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第五章 シグウェルさんと一緒
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「もう、もう勘弁してください~」
ずらりと並んだ色々なビンを目の前に
私は半泣きだ。
「まだまだ」
シグウェルさんはそんな私の前に
さらにトントントンッ、と
新たなビンと水差しを追加した。
ノイエ領から帰って来て数週間が経つ。
あれからマールの町に植えた
リンゴのことを聞いたけど、
どうやら順調に育っているらしい。
帰りに立ち寄った時に
新しく植えてきた、
イチゴやブドウの生育状況も
いいと聞いた。
リンゴの皮は飼料に混ぜて
鶏に与えたら大きくて立派な卵が
採れたらしいし、
私の力が役立っているなら何よりだ。
そう喜んでいたところに
シグウェルさんがやって来た。
ノイエ領でお菓子の出てくる籠を
作った時に話していた、
飲み物でも同じことができるのか
どうかを試したいという件だ。
断る理由もない。
喜んで協力すると言った結果、
この通り今私は泣きを見ている。
「シグウェルさんは物事の加減を
知らなさすぎます!」
「陶器にガラス瓶、革袋、木製の容器。
考えられる全ての入れ物で試して
みなければ、いざという時に
役に立たないだろう?」
私の抗議もお構いなしだ。
しかも、
「加護の力が働くなら例えば
極寒の北部でもその液体は
凍らないのか、蒸し暑い南部では
腐敗しないのかも気になる。
これらの入れ物は各地方へ送り
向こうの魔導士に観察してもらう分も
含んでいるからな、頼んだ」
そう言ってまた目の前の入れ物が
増えた。この人、一体どうやって
こんなに色々な容器を
集めて来たんだろう・・・。
魔導士院の中庭で呆然とする。
私が力を使って中身が満たされた瓶は
数人の魔導士さんが記録を
取りながら回収してるんだけど
手押しの荷車でもう何往復もしてる。
「ユーリ様、そろそろ10時の
おやつの時間っすけどどうです、
終わりましたか・・ってうわ!
また瓶が増えてる⁉︎」
様子を見にやって来たユリウスさんが
ぎょっとして辺りを見回した。
「えっ⁉︎なんでこんなに?
俺がユーリ様への依頼申請の書類で
書いた数より随分と多くないっすか⁉︎」
「あれでは全然足りない。
後でゼロを一つ付け足しておいた」
衝撃の事実をシグウェルさんは
簡単に言い放った。
ちょっと待って。
それってつまり・・・?
ヒエッ!と私の隣で青くなっている
ユリウスさんに恐る恐る尋ねる。
「ユリウスさん・・・元は一体
何個で申請したんですか・・・?」
「に、20個っす・・・」
てことは200⁉︎
私、200個も延々ビンや水差しに
加護を付け続けるってこと?
どうりでいくらやっても瓶が
減らないはずだ。
「ま、魔法バカ・・・」
思わず口にしてしまった。
でもそれを聞いたユリウスさんが
無駄っす、と首を横に振る。
「ユーリ様、そんなの今さらなので
悪口にも何にもならないっす。
むしろ団長には褒め言葉に聞こえてる
可能性すらありますから。
それよりも休憩するっすよ、
全部で200個も飲み物に加護を
付けるなんて先は長いし・・・」
200、と口にしたユリウスさんが
遠い目をした。
シグウェルさんは全く動じない。
「そんなに無理な話でもない。
すでに100近い容器に加護は
付けてあるから、残りは約半分。
このペースで行けば昼までには
充分終わる量だ。」
さっきまでは一つ一つの容器に
パン籠の時のようにおでこを
くっ付けては加護を与えていたけど
残りがあと100個もあると分かれば
話は別だ。
「・・・分かりました。おやつを
食べたら一気にやっちゃいますよ!
だからこの入れ物、水なのか
ワインなのかジュースなのか、
中に入るもの別に分けといて下さい!
まとめて何個かずつ加護を
付けられるのかやってみますっ‼︎」
半ばヤケクソで宣言した。
そうだ。私の部屋で初めて癒しの力を
試してみた時は何人もまとめて
体の不調を治せたじゃないか。
それを考えれば、豊穣の力も
同じ要領だ。
そういえばリンゴの苗木を育てた時も、
一度に30個に加護を与えられた。
あと100個ちょいの瓶があるとしたら
3、4回やればすぐに終わる。
オーケー。大丈夫だ、問題ない。
無理矢理自分のテンションを上げた。
よし。腹が減っては戦はできぬ。
まずはおやつだ。
「ユリウスさん、おやつ食べます!
おやつ下さい‼︎」
「ユーリ様って案外食い意地が
張ってるっすよね・・・」
失礼な。
なぜかこの体になってから
食べ物がおいしいから
仕方がないんだよ?
加護の力を使うのにカロリー消費を
してるのか何なのか分からないけど、
食べても食べても太らない
夢のような体なのだ。嬉しい。
「お疲れ様です、ユーリ様。
今日のおやつは生クリームが
たっぷり入ったロールケーキですよ。」
奥の院から付いてきてくれた
マリーさんが中庭の一角に
準備された休憩場所で出迎えてくれた。
シグウェルさんとテーブルについて、
さっそくおやつを食べ始めた私だけど
ユリウスさんは座らない。
もとより仕事中ってこともあるけど
例のノイエ領での夕食会後の
イチゴ事件以来、余程のことが
ない限りは私と一緒のテーブルは
囲まないことにしたらしい。
『リオン殿下に殺されたくないので!
いいんっす、俺はあの出来事を
一生の思い出として大切に
胸にしまって生きていきますから‼︎』
ユリウスさんは自分の胸の前で私が
かじってしまった指先を大事そうに
もう片方の手で包み込んで
そう宣言した。
女児にイチゴを食べさせたその指を
噛まれたのが一生の思い出です!って
うっすら頬を染めて宣言されると、
それはそれでちょっと気持ち悪い。
元の世界なら一歩間違えれば
通報案件だ。
変態のそしりもまぬがれない。
他にもっとましな思い出を
作った方がいいと思うなあ・・・。
ユリウスさんのメンタルが心配だ。
そう思いながらロールケーキを
もぐもぐしていたら、
2人の会話が耳に入ってきた。
「そう言えば団長、ご実家から
星の砂が届いたみたいっすよ。
団長の住まいに届けたって連絡を
さっき受けたっす。」
「やっと来たか。なんで魔導士院に
送らないんだ?家まで取りに行くのが
面倒なんだが」
「そりゃだって、一応危険物扱いだし。
万が一、ここで発火したらアンタ
魔導士団長改め王宮放火犯ですよ?
その点、団長んちなら結界もバッチリ
張られてるし危険な実験するなら
その結界内でやれって言うご実家から
の意思表示だと思うんすけど。」
なんだか物騒な話をしている。
発火しそうな危険物質を取り寄せて
何かの実験をしようとしているって
ことなのかな?
・・・それにしても。
「星の砂?」
妙にロマンチックな響きだよね。
沖縄の砂浜とかにある、
死んだサンゴ礁が星の形をした
砂みたいになったのとか
そう言わなかったっけ。
私の呟きにユリウスさんが
説明してくれる。
「この国の東部にある大火山の
山頂近くから取れる熱砂のことっす。
高温で乾燥した、ガラス質混じりの
砂なんですけどその輝きから
星の砂って言われてるっす」
へ~、私の世界だと海岸の砂の
イメージだけど火山から取れる砂かぁ。
真逆でなんだか面白い。
「発火するような話をしてましたけど、
火がつくんですか?」
好奇心のままに尋ねてみたら
シグウェルさんが頷いた。
「良質な星の砂は僅かな摩擦でも
発火することがある。
条件が揃えば粉塵爆発も起こすから
一応危険物質として保管と使用は
許可を受けた者だけが扱えるんだ。」
「そんな危険な物を取り寄せて
何の実験をしようとしてるんですか?」
「イリヤ殿下の即位式典で
打ち上げる新しい花火の開発だ。
その砂を火薬に混ぜて、更に魔法を
上掛けしたら派手な色と特殊な効果が
つくはずなんだが、その実験には
ある程度の量の星の砂がいる。」
「でも星の砂って、大火山の
火口近くに取りに行かないと
いいやつはないから集めるのが
結構大変なんすよねぇ。
今回団長の実家が送ってくれたのも
そんなに量はなさそうですから、
追加でまた送ってもらわないと。」
どーせ実験でバンバン消費
しちゃうんでしょう?と
ユリウスさんはため息をついている。
うん、シグウェルさんなら材料の
希少性とかお構いなしに
自分の目的のためなら遠慮なく
なんでも使い倒しそう。
・・・魔法の材料じゃないけど、
今まさに私が瓶への加護付けで
使い倒されているし。
そう思っていたら、正面に座る
シグウェルさんが何かに
気付いたように私を見た。
ん?何かな?
「・・・そうか。ユーリ、もしかして
君なら容器に入っている星の砂を
増やす事ができるんじゃないか?」
豊穣の力を使って。
そう言ったシグウェルさんは
試す価値はあるな、と立ち上がった。
「リオン殿下に許可をいただこう。
王都へ外出するための申請書を
今出すから、ユーリはオレの家に来て
砂に加護をつけてくれないか」
話しながら書類を一つ書き上げて、
指をはじくとそれは消えた。
どうやら魔法で直接リオン様の
執務室へ転送したらしい。
「えっ、こんな急に大丈夫ですか⁉︎
護衛とか・・・」
「そんなものそこについて来ている
侍女と騎士を連れていけば充分だ。
殿下からの返事が来るまでは
残りの瓶へ加護を付けながら
待っていればちょうどいいな。」
「あの殿下が、危険物満載な
団長の家にユーリ様を連れてくのを
許可してくれるっすかね?」
ユリウスさんは半信半疑だ。
「バカめ。許可しなければオレが
どうするかなど、殿下はよく
分かっているはずだ。
無断でユーリを王都へ連れ出される
よりは許可を求めただけマシだと
思うだろうよ。」
あ、許可が降りようと降りまいと
結局は私を連れて行くつもりなのね。
まあシグウェルさんの性格上
そんな感じはする。
確かに、勝手に私をどこかに
連れ出されるよりかはきちんと
許可を出して私がどこにいるのか
居場所を把握しておく方が
マシかも知れないけど・・・。
王都かぁ。
そういえばいまだに街に
降りたことがない。
ノイエ領に行く時に、馬車の中から
覗いてみたくらいだ。
あの時はよくテレビや雑誌で見る
ヨーロッパ風の街並みで
人の往来も多くて、
活気がありそうだなとは思った。
実際歩いてみたら
どんな感じなんだろう。
ちょっとだけソワソワしながら、
リオン様が許可してくれるのを
私は心の中で願った。
ずらりと並んだ色々なビンを目の前に
私は半泣きだ。
「まだまだ」
シグウェルさんはそんな私の前に
さらにトントントンッ、と
新たなビンと水差しを追加した。
ノイエ領から帰って来て数週間が経つ。
あれからマールの町に植えた
リンゴのことを聞いたけど、
どうやら順調に育っているらしい。
帰りに立ち寄った時に
新しく植えてきた、
イチゴやブドウの生育状況も
いいと聞いた。
リンゴの皮は飼料に混ぜて
鶏に与えたら大きくて立派な卵が
採れたらしいし、
私の力が役立っているなら何よりだ。
そう喜んでいたところに
シグウェルさんがやって来た。
ノイエ領でお菓子の出てくる籠を
作った時に話していた、
飲み物でも同じことができるのか
どうかを試したいという件だ。
断る理由もない。
喜んで協力すると言った結果、
この通り今私は泣きを見ている。
「シグウェルさんは物事の加減を
知らなさすぎます!」
「陶器にガラス瓶、革袋、木製の容器。
考えられる全ての入れ物で試して
みなければ、いざという時に
役に立たないだろう?」
私の抗議もお構いなしだ。
しかも、
「加護の力が働くなら例えば
極寒の北部でもその液体は
凍らないのか、蒸し暑い南部では
腐敗しないのかも気になる。
これらの入れ物は各地方へ送り
向こうの魔導士に観察してもらう分も
含んでいるからな、頼んだ」
そう言ってまた目の前の入れ物が
増えた。この人、一体どうやって
こんなに色々な容器を
集めて来たんだろう・・・。
魔導士院の中庭で呆然とする。
私が力を使って中身が満たされた瓶は
数人の魔導士さんが記録を
取りながら回収してるんだけど
手押しの荷車でもう何往復もしてる。
「ユーリ様、そろそろ10時の
おやつの時間っすけどどうです、
終わりましたか・・ってうわ!
また瓶が増えてる⁉︎」
様子を見にやって来たユリウスさんが
ぎょっとして辺りを見回した。
「えっ⁉︎なんでこんなに?
俺がユーリ様への依頼申請の書類で
書いた数より随分と多くないっすか⁉︎」
「あれでは全然足りない。
後でゼロを一つ付け足しておいた」
衝撃の事実をシグウェルさんは
簡単に言い放った。
ちょっと待って。
それってつまり・・・?
ヒエッ!と私の隣で青くなっている
ユリウスさんに恐る恐る尋ねる。
「ユリウスさん・・・元は一体
何個で申請したんですか・・・?」
「に、20個っす・・・」
てことは200⁉︎
私、200個も延々ビンや水差しに
加護を付け続けるってこと?
どうりでいくらやっても瓶が
減らないはずだ。
「ま、魔法バカ・・・」
思わず口にしてしまった。
でもそれを聞いたユリウスさんが
無駄っす、と首を横に振る。
「ユーリ様、そんなの今さらなので
悪口にも何にもならないっす。
むしろ団長には褒め言葉に聞こえてる
可能性すらありますから。
それよりも休憩するっすよ、
全部で200個も飲み物に加護を
付けるなんて先は長いし・・・」
200、と口にしたユリウスさんが
遠い目をした。
シグウェルさんは全く動じない。
「そんなに無理な話でもない。
すでに100近い容器に加護は
付けてあるから、残りは約半分。
このペースで行けば昼までには
充分終わる量だ。」
さっきまでは一つ一つの容器に
パン籠の時のようにおでこを
くっ付けては加護を与えていたけど
残りがあと100個もあると分かれば
話は別だ。
「・・・分かりました。おやつを
食べたら一気にやっちゃいますよ!
だからこの入れ物、水なのか
ワインなのかジュースなのか、
中に入るもの別に分けといて下さい!
まとめて何個かずつ加護を
付けられるのかやってみますっ‼︎」
半ばヤケクソで宣言した。
そうだ。私の部屋で初めて癒しの力を
試してみた時は何人もまとめて
体の不調を治せたじゃないか。
それを考えれば、豊穣の力も
同じ要領だ。
そういえばリンゴの苗木を育てた時も、
一度に30個に加護を与えられた。
あと100個ちょいの瓶があるとしたら
3、4回やればすぐに終わる。
オーケー。大丈夫だ、問題ない。
無理矢理自分のテンションを上げた。
よし。腹が減っては戦はできぬ。
まずはおやつだ。
「ユリウスさん、おやつ食べます!
おやつ下さい‼︎」
「ユーリ様って案外食い意地が
張ってるっすよね・・・」
失礼な。
なぜかこの体になってから
食べ物がおいしいから
仕方がないんだよ?
加護の力を使うのにカロリー消費を
してるのか何なのか分からないけど、
食べても食べても太らない
夢のような体なのだ。嬉しい。
「お疲れ様です、ユーリ様。
今日のおやつは生クリームが
たっぷり入ったロールケーキですよ。」
奥の院から付いてきてくれた
マリーさんが中庭の一角に
準備された休憩場所で出迎えてくれた。
シグウェルさんとテーブルについて、
さっそくおやつを食べ始めた私だけど
ユリウスさんは座らない。
もとより仕事中ってこともあるけど
例のノイエ領での夕食会後の
イチゴ事件以来、余程のことが
ない限りは私と一緒のテーブルは
囲まないことにしたらしい。
『リオン殿下に殺されたくないので!
いいんっす、俺はあの出来事を
一生の思い出として大切に
胸にしまって生きていきますから‼︎』
ユリウスさんは自分の胸の前で私が
かじってしまった指先を大事そうに
もう片方の手で包み込んで
そう宣言した。
女児にイチゴを食べさせたその指を
噛まれたのが一生の思い出です!って
うっすら頬を染めて宣言されると、
それはそれでちょっと気持ち悪い。
元の世界なら一歩間違えれば
通報案件だ。
変態のそしりもまぬがれない。
他にもっとましな思い出を
作った方がいいと思うなあ・・・。
ユリウスさんのメンタルが心配だ。
そう思いながらロールケーキを
もぐもぐしていたら、
2人の会話が耳に入ってきた。
「そう言えば団長、ご実家から
星の砂が届いたみたいっすよ。
団長の住まいに届けたって連絡を
さっき受けたっす。」
「やっと来たか。なんで魔導士院に
送らないんだ?家まで取りに行くのが
面倒なんだが」
「そりゃだって、一応危険物扱いだし。
万が一、ここで発火したらアンタ
魔導士団長改め王宮放火犯ですよ?
その点、団長んちなら結界もバッチリ
張られてるし危険な実験するなら
その結界内でやれって言うご実家から
の意思表示だと思うんすけど。」
なんだか物騒な話をしている。
発火しそうな危険物質を取り寄せて
何かの実験をしようとしているって
ことなのかな?
・・・それにしても。
「星の砂?」
妙にロマンチックな響きだよね。
沖縄の砂浜とかにある、
死んだサンゴ礁が星の形をした
砂みたいになったのとか
そう言わなかったっけ。
私の呟きにユリウスさんが
説明してくれる。
「この国の東部にある大火山の
山頂近くから取れる熱砂のことっす。
高温で乾燥した、ガラス質混じりの
砂なんですけどその輝きから
星の砂って言われてるっす」
へ~、私の世界だと海岸の砂の
イメージだけど火山から取れる砂かぁ。
真逆でなんだか面白い。
「発火するような話をしてましたけど、
火がつくんですか?」
好奇心のままに尋ねてみたら
シグウェルさんが頷いた。
「良質な星の砂は僅かな摩擦でも
発火することがある。
条件が揃えば粉塵爆発も起こすから
一応危険物質として保管と使用は
許可を受けた者だけが扱えるんだ。」
「そんな危険な物を取り寄せて
何の実験をしようとしてるんですか?」
「イリヤ殿下の即位式典で
打ち上げる新しい花火の開発だ。
その砂を火薬に混ぜて、更に魔法を
上掛けしたら派手な色と特殊な効果が
つくはずなんだが、その実験には
ある程度の量の星の砂がいる。」
「でも星の砂って、大火山の
火口近くに取りに行かないと
いいやつはないから集めるのが
結構大変なんすよねぇ。
今回団長の実家が送ってくれたのも
そんなに量はなさそうですから、
追加でまた送ってもらわないと。」
どーせ実験でバンバン消費
しちゃうんでしょう?と
ユリウスさんはため息をついている。
うん、シグウェルさんなら材料の
希少性とかお構いなしに
自分の目的のためなら遠慮なく
なんでも使い倒しそう。
・・・魔法の材料じゃないけど、
今まさに私が瓶への加護付けで
使い倒されているし。
そう思っていたら、正面に座る
シグウェルさんが何かに
気付いたように私を見た。
ん?何かな?
「・・・そうか。ユーリ、もしかして
君なら容器に入っている星の砂を
増やす事ができるんじゃないか?」
豊穣の力を使って。
そう言ったシグウェルさんは
試す価値はあるな、と立ち上がった。
「リオン殿下に許可をいただこう。
王都へ外出するための申請書を
今出すから、ユーリはオレの家に来て
砂に加護をつけてくれないか」
話しながら書類を一つ書き上げて、
指をはじくとそれは消えた。
どうやら魔法で直接リオン様の
執務室へ転送したらしい。
「えっ、こんな急に大丈夫ですか⁉︎
護衛とか・・・」
「そんなものそこについて来ている
侍女と騎士を連れていけば充分だ。
殿下からの返事が来るまでは
残りの瓶へ加護を付けながら
待っていればちょうどいいな。」
「あの殿下が、危険物満載な
団長の家にユーリ様を連れてくのを
許可してくれるっすかね?」
ユリウスさんは半信半疑だ。
「バカめ。許可しなければオレが
どうするかなど、殿下はよく
分かっているはずだ。
無断でユーリを王都へ連れ出される
よりは許可を求めただけマシだと
思うだろうよ。」
あ、許可が降りようと降りまいと
結局は私を連れて行くつもりなのね。
まあシグウェルさんの性格上
そんな感じはする。
確かに、勝手に私をどこかに
連れ出されるよりかはきちんと
許可を出して私がどこにいるのか
居場所を把握しておく方が
マシかも知れないけど・・・。
王都かぁ。
そういえばいまだに街に
降りたことがない。
ノイエ領に行く時に、馬車の中から
覗いてみたくらいだ。
あの時はよくテレビや雑誌で見る
ヨーロッパ風の街並みで
人の往来も多くて、
活気がありそうだなとは思った。
実際歩いてみたら
どんな感じなんだろう。
ちょっとだけソワソワしながら、
リオン様が許可してくれるのを
私は心の中で願った。
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