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第七章 地球<アースター>編

魔力の特訓

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 翌日、朝ご飯を食べて家から出ようとすると、穂乃果は何も言わずに俺の家の前にいた。

 別に大丈夫なんだけどなぁ。

 そんなことを思いながら穂乃果のバイクに乗らない!

 「なんでスルーするの⁉︎」

 「人の計画を踏み躙る瞬間が一番いいから?」

 「クソ野郎じゃない!」

 まぁバイクに乗った方が楽なので乗るんですけど。

 そんな茶番を挟みながら学校へ走り出す。

 穂乃果からは途中、魔力でならもしかしてこれより早く学校に着けるかどうかを聞かれた。

 もちろん早くつける。

 俺は空も飛べるしね、とは言わなかった。

 あまり飛んでこれ以上目立ちたくはない。

 そもそもおかしいからね。人が空飛ぶの。

 そこら辺を言わずに、質問に答えた。

 穂乃果は少しだけ、魔力の授業が楽しみになったようだ。

 学校生活はいつも通りに行った。

 朝来た時には質問攻めにあったけれど、答えられそうなところは答えて、放課後に回した。

 授業の理解度は出来てきた。

 穂乃果と陸には感謝しかない。

 まだ勉強は続く…。きつい…。

 学校内での能力の使用は禁じているらしいが、所詮は校則なのでどうしようもない。

 やろうと思えばやれる状況はどうしたらいいんだろうね。

 ホームルームが終わり放課後の時間になる。

 本来部活がある人もテスト一週間前ともなれば無くなっているので、みんなウキウキしながらこちらを見ている。

 その期待を裏切らないようにしたいものだ。

 「ではまずは校庭に向かいます。そこで魔力を放ってみましょう。もちろん俺が全部なんとかしますので。」

 ということで、校庭に集合する。

 そこにはクラスメイト共に、陸もいた。

 もうこのクラスになれよ…。

 「でもさ、俺らって魔力の出し方知らないよな。どうやって放つんだよ?」

 そう言ったのは、柳田純正だ。

 「そう言うと思って、今回は特別ゲストに来てもらっています。」

 リストバンドの機能を操作して、これを前面に展開する。

 大原の前に人のホログラムが現れた。

 そしてその人とは。

 「初めまして、地球アースター、地球のみなさん。あたしはアリサ・ライトニング。そこのヒョロガリ…細マッチョ?まぁいいや、大原将希の仲間だ。よろしく頼むよ。」

 「仲間って事は…異世界の人ってことか?」

 「そうだなぁ、雷の世界にいた異世界人だね。」

 まぁ予想通り、ざわざわするわけで…。

 「穂乃果知ってる?あの人。」

 「知らないよ。というか、誰か出てくるたびになんで私に確認するの!?」

 「だって…穂乃果ほど大原君と一緒にいないし、そんな細かく知らないし…。」

 まあ色々とぐちゃぐちゃになっているけど、本題に入ろう。

 「はい皆聞いてください!」

 俺の声にみんな反応して静まり返った。

 「今回は、魔力についてだな。」

 アリサが話すとみんな食い入る様に聞いている。

 「まぁイメージすればなんとかなる。というかイメージしたものを調整していくといい塩梅になると思う。後は、属性は出せる属性と出せない属性があるから、そこだけは注意ってとこかな?。」

 イメージという言葉にみんな反応したようだ。

 簡単に魔力を引き出せるようになるのは驚きだったようだ。

 俺もそうだもの。そうなるわ。

 「とりあえず、やって見れば分かる。能力者なら魔力を扱えるだろうし。というか、特化能力でも出来ると思うんだがなぁ。よお分からんね。」

 アリサは少しばかり考える素振りを見せたので、ここいらで実践といこう。

 「ということで、俺に向かって放って来てね。」

 「え?大原に向かってってこと?」

 「そうそう。大丈夫大丈夫。コイツの能力で取り出して仕舞えばなんとでもなるはずだ。だから、思いっきりやりな。」

 アリサは楽しそうに俺を殺そうとしてくる。

 魔王軍の手先かな?こいつ。

 「それでも…この人数じゃあ…」

 「上手くやるって。任せなさい。」

 ふん!と胸を張ってみんなとは少し離れた場所に陣取る。

 「いつでもいいよお!」

 そう言って将希は手を振っている。

 全く。簡単にイメージなんて言ってくれる。

 私は息を深く吸い、決心を固めるように息を吐いた。

 イメージは風。将希を傷つけない…いや少し痛い目を見てもらおう。

 強く鋭い風。

 腕が剣のようなイメージを持って、切り裂くように、放つ!

 腕の横一閃。

 腕に集中した魔力は、大原に唸りをあげて向かっていく。

 「出た!」

 その感覚や様子を見て、放たれたことを確認した。

 グラウンドの砂を巻き上げて大原に向かっていく。

 それを、ただ手を握るだけで消失した。

 「…いいよ!その調子でどんどんといこう!」

 さも当然かのように大原は穂乃果の風の魔力を取り出した。

 因みに取り出したものは全て、ミーナ原案魔力保管庫に入れられている。

 あれです。魔力タンクの保管庫です。

 どうせ魔力を取り出すなら役に立てということで、そこに取り出したものはいくようだ。

 「よーし!色々とやってやって見ないとな!」

 全二十一人がイメージ、魔力を込め始める。

 これを繰り返していけば、自然と魔力を扱えるようになるだろう。

 慣れというか感覚というか、どちらにしろ数はこなすしかないだろう。

 全ての者の魔力弾が大原に向かっていく。

 属性は様々。誰一人として一発目は外しがなかった。

 自分がどの属性を扱えるかの感覚を無意識に行っているのだろうか。

 大原はそんなことを考えながら全て取り出す。

 その様子を見ていた全員がこう思っただろう。

 (マジかよ…)

 本当になんとか出来るとは思っていなかったのだろう。

 それほどまでに大原の能力は強いということなのだろう。

 大原目線は当然にやっているのだが、これも賢者との特訓のおかげというものだろう。

 それぐらいしないと、あの戦いでは生き残る事は出来なかっただろう。
 
 「ほらほら!もっと撃ってきなよ!」

 やばいなと思いつつも、イメージをし始める。

 そうして放たれた魔力は、今度は魔力による打ち消しで消失した。

 これは大原の訓練みたいなものだ。

 魔力に対しての対抗手段の訓練。
 
 そもそもとしてこの日本は平和だ。

 戦うことなんてないと等しいまである。

 その中でこの訓練は、対応を忘れないための訓練といっていいだろう。

 魔力に慣れるために放つ。

 放ったものに対応する。

 その考えの元、大原はこのようにしたのだ。

 しかし…校庭でやるという事は…こうなることも考えておかないといけないわけで…。

 「お前たち‼︎校庭で何やってるんだ!今はテスト一週間前だぞ!すぐ家に帰って勉強しなさい!」

 職員室の窓から先生が注意に入った。

 「は、はい!すみませんでした!」

 ホログラムを閉じる。

 俺はすぐさま謝って校庭から逃げるように駆け出した。

 「とりあえず、場所を変えよう!」

 その声に引かれるように全員で校庭から、学校を後にする。

 「全く、あの子達は校庭で何をしていたんだ。しかも、こんな校舎に誰もいないタイミングで…。」

 「まぁ偶には遊びたいというものでしょう。」

 「そうでしょうか。まぁあの中には、小島もいたみたいですし…。」

 「まだまだ子供ですよ。少しばかりの羽目は外すべきでしょう。まぁ外しすぎは良くはありませんがね。」

 校長は私に一瞥をくれて、校長室へと戻っていった。

 しかし、あれはなんだったのだろう。

 生徒たちの腕から炎や雷のような閃光が、一人に向かって放たれているように見えた。

 そしてそれは全て消失していた。

 あれは、なんだ?

 思案しても仕方がないと分かっていても、こればかりは頭から離れそうにない。

 少しばかり、鎌をかけてみるかと考える。

 そんな彼の担当は社会。主に歴史を担当している。

 名前は佐野弘昭さのひろあき。能力は、「真実を持つ」能力。

 後はもう、何も言うまい。

 学校からノンストップで近くの公園まで走って来た。

 みんなぜえぜえと息を吐いている。

 大原以外は。

 すぐさまホログラムを展開して、アリサと相談する。

 「…どうするか…。冷静に考えたらこの世界に魔力なんて概念はなかった訳だし、そんな施設も作られているわけじゃないし…。」

 あるよ?リハビリで使ったようなところとかね?

 でもそれもいつも使えるわけじゃないし、そもそもとして病院用だからねあれ。

 「不自由だなぁそっちは。こっちは好き勝手に魔力を使えるのに。」

 アリサは嫌だ嫌だと付け足した。

 …不自由が多い。

 異世界で自由な感覚を覚えたのは、それが当たり前であり、俺としてもやらなきゃやられるから努力していたっていう感覚があったからなのだろう。

 今は平和すぎる。

 これから魔王軍が攻めてくると言っても、全ての人が納得するわけが無い。

 いや、そもそもとして政府が動くわけが無い。

 タイムズの言った通りになっている気がするな。

 言い訳してる場合じゃない。

 早く次の手立てを考えなければ。

 「なぁ大原。俺たち、さっきのでだいたい理解できたと思うんだよ。」

 陸はそう言って手に炎を灯す。

 「まだ、これを維持するのは大変だ。それにまだ俺たちにやるべき事はあるんだろ?なら、教えてくれよ。その方法を。」

 陸のその言葉にみんな頷いてくれた。

 本当は明日にでもやって貰おうと思っていたのだけど、そこまで言うのであれば、行って貰おう。

 アリサも察したのか頷いてくれた。

 「よし。分かった。次のステップに入るよ。次のステップは、魔力操作というもの。きっと今なら俺が纏っている魔力が感覚で分かるはずだけど…。」

 「…分かる。少しだけ大原の周りを纏う様に、ウヨウヨとしている。」

 同じ様に他の人も頷いてくれた。

 見えていない人もいる可能性もあるが、なんかしらの違和感があるはずなので説明を続けることにした。

 「これを維持する。これを維持し続けるのは難しい。安定させるには多くの時間が必要だと思うよ。」

 実際、俺も精神世界でディルギッドと一緒にやっていたからね。ずるだね。

 「これもイメージだよ。一定にするのは難しいので、纏い続けることを意識しよう。」

 「理想はどれくらい纏っていればいいんだ?」

 「理想は…そうだなぁ。二時間以上維持し続ければ充分かな。」

 魔王軍がいつ攻めてくるか分からないから、これぐらい出来ればなんとかなる…かな?

 「これは家でも、教室でも出来るから実践してみてほしい。何か質問してくれたら答えられると思うので、みなさんよろしくお願いします。」

 「とりあえずは解散だな。大原のから頼まれて来ただけだから、次は来れないかもな。なんで、友達にでもなっとくか。」

 アリサはQRコードを表示する。

 それを見たみんなはこぞってスマートフォンを持った。

 反応としては、異世界人とLINEが出来る!?
 色々話を聞いてみたい。
 他の異世界人ってどんな人がいるんだ?

 などなど、みんなウッキウキになっていた。

 読み取った人達から解散していく。

 俺も陸と穂乃果と一緒に帰っていく。

 その間も、魔力操作を早速行っていた。

 苦戦はしていたが、意識しながら帰る事は出来ていた。

 流石に雑談出来るほど自然にとはならなかったし、ふとした瞬間に途切れることもあった。

 俺も最初はそうだったので、気長にやっていこう。

 そんな感じで帰宅していく。

 俺は自分の部屋に戻って、アリサに連絡する。

 「なんだ?まだ用があるのか?」

 「いや、メールは異世界間では繋がらないんじゃないかなって。」

 少なくとも俺はそうだった。

 この世界に入ってからスマホのメールを既読出来たのだから。

 「普通はな。けど、お前が連絡し続けたお陰でミーナが繋いでくれたようだ。まぁあたしが伝えたんだけど。」

 「…まさかのリアルタイムか…。」

 驚きである。

 という事は、今そこにいるのだろうか。

 「ミーナはこの場にはいない。雷の世界で奮闘中だ。その間にこの作業を行ってくれたらしい。凄いよな。」

 「凄い…凄すぎない?」 

 再びミーナさんの異常さを知りながら、俺たちは通信を終えた。

 「ふぅ。」

 一息を入れる。

 この様な感じが続いていくのかと思いながら、今日という一日を終えていく。



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