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第七章 地球<アースター>編

それぞれの休暇

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 六月十八日。

 今日は休みを設けた。

 だが学校は休みではない。

 今度の土日のどちらかは休むことに当てて貰おうと思う。

 学校での授業は面白みがない。

 強いていうなら体育と歴史が面白いくらいだ。

 体育は体や魔力を使えて面白い。

 けれど歴史は疑ってかかることが多くて面白い。

 歴史担当の先生は佐野先生だ。

 佐野先生は前に、歴史は嘘だらけと言っていた。

 それはどうかは分からないが疑ってかかったり、他の世界の人からその世界の歴史を語ってもらったりしている。

 他の世界と違うところは、神々の反逆ラグナロクの内容がないことだ。

 人類創世記の話は載っているのに、ラグナロクに関して記述がない。

 他の世界でも多くは載ってはいないが、人類創世が説明された後に、神々の反逆ラグナロクがあり、今の世界となったと記述されている。

 今日という日をどう過ごすかだ。

 せっかく放課後が暇になったのだ、何が暇を潰せるようなことをしたい。

 「精神世界で修行でもいいんだぞ?」

 中の元魔王は置いておいて、まだポケモンXが終わっていない。

 それをやるというのも一つの案だが、どこかに遊びにいくというのもいい。

 だが…ゲーセンは面白いか?やるゲームなくない?UFOキャッチャー取れないし。

 公園はもはや遊べるのか遊べないのか分からない。

 キャッチボールくらいはしたいものだ。

 何かを食べにいくというのもいい。

 悩みに悩んで得た結論は、家に帰ってきてしまったということだ。

 道中店やらショッピングモールの分かれ道などあったが、スムーズに家に帰ってきてしまった。

 家でゆっくりするということが無意識に体が求めていたのかもしれない。

 まぁ休みなのだ。無理にどこかに行く必要もないだろう。ゆっくりしよう。

 「ただいま。」

 家の中に入ると母さんと真凜が出かける準備をしていた。

 「おかえり、これから買い物に行くけど行く?」

 「どこの?」

 「イ○ン」

 「あー行こうかな。」

 行き場所が決まったのですぐに車に乗り込む。

 「制服のままで行くの?」

 「親が一緒なら大丈夫でしょ。」

 それもそうかと車を走らせる。

 たどり着くまでは真凜と談笑したりしていた。

 ショッピングモールに辿り着き、買い物を始めた。

 主に夕飯の食材を買っていた。

 裕福な家庭ではなかったのだが、風の世界で稼いだお金がたんまりあったので、それを使ってもらっている。

 妹のマリリンモンローもとい真凜はお菓子を当たり前のようにカゴの中に入れている。

 もちろん俺もお菓子を入れている。

 美味しいのだから仕方がない。

 それに母さんが怒ることはしない。

 むしろ俺にもっと食べてほしいくらいなのだから。

 買い物の最中に母さんがこんなことを言い始めた。

 「私たちは強さがないから、将希の力にはなれない。けど、夕飯の支度や身の回りのことはやってあげるから、気をつけてやるんだよ。」

 多分ずっと思っていたのだろう。

 戦争が起きて日常から遠ざかることを。

 俺自身も分かっているようで分かっていないのだと思う。

 想像は出来るけど、想像止まりだ。

 実際に戦争が起こったらどうなるのだろう。

 俺は、クラスメイトは、母さん達は、どうなるのだろう。

 最悪の可能性もあるのだ。

 母さんは多分、一日一日を大切に過ごしている。

 これまで以上に、今日という一日に固執している。

 今日生きたのだから明日も生きるのではなく、今日生きたのだから明日が来ないでほしいのだ。

 生きた一日を永遠に繰り返したいのだ。

 俺はその想いを受け止めながら、うなづくことしか出来なかった。

 この話は、空気の読めない妹が来て終わりを告げた。

 そのまま、俺たちはショッピングモールを後にするのだった。





 一方で穂乃果の方はというと、久々に誘われたので行くことにした。

 学校から直接向かう。

 場所は近くの公園だ。

 相手は誰かというと。

 「ありがとう穂乃果。」

 「こっちの方が待ち合わせもなくて楽だからね。陸もこれで良かったでしょ。」

 「そうだね。良かったよ。」

 相手は小島陸。

 彼が今日白川穂乃果を誘ってこの場所に来たのだ。

 「それで、わざわざこんなところまで何のようなの?」
 
 「ああ、その事なんだけど、もしかしたら伝えられるのは今日だけだと思ってさ。」

 「まだ戦争は始まってないけど。」

 「そうかな。俺にはもう始まっているとしか思えない。俺の能力は知ってるだろう?」

 「「予測をする」能力…。」

 小島陸、能力は予測をする能力。

 これから起こるであろう事を予測する事が出来る。

 故に大原とのテスト勉強の際に、テストの内容を予測して、山を張って教える事が出来たのだ。

 「そう。俺の予測ではこの日本は対応が遅れている。大原も動いてくれているが、流石に一人では大変だ。仲間も来ているけどどこまで時間を稼げるか…。」

 「その予測は後にするとして、本当は何を伝えたいの?」

 「ああ、本題に入ろうか。まぁそこまでややこしい話でもない。俺がただ、白川穂乃果が好きってだけだからね。」

 「何よ、それだけなのね。…?…はい?」

 穂乃果は処理が追いつかないらしい。

 「今言ったことは、本当?」

 おそるおそる確認する。

 小島陸は動じることなく頷いた。

 「いつから…?」

 「大原と三人でゲーセンで遊んだ事があっただろう?その時にさ、UFOキャッチャーで君がほしいものを俺が取った時の笑顔がずっと忘れられなかった。多分、そこからだ。意識するようになったのは。」

 「…それで、このタイミングでいけば私と付き合うだろうって予測が出たの?」

 「いや、そんな事はなかったよ。何も予測が出来ない。けどこんなものを予測なんてしたくはないよ。しかもこんなに分かりきってる恋愛なんてさ。」

 陸は鼻で笑う。

 それは自分に向けられたものだろう。

 分かりきった答えほど虚しいものはないのだから。

 「…それが分かってて何で?」

 「…後悔をしたくなかったのかもしれない。それと同時に、好きな人に俺が死んだ時に悲しんで欲しかったからかな。」

 「…最後のは酷いね。けど、友達が死んだら悲しむのは当たり前だよ。そんな心配はいらないよ。」

 「そうだよな。やっぱり。まぁ俺のことは第二候補ぐらいに入れておいてくれ。」

 そんだけだからと小島陸は去っていった。

 「あーあ、見事な三角形だ。」

 穂乃果はそう呟いた。

 誰もいない公園で、少しだけの声がこだましていくのだった。



 


 部屋でゆっくりしているとアリサから連絡が来た。

 雷の世界で修理していた魔王軍の戦艦が完成した事を教えてくれた。

 このまま攻めてくるのかと思いながらアリサに聞いてみた。

 「大丈夫だ。こっちにはこっちの策があるからな。」

 と時間稼ぎをしてくれるようだ。

 どれほど時間を稼げるか。

 それと、どのタイミングで仕掛けてくるかも分かるとありがたいところだ。

 

 雷の世界では…。

 「お待ちしておりました。ミスターO様。」

 魔王軍の戦艦の修理が終わったということで、闇の世界からミスターOが受け取りに来た。

 レビルス・ライトニングは代表としてお迎えに参った次第のようだ。

 「よしてください。貴方に頭を下げられるほど、いい事をしてないのは分かってますから。それに、黙ってくれたのもありがたいのですから。」

 「この世界では契約は絶対。中立である事を示すためには、細かな約束事も守る次第でございます。」

 「…多分ですけど、そう呼ぶのはこの戦いで最後になるでしょうね。」

 「…私としましては複雑な気分です。あまりにもこちらにメリットがありすぎる商談でしたので。それに、私の娘達がいる。親としては、そんな事を行う貴方達は許せない。許せないですが、あれを見させられたら、貴方達が行うことの何倍もマシに見えてくる事が、恐ろしい。」

 「脅すつもりはなかったのは本当です。ですが、あれがこれから起こる。そのためにはまず…。」

 「分かっています。ここは極秘のルートですが、万が一という展開もありえます。一応話さないようお願いします。」

 「分かりました。では、こちらは持ち帰らせていただきます。」

 「はい。その際にはこちらの三名をお連れください。
不備がありましたら対応させていただきます。」

 「確認が出来たらすぐに返します。流石にこれから戦争を起こす奴らとは一日も早く離れたいでしょうし。」

 「そうしていただけると幸いでございます。それと、もうお伝えしてもよろしいので?」

 「…今回は伝えないでください。リサとアーシャも頑張ってくれてる。それに応えない奴らがいけないんですよ。もう、他人にしか判断を委ねる時代が終わるってことを伝えないといけないんですよ。」

 そう言い残し、技術者と共に戦艦に乗って、雷の世界を後にした。

 「もう決まってしまったのですね。大原君、頑張ってくださいね。」

 願いが届くように、レビルスは空を見上げるのだった。

 

 
 

 
 








 
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