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第七章 地球<アースター>編

謝罪と期待

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 朝のホームルームが始まるまでの時間。

 廊下には多くの生徒が話したり、発狂したり、能力を隠れて使っていたりした。

 そんな風景が見慣れた物だったが、これがなくなるかもしれないと思うと何とも言えない感じになる。

 そんな事を考えながら新しい教室にたどり着いた。

 新しい教室は前とはそこまで変わらず、三階から二階になっただけだ。

 後は担任の性格が出ているところもある。

 まぁあれだ。教室は変わらないのだ。

 しかしながら、俺を見る目は変わっていた。

 いつもは何も言われず席に着いているのだが、今回は違うようだ。

 教室に入った瞬間、少し早めに来ていた生徒たちに囲まれた。

 そのほとんどが大原か?大原ってあのガリガリの?三ヶ月入院して逆に何故そうなる?と困惑の言葉が多かった。

 …そうか。俺は火の世界での特訓等で筋力が上がった結果、マッチョとはいえないが筋肉質にはなっていたのだろう。

 元々のノッポから柱になったぐらいだろう。

 結構じゃない?まぁいいか。

 そんな一気に来た質問攻めは、ただ一人の咳払いによって本題へと向かっていった。

 穂乃果だ。

 威圧、責任、殺意、様々なものが混ざり合ったこの空気は俺にまで伝染するほどだ。

 ま、まぁ俺は円をしてるからね。わかるんだけど。

 その空気を感じ取ったのか少し離れて、こちらに来なかった者、座っていた人達も呼んで頭を下げられた。

 ごめんなさいと、言われた。

 このクラス全ての人が俺に関わりのある人ではないだろう。

 いや、そんなものは建前で逃げなのだろう。

 俺は、ここにいる全ての人が、俺に行った罪を知っている。

 ある者は俺の能力を蔑み、ある者は俺の在り方を愚劣し、ある者は俺の存在を嘲笑した。

 他にもいくらかあるだろうが、陰口など追ったところで終わる話ではないのだから。

 とはいえ、俺がその当時苦しくなかったといえば嘘にはなる。

 だから今はとても気分がいい。

 ちょっとだけ意地悪をしようと思ってしまったのだ。

 「それ、何に対して謝ってるの?」

 考えても見てほしい。

 急に謝られただけなのだ。もしかしたら、俺の後ろの黒板に謝ってるかもしれないだろう?

 確認とその理由を教えて頂かないとボクわかんないねー。

 そんなふざけた事をしていると、ある一人が懺悔し始めた。

 自分に向けたいじめ、物を隠してそれを見て笑っていたと。

 今なら別に取り出せるからね。どうでもいいかな?

 連鎖するように懺悔の時間が訪れた。

 ちょっと待て。いや、こうなったのは嬉しい。

 きっとみんなと仲良くなれるのだろう。

 けどおかしいぞこれは、クラス全体、いやもはや学校全体でこうなっているのだとしたら、あの二人は一体何をしてここまでの影響力を持ったんだ?

 親は普通のはずだ。

 ご本人たちでやったと考えるのが普通だが、これはこれで怖くはある。

 そんな事を考えながらも、懺悔タイムは続く。

 ホームルームが始まる5分前のチャイムと共に先生が入って来た。

 先生は席につくように促し、俺は教壇へと向かった。

 遅刻ギリギリで登校してくる人もいたが、全員が揃った。

 先生は俺の復帰と俺のことに関してのいじめ、偏見についてを話してくれた。

 お咎めは前に散々したので言わないようにすると言っていたけど、相当この人も影響ありそうだ。

 「では大原君、何がありますか?」

 そして唐突に俺に振られるのだ。

 何もないんだよなあ。

 まぁ久々なのは確かなのでとりあえず挨拶をば。

 「えと、おはようございます。とりあえずはなんか、謝ってくれた人達はありがとうございました。まだなんか慣れづらいけど、少しずつ仲良くなれたらと思います。」

 拍手をされる。転校するのかな、俺。

 ほとんどの人が拍手をしてくれた。

 けどあからさまに態度の悪い人はいるようだ。

 拍手はしないでこちらを睨みつけてくる人がいた。

 山中圭介。

 彼が、いじめの実行犯だったものだ。

 そんな彼は俺が明るくしているのをよくは思わないのだろう。

 今は何も言わないが、きっとこの後はいじめをするために俺を呼び出すのだろう。

 昔は嫌だった。あからさまな暴力、罵詈雑言は当たり前だ。

 それでもこれまで上手くやって来た。

 そして俺には自信がついた。

 お前には負けないほどに。

 その後俺は席に着くのだが、後ろから、前からも三番目の席、穂乃果の隣になっていたんですけどこれはまさか八百長ですかね?

 「良かったね。私が隣でね。」

 「そ、そうだね。」

 なんか、怖い。

 守るという圧が強すぎる。

 なんか重圧が感じられる程なんだけど。

 あれ?なんか重いぞ?嫌だなあ。

 なんて思いつつも授業に向けての準備をしていくのだった。

 一時間目の授業は数学。

 what?のオンパレードだ。

 それがその計算になる理由がわからないのだ。

 専門用語というか暗記、多い、死ぬ、以上。

 計算までいけるから、もういいよ。教えられないけど。

 穂乃果からもサポートが入る。

 その他にも後ろの渡辺颯斗という、優等生(罪はいじめの見て見ぬふり)にも教えてもらった。

 とりあえずは今は理解した。

 後はもう繰り返すだけだろう。

 二時間目は理科。

 理科室に行って授業を受ける。

 自分の席の周りの人と班になって行う。

 今日はあいにくの実験だったようで見学ということになった。

 今回の実験は、能力者の血と特化能力者の血では何が違うのかというものだった。

 めちゃくちゃ気になる。

 実験の細かな準備として顕微鏡やらを準備することに。

 その準備の際に多くの人が顕微鏡に群がり、時間がかかってしまうと言われた。

 のでそのタイミングになったら、俺が取り出すと言って、みんなには他の準備に取り掛かってくれた。

 準備の時間。

 みんなが立ち上がり取りにいく中、俺は顕微鏡を取り出す。

 うん。能力は問題なく使えるらしい。

 そう思っていると、穂乃果から注意を受けた。

 何でも、この学校では能力の使用を許可なくしてはいけないらしい。

 それは知らなかった。

 とりあえずは無知であったことで何も言われなかったが、注意は必要だと思った。

 ちなみに結果としては、特化能力者の血液は通常の血液だが、能力者にはSAKIMAという成分が入っているらしい。

 というかおそらくだが魔力のことだろう。

 能力者と特化能力の差は能力に魔力が含まれているかどうかという事なのだろう。

 そしてこの世界ではこれはサキマと呼んでいるということらしい。

 これは多分だが、木嶋 優希の友「完璧者パーフェクター」が見つけたものだろう。

 あの本を読んでいた際にそんな事を書いてあったのだ。

 そのような実験結果にみんな驚いていたが、そのようなものだろう。

 ん?しかしながら、能力者ってこの世界にはあまりいないのではなかろうか?

 この世界のほとんどは特化能力者の集まりだ。

 おそらく能力者はいるだろうが、二割、三割いたらいい方だとは思う。

 特に日本では一割に満たないだろう。

 貴重な物をどうしてこうも集められたのだろう?

 次の授業は国語。

 眠っている人続出。

 しょうがない読んでるだけだもの。どうしようもない。

 その次の授業は社会。公民だ。

 近代はつまらん。何が起こってこうなったとかマジでつまらん。

 三権分立とか簡単なのでいいじゃん。

 何だよ、「」って。

 難しいて。やめろ!本当に!

 そんなこんなで給食の時間となった。

 以前はわざとこぼされたり、ゴミを入れられたりしたが今回は大丈夫のようだ。

 「大原君はさ、次の体育は出るの?」

 給食を食べてる間に次の授業について聞かれた。

 「もちろん。体育が一番授業の中で面白いんだから。」

 当たり前だと言わんばかりの言葉を発すると穂乃果が驚いた顔をしていた。

 「嘘、今日は見学だと…。」

 ま、まぁ流石に三ヶ月も寝たきり野郎が体育が大丈夫なわけないのだが、医師の許可は出てる。

 「医者の許可は出てるから、安心しなよ。体育は楽しんでやれるからね。」

 隠れて暴力を振るうことはあるけれど、思い切り出来るのは前とは変わらないだろう。

 そんな事を考えていたのだが、穂乃果の後ろの席の山川純菜が俺を止めたのだ。

 「辞めときなよ。今日は無理しない方がいいよ。穂乃果もそう思っているだろうし。」

 「そ、そうだよ。無理はしないで一度様子を見てからでもいいじゃん。」

 何故そんな止めるんだ?

 よく分からないけど、軽めに身体能力の調整をしたかったんだけど…まぁでもまったりとやればってことで落ち着かせよう。

 「見学はしないよ、どんな内容でもまったりとやるよ。それで次の授業の内容は?」

 その言葉に一瞬間が空いて、ドッジボールという言葉が聞こえて来た。

 「マジ?やったー!俺ドッジボール好きなんよ!これは出たいよ。流石に!」

 テンション爆上げだ。

 これならば最短で避ける練習にもなるし、ボールの調整等を行うこともできる。

 しかし、大原のテンションとは周りのテンションが真逆になっていた。

 その表情を見た穂乃果はこう言った。

 「分かった。出てもいいよ。覚悟してね。手加減なんてしないから。」

 と、給食を片付けてどこかへ行ってしまった。

 昼休みに入った。

 男子には先程の発言から俺の元へ輪ができていた。

 「何も知らないからあんなことが言えるんだ!」

 「けど大原の能力…特化能力は取り出すだから何とかなるか?」

 「今更特化能力じゃ通じないよ。」

 と意見というか文句が垂れ流されていた。

 「いいか?ドッジボールはな?女子対男子で行うんだよ!」

 「つまり、左で投げるハンデがあると?」

 「そういうことじゃねーよ!」

 「もっと酷いんだ。地獄だ。」

 「俺たちはあいつらに全滅させられた。」

 男子が女子に負けるなんてカッコ悪いw。

 などと思っていると「おい!」と怒鳴りを挙げる声が聞こえて来た。

 山中圭介だ。 

 「こいつに頼らないと俺たちは勝てないのか?攻略法は分かってるんだ!白川穂乃果を無効化すれば何とでもなるんだよ!」

 「それはそうだけど!それが出来ないから僕たちは負けてるんじゃないか!」

 「今日は負けねーよ。策があるんでな。」

 不吉な笑いと共に圭介は去っていった。

 そんな重い空気の中、「よ!大原元気してるか!」と久々に聞いた声が響いた。

 「陸!久しぶり!」

 陸は他のクラスになってしまったが、昼にはたまに話を聞いてもらっていたりしていた。

 そしてこの意味わからん会議にも参加してくれた。

 「穂乃果の能力か…確かに強い。というかドッジボールってあいつの独壇場じゃん。」

 えっと確か穂乃果の能力は、重力に特化した能力だ。

 多少の重力なら操れるほどの能力だったはずだ。

 「それがそんなに強くなったんだ。」

 当然の疑問を投げかけるとみんな恐ろしい顔をしていた。

 「あれは殺しに来てる。隕石だ!」

 「もう吐きたくない…。」

 ええ…。ま、まぁ成長したんだなあということだろう。

 話していると時間はあっという間だ。

 次の授業までに体育着に着替えなければならない。

 みんな急いで着替え、体育館へと向かう。

 その途中で女子とも会ったが、みんなニヤニヤしてこちらを見やりながら体育館へと向かって行くのであった。

 

 





 
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