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第七章 地球<アースター>編

反転結界

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 反転結界。

 簡易的な結界を張り、それを反転させる。

 反転結界のイメージとしては、やぶれたせかいみたいなものをイメージして欲しい。

 なので、天井に立つ事もあり得るだろう。

 「さ、逆さま⁉︎」

 「これは…反転してるってことかな…。」

 状況を分析する者、驚く者様々である。

 そして何よりも、この反転結界には、人がいない。

 ショッピングモールで買い物に来るお客さんは多くいるが、この反転結界ないでは、大原達以外には存在しない。

 ある種の世界を塗りつぶすのに近いのかもしれない。

 そして、この結界内では現実世界とリンクしていない。

 結界は解けば出れるので、問題はないだろう。

 というわけで、今回の特訓は。

 「魔力をたらふく撃ちまくりまくりましょー!」

 「「イェーイ‼︎」」

 その言葉を待っていたのか、みんなボコスカと撃ち始める。

 必殺技を考えた者、試しに限界までやってみる者とみんなやることは一貫していない。

 とはいえ最初はこれぐらいでいいとは思う。

 が少しばかりミスをしてしまったかもしれない。

 「ぎゃあ!」

 「うわぁ⁉︎」

 魔力をボコすか放って他者に迷惑、および魔力が当たる事を考えておくべきだった。

 いや、そりゃあ魔力は当たるものだ。

 俺はそれを当然のように思っていた。

 当然のように思っていたということは、それが知らなかった人にとっては当然ではない事に気づいていないということだ。

 魔力操作は安定して来たのだ。

 けれど魔力による攻撃を防ぐという行為を教えていなかったのだ。

 結果、数人が軽い怪我をしてしまった。

 「ごめん。これは俺が教えていなかったからだ。」

 「それは君が悪いね!俺たちは悪くないって事だな!」

 その通りだけど、はっきりと言わないで欲しい。

 「全く、大原君にならそれぐらい注意して教えてあげられると思ったのに。」

 賢者はこちらに向かってやれやれとジェスチャーしてくる。

 中学生だよ?先生の真似事みたいな事でミスがないと思うなよー?

 「というわけで、私が大雑把に教えます。魔力は放出してもいいわ。けれど、少しだけ制限して行っていきましょう。」

 他のみんなは賢者が指導するようだ。

 おそらくは細かいことは教えないでおくのだろう。

 まぁ俺も少しずつ、賢者からの知恵を貸してもらうのもありかなとは思う。

 賢者がみんなの指導をする事になったので暇になった。

 「暇になりましたね。では、大原さんも少し、ハメを外しませんか?」

 巫女服の人が言うとちょっと違う意味に聞こえそうだけど、圧がその邪な考えから遠ざける。

 「そうですね。久々に暴れたいなって思いました。」

 ここでは魔力で何かをする、という行為は出来なかった。

 それに本気も出せなかった。

 ので、このようなイベントが少なくて退屈していた。

 「やりますか。」

 大原は斬撃の剣を取り出す。

 「では、思い切りやりましょう。」

 麗華さんも臨戦体制だ。

 リミッターを解除する。

 そうして二人は手合わせをする。

 二人は激しい戦いの末に…。

 「…ふぅ。引き分け、ですね。」

 大原の剣は麗華さんの首元に、麗華の拳は大原の眼前へと向かっている途中で止められていた。

 「…。」

 麗華はこの結果には少しだけ不服であった。

 理由は明白。引き分けなどにはなる実力差では無いからだ。

 特に、大原と神谷麗華の戦力差は明白だ。

 つまりそれは…。

 「大原さん。何故手加減をしたのですか?」

 そう捉えられてもおかしくないのだ。

 「か、加減ですか?全然してませんよ!むしろ、麗華さんが強くなったんじゃないですか?」

 大原は反射的に加減はしていない事を弁明する。

 確かに私は強くなった。

 修行も行ったし、これまで以上の力は手に入った。

 だからといって、大原将希に勝てる、ましてや同等だなんて思ったことはない。

 そして今回の戦いも、何度も殺されるのではと思うほどの反撃をして来ていたが、その反撃の選択を無意識に行っていないようだった。

 大原は加減をしていたのではなく…。

 「大原さんは人を殺すのが怖いのですか?」

 という事になる。

 「怖いよ。出来るならば、話し合いで解決したいよ。それに、今回のは君に怪我をさせてはいけないと思って…」

 「大原さんって、嘘をつく時顔を見ませんよね?」

 大原は恐る恐る麗華の顔を見る。

 それは、否定がしたいがために行った、反射的なことだった。

 麗華は少し驚いた顔をしたが、納得したような顔になる。

 「カマをかけただけなんですけどね。ここまで反応されるとは思いませんでした。」

 「…。」

 「…大原さんが人を殺す覚悟が無いのは分かりました。いえ、分かっているつもりでしたと答える方がいいでしょう。ですが、自分を殺す者が現れた時に、私は必ず殺す行動をしてしまうでしょう。」

 麗華はその場を立ち去る前に、一言だけ置いていった。

 「私の予想ですが、今回の戦いはあのように上手くいく事はないと思います。」

 それだけ言い残して、賢者様の、みんなの所へと向かっていく。

 その一言は、犠牲者が出る事は当たり前と言っているようなものだった。

 大原は考えないようにしていた事実を、言葉にされてしまった。

 この二週間、公にするのは政府からだと思っていたが、それだけでは難しいだろう。

 犠牲は出る。

 それでも、自分の周りの人達だけでも、守れるようにしていこうと、大原は硬く決心した。

 そうして、自身の弱さを超えていくように、一歩一歩みんなの元へと向かっていく。

 「感情の我慢は必要な事だ。だが、極限状態の時に我慢する事はいただけないな。」

 自分の中にいる魔王ディルギッドの助言を無視して、歩き続ける。

 それは、今はまだ必要ないものだから。

 


 反転結界を解除する。

 みんなは賢者の指導により大幅にレベルアップしていた。

 魔力の扱いに慣れたようだ。

 けれど、あまり周りに迷惑をかけるやり方をしない事を約束に、この反転結界を何度も使っても良い事になった。

 何度も使わせる気なかったのか…。

 とも思ったが、ブラフのようだ。

 この人はこういう事なら大丈夫なんだなぁと、少しだけ感心する。

 全体に別れの挨拶をして、転移していった。

 その流れでみんなも解散していった。

 思いっきり人とは思えない跳躍をしながら帰る人もいたが、マジで大丈夫かなこれ。

 とりあえずは俺も帰る事になったが、麗華さんはどうするのだろうか。

 「私は賢者様が手配してくれたのがあるので。」

 「…秘密基地みたいな?」

 「普通のホテルですよ。貸切のですが。」

 それもう最高じゃないですか。

 そんな事を思いながら俺たちは、それぞれの帰路に立つ。

 とりあえずは今日は色々なことがあった。

 そして、これからも色々と動いていかないといけないらしい。

 しかしながら、この度の戦争は、安全地帯というものはあるのだろうか。

 造ることも難しいかもしれない。

 なんだかなあとは思う。

 けれど、そろそろこちらにもライトニングの使者がやって来てくれるのだろう。

 その事に少し期待しながら、帰宅する。

 夜九時

 多くのメールが大原将希宛に届いていた。

 部活に行っていた者たちからだ。

 大まかに伝えると、魔力まとって打ったらやばかった。魔力を纏うと擦れる事なく出来る。走りながらは難しいけど、体力面はあまり関係ないのな。

 等の連絡が来ていた。

 流石に捌ききれないので、「報告ありがとう」とだけ打って、後の連絡はスルーした。

 ごめんね。

 俺はそのメールの通知オンを聴きながら、筋トレをして時間になったら眠った。

 因みに現在の大原の重りは七百キログラムです。

 次の日、学校での昼休みの時。

 雷のような速さで俺のもとへと来てくれた。

 周りには他のクラスメイトもいる、先生もいる。

 このタイミングでの合流は聞いていなかった。

 「アーシャさん、リサさん?どうしました?」

 「どうもこうもない!あいつらはなんだ!お前たちの政府はあそこまで腐っていたのか!」

 この反応は…もしかして…。

 「突然すみません。ですが今はこの世界を守るために、協力をしてください。」

 こうして、大原はこの世界に関して、この日本という国を知る事となる。

 

 

 

 
 

 

 

 
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