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第十二章 癒し子来たりて虎を呼ぶ
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突然の添い寝の申し出に赤くなった私の反応を
一通り楽しんだ後、リオン様はやっとその理由を
話してくれた。
「先日、離宮で大きくなったでしょ?その時に使った
力がカティヤの力を上回って、徐々にカティヤの
加護が弱くなって来たんじゃないかって。」
だから大きくなった直後は何ともなくて今頃悪夢を
見てるのかぁ。
「本当はまた直接カティヤが加護を付けてくれるのが
いいんだろうけど、大神殿ではこの先の神事に向けて
禊ぎ期間に入ったらしいんだ。だから姫巫女である
カティヤも神殿から出られないらしくてとても
残念がっていたよ。」
「そ、それと私がリオン様に添い寝をしてもらうのに
一体どんな関係が⁉︎」
今のところまだ話が見えない。するとリオン様は
「・・・ユーリ、カティヤがここを訪れた時に
何かあったら僕を頼れって言われてたんだって?」
珍しくじとりとした目で見られた。
「・・・え?そんな事言われたかな・・・アッ‼︎」
そう言えば、カティヤ様に手を取られてそんな事を
言われたような気もする。
リオン様の中には私のつけた加護の、悪いものを
弾いてしまう力があるからって。
「でもあれは、手を繋いでもらうようにとかだった
ような・・・⁉︎」
「夜、眠れないんでしょ?昼間ならただ手を繋いで
いればいいんだろうけど、昼間は何ともなくて
問題は夜だって言うなら夜一緒にいるのが一番
いいよね。」
だから隣で添い寝をしながらずっと手を繋いでいて
あげる。
そんな事を言われても。私の後ろにいるマリーさんと
ルルーさん、シンシアさんの顔が輝いているのが
見なくても分かる。
当の本人である私は狼狽えているのに、どうして
三人の方がそんなに浮き足立ってるの⁉︎
「大丈夫、何もしないよ。ただユーリの隣で眠る
だけだし。まあ、ある意味将来の練習になって
いいんじゃない?」
「それ以上言わなくていいです‼︎」
なんてことを言うんだろう。あんまり変なことを
言わないで欲しい、また私の後ろの三人の雰囲気が
浮き足立った。
何となく気になって、リオン様の後ろのレジナスさん
を見てみれば予想通りうっすらと赤くなっている。
「試しに手を繋いで寝てみて、効果がなければまた
別の方法を考えればいいんじゃないかな?」
リオン様は楽しそうだ。
「・・・効果があったらどうするんです?」
答えは分かりきっていたけど一応聞いてみた。
「シグウェルの結界石が出来上がるまでの間は
ずっとユーリの隣で寝てあげるよ。」
やっぱりか!・・・え?これ、私別の意味で
眠れなくないかなあ⁉︎
結界石は早く欲しいけどそのためにシグウェルさんに
会えば、この間の件について答えを出さなければ
いけない。
答えを先延ばしにしようとしてシグウェルさんに
会わないでいればその間はもしかするとずっと
リオン様と添い寝だ。
どっちも選ぶのが難しい。何も言えなくなって
ただ赤くなっている私にリオン様は、
「じゃあユーリ、また寝る時にね。」
そう言ってさっさと自分の部屋に戻ってしまった。
共有の部屋に一人取り残されて、しんとしたのは
一瞬だ。マリーさんがきゃあ、と声を上げた。
「リオン様がおいでになるんですね!どうしましょう
夜着はやっぱりユーリ様の愛らしさが際立つ桃色に
しますか⁉︎それともリオン様のお色に合わせて
淡い黄色に⁉︎」
「マリー、落ち着いて。初めて夜を共にするなら
ここはやはり純真さを表す純白よ。喉が渇いた時の
ために果実水とお水、両方の準備も忘れないで。」
マリーさんをたしなめるシンシアさんまで落ち着いて
いるようで落ち着いていない。ルルーさんが
呆れている。
「二人とも落ち着きなさい。ユーリ様が驚いて
いるでしょう。こういう時、あなた達は粛々と
支度をするんですよ。」
今後のためにも覚えておきなさい、なんて言ってる。
こ、今後のためにとか初めて夜を共にとか、私に
どんどんプレッシャーがかかる。
そんな私にお構いなしにルルーさんは笑顔を見せた。
「申し訳ありませんユーリ様。二人とも王族の方の
こういった事は初めて経験しますので何かとご不便を
お掛けするかもしれませんが、不手際だけはない
ようにいたしますので。」
「こ、こういったこと・・・」
「勿論、今夜は本当にただの添い寝だということは
リオン様のあの言い方や雰囲気からしても分かって
おります。それはこのルルーも保障致しますから
ご安心下さいね。」
元乳母のルルーさんがそう言うならそうなんだろう。
それでもまだなんとなく落ち着かない気分だけど。
その後はマリーさんとシンシアさんがああでもない
こうでもないと私の夜着を選んで、結局チュニック型
の上衣に膝丈くらいのガウチョパンツみたいな
組み合わせのものにしてもらった。
これならそんなに夜を一緒にするとかなんとかを
気にした格好じゃないから、私もそんなにリオン様を
意識しないで済みそうだ。
そうして眠る時間を迎えれば予定通りリオン様が
やってきた。
「いいですかリオン様。陛下のくれたこの羊さんが
境界線です。この子を真ん中に置きますから、
そのお腹の下から手を伸ばして繋ぎましょう。」
ポンと陛下のくれた羊のぬいぐるみの背を叩いた私に
「そんなに警戒しなくても何もしないよ。ほら、
横になって。」
リオン様は自分からさっさと布団に入った。
もっとからかわれたりすると思っていたので少し
拍子抜けだ。変に意識していた自分が悪いのかな?と
恥ずかしくなって慌てて私も布団に潜り込む。
「はい、手を出して。」
私の言った通り、リオン様は布団から出した手を
羊のお腹の下から私に伸ばしてくれた。
「本当にこれで効き目があればいいんですけどね。」
半信半疑で手を繋げば、
「ユーリ、上を見て。天蓋の天井が僅かに輝いて
いるのが分かる?」
何かに気付いたリオン様に促されて、寝転がったまま
上を見る。
「ああ、はい。初日から気になっていたんですけど
これが何か分かるんですか?」
ベッドに仰向けになると、目に飛び込んでくるのは
天蓋の天井部分だ。
そこは全面が濃い紺色に塗られていて、あちこちが
星のようにきらきらと輝いている。
初めてこのベッドで寝た時から気になっていた。
「これは夜光虫の羽を僕達の世界の星座の形に
配置してあるものだよ。こうして寝てみるまで、
まさかここまで手の込んだ寝台にしているとは
気付かなかったな。全く、父上ときたら・・・」
「夜光虫の羽?」
「昼間のうちに羽に蓄えられた日の光が夜になって
夜空を飛ぶ時にうっすらと発光するんだ。
破れやすいごく薄い4枚羽なんだけど、貴族の家具や
高価な楽器の装飾に埋め込まれて使われることが
多いよ。そうすると、その装飾が夜になると淡く
発光してとても綺麗なんだ。」
虫一匹から4枚しか取れないって、この天蓋はまるで
星空のように煌めいているんですけど。
その羽を一枚ずつ埋め込むためにかかった手間と
その数を考えたら、見た目は夜の星空を映し取った
みたいに綺麗なのにとんでもない費用がかかって
いそうで恐ろしくなった。
ただでさえこのベッドは普通のものより大きいのに
そのベッド全体を覆う天蓋もかなりの大きさだ。
「それ、聞かなきゃ良かったです。ヨナスの夢を
見なくても眠れなくなりそう・・・」
そう言った私にリオン様はクスクス笑うと繋いだ手を
ぎゅっとした。
「それは困る。ユーリに安心して眠ってもらうために
僕が来たんだから。寝物語にこの天井を彩る星座の
物語を話してあげるから目を閉じて気を楽にしながら
聞いて。」
言われた通りに目を閉じると、リオン様は低く
落ち着いた声で星座にまつわる物語を話してくれた。
竜に攫われたお姫様とそれを助ける勇者様の話や
ずるいキツネが純粋なウサギを騙す話。
穴をあけた酒樽から酒を盗み飲もうとする男の話。
元の世界での星座の話とはまた違った物語で面白い。
今度図書館に行ったら星座の本を借りてこようかな。
そんなことを思っているうちに、いつの間にか
私は深く眠ってしまっていた。
そして翌朝。あったかい毛布の温もりに、まだ
寝ていたいなと思いながら目が覚めた。
ヨナスの夢は見なかった。久しぶりによく寝たと
もぞもぞ動けば
「おはようユーリ。よく眠れたみたいで良かった。」
リオン様の声が上から降ってきた。
・・・上から?
それはおかしい。リオン様は私の右隣に寝ていた
はずなんだから。
そこでハッと気付く。あったかいのは毛布じゃない。
パチリと開けた目の前にはリオン様の体があった。
リオン様にしっかりと抱きしめられての目覚めだ。
「はっ⁉︎えっ・・・陛下の羊さんは⁉︎」
両手で慌ててリオン様の胸を押して離れようと
するけど、そんなのはまったくもって無駄な抵抗だ。
まるで何事もないかのようにリオン様は背に回した
手で赤ちゃんをあやすかのように私の背中をポンポン
と叩きながら話す。
「父上の羊ならユーリの足下に転がっているよ。
夜中に蹴飛ばしたかな?」
ウソっぽい!すごく白々しいことを言った。
「ひ、人が寝入った隙に・・・!」
「でもユーリの方からぐいぐい頭を擦り付けて
来たよ?寒かったの?」
仔猫みたいで可愛かったし、こうしてる方が
暖かいでしょう?
リオン様に耳元でそう囁かれると背中がむずむず
する。爽やかな朝に似合わない艶っぽい声だ。
いつも朝食の席で見る爽やかな笑顔と違って、
起きたてで薄く微笑むリオン様は気だるい雰囲気と
少し乱れた髪の毛がやけに色っぽくてどきどきする。
やめて欲しい。朝から私の心臓がもたない。
それなのにそんな私に構わずリオン様は、
「ユーリの可愛らしい寝顔をこんなにも間近で
見られるのは幸せ以外の何物でもないね。
何だったらまだ朝は早いし、もう一度眠っても
いいんだよ?そうしたら僕はまたユーリの寝顔を
見られるからね。」
そんなことを言ってくる。
「そんな風に言われてまた寝られると思います⁉︎
もうバッチリ目が覚めました!」
おはようございますっ‼︎そう言ったらようやく
リオン様は私を解放してくれた。
「ところでヨナスの夢は見たの?」
リオン様の言葉に固まる。見なかったと素直に言えば
こんな気恥ずかしい目覚めをこの先も当分の間
することになる。
「ユーリ?」
言わなくても分かっていそうだったけどリオン様は
にこにこしながら私に聞いてくる。言わせたいのか。
「み・・・見なかったです・・・」
思わず目を逸らして小さな声で自己申告する。
「効果があったなら何よりだ。それなら当分の間の
添い寝は決定だね。」
やっぱりかあ!心の中で私は小さく悲鳴をあげた。
一通り楽しんだ後、リオン様はやっとその理由を
話してくれた。
「先日、離宮で大きくなったでしょ?その時に使った
力がカティヤの力を上回って、徐々にカティヤの
加護が弱くなって来たんじゃないかって。」
だから大きくなった直後は何ともなくて今頃悪夢を
見てるのかぁ。
「本当はまた直接カティヤが加護を付けてくれるのが
いいんだろうけど、大神殿ではこの先の神事に向けて
禊ぎ期間に入ったらしいんだ。だから姫巫女である
カティヤも神殿から出られないらしくてとても
残念がっていたよ。」
「そ、それと私がリオン様に添い寝をしてもらうのに
一体どんな関係が⁉︎」
今のところまだ話が見えない。するとリオン様は
「・・・ユーリ、カティヤがここを訪れた時に
何かあったら僕を頼れって言われてたんだって?」
珍しくじとりとした目で見られた。
「・・・え?そんな事言われたかな・・・アッ‼︎」
そう言えば、カティヤ様に手を取られてそんな事を
言われたような気もする。
リオン様の中には私のつけた加護の、悪いものを
弾いてしまう力があるからって。
「でもあれは、手を繋いでもらうようにとかだった
ような・・・⁉︎」
「夜、眠れないんでしょ?昼間ならただ手を繋いで
いればいいんだろうけど、昼間は何ともなくて
問題は夜だって言うなら夜一緒にいるのが一番
いいよね。」
だから隣で添い寝をしながらずっと手を繋いでいて
あげる。
そんな事を言われても。私の後ろにいるマリーさんと
ルルーさん、シンシアさんの顔が輝いているのが
見なくても分かる。
当の本人である私は狼狽えているのに、どうして
三人の方がそんなに浮き足立ってるの⁉︎
「大丈夫、何もしないよ。ただユーリの隣で眠る
だけだし。まあ、ある意味将来の練習になって
いいんじゃない?」
「それ以上言わなくていいです‼︎」
なんてことを言うんだろう。あんまり変なことを
言わないで欲しい、また私の後ろの三人の雰囲気が
浮き足立った。
何となく気になって、リオン様の後ろのレジナスさん
を見てみれば予想通りうっすらと赤くなっている。
「試しに手を繋いで寝てみて、効果がなければまた
別の方法を考えればいいんじゃないかな?」
リオン様は楽しそうだ。
「・・・効果があったらどうするんです?」
答えは分かりきっていたけど一応聞いてみた。
「シグウェルの結界石が出来上がるまでの間は
ずっとユーリの隣で寝てあげるよ。」
やっぱりか!・・・え?これ、私別の意味で
眠れなくないかなあ⁉︎
結界石は早く欲しいけどそのためにシグウェルさんに
会えば、この間の件について答えを出さなければ
いけない。
答えを先延ばしにしようとしてシグウェルさんに
会わないでいればその間はもしかするとずっと
リオン様と添い寝だ。
どっちも選ぶのが難しい。何も言えなくなって
ただ赤くなっている私にリオン様は、
「じゃあユーリ、また寝る時にね。」
そう言ってさっさと自分の部屋に戻ってしまった。
共有の部屋に一人取り残されて、しんとしたのは
一瞬だ。マリーさんがきゃあ、と声を上げた。
「リオン様がおいでになるんですね!どうしましょう
夜着はやっぱりユーリ様の愛らしさが際立つ桃色に
しますか⁉︎それともリオン様のお色に合わせて
淡い黄色に⁉︎」
「マリー、落ち着いて。初めて夜を共にするなら
ここはやはり純真さを表す純白よ。喉が渇いた時の
ために果実水とお水、両方の準備も忘れないで。」
マリーさんをたしなめるシンシアさんまで落ち着いて
いるようで落ち着いていない。ルルーさんが
呆れている。
「二人とも落ち着きなさい。ユーリ様が驚いて
いるでしょう。こういう時、あなた達は粛々と
支度をするんですよ。」
今後のためにも覚えておきなさい、なんて言ってる。
こ、今後のためにとか初めて夜を共にとか、私に
どんどんプレッシャーがかかる。
そんな私にお構いなしにルルーさんは笑顔を見せた。
「申し訳ありませんユーリ様。二人とも王族の方の
こういった事は初めて経験しますので何かとご不便を
お掛けするかもしれませんが、不手際だけはない
ようにいたしますので。」
「こ、こういったこと・・・」
「勿論、今夜は本当にただの添い寝だということは
リオン様のあの言い方や雰囲気からしても分かって
おります。それはこのルルーも保障致しますから
ご安心下さいね。」
元乳母のルルーさんがそう言うならそうなんだろう。
それでもまだなんとなく落ち着かない気分だけど。
その後はマリーさんとシンシアさんがああでもない
こうでもないと私の夜着を選んで、結局チュニック型
の上衣に膝丈くらいのガウチョパンツみたいな
組み合わせのものにしてもらった。
これならそんなに夜を一緒にするとかなんとかを
気にした格好じゃないから、私もそんなにリオン様を
意識しないで済みそうだ。
そうして眠る時間を迎えれば予定通りリオン様が
やってきた。
「いいですかリオン様。陛下のくれたこの羊さんが
境界線です。この子を真ん中に置きますから、
そのお腹の下から手を伸ばして繋ぎましょう。」
ポンと陛下のくれた羊のぬいぐるみの背を叩いた私に
「そんなに警戒しなくても何もしないよ。ほら、
横になって。」
リオン様は自分からさっさと布団に入った。
もっとからかわれたりすると思っていたので少し
拍子抜けだ。変に意識していた自分が悪いのかな?と
恥ずかしくなって慌てて私も布団に潜り込む。
「はい、手を出して。」
私の言った通り、リオン様は布団から出した手を
羊のお腹の下から私に伸ばしてくれた。
「本当にこれで効き目があればいいんですけどね。」
半信半疑で手を繋げば、
「ユーリ、上を見て。天蓋の天井が僅かに輝いて
いるのが分かる?」
何かに気付いたリオン様に促されて、寝転がったまま
上を見る。
「ああ、はい。初日から気になっていたんですけど
これが何か分かるんですか?」
ベッドに仰向けになると、目に飛び込んでくるのは
天蓋の天井部分だ。
そこは全面が濃い紺色に塗られていて、あちこちが
星のようにきらきらと輝いている。
初めてこのベッドで寝た時から気になっていた。
「これは夜光虫の羽を僕達の世界の星座の形に
配置してあるものだよ。こうして寝てみるまで、
まさかここまで手の込んだ寝台にしているとは
気付かなかったな。全く、父上ときたら・・・」
「夜光虫の羽?」
「昼間のうちに羽に蓄えられた日の光が夜になって
夜空を飛ぶ時にうっすらと発光するんだ。
破れやすいごく薄い4枚羽なんだけど、貴族の家具や
高価な楽器の装飾に埋め込まれて使われることが
多いよ。そうすると、その装飾が夜になると淡く
発光してとても綺麗なんだ。」
虫一匹から4枚しか取れないって、この天蓋はまるで
星空のように煌めいているんですけど。
その羽を一枚ずつ埋め込むためにかかった手間と
その数を考えたら、見た目は夜の星空を映し取った
みたいに綺麗なのにとんでもない費用がかかって
いそうで恐ろしくなった。
ただでさえこのベッドは普通のものより大きいのに
そのベッド全体を覆う天蓋もかなりの大きさだ。
「それ、聞かなきゃ良かったです。ヨナスの夢を
見なくても眠れなくなりそう・・・」
そう言った私にリオン様はクスクス笑うと繋いだ手を
ぎゅっとした。
「それは困る。ユーリに安心して眠ってもらうために
僕が来たんだから。寝物語にこの天井を彩る星座の
物語を話してあげるから目を閉じて気を楽にしながら
聞いて。」
言われた通りに目を閉じると、リオン様は低く
落ち着いた声で星座にまつわる物語を話してくれた。
竜に攫われたお姫様とそれを助ける勇者様の話や
ずるいキツネが純粋なウサギを騙す話。
穴をあけた酒樽から酒を盗み飲もうとする男の話。
元の世界での星座の話とはまた違った物語で面白い。
今度図書館に行ったら星座の本を借りてこようかな。
そんなことを思っているうちに、いつの間にか
私は深く眠ってしまっていた。
そして翌朝。あったかい毛布の温もりに、まだ
寝ていたいなと思いながら目が覚めた。
ヨナスの夢は見なかった。久しぶりによく寝たと
もぞもぞ動けば
「おはようユーリ。よく眠れたみたいで良かった。」
リオン様の声が上から降ってきた。
・・・上から?
それはおかしい。リオン様は私の右隣に寝ていた
はずなんだから。
そこでハッと気付く。あったかいのは毛布じゃない。
パチリと開けた目の前にはリオン様の体があった。
リオン様にしっかりと抱きしめられての目覚めだ。
「はっ⁉︎えっ・・・陛下の羊さんは⁉︎」
両手で慌ててリオン様の胸を押して離れようと
するけど、そんなのはまったくもって無駄な抵抗だ。
まるで何事もないかのようにリオン様は背に回した
手で赤ちゃんをあやすかのように私の背中をポンポン
と叩きながら話す。
「父上の羊ならユーリの足下に転がっているよ。
夜中に蹴飛ばしたかな?」
ウソっぽい!すごく白々しいことを言った。
「ひ、人が寝入った隙に・・・!」
「でもユーリの方からぐいぐい頭を擦り付けて
来たよ?寒かったの?」
仔猫みたいで可愛かったし、こうしてる方が
暖かいでしょう?
リオン様に耳元でそう囁かれると背中がむずむず
する。爽やかな朝に似合わない艶っぽい声だ。
いつも朝食の席で見る爽やかな笑顔と違って、
起きたてで薄く微笑むリオン様は気だるい雰囲気と
少し乱れた髪の毛がやけに色っぽくてどきどきする。
やめて欲しい。朝から私の心臓がもたない。
それなのにそんな私に構わずリオン様は、
「ユーリの可愛らしい寝顔をこんなにも間近で
見られるのは幸せ以外の何物でもないね。
何だったらまだ朝は早いし、もう一度眠っても
いいんだよ?そうしたら僕はまたユーリの寝顔を
見られるからね。」
そんなことを言ってくる。
「そんな風に言われてまた寝られると思います⁉︎
もうバッチリ目が覚めました!」
おはようございますっ‼︎そう言ったらようやく
リオン様は私を解放してくれた。
「ところでヨナスの夢は見たの?」
リオン様の言葉に固まる。見なかったと素直に言えば
こんな気恥ずかしい目覚めをこの先も当分の間
することになる。
「ユーリ?」
言わなくても分かっていそうだったけどリオン様は
にこにこしながら私に聞いてくる。言わせたいのか。
「み・・・見なかったです・・・」
思わず目を逸らして小さな声で自己申告する。
「効果があったなら何よりだ。それなら当分の間の
添い寝は決定だね。」
やっぱりかあ!心の中で私は小さく悲鳴をあげた。
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