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第七章 地球<アースター>編
なんのための力か
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大原が近距離の指導を行う事三日がたった。
成長度合いで言うと大原が魔力を使って攻撃するぐらいには成長した。
魔力弾には対応が出来てきたが、不得意分野には苦戦を強いられていた。
当然一人一人は強くなって欲しいものだが、本質はそこではない。
自分から言うのもいいのかもしれないが、それは違うのではないかと考えた。
それには団長も納得してくれた。
なのでこの方針でいこうとは思っているのだが、気づかなければ教えるしかないのは間違いないので、まぁその辺は上手くやっていこうとは思う。
そんな感じの三日間だった。
六月十七日。
ここまでの日にちが経っているのにも関わらず、戦わない選択をした者たちに、何もしていないと思っていただろう。
ほとんどは何もしていない。
けれど一つだけ頼んでおいた事がある。
それは避難誘導に関してだ。
自分の命を守ることが最優先でもいい。
ただそのための力をある程度持っておいても良いのでは?と提案したところ、勉強の合間や多少の隙間時間で魔力操作を行ってくれることとなった。
これで多少は問題ないだろう。
そう思っていた。
「おい!大原!」
少しオラついたような呼び方で呼ばれた。
そこには山中圭介がいた。
昼休みの時間。俺は山中圭介に連れられて、中庭の方へ向かった。
「どうしたんだ急に?正直今なら抗えると思うけど?」
「だろうな。だからここに連れてきたのはそのためじゃない。少しばかりの確認作業だ。」
確認作業?とはてなマークを頭に浮かべていると切り出してきた。
「お前、魔王軍にこのままで勝てると思ってるか?」
「無理だね。少なくとも全員無事ではすまない。どこかの国は亡くなってしまうかもしれない。」
「お前が訓練してる奴らは?」
「…確率的には死ぬ可能性方が高い。けどそれは今の段階ではだ。まだ時間はあるはずだ。だから…」
「だからお前の役に立って死ねって事かよ!」
怒鳴り声を上げる。
中庭で弁当を食べていた人たちはそそくさとその場を後にした。
「俺は思っていたよ。ずっと、なんで死にに行かなきゃいけないんだ?なんで戦わなきゃ行けないんだ?そもそもとして、なぜその力を手に入れる必要がある?魔王軍が来るなら力があるやつで戦えよ!なぜ力のない奴を前線に立たせるんだよ!意味わかんねぇよ!」
「自衛のためにみんなやって…」
「そもそもとして俺たちとお前の考えは違うんだよ!」
空気を目一杯含んで紡いでいく。
「あいつら、力をつけてきてるよな。それはもういい、諦めた好きにしろ。けどな、全てがお前たち中心に回っていると思うなよって事が言いたいんだよ俺は!みんな協力してくれてるよな、お前に!それは間違いなく感謝すべき事だ!なんせお前の人生に協力してくれてるんだからなあ!」
「俺の、人生に?」
「そうだよ!お前に協力してくれてる奴は、お前の人生設計に協力してくれてるんだよ!自分達の人生からな!その人生の中で、楽しいことや辛いことが沢山あるはずなんだよ!お前は分かってるのか?あいつらは戦うために強くなってるんじゃない!魔王軍から生き残るために強くなっているってことに!ならお前は勝たなきゃならない!どんな手を使ってもだ!ここで全てを終わらせろ、これまでの人生を思い出に変えさせるな、勝ってこれからの人生を進ませるようにしろ!」
分かったか!と山口圭介は俺に檄を飛ばす。
「…身もふたもない事言うよ。」
「ああ。」
「守れないかもしれない。」
「当たり前だろ?戦いなんだから。」
「そうだな。」
「つまりはちょっとは思い出作りが必要って事?」
「死亡フラグっぽいが、まぁいいだろ。」
「いじめた奴が言う言葉じゃないな。」
「そういや、お前には直接はまだだったな。ごめん。言い訳はしない。俺はお前に恨まれるべき人間だ。」
「そうだね。じゃあ恨もうかな。」
「ああ。けどな?やっぱり嫌いだよ。お前みたいなヘラヘラした奴。」
「そう。なら嫌ってなよ。俺も嫌いだし。」
「んだと?」
「でも、気持ちは伝わった。お前の言うとおりだ。少し、弱気だったかも。」
「はん。活ぐらいは入れてやるよ。」
「ありがとう。必ず勝つよ。」
「当たり前だ。俺からはそれだけだ。それだけを伝えたかった。能力を使って世界が平和になれば、疑わずに済むかも知れないからな。」
「…。」
「また教室でな。俺は先に戻る。」
「うん。」
そうして彼は嵐のように言葉を紡ぎ、大原将希の心の雲を振り払った。
その空はもう二度と曇ることはない。
大原はこの時そう思っていた。
「…」
放課後、陸と共に訓練の場所に向かっていた。
穂乃果は先に行ってもらった。
今日は話したいことがあるらしい。
「それで?話って?」
「二つあってさ、一つはさ能力の差について。やっぱり戦闘に有利に働く能力の方がいいのかなって。」
「そんなことはないよ。陸の能力でも使いようによっては強いから。」
小島陸の能力は「全てを理解する能力」だ。
教科書に書かれたことを全てを理解することができる。
なおこの世のことは理解は出来ないらしい。
その点はあの人とは違うみたいだ。
「答えと理解は違うんだよ!大原君!」
イマジナリーカリナちゃんが出てきてしまった。
話を戻そう。
勉強面で力を発揮するだけでなく、戦闘面でも即座に相手の情報を理解することができる。
それは戦いを有利にする強い能力だと思う。
そのことを陸に伝えるとならいいんだと話を終わらせた。
「もう一つなんだが…これはいいか…。」
「なんだい、曝け出した方が楽になるんじゃないか?」
「そうだなぁ、けどとりあえず今はいいや、いつか話すよ。」
「そう?ならいいんだけど。」
とりあえず今はこいつにはのびのびやって欲しい。
全く、俺がこんなに拗らせるとは思わなかったなぁ。
まぁでも、あいつが元気ならそれでいいと思うけどね。
陸は陸で思うところがあるらしい。
少しずつでもそういったしこりをなくしていけたらいいと大原は考えるのであった。
成長度合いで言うと大原が魔力を使って攻撃するぐらいには成長した。
魔力弾には対応が出来てきたが、不得意分野には苦戦を強いられていた。
当然一人一人は強くなって欲しいものだが、本質はそこではない。
自分から言うのもいいのかもしれないが、それは違うのではないかと考えた。
それには団長も納得してくれた。
なのでこの方針でいこうとは思っているのだが、気づかなければ教えるしかないのは間違いないので、まぁその辺は上手くやっていこうとは思う。
そんな感じの三日間だった。
六月十七日。
ここまでの日にちが経っているのにも関わらず、戦わない選択をした者たちに、何もしていないと思っていただろう。
ほとんどは何もしていない。
けれど一つだけ頼んでおいた事がある。
それは避難誘導に関してだ。
自分の命を守ることが最優先でもいい。
ただそのための力をある程度持っておいても良いのでは?と提案したところ、勉強の合間や多少の隙間時間で魔力操作を行ってくれることとなった。
これで多少は問題ないだろう。
そう思っていた。
「おい!大原!」
少しオラついたような呼び方で呼ばれた。
そこには山中圭介がいた。
昼休みの時間。俺は山中圭介に連れられて、中庭の方へ向かった。
「どうしたんだ急に?正直今なら抗えると思うけど?」
「だろうな。だからここに連れてきたのはそのためじゃない。少しばかりの確認作業だ。」
確認作業?とはてなマークを頭に浮かべていると切り出してきた。
「お前、魔王軍にこのままで勝てると思ってるか?」
「無理だね。少なくとも全員無事ではすまない。どこかの国は亡くなってしまうかもしれない。」
「お前が訓練してる奴らは?」
「…確率的には死ぬ可能性方が高い。けどそれは今の段階ではだ。まだ時間はあるはずだ。だから…」
「だからお前の役に立って死ねって事かよ!」
怒鳴り声を上げる。
中庭で弁当を食べていた人たちはそそくさとその場を後にした。
「俺は思っていたよ。ずっと、なんで死にに行かなきゃいけないんだ?なんで戦わなきゃ行けないんだ?そもそもとして、なぜその力を手に入れる必要がある?魔王軍が来るなら力があるやつで戦えよ!なぜ力のない奴を前線に立たせるんだよ!意味わかんねぇよ!」
「自衛のためにみんなやって…」
「そもそもとして俺たちとお前の考えは違うんだよ!」
空気を目一杯含んで紡いでいく。
「あいつら、力をつけてきてるよな。それはもういい、諦めた好きにしろ。けどな、全てがお前たち中心に回っていると思うなよって事が言いたいんだよ俺は!みんな協力してくれてるよな、お前に!それは間違いなく感謝すべき事だ!なんせお前の人生に協力してくれてるんだからなあ!」
「俺の、人生に?」
「そうだよ!お前に協力してくれてる奴は、お前の人生設計に協力してくれてるんだよ!自分達の人生からな!その人生の中で、楽しいことや辛いことが沢山あるはずなんだよ!お前は分かってるのか?あいつらは戦うために強くなってるんじゃない!魔王軍から生き残るために強くなっているってことに!ならお前は勝たなきゃならない!どんな手を使ってもだ!ここで全てを終わらせろ、これまでの人生を思い出に変えさせるな、勝ってこれからの人生を進ませるようにしろ!」
分かったか!と山口圭介は俺に檄を飛ばす。
「…身もふたもない事言うよ。」
「ああ。」
「守れないかもしれない。」
「当たり前だろ?戦いなんだから。」
「そうだな。」
「つまりはちょっとは思い出作りが必要って事?」
「死亡フラグっぽいが、まぁいいだろ。」
「いじめた奴が言う言葉じゃないな。」
「そういや、お前には直接はまだだったな。ごめん。言い訳はしない。俺はお前に恨まれるべき人間だ。」
「そうだね。じゃあ恨もうかな。」
「ああ。けどな?やっぱり嫌いだよ。お前みたいなヘラヘラした奴。」
「そう。なら嫌ってなよ。俺も嫌いだし。」
「んだと?」
「でも、気持ちは伝わった。お前の言うとおりだ。少し、弱気だったかも。」
「はん。活ぐらいは入れてやるよ。」
「ありがとう。必ず勝つよ。」
「当たり前だ。俺からはそれだけだ。それだけを伝えたかった。能力を使って世界が平和になれば、疑わずに済むかも知れないからな。」
「…。」
「また教室でな。俺は先に戻る。」
「うん。」
そうして彼は嵐のように言葉を紡ぎ、大原将希の心の雲を振り払った。
その空はもう二度と曇ることはない。
大原はこの時そう思っていた。
「…」
放課後、陸と共に訓練の場所に向かっていた。
穂乃果は先に行ってもらった。
今日は話したいことがあるらしい。
「それで?話って?」
「二つあってさ、一つはさ能力の差について。やっぱり戦闘に有利に働く能力の方がいいのかなって。」
「そんなことはないよ。陸の能力でも使いようによっては強いから。」
小島陸の能力は「全てを理解する能力」だ。
教科書に書かれたことを全てを理解することができる。
なおこの世のことは理解は出来ないらしい。
その点はあの人とは違うみたいだ。
「答えと理解は違うんだよ!大原君!」
イマジナリーカリナちゃんが出てきてしまった。
話を戻そう。
勉強面で力を発揮するだけでなく、戦闘面でも即座に相手の情報を理解することができる。
それは戦いを有利にする強い能力だと思う。
そのことを陸に伝えるとならいいんだと話を終わらせた。
「もう一つなんだが…これはいいか…。」
「なんだい、曝け出した方が楽になるんじゃないか?」
「そうだなぁ、けどとりあえず今はいいや、いつか話すよ。」
「そう?ならいいんだけど。」
とりあえず今はこいつにはのびのびやって欲しい。
全く、俺がこんなに拗らせるとは思わなかったなぁ。
まぁでも、あいつが元気ならそれでいいと思うけどね。
陸は陸で思うところがあるらしい。
少しずつでもそういったしこりをなくしていけたらいいと大原は考えるのであった。
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