鉢合わせやらで
どうしようかと思っていたのに。

だけどそんな事をこちらから言うのもなんだか
アレで、・・・それこそ口に出したら告白の返事を
まずしなきゃいけなくなりそうで、まだはっきりと
した返事を決めかねている私は何も言えずに複雑な
心境でシェラさんを見た。

するとシェラさんはそんな私に

「ああ、いいんですよユーリ様。自分からは言い出し
にくいことだと思いますので、折々を見てオレの方
からお聞きします。ですからユーリ様はその時に
お気持ちを教えていただければ良いのです。」

なんて事を言ってきた。どういう意味だろう?

不思議に思ったのは私だけじゃなくて、出掛ける前の
打ち合わせのためにその場にいたレジナスさんや
ユリウスさんもだ。

意味が分からないと言った顔つきの私にシェラさんは

「おや、分かりにくかったでしょうか?では朝の
ご挨拶からやり直しましょう。」

そう言って、いつものあの朝の爽やかさにはとうてい
似合わない色気垂れ流しの笑顔を私に向けると

「おはようございますユーリ様、愛しい人。オレを
伴侶にしてくれる決心は固まりましたか?」

堂々とそう言い放った。その言葉にユリウスさんは
ぎゃあ!と声を上げてシグウェルさんが私に豪速球を
投げ込んだ時のようにまた赤くなり、レジナスさんは
手にしていたペンをぼきりと折った。

そしてマリーさんとシンシアさんは呆気に取られて
動きが止まった。

そう、シンシアさん達もいると言うのにこんな事を
言ったのだ。

唯一動揺していないのはエル君だけで、いつもの
ように呆れたように黙ってかぶりを振っている。

「な、何言ってるんですかシェラさん!こんな他の
人達がいる前で⁉︎」

「こういう事は隠すほどユーリ様のお返事も決心も
鈍りますので、折に触れオレが口にして気持ちを
知ってもらう方が良いのです。それにどうせここに
いる者達は皆ユーリ様に近しい者達ですのでオレが
ユーリ様へ告白したことなどすぐに知られるに
決まっておりますよ。ご安心下さい、これ以上
たくさんの者がいる前でこんな事は言いませんので」

「エッ!告白しちゃったんすかアンタ‼︎この騒ぎの
中のどこにそんなヒマがあったっすか⁉︎頭おかしい
んじゃないっすか⁉︎」

ユリウスさんの言い方よ。そこまでの言い方は
どうかと思うけど、それを挨拶と一緒に聞かされた
私は一体どうすればいいのか。

「ユーリ様はその時々のお気持ちをオレに聞かせて
くだされば良いのです。どうです、伴侶にする気に
なりましたか?」

にこやかにシェラさんはまた聞いてきた。

「な、ならないです!まだ保留です‼︎」

シンシアさんとマリーさんの視線が痛い。なんだか
色々と聞きたそうな顔をしてこちらを見ている。

レジナスさんは「お前・・・」と今にも唸り声を
上げて噛み殺しそうな恐ろしい顔でシェラさんを
見つめているし、せっかく一難去ったんだから
せめて1日くらいは落ち着かせて欲しい。

これ、私が返事をするまで会うたびにこんな風に
言われるんだろうか?

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