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第八章 新しい日常
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大神殿からリオン様の妹で姫巫女のカティヤ様が
私を訪ねて来てくれる。そう決まって、奥の院は
慌ただしくその一行を迎える準備に追われた。
カティヤ様のほかにこの国で一番偉い大神官の
おじいちゃん、高位神官さんなど全部で15人ほど
来訪するらしい。
ちなみに大神官のおじいちゃんはこの世界に
来てから何度か会っていて、わりと親しい。
サンタクロースを痩せさせたみたいな
にこにこした白い髭のおじいちゃんだ。
「カティヤにきちんと会うのは3年ぶりかな?
色々な儀式で顔を合わせることはあっても
立場上気軽に声をかけることは出来ないし、
久しぶりに顔を見て話が出来るのは嬉しいね。」
リオン様もとても嬉しそうだ。
3年ぶり。・・・ちょうどリオン様が魔物の
怪我で目が見えなくなった頃だ。
もしかして最後に会ったのはお見舞いだったり
するのだろうか?それなら、元気になった
今のリオン様を見てもらえるのはとても嬉しい。
今回カティヤ様が来てくれるのは、私が急に
大きくなった原因をカティヤ様に見てもらえれば
何か分かるのではないかということらしい。
「あと、手紙には詳しく書いていなかったけど
イリューディア神の神託を新たに賜ったとか。
普通、神託は数年に一度だったりするんだけど
ユーリが先日王都に使った加護の力で、姫巫女の
力自体も高まったようなんだ。そのお礼も
したいって手紙にはあったよ。」
「カティヤ様、どんな方なのか楽しみです。
仲良くなれるといいですけど・・・」
確か歳は17歳って聞いた気がする。5歳から
神殿に入っているって話だから、そんな小さな
時から神殿に仕えているなんてきっとすごく
立派な人なんだろうなあ。
「緊張しなくても大丈夫。あの子はとても
明るくて話好きな優しい子だよ。きっとユーリも
仲良くなれるから。」
楽しみだね。と笑うリオン様に、私がきっかけで
カティヤ様に久しぶりに会う機会が出来て
良かったな、と思うとカティヤ様一行がここを
訪れるのが少し楽しみになった。
カティヤ様一行が訪れる当日。
迎えるこちら側には、参考までに話を聞くため
同席したいと魔導士院からシグウェルさんと
ユリウスさん、その他に2人の魔導士さんも
一緒にいた。
着席したまま雑談に興じるユリウスさんは
なんだかそわそわしているみたいだから
緊張してるのかな?
「カティヤ様か~。俺は遠くからしか見たこと
ないっすね。団長は?」
「俺は何度か話したことがあるが、精霊の声が
うっとおしくて話をよく覚えていない。」
「なんすかそれ!姫巫女と話す機会なんて
滅多にないのにそりゃないっすよ、
関心なさ過ぎでしょ⁉︎」
「仕方がないだろう、イリューディア神の加護が
強くて精霊の騒めきがひどいんだ。どうせ
当たり障りのない挨拶程度の会話だ」
「精霊がうるさいって、じゃあユーリ様は?」
確かに気になる。ちらりとこちらを見た
シグウェルさんは、ユリウスさんに冷たい
視線を向けた。
「お前は国王陛下の御前でもいつものような
軽口をたたいてはしゃげるか?」
「んなワケないっすよ、俺を何だと思ってるんすか」
「それと同じだ。ユーリの魔力は姫巫女よりも
イリューディア神の気配が濃い。その神威を
前にしてはしゃげる精霊がいるものか。
精霊達はユーリがその力を使って自分達を
使役するのをひたすらじっと待っているような
ものだな。だからユーリのそばにいると
逆に静かなものだ。」
そ、そんな感じなんだ。私はいるだけで精霊を
怖がらせちゃってるのかな?
その時だった。
「大神殿より姫巫女様始め、大神官様御一行が
お見えになりました。」
広い部屋に侍従さんの声が響いた。
リオン様始め、私やシグウェルさん達全員が
立ち上がり一行を迎える。
ぎぃっ、と両開きの扉が大きく開くと、先頭には
薄いベールを何重にも被った白い巫女装束姿の
女の子が現れた。この人がカティヤ様か。
透けるように薄く白いベールは金糸で刺繍が
施されていて、その金色が陽の光にきらきらと
煌めいている。ベールが幾重にも重なって
いるせいでその表情が見えないのが残念だ。
うっすらと透けて見える、波打つ豊かな髪の色が
綺麗な金髪だということしかまだ分からない。
その女の子は優雅に室内に歩みを進め、その後ろに
大神官のおじいちゃんを始めとする神官さん一行が
続いて入ってきた。パタンと扉が閉められて、
部屋の中には神殿からの一行と私達だけになる。
大切な話をするからと、侍女さん達は人払いを
されていた。ぽそぽそと、カティヤ様らしき
女の子が傍らの大神官様に耳を寄せて何かを
話している。・・・なんだろう。
部屋の空気もなんだか張り詰めているような。
緊張して、思わず隣のリオン様の服の裾を
握ってしまい、それを見たリオン様が大丈夫だよと
くすりと笑った。
「・・・ええ、ええ、はい。大丈夫ですとも。
人払いはされておりますし、防音の魔法も
きちんとかかっております。安心しなされ。」
大神官のおじいちゃんがにこにこして頷く。
それを聞いて、今まで張り詰めていた女の子の
纏う空気がほっと緩んだのが分かった。
その子はそのまますいとその白くたおやかな両手で
自分のベールを上げた。
途端に私の目に飛び込んできたのは、リオン様や
大声殿下と同じ王家の人特有のサファイアの
ように美しい青い瞳と愛くるしい満面の微笑みだ。
「ああ、緊張した!姫巫女らしく振る舞うのは
本当に疲れて嫌ですわ!」
ベールも暑いんですのよー、と言ってパタパタと
両手で自分の顔をあおいでいる。
にこにこと微笑むその顔立ちは優しげで、
なんとなくリオン様に似ている。
その優しそうな顔を彩る髪の毛は大声殿下と同じ
輝くような金髪で、ウェーブがかった豊かな髪は
まるで金色の波のようだ。
「これ、急にくだけすぎだろうて。ユーリ様が
驚いておられる。自己紹介くらいなされい。」
大神官のおじいちゃんにたしなめられて、
あらあらそういえば、と朗らかに笑うその姿は
なんだかイリューディアさんを思い出した。
「ようやくお会いできて光栄の至りです。
わたくしは王都のイリューディア神様の大神殿で
姫巫女を務めさせていただいておりますカティヤと
申します。ユーリ様には召喚されてからこれまで、
幾度もこの国の助けとなっていただきまして
感謝の念に絶えません。どうかこれから先も、
偉大なるイリューディア神様の恵みをその御手から
分け与えてくだされば光栄でございます。」
キラキラのお人形さんみたいな金髪美少女が
私に向かって巫女装束のドレスの端を片方の手で
つまみ、もう片方の手を胸に当てて深々と
お辞儀をした。それに倣い、後ろの大神官始め
神官ご一行様もざっ、と揃って頭を下げる。
その光景に、緊張してしまって思わず固まって
しまいそうになるけど、怯んでいる場合じゃない。
「ユーリです。本日はお忙しい中、わざわざ
足を運んでいただいてありがとうございます。
あの・・・あまりかしこまらないで下さい。
そういうのが苦手なので・・・」
おずおずと言えば、カティヤ様がぱっと頭を
上げて微笑んだ。
「わたくしもです。かしこまった挨拶は苦手で
いつまで経っても慣れませんわ。幸いにも
ここは人払いがされ、防音も施されています。
お互い気兼ねなくお話いたしましょうね。」
その親しみやすい雰囲気にほっとして、
リオン様の服の裾を握っていた手から力が抜けた。
私を訪ねて来てくれる。そう決まって、奥の院は
慌ただしくその一行を迎える準備に追われた。
カティヤ様のほかにこの国で一番偉い大神官の
おじいちゃん、高位神官さんなど全部で15人ほど
来訪するらしい。
ちなみに大神官のおじいちゃんはこの世界に
来てから何度か会っていて、わりと親しい。
サンタクロースを痩せさせたみたいな
にこにこした白い髭のおじいちゃんだ。
「カティヤにきちんと会うのは3年ぶりかな?
色々な儀式で顔を合わせることはあっても
立場上気軽に声をかけることは出来ないし、
久しぶりに顔を見て話が出来るのは嬉しいね。」
リオン様もとても嬉しそうだ。
3年ぶり。・・・ちょうどリオン様が魔物の
怪我で目が見えなくなった頃だ。
もしかして最後に会ったのはお見舞いだったり
するのだろうか?それなら、元気になった
今のリオン様を見てもらえるのはとても嬉しい。
今回カティヤ様が来てくれるのは、私が急に
大きくなった原因をカティヤ様に見てもらえれば
何か分かるのではないかということらしい。
「あと、手紙には詳しく書いていなかったけど
イリューディア神の神託を新たに賜ったとか。
普通、神託は数年に一度だったりするんだけど
ユーリが先日王都に使った加護の力で、姫巫女の
力自体も高まったようなんだ。そのお礼も
したいって手紙にはあったよ。」
「カティヤ様、どんな方なのか楽しみです。
仲良くなれるといいですけど・・・」
確か歳は17歳って聞いた気がする。5歳から
神殿に入っているって話だから、そんな小さな
時から神殿に仕えているなんてきっとすごく
立派な人なんだろうなあ。
「緊張しなくても大丈夫。あの子はとても
明るくて話好きな優しい子だよ。きっとユーリも
仲良くなれるから。」
楽しみだね。と笑うリオン様に、私がきっかけで
カティヤ様に久しぶりに会う機会が出来て
良かったな、と思うとカティヤ様一行がここを
訪れるのが少し楽しみになった。
カティヤ様一行が訪れる当日。
迎えるこちら側には、参考までに話を聞くため
同席したいと魔導士院からシグウェルさんと
ユリウスさん、その他に2人の魔導士さんも
一緒にいた。
着席したまま雑談に興じるユリウスさんは
なんだかそわそわしているみたいだから
緊張してるのかな?
「カティヤ様か~。俺は遠くからしか見たこと
ないっすね。団長は?」
「俺は何度か話したことがあるが、精霊の声が
うっとおしくて話をよく覚えていない。」
「なんすかそれ!姫巫女と話す機会なんて
滅多にないのにそりゃないっすよ、
関心なさ過ぎでしょ⁉︎」
「仕方がないだろう、イリューディア神の加護が
強くて精霊の騒めきがひどいんだ。どうせ
当たり障りのない挨拶程度の会話だ」
「精霊がうるさいって、じゃあユーリ様は?」
確かに気になる。ちらりとこちらを見た
シグウェルさんは、ユリウスさんに冷たい
視線を向けた。
「お前は国王陛下の御前でもいつものような
軽口をたたいてはしゃげるか?」
「んなワケないっすよ、俺を何だと思ってるんすか」
「それと同じだ。ユーリの魔力は姫巫女よりも
イリューディア神の気配が濃い。その神威を
前にしてはしゃげる精霊がいるものか。
精霊達はユーリがその力を使って自分達を
使役するのをひたすらじっと待っているような
ものだな。だからユーリのそばにいると
逆に静かなものだ。」
そ、そんな感じなんだ。私はいるだけで精霊を
怖がらせちゃってるのかな?
その時だった。
「大神殿より姫巫女様始め、大神官様御一行が
お見えになりました。」
広い部屋に侍従さんの声が響いた。
リオン様始め、私やシグウェルさん達全員が
立ち上がり一行を迎える。
ぎぃっ、と両開きの扉が大きく開くと、先頭には
薄いベールを何重にも被った白い巫女装束姿の
女の子が現れた。この人がカティヤ様か。
透けるように薄く白いベールは金糸で刺繍が
施されていて、その金色が陽の光にきらきらと
煌めいている。ベールが幾重にも重なって
いるせいでその表情が見えないのが残念だ。
うっすらと透けて見える、波打つ豊かな髪の色が
綺麗な金髪だということしかまだ分からない。
その女の子は優雅に室内に歩みを進め、その後ろに
大神官のおじいちゃんを始めとする神官さん一行が
続いて入ってきた。パタンと扉が閉められて、
部屋の中には神殿からの一行と私達だけになる。
大切な話をするからと、侍女さん達は人払いを
されていた。ぽそぽそと、カティヤ様らしき
女の子が傍らの大神官様に耳を寄せて何かを
話している。・・・なんだろう。
部屋の空気もなんだか張り詰めているような。
緊張して、思わず隣のリオン様の服の裾を
握ってしまい、それを見たリオン様が大丈夫だよと
くすりと笑った。
「・・・ええ、ええ、はい。大丈夫ですとも。
人払いはされておりますし、防音の魔法も
きちんとかかっております。安心しなされ。」
大神官のおじいちゃんがにこにこして頷く。
それを聞いて、今まで張り詰めていた女の子の
纏う空気がほっと緩んだのが分かった。
その子はそのまますいとその白くたおやかな両手で
自分のベールを上げた。
途端に私の目に飛び込んできたのは、リオン様や
大声殿下と同じ王家の人特有のサファイアの
ように美しい青い瞳と愛くるしい満面の微笑みだ。
「ああ、緊張した!姫巫女らしく振る舞うのは
本当に疲れて嫌ですわ!」
ベールも暑いんですのよー、と言ってパタパタと
両手で自分の顔をあおいでいる。
にこにこと微笑むその顔立ちは優しげで、
なんとなくリオン様に似ている。
その優しそうな顔を彩る髪の毛は大声殿下と同じ
輝くような金髪で、ウェーブがかった豊かな髪は
まるで金色の波のようだ。
「これ、急にくだけすぎだろうて。ユーリ様が
驚いておられる。自己紹介くらいなされい。」
大神官のおじいちゃんにたしなめられて、
あらあらそういえば、と朗らかに笑うその姿は
なんだかイリューディアさんを思い出した。
「ようやくお会いできて光栄の至りです。
わたくしは王都のイリューディア神様の大神殿で
姫巫女を務めさせていただいておりますカティヤと
申します。ユーリ様には召喚されてからこれまで、
幾度もこの国の助けとなっていただきまして
感謝の念に絶えません。どうかこれから先も、
偉大なるイリューディア神様の恵みをその御手から
分け与えてくだされば光栄でございます。」
キラキラのお人形さんみたいな金髪美少女が
私に向かって巫女装束のドレスの端を片方の手で
つまみ、もう片方の手を胸に当てて深々と
お辞儀をした。それに倣い、後ろの大神官始め
神官ご一行様もざっ、と揃って頭を下げる。
その光景に、緊張してしまって思わず固まって
しまいそうになるけど、怯んでいる場合じゃない。
「ユーリです。本日はお忙しい中、わざわざ
足を運んでいただいてありがとうございます。
あの・・・あまりかしこまらないで下さい。
そういうのが苦手なので・・・」
おずおずと言えば、カティヤ様がぱっと頭を
上げて微笑んだ。
「わたくしもです。かしこまった挨拶は苦手で
いつまで経っても慣れませんわ。幸いにも
ここは人払いがされ、防音も施されています。
お互い気兼ねなくお話いたしましょうね。」
その親しみやすい雰囲気にほっとして、
リオン様の服の裾を握っていた手から力が抜けた。
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