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第六章 魔王軍襲来 風の世界<フーリアスター>編

81.それぞれの戦い

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 「マスターブレイブ、ゴーレムを吹っ飛ばした⁉︎」

 「アーシャ、充填量は?」

 「今からやるんだよ!暫くは楽できると思ったからな!」

 今からニ十分か。

 「全員!作戦行動を開始しろ!幹部!及び、惨劇の愚者には注意しろ!」

 「はい、では始めます。フレンさん、部隊全体に指示をお願いします。」

 「通信受諾。了解、そのように指示を回します。」

 フレン・ブレーイン。能力、「テレパシー」

 全体への簡易的な指示を送る役割だ。

 アリサが事務系の役割を持ちたい者を募集したところ、何名かが立候補した中にいた。

 能力等を利用させるためにアリサのそば付きとしての役割を持った。

 「テレパシーを受け止めるのと、伝えることは大変な事だ。それはあたしにも分かる。けど、君がいれば即座に指示を与えられる。あたしらには君の能力が必要なんだ。協力してくれると嬉しい。」

 その言葉だけだった。

 能力は自分では選べない。

 能力を使うと気持ちが悪く思われていたから、そんな風に力になれるとは思わなかった。

 自分ができることをするためにこの場に来た。

 なら出来ることを少しでも役に立つことをしたいと思ってしまった。

 「承諾したなら頑張らないとですね。」

 「皆さん私の言葉は聞こえていますか?」

 脳に直接語りかける感覚。

 違和感がとても凄い。

 「これが、テレパシーか。」

 大原は作戦会議以外は全体と行動はしていなかったため、あまり慣れていなかった。

 「とはいえ、聞こえているのは分かりきっているので、このまま話します。皆さん、作戦名ライトニングでお願いします。」

 「了解しました。」

 「では、行くぞ。あの時は攻めに転じたが、今回はこちらの庭だ。あの時と同じことにはならん。」

 魔王軍の歩兵部隊、ゴブリン、ウルフ、魔術師、その他諸々の部隊が進軍中。

 ゴブリン部隊、三万。

 ウルフ部隊、三万。

 魔術師、その他諸々、合わせて2万ほど。

 総勢八万となる部隊は、それぞれ奇襲を受けた。

 場所は後方。魔力の残穢はなし。

 警戒態勢を常に維持していた。

 そしてこの一瞬にしてとどめを刺すやり方を、我々は知っていた。

 「無風の夜叉か!」

 「匂いもなかった…これは…何かしらの仕掛けがある。」

 ウルフ部隊、隊長のファング・アーキム。

 ウルフは、魔力を追えるのはもちろんのこと、匂いで対象を探知する術を持ち合わせていた。

 それが効かないことに関して違和感を持っていた。

 何故か?それはそちらに裏切り者がいるからだろう。

 「ウルフは鼻が効く。我々の匂いも覚えているだろう。逆に言えば、覚えているものは脅威には感じないだろう?」

 アリサはレグルスに話を聞いて、匂いを利用したマントを作り出した。

 対浪のマント。

 無風の夜叉全員に行き渡った。

 「分からんものはしょうがない!全員!この森を破壊しうるほどの範囲技を打ち込め!」

 魔術師部隊、隊長のエレメス・ブラバーは、風の魔力を用いた範囲技を展開しようとする。

 「一度離れるべきだな。撤退だ。ダイナ。」

 「怨嗟の声が聞こえ無いのは残念ですが、またの機会に。」

 手を合わせてから地面に手をつき、地面を爆発させる。

 「っ!今はいい!すぐにこの森を排除しろ!」

 風の魔力を用いて、あたりの木々を切り倒す。

 その視界が開けた時に見えたのは、迎え撃つ者たちの姿だった。

 「ケモ耳だけど怖いっすね。機動力の戦いになりそうっすけど。」

 「そうか、だとすると足手まといになるかもな。」

 ウルフ部隊の前に現れたのは、龍也、レオス率いる四千の部隊。

 「現れたか、大原将希の守護者たち!」

 「オオカミが喋ってる!」

 「そこはいいんだよ。」

 「我々の速度に恐れおののけ!その首が無事で済むと思うなよ!」

 「お前たちの牙如きでオレの首を狩れると?」

 そんなことに相対していると、一発の銃弾がレオスに当たる。

 「レオス⁉︎」

 「問題無い。」

 硬化の能力で銃弾は弾かれた。

 「なるほどなぁ。ただ噛むだけじゃダメらしいぞ?援護してやろう、ファング。」

 「ありがたいです!ヒッチ様!」

 「!惨劇の愚者の一人!ライン・ユー・ヒッチ!」

 「おお!有名人だねぇ!んじゃまぁ、始めるか?始まってるけどな?はは!」

 余裕綽々のラインに対し、警戒態勢を強める龍也とレオス。

 「まぁ、こうなるよなぁ。」

 一方、ゴブリン部隊の方では。

 「君たち、僕の指示に従ってもらうよ?」

 「カリス様!もちろんでございます。」

 惨劇の愚者、カリス・マーガトン。

 ゴブリン部隊、隊長のゴブリュス・リーバー。

 そこに相対するのは…。

 「おいおい、いきなりクライマックスじゃないか。確実に仕留めに来たのかな?」

 「おちょくるのはやめて下さい。貴方がそんなだとギルドの士気に関わります。」 

 エノス団長率いるギルド部隊、総勢五千。

 「後方部隊には奇襲の準備を、残りは前方に。さぁどう君達の心を支配していこうか?」

 「馬鹿だな!俺が支配されてんのはただ一人だけなんだよ!」

 「叶わぬ恋を追い続けるのは悲しいことです…」

 そして魔術師部隊では。

 「なんとなんと、神谷の巫女が相手をしてくれるとはとても楽しみだわ。」

 「フラミリア様。どうぞ何なりとご指示を。」

 「ええ。指示を出すわ。私の邪魔をしないで。それだけ、いいわね。」

 「承知しました。」

 惨劇の愚者、フラミリア・スカーレット。

 エレメス・ブラバー。

 相対するのは。

 「気合い入れて行きましょう。」

 「マイペースだなこの人。」

 「自分のペースで戦えるのはいい事だしねぇ。とりあえずは、あの吸血鬼の動きを見極めないとだねぇ。」

 神谷麗華、ガラム・ダイコー、ラムズ・フィルケル率いる部隊、総勢三千。

 「ふふ、やっぱりいい運命が見えるわ。この運命の火が消えるまで、踊りましょう?」

 「もちろん。こちらも舞踊でお相手します。」

 「真面目に返すところじゃ無いと思うのだが。」

 そして、大原将希 対 ディサップ・バニシュ。

 それぞれの戦いの火蓋が切って落とされることとなる。

 「さて、ここからは…」

 「ここからは…」

 「「あたしらの(我々の)作戦の差で決まる。」」

 タイムズ・スクエアとアリサの策士の戦いも始まっていた。
 
 

 

 
 

 
 
 

 
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