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第六章 魔王軍襲来 風の世界<フーリアスター>編
90.VSエレメス部隊
しおりを挟む「…撤退していく魔力反応があるな…。」
アリサの感知したものは、おそらくミスターOのものだろう。
大原と賢者、そして炎龍の魔力を感知できている。
ん?でもあの感じは…気のせいか?
まあいい。この戦いが終わったら聞くとしようか。
アリサは全体の状況を見ていた。
麗華陣営は圧倒的な強さを誇るフラミリアに苦戦していた。
苦戦しているというのはあくまで当事者の話だ。
アリサ目線からして見れば、他の場所に行かせないように足止めが出来ていると思うわけだ。
ラムズ部隊は未だ停滞中。
とはいえ、もうそろそろ仕掛けるだろう。
ギルドの面々は展開するゴブリン達を確固撃破する立ち回りをしている。
雷龍とエノス団長の力で支配には逃れている。
…まぁ、自滅していると言ってもいいか。
雷龍は、支配された者を雷で撃ち落としているのだ。
的確ではあるが、長期戦は不利だ。
龍也の方は…。
バチッ!と長距離からの攻撃に対応する。
龍也と戦いながらも、こちらにもちょくちょく撃ってきている。
戦い慣れし過ぎるな。
要注意というところか。
無風の夜叉の面々は…殺さないように立ち回っている?。
ユナさんも殺していないし、大原のやり方がここまで浸透しているということかな。
「あたしが行っても変わらないな。どっかでこの均衡を破りたい所だけど…」
何処もかしこも停滞している。
後一手が足りないようなそんな感じだ。
その一手は間違いなく…。
「…とはいえ、なんか攻めっけがない感じだ…。様子見っていう感じ、死なない立ち回りをしている?」
それはそれで隙がない。
早く展開しないと、流石にフラミリアの相手はきつい。
ラムズ陣営では…。
「撃ちまくれ!」
エレメス率いる魔人部隊の総攻撃を受けている。
対して、ラムズ陣営はやり返すように魔力弾を撃ち続けている。
「魔力量はこちらが上だ。わざわざ白兵戦などしなくても良い。」
魔力弾の雨の中、土の魔力で壁を展開して耐えている。
地龍の壁は対魔力、いや魔力無効化が張られているため全く通さない。
それを知らずに撃ち続けている。
あまりにも意味がない。何故そうなったのか。
理由は二つ。
一つはこちら側が撃ち続けている事だ。
陣営側が撃っているのは確かだが、一人一人が撃っているわけではない。
地龍の魔力によって土の魔力弾が撃ち続けているが、相手には一度もヒットしていない。
距離が遠いから、壁で敵が見えない、糞エイムなんだろ?言い訳すんな!という訳ではない。
地龍は自身の加護で魔力を生成すること、つまり消費した分の魔力を回復することができる。
条件は簡単だ。
地面についている事だけだ。
そして相手に当てていない理由は、地面に撃っているからだ。
自分のテリトリーである地面に撃つ事で、消費した魔力は地龍に還るという事だ。
地産地消ってやつだあ。(多分違う)
二つ目は自分達の過信だ。
魔族は全ての種族の中で、魔力量が多い。
故に人の身ではこのように魔力を使い続けることは出来ない…と、たかを括っているのだ。
それが仇となると知らずに…。
「ふむ、みんな待たせたねぇ。体力は回復できたかい?」
ラムズは全体に声をかける。
「いつでも行けるぜ。」
「同じくだ。」
ガラム、ヤローに続くように皆頷いた。
「無風の夜叉の皆さんもよろしくお願いしますね。」
「やっとですか…少々休憩が長い感じですね。」
「ま、俺たちは俺たちの仕事をするだけでしょ?ダイナさんっ。」
キルスとダイナはピクニックに行くみたい肩を組みながら作戦行動に移った。
この壁で耐えている間に、作戦を立てた。
ラムズの観察眼による、ぶっつけ本番の作戦だ。
目標地点までの戦いと、この立てこもりの間におおよその戦力は把握できた。
惨劇の愚者はいない。
ここの戦いが重要だ。
「さてと、奏でるとしますかねぇ。」
ラムズは能力を発動させる。
それと同時に壁が無くなり、弾幕の雨の中に入って行く。
「馬鹿な奴らだ。思い切りやってしまえ!」
魔力を多く消費するエレメス部隊。
乱射している弾幕は当たらない方が難しいほど密度があった。
実際、当たっている者もいた。
いたが…ほとんどのものが避けていた。
「そこ、ワンテンポ遅らせて。そちらは左へ。地龍さん、あそことあそこに壁を。君はジャンプして。」
ラムズの能力によって、相手の弾幕が一つの音楽になっているようだった。
まるで音ゲーだ。
音ゲーのノーツをミスるゲームだ。
ラムズの能力、「テンポ」。
自身が使用する際には、緩急を上手く使っている。
しかし彼が一人指揮にまわれば、弾幕は音色に、属性は楽器に、敵の攻撃は彼に指揮されている。
オーケストラの指揮者ならぬ、弾幕の指揮者だ。
「どっちにしろこれは…」
「反射神経が物を言わすよね!」
こればかりは練習あるのみだ。
ぶっつけ本番にそんなものをぶつけないでほしいものだと思うものは多くいただろう。
だが、標的を目の前までにたどり着いたものは多かった。
「何…!」
エレメスは驚愕した。
人のみでありながら、この弾幕の中、怯まずにこの場まで来れるものかと。
いるのだからしょうがない。
認めるほかないだろう。
それでもやはり無謀と言わざるおえないだろう。
「未だ距離があるこの状況で、攻撃が届くと思うか?」
中距離戦はあちらに分がある。
すぐさま防御壁を張り、魔力弾に備える。
「ここからは一方的な殺戮よ!」
「ぶっ壊す!行くぞ!ヤロー!」
「もちろんだ!」
ガラムは剣舞、「崩落」を使用。
土の魔力を利用した斬撃。
地面を切り裂くように、相手へと砂埃を起こしながら向かって行く。
ヤローは剣舞、グロウフレイムを使用。
マグマのような炎が、下から上へと登って相手に向かって行く斬撃。
この二つの斬撃は相手の防御壁に直撃した。
しかし、防御壁はヒビこそ入ったものの破壊するには至らなかった。
防御壁の周りには衝撃による煙幕が辺り一帯に充満していた。
「良い技だが、我々までには届かなかったようだな。すぐにこの煙を退けよ!ここからは引きつつ攻撃をするぞ!」
魔人達はすぐに下がっていった。
だが、下がった先で待ち受けていたのは、爆発だった。
「な、何⁉︎」
地面の中に仕掛けられた、魔力反応爆弾が至る所に設置されていた。
しかしながら、ありえないのだ。
私達が戦っている場所は先ほど戦った場所と同じだ。
何故そこにその爆弾が存在する?
回り込まれた形跡がないのに、何故?
ラムズの作戦はこのようになっている。
1、正面突破隊と小規模別動隊を同時に向かわせる。
正面はラムズの指示に弾幕の雨を突破した者たち。
別動隊はキルスとダイナだ。
ダイナとキルスが相手側に回り込んで、爆弾を設置。
しかしてどのように回り込んだのだろうか。
ここで、キルスの能力を思い出してみよう。
能力は魔力を隠す能力。
この能力は設置した魔力を隠すこともできるのと、触れている者の魔力を隠すことも出来る。
だから、ダイナとキルスは肩を組んで歩いていた。
別に肩を組む必要はないのだがなぁ。
2、中、近距離戦を展開。
ガラムとヤローを筆頭に近距離戦に持ち込む。
「しまった…!」
狙うは幹部。以外の兵だ。
こちらには戦力差がある。
苦戦を強いられるような者と戦って勝つのは、アリサレベルの強さの人がやって貰いたい。
「みすみすと兵をやられているところを見ていると!?」
当然反撃があるでしょう。
それを、中距離部隊でおちょくります。
先ほどの突撃の際、地龍に壁を展開したところに中距離部隊を編成。
指示は、ラムズこと僕とミナトがタイミングを見計らって一斉砲撃。
これで相手はこちらを無視することは出来ない。
後ろからはダイナとキルスが。
前にはヤローとガラムを筆頭に押し上げ、中距離部隊が援護。
そして3、後ろ、前と攻撃をされているけど、上からも注意しないとね。
ファスティアによる空からの攻撃。
煙幕を展開しつつ、空から攻撃室もらう。
彼女にはテレパシーでこちらの援護に来て貰った。
彼女にはこの戦場を縦横無尽に展開してほしいので、あまりこの場にも長居できない。
ならば即座に殺す。
というのは、あまりにも楽なことですが、出来るのならば、生かす道を探していきたい。
この戦争は殺すための戦いではない。
守るための戦い。
ならば、彼の願った戦いを、そんな夢物語を行おうじゃないですか。
僕たちは、未だ理解もしあえていないのだから。
「ふむ、このままどんどんと撃っていきます。流れ弾等は気にせずに撃ちましょう。」
「了解です。」
次の一斉砲撃を行おうとした瞬間。
陣形を取っていた真横から、ゴブリン部隊が現れた。
完全に隙を突かれた。
退避も間に合わない。
誰かは死ぬ。
死ぬのならば、「僕がやるしかないですよねぇ」
ラムズはゴブリンの前に、庇うように立ち尽くした。
攻撃が来る。
その前に、眩しいほどの雷鳴が轟いた。
十程いたゴブリン部隊を一瞬にして気絶させ、その者は立っていた。
「未来が見えたからさ、居ても立っても居られなくて、来ちゃった。」
その少女、アリサ・ライトニングは圧倒的な強さを見せつつ、ちゃめっ気を出していたのだった。
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