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第五章 剣豪大会編
65. 2日目、第二回戦、大原 対 ガラム
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2日目、大原たちは宴会の疲れと共に会場へ足を運んだ。
屋台、鍛冶屋などに客は殺到しつつ、客足は会場に向かう人の方が多い。
「今回はマジで分からないな。」
「俺、アリサに投票した。まだ底なしって感じ。」
「まぁ俺は、あんぱいでイノスに入れた。」
「大原選手に入れたわ。」
「マジ?流石に難しくない?アリサに勝てる未来見えないけど。だからってなぁ」
と優勝予想で持ちきりだ。
「結構注目を浴びてますね。」
「見る目あるなあ。その期待に応えてきますよ。」
「ああ、そんでもってあたしはお前と闘う。楽しみだ。」
「お前らよくもまぁ余裕でいけるなあ」
「大丈夫だ龍也。君の強さは折り紙付きだ。僕の目に間違いはない。」
「そうだな。俺の相手はイノス。一回戦では手の内を見せずに相手を圧倒した。俺がやられるのは目に見えてるからな。少しでも、情報を引き出してやるよ。」
ヤローは龍也に肩を組みながら話す。
実力の差を見ての判断。
それは、もう一ヶ月前に体感した事だ。
強いやつは強い。
持ってないものをたくさん持っている。
ただそれだけだ。
それだけの差で変わってくる。
「ヤローさん」
「まぁ、才能の差って奴だろうな。こればっかりはどうしようもない。成長は人それぞれ。俺には無いものだ。だから、お前はもっといい試合をしてほしいとも思う。」
「…はい、頑張らせていただきます。」
「んじゃあ、行ってきます。」
「頑張ってきて下さい。皆さん。」
ユナさん達に見送られて俺たちも会場に向かう。
「貴方達も特等席に来る?」
「うわ、俺たちにも出来るんですか?もったいない事をしてしまった…もう席取ってますよ。」
「あら残念。ならまた明日ね。」
「ありがとうございます。では、また後ほど。」
「ええ。」
フー達は予約をとった席に向かう。
「俺は、警備があるからそっちに向かう。明日は休暇だな。」
「団長…それでいいんですか?」
「大丈夫だ。俺たちの他にも頼りになるやつはいる。
」
誇らしげに語るエノスを見ると、自由だなあと思う今日この頃。
その場にいた全員がやれやれと思ってしまうほどだった。
「おはようございます!皆さん!今回も私、ファスティアとマスターブレイブで、実況解説を行なっていきます!」
モニターに光が灯される。
「さて、皆さま投票を行なって貰いましたでしょうか?今現在、表示されているのが皆さんが投票してくださった統計データです。」
イノス 34.6%
アリサ 23.6%
グリム 16.3%
大原 14.6%
龍也 6.9%
その他 4%
「やはり、マスターブレイブのお弟子さんという事もあって得票数を集めていますね。」
「正直、修行の合間の息抜き程度に優勝させてあげようかと思っていたのじゃが、流石に…強者が集まっておるのう。逆に、このタイミングで参加できたのは良かったのかもしれんのう。」
「修行の一環ということでしょうか?」
「そうじゃな。自身の実力と、他者の実力。どう推測っていくか、どう詰みに持っていくか、はたまたどこに弱点があったか、良い面悪い面を見つけるチャンスにもなり得る。それは、他の者も同じであろうがのう。」
「なるほど、この大会は自分の実力を出し切る場所であり、自分自身を知るということでもあるということですね。」
「よくまとめてくれたわい。その通りじゃ。」
舞台は移り、観客席。
「いい事言うわねー」
「賢者様もああいうことすればいいじゃないですか。」
「嫌よめんどくさい。裏でちびちびやってた方がいいのよ。分かるでしょ?暗殺者だったんだから。」
「ま、まぁ正面からよりは裏から手引きして…って何言わせようとしてるんですか!」
「い、淫乱⁉︎」
顔を真っ赤にして引いているミーナ。
「ミーナ様それは行き過ぎかと。」
「どうしてそうなるし…」
意外とこういう話は弱いのかと全員が思った。
全員のミーナの知的能力が想像よりも10下がった。
「っと始まるみたいだな。」
「さぁ第二回戦!前回の覇者一撃必殺となるか!ガラム選手!」
歓声と共にガラムが舞台に上がる。
その威圧感は昨日のとは比べ物にならない。
観客席でもそうなのだ。
現地では…
「対して!投票数は上位に食い込んでいる、賢者一押しの選手!大原選手!」
昨日とは比べ物にならない歓声が大原を包み込む。
「どう倒すんだ?」
「底が知れないよ!面白くなりそうだ!」
「頑張れー!」
「…すっご」
大原は多くの者に応援をされる事などあまりない。
いや、応援はされてはいたか。
そこに期待が含まれてはいなかっただけだ。
「なら、応えないとな。」
そうして舞台に上がる。
「両者、握手を交わして下さい。」
審判の指示に従う。
「いっつ。」
ガラムは力強く握手…握り潰してくる。
「お前は強いのだろう。この俺よりも。だが!剣士としてはこの俺の方が上だ!」
ガラムは手を離し後ろを向く。
手をひらひらとしながらも大原も後ろを向く。
ホイッスルが鳴り響く。
一回。なぜあのような事を言ったのか。
二回。剣士として上。確かにそうだろう。
三回。けど、負ける訳にはいかない。
四回。そのための修行だったのだから。
五回。対象を確認する。
「試合、開始!!」
審判のコールがかかる。
先に仕掛けるは大原。
急所は狙わず足元から。
周辺に斬撃を展開させる、風車。
雷の魔力で加速し後ろをとる。
そして両足を同時に狙う。
それを、木剣で防ぐ。
斬撃を全て。
「そんな小細工。見飽きたわ。」
そのまま力で押し込んでくる。
咄嗟にかわして距離を置く。
「それが…本気?本気で…やっているのか!」
耳がぶっ壊れるのではというほどの声量で怒鳴られた。
「賢者が期待している者の力がこの程度?この大会のことを舐めてるのか?皆この大会に向けて、剣を磨き、己を磨いてきている。俺はこの大会に出場し、戦う者全員に敬意を評している。」
大原に向かって一歩と近づいていく。
「だがお前は、いや優勝予想の上位の者たちはどうだ!自身が強い者と思い、本気を出さずに戦って勝つ。」
また一歩と。
「それの何が楽しい。何を得られる。俺はここに向けて本気でやってきていることを知っている。負けて涙しているものを知っている。だから本気で勝つ!だから本気でやる!」
ガラムの射程圏内だ。
「どれほどの実力差があれど!本気でやれない者に!」
土の魔力が込められた大剣が一切の無駄なく、大原に直撃した。
「俺は‼︎負けねぇ!!」
大原はバリアがあるところまで吹き飛ばされた。
そのまま地面に落ちていった。
「さ、最強の一撃を貰ったあ!ガラム選手には1ポイント入るが、大原選手は試合続行可能か!?」
「あいつ何やって…」
「この大会は観客席に舞台にいる者の言葉は届かない。何かしら言われたと考えるのが得策ね。」
「それはどんな…」
「恐らくですが…大原さんは本気を出していません。それについて言及されたのでしょう。」
「…あ…」
「私も武術を扱う者なので分かるのですが、どの様な格下が相手でも本気を出す。それは、相手の敬意を表すのに必要なことだからです。」
麗華は胸に手を当て語る。
「相手に本気を出してもらえずに負ける。実力差以上に心に傷がつき、相手にしてもらえていないと思われる。それを、大原さんは知らなかった。」
「自業自得か。」
審判が大原の様子を確認する。
大原は仰向けになりながら、答える。
「大丈夫です…まだやれます…」
大原はダメージがないほど軽々と起き上がる。
「試合続行!ガラム選手1ポイント!」
「試合続行!ここから大原選手はどう巻き返す⁉︎」
「まだ、ままごとを続ける気か?」
「いや、もうやめるよ。お前の言ってることは正しい。俺は失礼な事をした。その罪として一撃を貰った。」
首をコキコキと鳴らす。
「お陰で初心に帰れた。感謝してる。」
(こいつ何か違う?)
ガラムは無意識に一歩引いた。
「ここから先はもう加減はしない。そして、お前に全力を持って、勝つ。」
「リミッター解除」
魔力が解き放たれる。
重りも解除された。
「な、なんだこの魔力量は⁉︎え!?計測不能!?ちょっとこれどうなって…」
「これは…もう…人ではないかもしれんのう。」
マスターブレイブは、今までのおちゃらけた感じではなく一人の剣士として話し始める。
「故障ではなく事実じゃろう。現にもう賢者が放つ魔力量とは比べ物にならん。今までのは茶番という事じゃろう。」
「ほ、本気ではなかった⁉︎」
「ほれ、目を離すでない。勝負は一瞬じゃよ。」
「それがお前の本気。」
「ああ、悪かったよ。作戦もクソもない。どんな相手でも全力で戦う。まだまだ未熟者の奴がやっていい芸当じゃなかった。」
「分かれば、いい。もはやこれに挑戦する機会などこの場でしかない。行くぞ!我が全身全霊を持って!お前を討ち倒す!」
「ああ、思いっ切りな…」
ガラムは剣に土の魔力を多く含み、大剣から通常サイズへ。
「大剣じゃない!?」
「速さと威力で勝負か。」
「潰れろ!!奈落‼︎」
「受けて立つ。龍炎・火柱。」
全てをたたき伏せる、奈落。
土の魔力を一点に集中させ、大地の重さで潰す技。
大原は炎龍の証を用いた技、龍炎・火柱。
一度剣を地面に突き刺し、下からすくい上げるように剣を振るう。
そして、地面に突き刺した時に炎をまとった斬撃が後から火柱のように追い討ちをかける。
この剣舞の行く末は、ガラムの剣が弾き飛ばされたことで決着がついた。
その隙を見逃さずに雷の魔力を用いた剣舞、雷駆走路。
人は雷の如き音速を操る事などできない。
アリサや他の者たちは、直線的にしか動けない。
足場を利用して動きを変える事も出来るが、音速を保ったまま軌道を変えることはできない。
ただ、2.3回軌道を変えることはできる。
それはただ、移動するだけ。
雷の魔力を持つ者なら使用することはできる。
雷と一体になるだけ。
攻撃などなく、ただ移動だけ。
見た場所にそれぞれ道を作るだけ。
攻撃は不可能。
…だった…。
軌道を変える瞬間に一撃。
魔力で無理やり攻撃。この場合は斬撃を。
「与えること…出来るのね…」
「あれ…もう…心気…ですね…。」
心気を使えるものが言うのだ。
間違いない。
「言うなれば、「感電走路」…ですね。」
ガラムの腕、両足に一太刀ずつ与えた。
それを審判は見逃さない。
「大原選手3ポイント!よって勝者!大原選手!」
大歓声が会場を包み込んだ。
「め、目にも止まらない速さで3ポイントとったぞ!あ、あれは私の十八番だったのに‼︎」
「雷駆走路で攻撃を仕掛ける…あの魔力を用いて無理矢理通している…。これは、人には無理じゃ!賢者でも無理!無理!」
ざわざわ…
「マスターブレイブにも無理だってこと?」
「そんなものを操ったってこと?」
「すげぇ。」
観客は全員ざわついていた。
「なんじゃそりゃあ⁉︎」
アリサはそれ以上の大声で驚いていた。
その技は奇策で使うもの。
攻撃をしようなど思わない。
「あれ…常識通じない?」
「上を行くね。やっぱり。」
龍也とグリムはもう呆れていた。
「お前の本気見せてもらった。まだまだ俺にも足らない。いや、まだ自由度が足らないのか。」
「まぁ、俺の方が常識を知らないだけなんですが…。自分だけの剣舞をと思ってやってきただけなので。」
「ふ、知らぬというのも罪であり、強さであるか。全く、人の想像力とは止まる事を知らない。またやろう。大原将希。」
「はい!今度魔力を多く込める方法を教えてください。」
「あれか?あれは誰でも…ああ、まあ経験則でよければ教えてやる。」
そうして、握手を交わす。
こうして、第二回戦第一試合が終わった。
次は、「あたしの番か…まぁあんな試合したら、あたしもやらないとね。」
「ふふ、これはチャンスと見るか、地獄と見るか。どっちに転ぶんだろうねぇ。」
「さあ続いては!第二試合!
アリサ選手 対 ラムズ選手です!」
二人の選手は舞台に上がって行く。
屋台、鍛冶屋などに客は殺到しつつ、客足は会場に向かう人の方が多い。
「今回はマジで分からないな。」
「俺、アリサに投票した。まだ底なしって感じ。」
「まぁ俺は、あんぱいでイノスに入れた。」
「大原選手に入れたわ。」
「マジ?流石に難しくない?アリサに勝てる未来見えないけど。だからってなぁ」
と優勝予想で持ちきりだ。
「結構注目を浴びてますね。」
「見る目あるなあ。その期待に応えてきますよ。」
「ああ、そんでもってあたしはお前と闘う。楽しみだ。」
「お前らよくもまぁ余裕でいけるなあ」
「大丈夫だ龍也。君の強さは折り紙付きだ。僕の目に間違いはない。」
「そうだな。俺の相手はイノス。一回戦では手の内を見せずに相手を圧倒した。俺がやられるのは目に見えてるからな。少しでも、情報を引き出してやるよ。」
ヤローは龍也に肩を組みながら話す。
実力の差を見ての判断。
それは、もう一ヶ月前に体感した事だ。
強いやつは強い。
持ってないものをたくさん持っている。
ただそれだけだ。
それだけの差で変わってくる。
「ヤローさん」
「まぁ、才能の差って奴だろうな。こればっかりはどうしようもない。成長は人それぞれ。俺には無いものだ。だから、お前はもっといい試合をしてほしいとも思う。」
「…はい、頑張らせていただきます。」
「んじゃあ、行ってきます。」
「頑張ってきて下さい。皆さん。」
ユナさん達に見送られて俺たちも会場に向かう。
「貴方達も特等席に来る?」
「うわ、俺たちにも出来るんですか?もったいない事をしてしまった…もう席取ってますよ。」
「あら残念。ならまた明日ね。」
「ありがとうございます。では、また後ほど。」
「ええ。」
フー達は予約をとった席に向かう。
「俺は、警備があるからそっちに向かう。明日は休暇だな。」
「団長…それでいいんですか?」
「大丈夫だ。俺たちの他にも頼りになるやつはいる。
」
誇らしげに語るエノスを見ると、自由だなあと思う今日この頃。
その場にいた全員がやれやれと思ってしまうほどだった。
「おはようございます!皆さん!今回も私、ファスティアとマスターブレイブで、実況解説を行なっていきます!」
モニターに光が灯される。
「さて、皆さま投票を行なって貰いましたでしょうか?今現在、表示されているのが皆さんが投票してくださった統計データです。」
イノス 34.6%
アリサ 23.6%
グリム 16.3%
大原 14.6%
龍也 6.9%
その他 4%
「やはり、マスターブレイブのお弟子さんという事もあって得票数を集めていますね。」
「正直、修行の合間の息抜き程度に優勝させてあげようかと思っていたのじゃが、流石に…強者が集まっておるのう。逆に、このタイミングで参加できたのは良かったのかもしれんのう。」
「修行の一環ということでしょうか?」
「そうじゃな。自身の実力と、他者の実力。どう推測っていくか、どう詰みに持っていくか、はたまたどこに弱点があったか、良い面悪い面を見つけるチャンスにもなり得る。それは、他の者も同じであろうがのう。」
「なるほど、この大会は自分の実力を出し切る場所であり、自分自身を知るということでもあるということですね。」
「よくまとめてくれたわい。その通りじゃ。」
舞台は移り、観客席。
「いい事言うわねー」
「賢者様もああいうことすればいいじゃないですか。」
「嫌よめんどくさい。裏でちびちびやってた方がいいのよ。分かるでしょ?暗殺者だったんだから。」
「ま、まぁ正面からよりは裏から手引きして…って何言わせようとしてるんですか!」
「い、淫乱⁉︎」
顔を真っ赤にして引いているミーナ。
「ミーナ様それは行き過ぎかと。」
「どうしてそうなるし…」
意外とこういう話は弱いのかと全員が思った。
全員のミーナの知的能力が想像よりも10下がった。
「っと始まるみたいだな。」
「さぁ第二回戦!前回の覇者一撃必殺となるか!ガラム選手!」
歓声と共にガラムが舞台に上がる。
その威圧感は昨日のとは比べ物にならない。
観客席でもそうなのだ。
現地では…
「対して!投票数は上位に食い込んでいる、賢者一押しの選手!大原選手!」
昨日とは比べ物にならない歓声が大原を包み込む。
「どう倒すんだ?」
「底が知れないよ!面白くなりそうだ!」
「頑張れー!」
「…すっご」
大原は多くの者に応援をされる事などあまりない。
いや、応援はされてはいたか。
そこに期待が含まれてはいなかっただけだ。
「なら、応えないとな。」
そうして舞台に上がる。
「両者、握手を交わして下さい。」
審判の指示に従う。
「いっつ。」
ガラムは力強く握手…握り潰してくる。
「お前は強いのだろう。この俺よりも。だが!剣士としてはこの俺の方が上だ!」
ガラムは手を離し後ろを向く。
手をひらひらとしながらも大原も後ろを向く。
ホイッスルが鳴り響く。
一回。なぜあのような事を言ったのか。
二回。剣士として上。確かにそうだろう。
三回。けど、負ける訳にはいかない。
四回。そのための修行だったのだから。
五回。対象を確認する。
「試合、開始!!」
審判のコールがかかる。
先に仕掛けるは大原。
急所は狙わず足元から。
周辺に斬撃を展開させる、風車。
雷の魔力で加速し後ろをとる。
そして両足を同時に狙う。
それを、木剣で防ぐ。
斬撃を全て。
「そんな小細工。見飽きたわ。」
そのまま力で押し込んでくる。
咄嗟にかわして距離を置く。
「それが…本気?本気で…やっているのか!」
耳がぶっ壊れるのではというほどの声量で怒鳴られた。
「賢者が期待している者の力がこの程度?この大会のことを舐めてるのか?皆この大会に向けて、剣を磨き、己を磨いてきている。俺はこの大会に出場し、戦う者全員に敬意を評している。」
大原に向かって一歩と近づいていく。
「だがお前は、いや優勝予想の上位の者たちはどうだ!自身が強い者と思い、本気を出さずに戦って勝つ。」
また一歩と。
「それの何が楽しい。何を得られる。俺はここに向けて本気でやってきていることを知っている。負けて涙しているものを知っている。だから本気で勝つ!だから本気でやる!」
ガラムの射程圏内だ。
「どれほどの実力差があれど!本気でやれない者に!」
土の魔力が込められた大剣が一切の無駄なく、大原に直撃した。
「俺は‼︎負けねぇ!!」
大原はバリアがあるところまで吹き飛ばされた。
そのまま地面に落ちていった。
「さ、最強の一撃を貰ったあ!ガラム選手には1ポイント入るが、大原選手は試合続行可能か!?」
「あいつ何やって…」
「この大会は観客席に舞台にいる者の言葉は届かない。何かしら言われたと考えるのが得策ね。」
「それはどんな…」
「恐らくですが…大原さんは本気を出していません。それについて言及されたのでしょう。」
「…あ…」
「私も武術を扱う者なので分かるのですが、どの様な格下が相手でも本気を出す。それは、相手の敬意を表すのに必要なことだからです。」
麗華は胸に手を当て語る。
「相手に本気を出してもらえずに負ける。実力差以上に心に傷がつき、相手にしてもらえていないと思われる。それを、大原さんは知らなかった。」
「自業自得か。」
審判が大原の様子を確認する。
大原は仰向けになりながら、答える。
「大丈夫です…まだやれます…」
大原はダメージがないほど軽々と起き上がる。
「試合続行!ガラム選手1ポイント!」
「試合続行!ここから大原選手はどう巻き返す⁉︎」
「まだ、ままごとを続ける気か?」
「いや、もうやめるよ。お前の言ってることは正しい。俺は失礼な事をした。その罪として一撃を貰った。」
首をコキコキと鳴らす。
「お陰で初心に帰れた。感謝してる。」
(こいつ何か違う?)
ガラムは無意識に一歩引いた。
「ここから先はもう加減はしない。そして、お前に全力を持って、勝つ。」
「リミッター解除」
魔力が解き放たれる。
重りも解除された。
「な、なんだこの魔力量は⁉︎え!?計測不能!?ちょっとこれどうなって…」
「これは…もう…人ではないかもしれんのう。」
マスターブレイブは、今までのおちゃらけた感じではなく一人の剣士として話し始める。
「故障ではなく事実じゃろう。現にもう賢者が放つ魔力量とは比べ物にならん。今までのは茶番という事じゃろう。」
「ほ、本気ではなかった⁉︎」
「ほれ、目を離すでない。勝負は一瞬じゃよ。」
「それがお前の本気。」
「ああ、悪かったよ。作戦もクソもない。どんな相手でも全力で戦う。まだまだ未熟者の奴がやっていい芸当じゃなかった。」
「分かれば、いい。もはやこれに挑戦する機会などこの場でしかない。行くぞ!我が全身全霊を持って!お前を討ち倒す!」
「ああ、思いっ切りな…」
ガラムは剣に土の魔力を多く含み、大剣から通常サイズへ。
「大剣じゃない!?」
「速さと威力で勝負か。」
「潰れろ!!奈落‼︎」
「受けて立つ。龍炎・火柱。」
全てをたたき伏せる、奈落。
土の魔力を一点に集中させ、大地の重さで潰す技。
大原は炎龍の証を用いた技、龍炎・火柱。
一度剣を地面に突き刺し、下からすくい上げるように剣を振るう。
そして、地面に突き刺した時に炎をまとった斬撃が後から火柱のように追い討ちをかける。
この剣舞の行く末は、ガラムの剣が弾き飛ばされたことで決着がついた。
その隙を見逃さずに雷の魔力を用いた剣舞、雷駆走路。
人は雷の如き音速を操る事などできない。
アリサや他の者たちは、直線的にしか動けない。
足場を利用して動きを変える事も出来るが、音速を保ったまま軌道を変えることはできない。
ただ、2.3回軌道を変えることはできる。
それはただ、移動するだけ。
雷の魔力を持つ者なら使用することはできる。
雷と一体になるだけ。
攻撃などなく、ただ移動だけ。
見た場所にそれぞれ道を作るだけ。
攻撃は不可能。
…だった…。
軌道を変える瞬間に一撃。
魔力で無理やり攻撃。この場合は斬撃を。
「与えること…出来るのね…」
「あれ…もう…心気…ですね…。」
心気を使えるものが言うのだ。
間違いない。
「言うなれば、「感電走路」…ですね。」
ガラムの腕、両足に一太刀ずつ与えた。
それを審判は見逃さない。
「大原選手3ポイント!よって勝者!大原選手!」
大歓声が会場を包み込んだ。
「め、目にも止まらない速さで3ポイントとったぞ!あ、あれは私の十八番だったのに‼︎」
「雷駆走路で攻撃を仕掛ける…あの魔力を用いて無理矢理通している…。これは、人には無理じゃ!賢者でも無理!無理!」
ざわざわ…
「マスターブレイブにも無理だってこと?」
「そんなものを操ったってこと?」
「すげぇ。」
観客は全員ざわついていた。
「なんじゃそりゃあ⁉︎」
アリサはそれ以上の大声で驚いていた。
その技は奇策で使うもの。
攻撃をしようなど思わない。
「あれ…常識通じない?」
「上を行くね。やっぱり。」
龍也とグリムはもう呆れていた。
「お前の本気見せてもらった。まだまだ俺にも足らない。いや、まだ自由度が足らないのか。」
「まぁ、俺の方が常識を知らないだけなんですが…。自分だけの剣舞をと思ってやってきただけなので。」
「ふ、知らぬというのも罪であり、強さであるか。全く、人の想像力とは止まる事を知らない。またやろう。大原将希。」
「はい!今度魔力を多く込める方法を教えてください。」
「あれか?あれは誰でも…ああ、まあ経験則でよければ教えてやる。」
そうして、握手を交わす。
こうして、第二回戦第一試合が終わった。
次は、「あたしの番か…まぁあんな試合したら、あたしもやらないとね。」
「ふふ、これはチャンスと見るか、地獄と見るか。どっちに転ぶんだろうねぇ。」
「さあ続いては!第二試合!
アリサ選手 対 ラムズ選手です!」
二人の選手は舞台に上がって行く。
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2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
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鑑定能力で恩を返す
KBT
ファンタジー
どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。
彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。
そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。
この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。
帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。
そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。
そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。
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せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
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