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第五章 剣豪大会編

75.賢者の秘密 1

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 ギルドに戻り、昼食、多少の仕事をして夕食を食べ、あとは風呂に入って寝るだけだ。

 けど、今回は…賢者様に色々と聞いてみたいことがある。

 呟くように賢者の名を呼ぶ。

 「何なに?秘密の呼び方みたいで良かったよ今の。」

 「…これで聞こえるのは間違いなく何か仕込んでますよね。」
 
 「えー!そうかな?」

 「俺に仕込んでいるのか、俺自体に何かしたのか。」

 少し、いやもう明確に雰囲気が変わった。

 「何がいいたいの?」

 「話をしましょう賢者様。いや、アルシアさん。」

 「…そうね。少し、話しましょうか。」

 別室に移動することとなった。

 その様子を見ていたのは、ユナだった。

 「ごめんなさい、大原さん。」

 ただ、興味というか、心配というか、見てしまったからには聞きたいというか、とにかく自分がそうしたいと思ってしまった。

 「さて、どこから聞きたいの?」

 「俺の監視体制のことはここでは話しません。おおよそ予想がついてるので。」

 監視?大原君を?なんのために?

 「そう、ではなにを?」

 「アルシアさんは、あの時、いやこの大会中何故あんなに暴飲暴食をしていたんですか?」

 そんなことを聞きに来たの?

 「そんなことを聞きに来たの?わざわざ?」

 「そうですよ。そんなことを聞きに来たんですよ。とても美味しそうに食べてましたよね。まるで今まで食べてこなかった分を取り返すように。」

 その瞬間、俺はアルシアさんの目の前にいた、側からみれば強く睨みつけられているように見えるだろう。

 けど、俺には悲しみを堪えているようにしか見えなかった。

 「初めて、明確な感情が見えた気がしますよ。いつも無感情で、無理して笑ってるように見えて、元気な子っぽく振る舞っていて、違和感があったんですよ。」

 「…他の子には騙せていたのに。」

 「人に敏感なんですよ、俺。」

 「ごめんなさい、今は勇気が無いわ。また、あんな風に忘れ去られるのが、怖くて…もう…ずっと、分かり合えないことを知ってるから…」

 何を言ってるの?賢者様は。

 話の意図が分からない。

 「分かりました。無理して応えてもらう必要はありません。」

 「…いいの?嘘かも知れないのに?」

 「だって忘れちゃうんでしょ?なら意味がないじゃないですか。忘れてしまうってことは、今話すべきことじゃないって事じゃないですか。だから、その時になったらお願いしますね。」

 「…ええ必ず、必ず伝えるわ。私の旅路を。」

 「じゃあ話は終わりね。」

 !離れないと!

 すぐさまその部屋から離れ、自室に戻るユナ。

 「なんか、よく分からないまま話が終わりましたね…」

 あれで、通じるものがある。

 言葉にしなくても分かる関係…

 それが出来たら、きっといいんだろうなって思う。

 そうしたらきっと…きっと、争いなんて起きてない。

 「なんで、魔王軍は戦うのだろう。」

 少し、そんなことを考えてしまう夜だった。





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