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第七章 地球<アースター>編

疾走

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 「行くわよ!」

 瓦解した住宅街をキャンピングカーが疾走する。

 周りに魔族はいない。

 報告によればフラミリアとアリサ、ユナが戦っていたというのだから、その周りに集まれないのは無理もないだろう。

 とはいえ、この戦力では心許ない。

 誰かしらの援護は必要だ。

 というよりも、最短で行くならこれが一番早い。

 「ある程度まで近づいて、私の能力で一気にあの戦艦まで行く!」

 白川穂乃果の能力「重力を操る」能力は対象を無重力で浮かせることも可能。

 しかしながら浮かせられるのは、修行を積んでも自身よりも大きいものは魔力を使用して五分ほど。

 「ブースターの役割を持ってる人は、絶対に戦闘に出ないでね。」

 「私はは役に立たなそうだから押さえ込むね!」

 「アンタのことよ!」

 「うえー!?」

 上本怜は自身が役に立つとは微塵も思わなかったそう。
 

 現在、山梨付近を走行中。

 ナビは機能しているが、実際は意味がない。

 瓦礫が邪魔でうまく進めなかったりしている。

 「ここで魔力を使って突破するのか!?」

 「いや!ここでは使わない方がいい!」

 「その声は!陸?」

 脳内に語りかけるように幼馴染の声が聞こえる。

 その瞬間、瓦礫だらけの道路がきれいさっぱり無くなった。

 「瓦礫は任せろ。道は、俺たちが作る!」

 未だ無事な高いところはいくらでもある。

 そこにいるのは、アーシャとリサだった。

 「スナイパーは魔族を狙うのが仕事ではあるのですが。」

 「最優先は大原をたどり着かせる、だろ?綺麗さっぱりしていくぜ。指示は頼んだ、秀才君。」

 「任せてください。俺が導きます。」

 どんどんと走りやすいようになっている。

 「普通は地面ごと吹っ飛ばすはずなのに、凄い魔力操作。」

 「けどそれを指示している陸も凄い。けど、あれは頭の良さだけで成り立つもの?」

 思考していると、側面から魔力弾が向かって来た。

 それを傘で耐え切った。

 「まぁばかすか撃ってたらバレるわな。これあれか?俺を置いて先に行けってやつか?」

 ゾロゾロと軍隊として魔族がやってくる。

 ゴブリン、ウルフ、魔術師、ガーゴイル。

 「は?多くね?」

 「この瓦礫をどかしてくれませんか!陸!」

 「そのまま走って。」

 「はあ!?死ねってこと?」

 「いいから」

 「全く!結構清楚で積み上げて来たのに!性格が変わりそうよ!」

 「どっちかって言うと、悪女じゃ…」

 「無駄口叩くなぁ!」

 アクセル全開。

 フルスピードで軍隊に突っ込む。

 あまりの事に注目は車に向けられた。

 故に、閃光と雷光の速さに気づくものはいなかった。

 道がある場所だけが開けた。

 残りが追っては来ているが、相当な援軍が来てくれたらしい。

 「このまま進め!俺の部隊が前線にいる!
 なんとしてもこいつらは五体満足で行かせる!」

 「エノス団長の言うとおりだ!この戦争を終わらせるにはそれしかない!雑魚に構うな!一気に行くぞ!」

 龍也とエノスがキャンピングカーにしがみついている。

 後方からは魔力弾が打ち付けられている。

 傘で守ったり、相殺などをしながら前に進む。

 空のガーゴイルはスナイパーに撃ち落とされる。

 「正面に敵影!同じように…!」
 「待て!」

 真正面にいる者たちは、先ほどの一点突破を学んだようだ。

 風の土の魔力を含んだ反発性の高い壁を生成していた。

 「なら、吸収する!」

 龍也の剣に壁に使用された魔力が集まってくる。

 それと同時に壁はサラサラと無くなっていく。

 その背後には、準備万端と言わんばかりのゴブリン部隊が攻め込もうとしていた。

 「多勢に無勢じゃないか!」

 後ろからは先ほど突っ込んだ時の残党が迫ってくる。

 挟まれた。

 戦力差と作戦の差が出ている。

 魔力をフルに使って突破してもその先がない。

 「まだだ。」

 横からの襲撃。

 ゴブリン達は体勢を崩した。

 「イノス!?」

 「それだけだと思うか?」

 駆けつけたのは風の世界で戦った仲間たち。

 ゴブリン部隊を撃破していく。

 「名前なんざ後で聞いてやらあ!先に行け!」

 「イノスさんが先陣をきれば良いかと。」

 ガラムとラムズを中心にゴブリン部隊を押さえ込んでいる。

 アクセルを踏もうとした瞬間、遠吠えが響きわたる。

 「ウルフの鳴き声!?」

 「用意周到…いや学んでるな。」

 「ゴブリュスってやつか。」

 なら統率が取られていると仮定するべきだ。

 このまま進んでもどうにもならないかもしれない。

 「…大丈夫です。良い味方が来てますよ。」

 「は?」

 一瞬、たった一瞬で、戦力差とかそんなものがなくなっていた。

 
 「よお!少しの間だけだが、お前たちに最後のレクチャーでもしてやろうか?」

 「待たせた。尻拭いは任せてくれ。」

 エオスとレグルスを筆頭に百の軍隊が来てくれた。

 「レ、レグルス様!?本当に…そちらに?」

 「ああ、こんな戦争をするやつと一緒になんかやれるか。それよりも、自分の心配をしたらどうだ?ゴブリュス。」

 「!なるほど…貴方様は…。」

 側面から何千という軍隊が雪崩れ込み、ウルフ部隊と交戦。

 そこにはもう一人のレグルスが…。

 「分身でわざわざ分けたのですね…全く魔力の差がない。いやむしろ片方が小さすぎる…」

 「そりゃあそうだろう。ダミーにそんな魔力をかけられるか。」

 側面から攻めてきた軍隊にいるレグルスは本物だ。

 ゴブリュスに注目を引かせるために少ない魔力で分身を作成した。

 「度肝は抜かれましたが、戦力差を考えてみては?」

 「戦力差?あるのか?」

 「この戦争においては質より量の方が良いのですよ。数は、戦略に幅を持たせます。」

 「そうだな。だが、数が少なくても出来ることはある。どれほど数が多くとも、幅の広い策の中から最適解を選ぶことが出来なければ、戦に勝つことすら難しい。我々にはこの戦力で策などない。故に、真っ直ぐ!目標に向けて!可能性を届かせるのだ!」

 「正気じゃない…。どれほどの犠牲が…。」

 「なら最初から戦争に加担するな!戦争など、犠牲以外に意味を持たん!」

 「!」

 「迷ったな。」

 「無垢の極み 五の剣、封殺陣・業。」

 無垢の極み 五の剣は円内にいる対象一人に対して、水と風を合わせて相手の魔力を封殺する技。

 イノスはゴブリュスに一瞬の隙をつき、剣を振り抜き気絶させた。

 「数がいても、指揮するものがいなければ有象無象。」

 この場にいるものにレグルスは向き直る。

 「まだ続けるか?このくだらない戦いを。」

 この場にいるものたちは全員、レグルスの圧に怖気付いている。

 分身でこの圧ならば本物はどれほどのものか。

 「今だ!進め!」

 「了解!乗り込むなら勝手に乗り込んでください!」

 キャンピングカーは真っ直ぐに進む。

 もうすぐで無重力空間で戦艦に向かえる距離に入る。

 周りではレグルス部隊と風の世界の人たちがキャンピングカーの道を作るように、ついてきながら戦っている。

 ファングとはレグルスが相手取っている。

 ならば最大の脅威は…。

 「この私が君たちの相手をしよう。しかし、もう終わったかな。」

 惨劇の愚者は未だ健在。

 「支配」カリス・マーガトン。

 この場にいる意識のあるものは全員支配された。

 キャンピングカーは主人を失い、カリスの元へと真っ直ぐ向かう。

 「終わりだ。」

 キャンピングカーに向けて魔力弾を放つ。

 それを、防ぐ者がいた。

 「よお、また会ったな。」

 「何故支配されていないのかな。エノス団長?」

 「気を操る能力なら、気を張り続けたら行けたってわけよ。」

 「能力は能力で打ち消す。なるほど、ならば戦おうか。私が支配した者たちと。」

 そう。今この場に支配から逃れたものは、気絶しているものと、エノス団長のみ。

 戦力を集めたのはカリスの力を最大限に引き出すため。

 言うなれば、エノス団長 対 この場にいるものたちの戦い。

 「さあ、せいぜい楽しむといい。エノス団長。」

 「やばすぎるな。これは。」

 味方は誰もいなくなった。

 
 

 
 
 
 
 
 
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みんなの感想(1件)

campanella
2022.02.12 campanella

いやぁ、とても面白い!
作品の参考にします!
私の拙著もどうぞお読みください。
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七瀬界
2022.02.12 七瀬界

 お読み頂いてありがとうございます。
 そちらの方も拝読したいと思います。

解除

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