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第十五章 レニとユーリの神隠し
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ヴィルマ様の元へ戻り、心配をかけたことを謝ると
無事で良かったとレニ様を抱きしめながら優しい
笑顔を見せてくれた。
そしてヴィルマ様はお腹がすいたという私のために
室内にお茶の準備までしてくれた。
「それで?君の力と勇者の泉に元々備わっていた
姫巫女の加護の力が相互作用をして時間を飛び越えて
過去へ遡ったということか?」
円卓の一角に座るシグウェルさんに改めて聞かれる。
大きな丸テーブルにはリオン様とシグウェルさん、
私、レニ様にその付き添いでヴィルマ様が座って
いる。
エル君とレジナスさんは護衛として私とリオン様の
後ろにそれぞれ立ちながら私達の話を聞いていた。
「多分ですけど、勇者様の肖像画にあるような魔石が
欲しいっていうレニ様の願いを叶えるために力が
働いたのかなあって。今度あそこに行く時は無心で
お祈りすることにします!」
今回の事は不慮の事故だし悪気があっての出来事じゃ
ないけど、万が一また何か余計なことを考えたりして
どこかに飛ばされてしまっては敵わない。
ぷすっ、とケーキにフォークを刺しながらそう決意
した。
「勇者様、強くてすっごくカッコよかったんですよ
叔父上!大きなラーデウルフを拳一つで倒して
しまうし、雷を落として一つ目巨人のオグルスも
粉々にしてしまいました!それにヨナス神の力で
強くなってるっていう炎狼達も火炎魔法で消し炭に
なるまで燃やし尽くしました‼︎」
瞳をキラキラさせてそう話すレニ様の言葉にリオン様
だけでなくシグウェルさんやレジナスさんも不思議
そうな顔をした。
「火炎魔法?氷結魔法じゃなくて?」
聞き返したリオン様に、レニ様がはい!と頷く。
「凍らせる温度よりも高温の炎を纏われていると
面倒だから、最初から炎狼よりも高い温度の炎で
燃やす方が簡単だって言ってました。俺も勇者様
みたいに火炎系の魔法をもっと上手に使えるように
なりたいです!」
「話だけ聞いているとすごく簡単そうだけど、
それは結構難しい魔法なんじゃないかな・・・?」
リオン様の視線を受けてシグウェルさんが口を
開いた。
「そうですね。炎狼よりも高温の炎をぶつけると
言っても、炎狼が纏う炎に近い温度であれば逆に
それを取り込まれて炎を勢いづかせてしまうので
かなりの高温でなければ焼き切ってしまうのは
難しいでしょう。しかも一頭ならまだしも群れ
だったのでしょう?」
その全てを消し炭にするためには莫大な量の魔力が
必要だが・・・と頭の中で計算を始めそうになった
シグウェルさんに私も声をかける。
「キリウさんの魔法も凄かったですよ!空を飛ぶ
ハーピー達を一網打尽にしてあっという間に撃ち
落としてしまいました。」
「ほう。それはどんな魔法だ?」
「こう、手をぱんって叩いて『盾』って言ったら
空にたくさんの盾が現れて『矛』って言って槍も
たくさん出したと思ったら、『貫け』って言葉で
それがすごいスピードで盾に飛んでいってそれに
衝突して反射するのを利用しながら倒してました。」
私のつたない説明にシグウェルさんは目を細めた。
「高速呪文魔法の連発か。面白い。」
何だろうそれは。初めて聞く。不思議そうな顔を
した私に気付いたシグウェルさんは懐から紙を一枚
取り出した。
「君は加護の力を使う時、いつもそれを口に出して
願っているだろう?より具体的な効果を持たせるため
にはそれなりに長く話しているはずだ。」
そういえばそうかも。魔法はイメージだけど具体的に
口に出すほどしっかり効いている気がする。
ヒールって呪文は使うけど余程の時にしか言わないし
その時だって心の中で色々とイメージしている。
キリウさんみたいに気軽には言ってない。
「それを今の話に当てはめるとこうだ。具体的な
イメージを俺達魔導士の使う専門語に書き換え、
それを更に呪文に変換して魔法として使う。」
説明しながらさらさらと『中空に連なる頑強な盾よ、
その場に固定されよ』と普通の言葉で書き、その下に
あの離宮で見た速記文字みたいな字でそれを訳した
物をさらに書いた。それをまた呪文に変換する作業が
あるってことらしい。
「キリウ・ユールヴァルトはそれをたった一文字の
『盾』という言葉に凝縮する独自の魔法を作り出し、
それだけでなくそこに更に『100を超える槍よ
現れよ』『盾に向かい飛ぶ槍よ、その切先を反射
させ敵を貫け』などの別の魔法を同時並行でいくつも
操っていたわけだ。・・・なるほど、稀に見る魔法の
使い手と言われるだけのことはあるな。」
俺も試してみよう、とシグウェルさんは面白そうに
目をすがめた。
「え・・・あんな短い言葉にそんなにたくさん意味や
魔法の力が働いてたんですか?本人、すごく気軽に
他にも色々やってましたよ?」
「例えば?」
「にこにこしながら手を叩いて『成長して結実ね!』
って言ったら小枝が木になって実もつけていました
し、鉱山では大きな魔石の塊の下に小さな刃物を
差し込んで『分離』って言っただけで魔石が地面から
綺麗に切り離されたり・・・」
思い出しながらそう話せば、シグウェルさんは
「めちゃくちゃだな」
と眉をひそめた。
「日常生活で使う言葉に魔法言語をそんなに気安く
組み込むとはかなりの作業量になるはずだ。しかも
単語にまで縮めるとは。通りで実家に残っている
キリウ・ユールヴァルトの使った魔法呪文の文献が
少ないはずだ。日常言語がそのまま魔法になっている
なら文献に残し辛いからな。君のおかげで良い話を
聞けた。後でセディに言って実家の文献の洗い直しを
させる。彼の遺した手紙や私信の中の日常言語に
使った魔法のヒントが潜んでいるかもしれない。」
シグウェルさんに思いがけず褒められてしまった。
ていうか、そんな話を聞くとやっぱりキリウさんて
凄い人だったんだなあと改めて思う。
あれで賭けごとを・・・しかも子供相手にイカサマ
なんかしたりしなければもっと尊敬できるのに。
そう思いながら目の前のケーキを食べ終わった
ところへリオン様がすいと新しいロールケーキの
お皿を置いてくれた。
お礼を言ってそれに手をつけようとしたらなぜか
それを止められてしまう。
「リオン様?」
「キリウ・ユールヴァルトの凄さや勇者様の強さは
良く分かったけど・・・ところでユーリ、肝心の
話をまだしていないよね?」
その話が聞きたいな。にっこりとリオン様が私に
向かって良い笑顔を見せた。
それはあれですか、さっきレニ様が言った求婚の
件ですか。
リオン様の言葉にレニ様以外の全員の目が私に
注がれた。なぜかヴィルマ様まで興味深げにあの
綺麗な緑の瞳を輝かせている。
「え・・・それ言わなきゃダメですか?ちゃんと
断りましたよ?」
キリウさん、あの手この手で私を褒め倒して求婚の
許可を取り付けようとしていたけどそれを自分の口
から話すのはちょっと自画自賛っていうか自慢する
みたいで気が引ける。
気恥ずかしさに赤くなったら、求婚されたのが
嬉しかったのかとリオン様に誤解された。
「ユーリ・・・そんなに嬉しくなるような事を
言われたの?あの有名なキリウ・ユールヴァルトに
そこまで惚れ込まれるなんて、何を言われたのか
すごく気になるんだけど。」
「わ、忘れました!なんだか色々言われたので全部は
覚えてません!」
悪あがきをしたら、へぇ。とリオン様の瞳が煌めいて
私の後ろでエル君がユーリ様・・・と呆れて呟いた
のが聞こえた。
え?甥っ子のレニ様や義理の姉のヴィルマ様が見て
いるこんなところで、まさかいつものように迫って
聞いて来ないよね⁉︎
無事で良かったとレニ様を抱きしめながら優しい
笑顔を見せてくれた。
そしてヴィルマ様はお腹がすいたという私のために
室内にお茶の準備までしてくれた。
「それで?君の力と勇者の泉に元々備わっていた
姫巫女の加護の力が相互作用をして時間を飛び越えて
過去へ遡ったということか?」
円卓の一角に座るシグウェルさんに改めて聞かれる。
大きな丸テーブルにはリオン様とシグウェルさん、
私、レニ様にその付き添いでヴィルマ様が座って
いる。
エル君とレジナスさんは護衛として私とリオン様の
後ろにそれぞれ立ちながら私達の話を聞いていた。
「多分ですけど、勇者様の肖像画にあるような魔石が
欲しいっていうレニ様の願いを叶えるために力が
働いたのかなあって。今度あそこに行く時は無心で
お祈りすることにします!」
今回の事は不慮の事故だし悪気があっての出来事じゃ
ないけど、万が一また何か余計なことを考えたりして
どこかに飛ばされてしまっては敵わない。
ぷすっ、とケーキにフォークを刺しながらそう決意
した。
「勇者様、強くてすっごくカッコよかったんですよ
叔父上!大きなラーデウルフを拳一つで倒して
しまうし、雷を落として一つ目巨人のオグルスも
粉々にしてしまいました!それにヨナス神の力で
強くなってるっていう炎狼達も火炎魔法で消し炭に
なるまで燃やし尽くしました‼︎」
瞳をキラキラさせてそう話すレニ様の言葉にリオン様
だけでなくシグウェルさんやレジナスさんも不思議
そうな顔をした。
「火炎魔法?氷結魔法じゃなくて?」
聞き返したリオン様に、レニ様がはい!と頷く。
「凍らせる温度よりも高温の炎を纏われていると
面倒だから、最初から炎狼よりも高い温度の炎で
燃やす方が簡単だって言ってました。俺も勇者様
みたいに火炎系の魔法をもっと上手に使えるように
なりたいです!」
「話だけ聞いているとすごく簡単そうだけど、
それは結構難しい魔法なんじゃないかな・・・?」
リオン様の視線を受けてシグウェルさんが口を
開いた。
「そうですね。炎狼よりも高温の炎をぶつけると
言っても、炎狼が纏う炎に近い温度であれば逆に
それを取り込まれて炎を勢いづかせてしまうので
かなりの高温でなければ焼き切ってしまうのは
難しいでしょう。しかも一頭ならまだしも群れ
だったのでしょう?」
その全てを消し炭にするためには莫大な量の魔力が
必要だが・・・と頭の中で計算を始めそうになった
シグウェルさんに私も声をかける。
「キリウさんの魔法も凄かったですよ!空を飛ぶ
ハーピー達を一網打尽にしてあっという間に撃ち
落としてしまいました。」
「ほう。それはどんな魔法だ?」
「こう、手をぱんって叩いて『盾』って言ったら
空にたくさんの盾が現れて『矛』って言って槍も
たくさん出したと思ったら、『貫け』って言葉で
それがすごいスピードで盾に飛んでいってそれに
衝突して反射するのを利用しながら倒してました。」
私のつたない説明にシグウェルさんは目を細めた。
「高速呪文魔法の連発か。面白い。」
何だろうそれは。初めて聞く。不思議そうな顔を
した私に気付いたシグウェルさんは懐から紙を一枚
取り出した。
「君は加護の力を使う時、いつもそれを口に出して
願っているだろう?より具体的な効果を持たせるため
にはそれなりに長く話しているはずだ。」
そういえばそうかも。魔法はイメージだけど具体的に
口に出すほどしっかり効いている気がする。
ヒールって呪文は使うけど余程の時にしか言わないし
その時だって心の中で色々とイメージしている。
キリウさんみたいに気軽には言ってない。
「それを今の話に当てはめるとこうだ。具体的な
イメージを俺達魔導士の使う専門語に書き換え、
それを更に呪文に変換して魔法として使う。」
説明しながらさらさらと『中空に連なる頑強な盾よ、
その場に固定されよ』と普通の言葉で書き、その下に
あの離宮で見た速記文字みたいな字でそれを訳した
物をさらに書いた。それをまた呪文に変換する作業が
あるってことらしい。
「キリウ・ユールヴァルトはそれをたった一文字の
『盾』という言葉に凝縮する独自の魔法を作り出し、
それだけでなくそこに更に『100を超える槍よ
現れよ』『盾に向かい飛ぶ槍よ、その切先を反射
させ敵を貫け』などの別の魔法を同時並行でいくつも
操っていたわけだ。・・・なるほど、稀に見る魔法の
使い手と言われるだけのことはあるな。」
俺も試してみよう、とシグウェルさんは面白そうに
目をすがめた。
「え・・・あんな短い言葉にそんなにたくさん意味や
魔法の力が働いてたんですか?本人、すごく気軽に
他にも色々やってましたよ?」
「例えば?」
「にこにこしながら手を叩いて『成長して結実ね!』
って言ったら小枝が木になって実もつけていました
し、鉱山では大きな魔石の塊の下に小さな刃物を
差し込んで『分離』って言っただけで魔石が地面から
綺麗に切り離されたり・・・」
思い出しながらそう話せば、シグウェルさんは
「めちゃくちゃだな」
と眉をひそめた。
「日常生活で使う言葉に魔法言語をそんなに気安く
組み込むとはかなりの作業量になるはずだ。しかも
単語にまで縮めるとは。通りで実家に残っている
キリウ・ユールヴァルトの使った魔法呪文の文献が
少ないはずだ。日常言語がそのまま魔法になっている
なら文献に残し辛いからな。君のおかげで良い話を
聞けた。後でセディに言って実家の文献の洗い直しを
させる。彼の遺した手紙や私信の中の日常言語に
使った魔法のヒントが潜んでいるかもしれない。」
シグウェルさんに思いがけず褒められてしまった。
ていうか、そんな話を聞くとやっぱりキリウさんて
凄い人だったんだなあと改めて思う。
あれで賭けごとを・・・しかも子供相手にイカサマ
なんかしたりしなければもっと尊敬できるのに。
そう思いながら目の前のケーキを食べ終わった
ところへリオン様がすいと新しいロールケーキの
お皿を置いてくれた。
お礼を言ってそれに手をつけようとしたらなぜか
それを止められてしまう。
「リオン様?」
「キリウ・ユールヴァルトの凄さや勇者様の強さは
良く分かったけど・・・ところでユーリ、肝心の
話をまだしていないよね?」
その話が聞きたいな。にっこりとリオン様が私に
向かって良い笑顔を見せた。
それはあれですか、さっきレニ様が言った求婚の
件ですか。
リオン様の言葉にレニ様以外の全員の目が私に
注がれた。なぜかヴィルマ様まで興味深げにあの
綺麗な緑の瞳を輝かせている。
「え・・・それ言わなきゃダメですか?ちゃんと
断りましたよ?」
キリウさん、あの手この手で私を褒め倒して求婚の
許可を取り付けようとしていたけどそれを自分の口
から話すのはちょっと自画自賛っていうか自慢する
みたいで気が引ける。
気恥ずかしさに赤くなったら、求婚されたのが
嬉しかったのかとリオン様に誤解された。
「ユーリ・・・そんなに嬉しくなるような事を
言われたの?あの有名なキリウ・ユールヴァルトに
そこまで惚れ込まれるなんて、何を言われたのか
すごく気になるんだけど。」
「わ、忘れました!なんだか色々言われたので全部は
覚えてません!」
悪あがきをしたら、へぇ。とリオン様の瞳が煌めいて
私の後ろでエル君がユーリ様・・・と呆れて呟いた
のが聞こえた。
え?甥っ子のレニ様や義理の姉のヴィルマ様が見て
いるこんなところで、まさかいつものように迫って
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