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第七章 地球<アースター>編

???

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 謎の少年は構えもせずにただ立っている。

 だが、攻められない。

 能力によるものか、得体の知れなさか。

 どちらにせよ様子見は必須。

 それでも、殺す気で放つ。

 「ブラックレイ」

 黒い光線。

 鞭のようにしなやかに少年に向かう。

 止められる。

 当たり前のように、ただ立ったまま止める。

 「それぐらいはするか。」

 能力は予想できる。

 停止系の能力だ。おそらく魔力を止めるみたいなものだろう。

 …そんな知り合いはいない。

 なら奴の方が知っていそうだが…。

 「いや、今はいいか。」

 心気で近づく。

 剣を抜き首元へ。

 これも防がれる。

 心気に対してノータイムでの対応をするに、心気を使う事が分かった。

 「攻撃、見えてますか?」

 打撃。三発入った。

 速すぎる。まるで時間が飛んだようだ。

 内臓がズタズタだ。

 間違いない、こいつはどんな手を使ってもいい相手だ。

 「格上相手は魔族だけだと思ったが、ここにもいたとはな。」

 大原は黒い剣を取り出した。

 闇の魔力とは無縁。

 だが、闇以外にも黒い理由はいくらでもある。

 「俺は一人で戦う時が多かったからな。ある人に作って貰ったこの剣の名は、「孤高」。」

 その名の通り、シンプル。

 一人で戦う時に全てのステータスが上昇する。

 「闇の滝カスケード!」

 闇が滝のように落ちてくる。

 それも囲むように。

 大原将希をも狙ったその闇は、溜まり覆い尽くす。

 それが止まる。

 予備動作はない。直接狙った滝も彼を避けるように落ちていく。

 ただ彼を見て思った違和感があった。

 その答えはすぐに分かるのだが。

 「お前、魔力操作をしていないな。能力によって攻撃や魔力を受け流している。まさか、俺の攻撃も届かないとはな。」

 「そうですね。僕の力は最強らしいので。」

 「最強の能力か…。時を操る能力よりも上なのか。」

 「…そうですね。貴方だけなら教えてもいいでしょう。僕の能力は…」

 「?」

 彼の違和感の答えまでは聞こえた。

 そこからの会話は何も聞こえなくなった。

 口は動いている。

 どういう原理だろうか?

 「そ、そんな能力が、あっていいのか?お前がその気になれば、この世界を支配することもできるし、全ての人類を殺すことも出来る能力だ。」

 「安心して下さい。今回は俺が勝つんじゃなくて、この人を勝たせるために来たので。」

 「…そうかい。なら邪魔はするってことだな。」

 大原は大原に向かっていく。

 「ええ、ただもういらなそうですけど。」

 見切られた。

 攻撃が届かない。

 心気の使い方の理解が早い。

 「たった一秒の心気の見極め、それでは戦いにもならない。なら、必殺の一撃を防ぐために使う。必殺の一撃を与えるために使う。その使い方が今の俺に出来ることだよな!」

 「正解です。」

 魔力弾を向かわせながらゆっくりと正答を言う。

 「だがその方法では一人では俺に勝てないぞ。」

 「申し訳ないけど、俺とお前は違う。一人で強いのはお前だ。誇らしくも思う。俺は、あるもの全て使って勝つ。一人では間違いなく勝てないからな。俺は、お前みたいに強くないからさ。」

 「…ああ、知っているさ。お前は俺に無いものを持っているからな。」

 時間遡行で近づく。

 攻撃は届かない。

 「だから、僕を使うんですね。」

 「頼む。防御は任せた。」

 「…反則だろう…。まだ奴に攻撃に回ってくれた方がマシなものを。」

 無垢の極み 斬

 初めてかすり傷を与えた。

 剣を振る速度が速い。

 なるほど、奴はあの時間で俺の力をインプットさせたのか。

 「因果の眼。彼が経験値を自身のものにするのは、戦いよりも見ること。かの大野将希もそうだったようですしね。」

 「ちぃ!なら、全て吹き飛ばしてやる!」

 闇が全て孤高の剣先に集まって行く。

 「あれは防ぐのは無理ですね。純粋な闇は僕の能力でも難しい。ですが、貴方なら出来るはずです。同じ条件なら、負けることは無いはずです。」 

 彼は俺に魔力を分けてくれた。

 「君が技を放てば勝てるのに?」

 少し驚いた表情をしていたがすぐにこう返した。

 「邪魔をしてもいいならそれでも。」

 「いや、ありがとう。これなら、俺は対等になれる!」

 孤高が振り下ろされる。

 「無限闇夜!」

 一点に集中された闇が、全てを破壊し尽くす。

 「そんな強い技俺は持ってねえよ。けど、やる。闇を晴らさないとなあ!」

 風をベースに、土で固め、水でいなし、火と雷は攻撃へ。

 全属性砲撃フルエレメンタルバースト

 それを超えるものでないといけない。

 彼には闇があった。

 どうしても拭いきれない闇があった。

 それでも、照らしてくれた光が彼を形成し続ける。

 後に名をつけるとしたら、夜天・陽光。

 光と闇が拮抗する。

 技のスペックは闇が上手。

 闇は全てを覆い尽くすように、質量を叩きつけた。

 これで終わりなら、俺は全力を出す事はない。

 「だああああああ!!」

 深い闇の中でも、光り輝く時がある。

 知っているさ。

 それを救うために頑張っていたはずだ。

 だが、俺に希望はなかった。

 こうまで輝く光を、俺は忘れてしまったのだ。

 光が闇を祓うために向かって来る。

 陽の光のように明るい光だ。

 この暖かさを拒むことが出来ようか。

 「届けええええええええ!!!!」

 光の剣は大原の腹部を突き刺した。

 勢い余って反転結界をも破壊した。

 地面に落ちる。

 魔力は命を維持するくらいしか残っていない。

 それはあちらも同じことだ。

 「ボロボロだな、俺たち。」

 「ああ。だが、スッキリした。故にまだ終わらん。」

 「そうだな。後一撃。全て終わるな」

 フラフラだ。

 歩く力が無駄。立つ力も無駄だ。考えることは無い。

 それら全ての力を魔力に回す。

 つるぎをかまえる。

 しこうはまえにでるせんたくしいがいなし。

 だがおもしろいことがおこった。

 わざがおなじだった。

 ちをける。

 つるぎをまえにだしながらさけぶ。

 「秘突!!」

 彼らの技に差は無かった。

 ただその技の意味が「勝つ」か「殺す」かの違いだけだった。

 両者の剣は届かなかった。

 だが勝敗は決した。

 「やっぱ…未来の自分に勝つのは無理だなぁ。」

 身体は1ミリも動かない。

 思考はなんとか持たせているだけ。

 「ふざけるな。俺の剣を弾き飛ばしておいて…」

 あの時、俺は全ての魔力を脚に付与していた。

 瞬発力で終わらせようとした。

 奴は違った。

 腕に魔力を注いでいた。

 そして、魔力の差で俺の剣を吹き飛ばし、最後の攻撃をする前に俺が勢いのまま通り過ぎた。

 事実上の敗北だ。

 後一撃与える元気があれば確実に負けていた。

 「あの技覚えていたんだ。」

 「ああ、最初に俺が覚えた技。同じだったとはな。」

 「はは、笑わせんなよ。意識を保つのがキツくなるだろうが…」

 大原将希は気を失った。

 この状態で何もできる事はない。

 さて、彼と対峙しようとするか。

 「その人、生かしていいですよね。」

 「ああ。俺は少し休む。お前は俺を殺すことが目的じゃあないらしいからな。」

 魔力を大原に注いでいく。

 すぐに起き上がる事はないが、その間に気になっていた事を話すとしよう。

 「俺はタイムズと共にしているからだろ?君の能力を教えてくれたのは。」

 「そうですね。」

 「君は何者だ?」

 「…分かっているでしょうけど、細かいところは…どうなんでしょう?」

 「問題ない。私たちもこの場には用はないからな。」

 宙に漂うタイムズがそう告げる。

 「繋がったみたいですね。」

 「ああ、ご苦労だった。後は私達の頑張り次第だな。」

 「なんだよ、訳がわからん。あとで説明してもらうぞ。」

 「ああ。それ話せ。私にとってはそちらの方が重要だ。」

 「分かりました。では、僕の名から。僕の名前は…」
 







 タイムズと大原は魔王軍の戦艦に戻っていく。

 「…この先はある地点まで確定しているのか。」

 「私達が別の動きをすれば、違う未来になるがな。」

 「それはお前も、彼らの頑張りが無駄になる。」

 「だな。最後にリザーグに挨拶してから我々はこの場を後にしよう。」

 「はあ。せめて一日は空けてくれよ?」

 「貴様はあの大原のように死をも恐れぬようになってから言うのだな。気を確かに持てる魔力は残して負けるなどと。」

 「…ここまで来て説教かよ…」

 ここから、この戦局は一変する。

 決着までの道筋が、形成される。

 しかし、来るまでの間の戦局は、地獄のようであった…。

 「クソッタレ!上からバンバン撃ちやがって!」

 富士山頂を目指すエノス団長たちは、戦艦の砲撃によって、分断されていた。

 学校前では、中学生部隊「躍動」が踏ん張ってくれている。

 そしてアリサ達は、フラミリアと戦っていた。

 「あら?へぇ、面白い事になりそう。それに、この戦いはあまり意味がないようね。」

 「そうか?アタシはアンタの攻撃が見えてきたがなあ!」

 それは大原の元に彼が来るまでの話。

 そして、次の段階までの話。



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