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第六章 魔王軍襲来 風の世界<フーリアスター>編

93.VSフラミリア

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 一方麗華陣営では…

 
 「うふふ!」

 「…っ!」

 「流石に、きついね!」

 一発でも喰らったら終わりの攻撃を連発してくる。

 そんなものをずっと避けたり、いなしたりするのはきつい。

 だがこれを多少なりとも軽減はできているのだ。

 天衣無双。

 麗華の攻防一体の技。

 風の魔力を身体の周りに展開しながら、乱舞をする。

 今回は防御に集中している。

 周りにある風の魔力を利用して、相手の蹴りや殴りを押さえ込んでいる。

 そして、風龍の防風。

 風龍の周りにいる者に宿る加護。

 相手の攻撃を抑えることも出来、相手の攻撃の軌道を逸らすことも出来る。

 これらで押さえ込んで、やっと視認できるほど。

 風龍がいいタイミングでフラミリアを押さえ込んでくれるおかげで、一呼吸出来る時間が増え、耐えられる時間が長くなっていた。

 「いいわね。すぐに終わらない人間。それに、心気を使う龍。多少は神の力も宿してるのかしら?なら私も少しは思いっきり、やりたいと思っていたのよね。」

 フラミリアは炎の魔力を生成する。

 生成したものは、剣と槍。

 「技はイメージが定着すれば良いもの。なら、それ相応の強さを誇る名を与えないとね。だから、この剣の名前は「レーヴァテイン」槍を「グングニル」と名付けたわ。」

 レーヴァテインとグングニル。

 どちらも神話にある武器だ。

 恐れ多くもその名を記すにはあまりにも不敬なものだ。

 けれど、あれは麗華達から見れば、それ相応のものの威力を誇っているのは間違いない。

 「さぁ、これをどうするのかしら?」

 まずは、エリックから。

 対魔力というのは「獣化」によって高められているが、その上を行く威力だ。

 腕を負傷した。

 ガードの上からの攻撃だ。

 両腕に突き刺さった。

 防風によって、急所は外された。

 回復しない限りは使い物にならないだろう。

 間髪入れずに次へ、ルミナの方へ。

 予測していたのか、グリムがルミナを守るようにして立ち塞がる。

 龍の証をフルに使う。

 全ての属性を偽エクスカリバーに流し込む。

 王位真剣流、光被。

 守る事に特化した技。

 範囲が広く、オールレンジに対応出来る。

 強烈な連打を防ぐ。

 防ぐだけで、体力が持っていかれる。

 反撃など出来るはずもない。

 そこに麗華がフラミリアの後ろをとった。

 フラミリアはそれを察知してレーヴァテインを向かわせる。

 だがそれを、かき消した。

 その勢いのまま、フラミリアに一撃を与えた。

 麗華の能力、「衝撃インパクト」と風の魔力を使用した、魔力無効化技、「滅風掌」。

 風の魔力を手のひらに集中させ、魔力をかき乱し、消費させる。

 初めての有効打を与えた。

 とはいえ、きついことには変わりはない。

 グリムは、自分達の状況を見て判断した。

 エリックは腕が使えず。

 ルミナは魔力が無くなっていき、僕と麗華さんは疲弊している。

 四人と風龍がいてこのザマだ。

 魔力を出し惜しみしてる場合ではないかもしれないな。

 「ふふ、久々にいい攻撃を貰ったわね。中々ないのよ?こんな事って。」

 話し始めた?

 だが、これはチャンスだ。

 息を整えられるし、情報も引き出せるかもしれない。

 「それは、誇りに思って貰っても、いいのかな?」

 「ええ、魔族でもそうそうないわね。それこそ人の身で一撃を与えるなんて、不可能に近いと思っていたけれど。」

 「良かったね、麗華さん。褒められてるよ。」

 「…努力した甲斐がありました。」

 麗華さんもこの状況を利用して、少しでも息を整えるようにしている。

 「魔力無効化。それぞれの属性の特色を活かして、その魔力自体を打ち消す技。使用出来るのって相当な経験を積んでるか、能力によるものだと思っていたけれど、あなたはその若さで出来るのね。」

 攻撃をくらってから理解している?

 ということは、運命の能力はやはり…。

 「…後ろにいるドラゴンさんに教えてもらいました。」

 「なるほどね。風龍、インベリデントドラゴン。風の世界の属性龍エレメンタルドラゴンの中でも、最強に位置するドラゴン。そんなものに教えられたら、使用出来るのも不思議ではないわね。」

 「ありがたいことだ。かのフラミリアに褒められるとは、長生きするものだ。」

 「?この方それほどすごいのですか?」

 「フラミリア・スカーレット。吸血種の女王の立場に位置する、我らよりも生き続ける、この世界の最長類のお方だ。」

 「あら、そこまで知られてるなんて思わなかったわ。」

 「こちらこそ、どこで知り得たので?」

 「本で読んだのよ。風の世界からの本。人が作る最高級の文書よね。特にこの二百年、前と後ではとてもじゃないけど全然違くて驚いてしまうわ。」

 二百年の前と後…その時期は…。

 「魔族はみんなラグナロクを生き残っているのか。」

 ラグナロク。

 約二百年前に起こった、全ての世界を巻き込んだ、神々と人との物語。

 それの話をしているのだろう。

 「全員がってわけじゃないけどね。みんなの力を貸してくれたおかげで、今人が生きれる環境になっているわ。」

 「それを経験しているのに、戦争をしているのかい?それとも、生きすぎて忘れちゃったのかな?」

 「違うわ。これは貴方達への試練の様なもの。それに、ブーメランっていうのよね?これ。いくら神々の力があるとはいえ、忘れているのは貴方達の方でしょう?」

 忘れている…。

 確か、雷の世界でそんな話をした気が…。

 「二百年前の話は自然と忘れてしまうらしいですね。」

 「ええ、流石に経験したことは無理だけど、あとから生まれてくるものの方が多いもの。経験を積んだ者はみんな死んでいくのだから。」

 「いろいろ知っているな。」

 「ええ、その時の書物もあるしね。定期的に読んでいるわ。」

 「色々と話が出来そうだな。」

 「ええ、本当なら戦いになんて来たくは無かったのだけど、これも必要なこと。とはいえ、貴方達は彼の基準でいうと、合格しているはずだから、殺しはしないけどね。」

 それでも痛ぶるのだろう?このドSめ。

 「彼の基準…それが魔王ですか?」

 「違うわ。あいつの基準じゃないわ。タイムズの基準の話よ。」
 
 魔王がタイムズに指示をしているのではなく、タイムズが魔王軍を指示しているということか?

 タイムズという者は、一体何者なんだ?

 「タイムズの基準を超えた者達は、地球アーススター光の世界グルミナスター以外は認められているわ。」

 「地球アーススター出身だから、大原を殺すってことになったのか?」

 「違うわ。彼は彼で死ななければならない。彼が死ぬかどうかで、運命は違う方向へと向かって行ってしまうわ。」

 「世界の脅威になると?」

 「世界の救世主になるのよ。」

 …何を言っている?

 死ねば、終わりだろう?

 どんな能力者であっても、完全なる復活は不可能だ。

 死者を操る能力は存在しているが、そこには自我がない。

 つまりは、大原をそういうふうに使うという予想はできる。

 もしくはそれ以上かもしれない。

 「…狂ってるよ、君たち。」

 「痛いほど分かるわよ。彼が死んだ時、最終的には貴方達は救われる事になるからね。」

 「ああ、君たちはもうダメだ。僕の初めて同じ年代の、違う世界のライバルになった者を殺すっていうんだから、生かしてはおけないね。」

 「あら、友達のために戦うのね。うん、戦う理由としては充分な理由ね。じゃあ、また楽しみましょうか?」

 戦闘態勢に入る。

 またあの攻防が襲ってくる。

 体力は回復した。

 息も整った。

 後はまた、きついきついランニングの始まりだ。

 「待って下さい。」

 そんな空気をぶった斬るように、麗華さんは待ったをかけた。

 「お話しをもっとするべきだと思うのです。とても興味深い話がいくつも出てきました。その情報を持つ、この方と戦うことはないのではないでしょうか?」

 「麗華さん。この人たちは、君たちを、大原将希を殺しに来たんだよ。戦わなくては、殺されてしまうよ。」

 「そうですね。でも、まだ撤退していないところを見るに、まだ大原さんは生きていますよね?」

 「…そうだね。」

 「こちらは負傷者もいますし、何しろ私たちはこの方のことをよく知りません。風龍さんは知っていそうでしたけど。」

 「いえ、自分は知識として持っていただけで、今日初めて会いました。」

 「そうなのですか。というわけで、このまま戦っても勝てないのは明白です。殺されなくても、飽きられたりして、逃げられれば戦況が大きく変わってしまいます。ここは、話せるだけ、話したほうが良いと思うのですが。」

 …一理ある。

 だが、それを許すほど相手はやわじゃない…。

 「あら、いい提案ね。飽きることはなさそうだけど、戦うよりかは、貴方達の話を聞きたいわね。」

 …ゆるいね。

 とはいえ、きついのは確かだ。

 話せるなら、話した方が良さそうだ。

 「了解だよ。ルミナ、エリックを頼む。」

 「承知しました。」

 紙を用いて、ふよふよとエリックを運んでいく。

 「便利な能力ねー。」

 「では、早速…」

 話そうとした瞬間、大きな発砲音と共に、強大な魔力砲が魔王軍戦艦方面へと向かった。

 着弾の音が聞こえる。

 衝撃が少しこちらにも響いてきた。

 「貴方達、あの魔力砲はどんな原理で?」

 「えっとそれは…」

 またも話そうとした瞬間に、強大な魔力砲が空をかける。

 だが、それは魔王軍戦艦方面から放たれた魔力砲だ。

 狙いは、先ほどの魔力砲が放たれた地点。

 着弾する。

 爆発音がこちらにも大きく轟いた。

 「…なんです?あれは。」

 「魔王の一撃というところかしらね。けど大丈夫よ。死人は出ていないわ。あの、金髪の子が指示を与えたから問題ないわ。」

 いや、でも、あれは…

 「さぁ、話をしましょう?色々と…ね?」

 得体の知れない威圧感と共に、フラミリアと話をするのであった。




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