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第七章 地球<アースター>編
リハビリ。
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意識が戻る。
あの強烈な痛みが無い。
なぜあのような痛みが出たのか…その辺は色々と聞いていこう。
そんなことを考えながら目を開ける。
知らない天井だ。
病室から目覚めた時のお決まりのセリフだ。
その作品も二十年前ほどだろうか。
新しく制作…いやこの場合はリメイクというべきだろうか、やっているらしい。
あまり見た事がないが、セリフ等は有名だ。
とりあえず身体を起こす。
時刻は七時三十分。
地球に転移した時間は…七時くらいだっただろうか。
十二時間は眠っていたらしい。
「あら、起きたのね。」
声のする方向へ向くと賢者がいた。
「おはようございます。色々と聞きたいことはありますが…飲み物とかあったりします?」
「それを買って来て少し遅れたのよ。分からないから水にしておいたわ。」
手渡しでペットボトルを受け取る。
「ありがとうございます」
ゴクゴクと一気に飲み干す。
「三ヶ月分の水分だものね。いい飲みっぷりだわ。」
「そんなことよりも、あの激痛はなんです?やばいですよあれ。」
賢者は椅子に座り少しずつ話し始めた。
「あれは魂の状態で過ごした経験値が、貴方の肉体で巡り巡っているの。言うなれば、身体がついていけていないのよ。」
「つまり、三ヶ月分の成長が一気に来たってことですか?」
「そういうこと。貴方は成長したけど、寝たきりのあなたの身体は成長していない。あの激痛は、昨日までの貴方の体にするために起こった…肉離れ的なやつ。今は痛み止めやら、麻酔やらで痛みは無いと思うけど。」
「まぁなんとなく分かりました。けど昨日までの自分に戻るってなんでそれが起こったんですか?」
「魂にセーブされてたのよ。簡単に言えばね。」
あー、なんとなくわかる。
今俺の体は馴染もうとしてるわけだ。
「というわけで、一週間ぐらいはリハビリに励んでいく感じね。」
「身体をほぐすってことですか?」
「それもあるけど、今のうちに魔力を放っておかないとね。とはいえ、私が勝手にすることは出来ないの。先生は9時ぐらいに来ると思うから、安静にしてなさい。」
「分かりました。」
そう言ってから一時間半が経過したところで扉が開いた。
そして驚いた顔をしながらも、涙を浮かべていた人はこちらに恐る恐る向かって来る。
「将希?大丈夫…なの?」
身体を起こしながら俺は応える。
「まぁ大丈夫だよ。今のところはね。」
「良かった…良がっだ…!ずっと目覚めないから心配で心配で…!」
母さんはベッドの上にうつぶしながら、願うように泣いていた。
「よう。心配したかい?」
後ろで白石さんと一緒にいるのが妹の真凜だ。
「多少はね。自分の部屋を持てたからそこまでじゃなかったよ。」
俺の部屋のことだろうか?
この三ヶ月間は真凜が俺の部屋を使っていたようだ。
「残念だったな。俺が帰ってきたら俺の部屋に元通りだ。」
「本当だよ。広々空間最高だったのに。」
他愛ない会話も久しぶりだ。
ここでようやく帰って来たのだと自覚することになった。
「では将希さん、お母さんに説明しますね。」
そこから白石さんは俺の今の状態とこれからのことについて話し始めた。
ところどころ、ん?となるところもあったがおそらくそれは後で話されるのだろう。
「一週間?それぐらいでいいのですか?」
「はい、順調に行けばですが。」
「分かりました。将希、無理はしちゃダメだからね。」
「もちろん。」
「ゆっくりで大丈夫だからね。」
「そうさねーぼちぼちやっていこうかな。」
そんな会話をしながらも、一応の面会は一度終わりを告げたのだった。
「…んで本当のところは?」
白石さんにごまかしたところを改めて問い詰める。
「何ともありませんし、そもそもそのような容態ではありません。痛み止め等は打ちましたが。ですが、一週間のリハビリはやってもらいますよ?」
やっぱりこっちでも異世界に行っていたことはタブーにされてるのか。
そして白石さんはそれを知っている。
知った上で伝えていないということなのだろう。
「分かりました。それで、リハビリ内容はどのような感じですか?」
「今から行くところでした。お母様にも見せないようにしなければいけなかったのでね。」
ということは…そういうことなのだろう。
ベッドから出る。
体感がおかしい感じだが何とか歩ける。
魔力の感覚がある。
異世界に行ったあの三ヶ月間は嘘偽りの無いものだと体が教えてくれる。
しかしここで魔力を使うのは少しだけ怖い。
なので手すりに捕まりながら白石さんについていく。
白石さんについていくと見覚えのある人が立っていた。
「賢者様…。これは何ですか?」
賢者の後ろには箱のような、コンテナのようなものが置いてある。
「ここで大原君はアルシアさんと共に、身体をほぐしてもらいます。」
「あれよ。訓練場みたいなやつ。この中に入って身体をほぐすのよ。」
なるほど?ほぐす=戦うってことだね。
ボコすの間違いじゃないの?
「とりあえずは三ヶ月分の運動不足を多少は賄えるとは思うので、最初は辛いと思いますが、頑張ってください。」
「さあいこう。大原君。」
賢者は少しワクワクしながらそのコンテナの中に入っていく。
コンテナの中は予想以上に広々としていた。
地面は砂で満ちているだけで何もない。
まるで砂漠のように思えるこの場所に、俺たち二人は立っていた。
「今回は魔力を多く放つこと。多分だけどすべての魔力を使ってもリロードされると思うから。」
「魔力が周り巡っているのはそういうことなんですね。」
俺は手のひらにすべての魔力を集める。
巨大な炎の魔力の玉は太陽のように賢者を照りつける。
そしてそれを放った。
賢者は転移で俺のそばにより、その衝撃を見届けた。
爆風がこちらまでに届き、砂埃もすごい。
放った場所にはクレーターのような感じで凹んでいた。
「これらは明日には砂で埋まっているからじゃんじゃん撃ちなさい。明日はもっと動くことになるからね。」
「分かりました。」
それからすべての魔力を使ってアレンジを加えたりなどをして、放っていった。
途中昼食を挟みながら、それを五十回程やった段階で今日のリハビリ…魔力放出は終了となった。
時間にして午後4時ほど。
水分補給をしながら、ベッドでゆっくりしながら外を見ていた。
これから一週間は、この暇な時間が多くなるのだろうと思いながら、大原は病室から久々の地球の外の世界を見ていたのであった。
あの強烈な痛みが無い。
なぜあのような痛みが出たのか…その辺は色々と聞いていこう。
そんなことを考えながら目を開ける。
知らない天井だ。
病室から目覚めた時のお決まりのセリフだ。
その作品も二十年前ほどだろうか。
新しく制作…いやこの場合はリメイクというべきだろうか、やっているらしい。
あまり見た事がないが、セリフ等は有名だ。
とりあえず身体を起こす。
時刻は七時三十分。
地球に転移した時間は…七時くらいだっただろうか。
十二時間は眠っていたらしい。
「あら、起きたのね。」
声のする方向へ向くと賢者がいた。
「おはようございます。色々と聞きたいことはありますが…飲み物とかあったりします?」
「それを買って来て少し遅れたのよ。分からないから水にしておいたわ。」
手渡しでペットボトルを受け取る。
「ありがとうございます」
ゴクゴクと一気に飲み干す。
「三ヶ月分の水分だものね。いい飲みっぷりだわ。」
「そんなことよりも、あの激痛はなんです?やばいですよあれ。」
賢者は椅子に座り少しずつ話し始めた。
「あれは魂の状態で過ごした経験値が、貴方の肉体で巡り巡っているの。言うなれば、身体がついていけていないのよ。」
「つまり、三ヶ月分の成長が一気に来たってことですか?」
「そういうこと。貴方は成長したけど、寝たきりのあなたの身体は成長していない。あの激痛は、昨日までの貴方の体にするために起こった…肉離れ的なやつ。今は痛み止めやら、麻酔やらで痛みは無いと思うけど。」
「まぁなんとなく分かりました。けど昨日までの自分に戻るってなんでそれが起こったんですか?」
「魂にセーブされてたのよ。簡単に言えばね。」
あー、なんとなくわかる。
今俺の体は馴染もうとしてるわけだ。
「というわけで、一週間ぐらいはリハビリに励んでいく感じね。」
「身体をほぐすってことですか?」
「それもあるけど、今のうちに魔力を放っておかないとね。とはいえ、私が勝手にすることは出来ないの。先生は9時ぐらいに来ると思うから、安静にしてなさい。」
「分かりました。」
そう言ってから一時間半が経過したところで扉が開いた。
そして驚いた顔をしながらも、涙を浮かべていた人はこちらに恐る恐る向かって来る。
「将希?大丈夫…なの?」
身体を起こしながら俺は応える。
「まぁ大丈夫だよ。今のところはね。」
「良かった…良がっだ…!ずっと目覚めないから心配で心配で…!」
母さんはベッドの上にうつぶしながら、願うように泣いていた。
「よう。心配したかい?」
後ろで白石さんと一緒にいるのが妹の真凜だ。
「多少はね。自分の部屋を持てたからそこまでじゃなかったよ。」
俺の部屋のことだろうか?
この三ヶ月間は真凜が俺の部屋を使っていたようだ。
「残念だったな。俺が帰ってきたら俺の部屋に元通りだ。」
「本当だよ。広々空間最高だったのに。」
他愛ない会話も久しぶりだ。
ここでようやく帰って来たのだと自覚することになった。
「では将希さん、お母さんに説明しますね。」
そこから白石さんは俺の今の状態とこれからのことについて話し始めた。
ところどころ、ん?となるところもあったがおそらくそれは後で話されるのだろう。
「一週間?それぐらいでいいのですか?」
「はい、順調に行けばですが。」
「分かりました。将希、無理はしちゃダメだからね。」
「もちろん。」
「ゆっくりで大丈夫だからね。」
「そうさねーぼちぼちやっていこうかな。」
そんな会話をしながらも、一応の面会は一度終わりを告げたのだった。
「…んで本当のところは?」
白石さんにごまかしたところを改めて問い詰める。
「何ともありませんし、そもそもそのような容態ではありません。痛み止め等は打ちましたが。ですが、一週間のリハビリはやってもらいますよ?」
やっぱりこっちでも異世界に行っていたことはタブーにされてるのか。
そして白石さんはそれを知っている。
知った上で伝えていないということなのだろう。
「分かりました。それで、リハビリ内容はどのような感じですか?」
「今から行くところでした。お母様にも見せないようにしなければいけなかったのでね。」
ということは…そういうことなのだろう。
ベッドから出る。
体感がおかしい感じだが何とか歩ける。
魔力の感覚がある。
異世界に行ったあの三ヶ月間は嘘偽りの無いものだと体が教えてくれる。
しかしここで魔力を使うのは少しだけ怖い。
なので手すりに捕まりながら白石さんについていく。
白石さんについていくと見覚えのある人が立っていた。
「賢者様…。これは何ですか?」
賢者の後ろには箱のような、コンテナのようなものが置いてある。
「ここで大原君はアルシアさんと共に、身体をほぐしてもらいます。」
「あれよ。訓練場みたいなやつ。この中に入って身体をほぐすのよ。」
なるほど?ほぐす=戦うってことだね。
ボコすの間違いじゃないの?
「とりあえずは三ヶ月分の運動不足を多少は賄えるとは思うので、最初は辛いと思いますが、頑張ってください。」
「さあいこう。大原君。」
賢者は少しワクワクしながらそのコンテナの中に入っていく。
コンテナの中は予想以上に広々としていた。
地面は砂で満ちているだけで何もない。
まるで砂漠のように思えるこの場所に、俺たち二人は立っていた。
「今回は魔力を多く放つこと。多分だけどすべての魔力を使ってもリロードされると思うから。」
「魔力が周り巡っているのはそういうことなんですね。」
俺は手のひらにすべての魔力を集める。
巨大な炎の魔力の玉は太陽のように賢者を照りつける。
そしてそれを放った。
賢者は転移で俺のそばにより、その衝撃を見届けた。
爆風がこちらまでに届き、砂埃もすごい。
放った場所にはクレーターのような感じで凹んでいた。
「これらは明日には砂で埋まっているからじゃんじゃん撃ちなさい。明日はもっと動くことになるからね。」
「分かりました。」
それからすべての魔力を使ってアレンジを加えたりなどをして、放っていった。
途中昼食を挟みながら、それを五十回程やった段階で今日のリハビリ…魔力放出は終了となった。
時間にして午後4時ほど。
水分補給をしながら、ベッドでゆっくりしながら外を見ていた。
これから一週間は、この暇な時間が多くなるのだろうと思いながら、大原は病室から久々の地球の外の世界を見ていたのであった。
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