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第五章 剣豪大会編
63.予選第一回戦
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一時間後、俺たちは控室に集められ、審判員の人に説明を受けた。
「これからくじを引いてもらいます。中に番号が書いてある紙が入っているので、引き次第私に番号をお伝えください。」
ということでまずは、ガラムが先行する。
その後にラムズが並びぞろぞろと。
そうして俺の番となった。
ただくじを引いた。
願ったりするのはしないたちなもので。
「ありゃ」
紙に書いてあったのは、縦の伸ばし棒一本だ。
「大原選手一番ですね。」
対戦相手は…あの人か。
アリサ、龍也も引き全員が引き終わった。
これで全員の対戦カードが決まった。
「さて皆さま、これから後半戦が始まるというところでですが、お知らせがあります。
第一回戦を全て終えたのち、明日の10時までに優勝予想が出来るようにしておきますので、ぜひご投票をお願いします。」
「優勝予想ですか…」
観客席にいたユナ達は、一様に考え始める。
「大原君でしょ」
賢者は、軽い感じで語る。
「魔力も多いし、色々出来そうじゃない。それに、あの目があるから被弾はしないでしょ。」
「賢者様、また増えてますよ。」
この一時間の休憩の間にまた買っている賢者。
威厳というものがなさすぎる…
「単純に考えればそうですね。ですが、アリサさんや龍也くん、グリムくんそれにマスターブレイブの弟子もいます。予想はこの五人に絞られるでしょう。」
「…それを確かめるために、第一回戦を見るとしましょうか。」
「さぁ!お待たせしました。対戦カードが届きました!結界にホログラムを表示しますので、ご覧下さい‼︎」
トーナメント表が360°全体に表示される。
「これは、大原くんとアリサさんが三回戦で当たりますね」
「優勝候補のぶつかり合い。ここに来ますか。」
「さあさあ!早速行きましょう!第一回戦初戦!
大原将希選手 対 シンバ・イセン選手です!」
控え室から両者歩いて来る。
シンバというものは、なんというか。
「侍ね。」「頭がぴょんしてる。」「風情…」
といったいった感じだ。
両者は互いに近づいていき、握手を交わす。
「賢者に認められた力を見せてもらうとするか。」
「あまり期待されると期待はずれになった時が怖いですね。」
「では両者互いに後ろを向いてください。笛の合図と共に一歩前進を。五歩目に到達したとき、長めに笛を吹くので、戦闘の意思を見せてください。」
そうして、両者は後ろを向く。
戦闘の意思を見せる?
抜刀とかで判断するのではなく?
考えていると笛を吹かれた。
ピッ! 一歩
ピッ! また一歩
ピッ! 歩くごとに
ピッ! 空気が、
ピーーー! 変わっていく。
大原は剣を抜いて構え、シンバは剣の鍔に手を添えるだけ。
審判が手を挙げる。
無音。
その瞬間の観客席の期待度が伝わって来る。
「試合…開始!」
手を振り下ろされたと同時に、最速の斬撃が飛び込んで来る。
ああなるほど。
抜刀で判断しないのはこのためかと。
男は居合いの使い手だからだ。
大原はかろうじてこの一撃を防いだ。
「流石というべきか…奇襲・急雷を捌くとは。」
「いや、防げただけで当たってないとは限らないようですよ。」
見ると腰の辺りにかすり傷が残っていた。
「シンバ選手!一本!」
おお!
観客は驚きのあまり声に出てしまうほどだ。
「早い。そして鋭い。」
「よーいどんで始まる戦いなら強いわね。いわゆる早打ち。抜くが早いか。奇襲には持ってこいね。」
「居合の達人というところかのう。あれを直撃しなかっただけでも上出来だがのう。」
マスターブレイブの解説が入る。
「雷の魔力を右腕に溜めていたのじゃな。外に漏れないように内側で。準備の差が大きく出てしまったかのう。」
「なるほど。さあ開始早々に一撃をもらってしまったぞ!どうする大原選手!」
「この大会に向けて準備してきたんだ。一回戦で負けるわけには行かんのでね。」
そういうと、男は大原の周りの地面にに斬撃を撃ち込む。
すると地面にあった砂が大原の周りを包み込む。
「砂を利用した剣舞。砂塵雷渦当たれば終わりの状況でお前はどうする!」
少しずつ大原に向かって縮んでいく。
剣舞による斬撃の渦。
なるほど、よく出来ている。
まぁ、関係がない。
ただ剣を前に出して、突破すればいい。
大原は渦に向かって剣を突き出した。
剣は斬撃に触れていく。
風邪を起こす。強い風。
貫通力のある鋭い風。
言うなれば、螺旋の突きと言ったところか。
渦の一部を貫く。
そのまま脱出と同時に、相手も巻き込む。
「何⁉︎」
間一髪でかわす。
視線は僅かな時間技に吸い寄せられた。
その一瞬を大原は逃さない。
様々な戦いを通してきた経験上、人はその技に魅入られる傾向にあった。
それはそうだろう。
強い技があれば魅入られる。
だがそこにそれを撃った本人に意識が回らない。
だからこそ、剣舞とは魅入られるほどのキレが必要なのだ。
グリムは凄いと修行中に何度思ったことか。
俺にはただ、一瞬しか魅入らせられない。
剣が砂に触れ、三つの鋭い斬撃となって襲う。
サンド・ネイル。
由来は三度の攻撃。ただのシャレだ。
シンバは両腕と頬に一撃を与えられた。
これによる3発の直撃。
「よそ見したらやられるってことだな。」
「両腕、頬に一撃が入ったため大原選手三本!勝者、大原選手!」
大きな歓声が上がる。
「当然だね。こんなところで負ける奴じゃない。」
「あいつ、魔力の使い方が上手くなったな。」
「ああ、それも本気を出さずに…」
グリム、アリサ、龍也は予想通りの展開であった。
だが、それを聞いたガラムは少しだけ気に入らなかった。
(本気を出してないだ?ふざけるな。この場にふぬけた奴は必要ない。俺が本気を出す前に潰してやる。)
舞台の上に上がっていくガラム。
それを見たラムズは、怖いねぇと溢すのだった。
「完敗だ。まさか正面から来るとは思わなかった。」
「いえ、多分ですけど居合のままだったら軌道が読めなくて一撃をもらっていたと思いますし。」
「なるほど。実は少しだけ悩んでいたんだ。このまま居合いを続けるかどうか。君に届いたんだ。自信を持って続けるとしよう。」
そして二人は固い握手を交わした。
観客席からは盛大な拍手が送られた。
「さぁ!どんどん行きましょう!続いて第二試合…」
というところで控室に戻っていく。
その途中でガラムさんと会ったが、威圧感を振りまいて舞台へと上がっていった。
気合い入ってるなぁと思っていると、アリサ達が俺の元まで来てくれた。
「まずは一番乗りだな。」
「ああ、次の相手はほぼ確実に決まっているようなものだけどね。」
「まぁだろうな。」
「それにしても強くなったよ。剣の能力にかまけてると思えば、魔力の使い方が上手くなっている。僕ともぜひ対戦して欲しいものだね。」
「ありがたい話です。グリムとはまた戦いたいと思っていたので。」
そんな話をしているとモニターから歓声が聞こえてきた。
全員がモニターを見ると、大原の次の相手が決まった。
「一撃!一撃で気絶させた‼︎これが前回優勝者!ガラム・ダイコーだああ‼︎」
「何も言うことは無いのう。ただひたすらに実力の差が現れた。」
速く、重く、鋭い。
正しく重厚の一撃で仕留めた。
これが、ガラム・ダイコー。
「さぁ次の対決に参りましょう第三試合は…
ラムズ選手 対 レアル選手の対決です!」
「ふふ、魅せてあげましょうかねぇ。予測不可能な戦いを。」
続いての試合は、ラムズが終始圧倒していた。
揺らめくように相手の突きをかわして一撃を与えると、今度は最速で懐に入り一撃。
最後に、相手の剣舞を利用して一本を取った。
「うむ、見事な動き。型がない動きというのは、メリットでもありデメリットでもある。メリットだけを活かせば強い。相手がどう動いてくるか分からないのは、間違いなく強いことじゃろう。」
「さぁ!どんどん行きましょう!第四試合は…」
「あたしだな。んじゃあチャチャっと終わらせますか。」
「アリサ選手 対 フー・ヨック選手です!」
フー・ヨック。
抽選会場でもあのフードを外さなかった。
剣の腕前は確かにあるが、何か違和感がある。
二人とも握手を交わし、笛の合図で五歩進んだ。
試合開始の宣言をされる。
相手は攻めてこない。
なら、最速で…!
ライトニング・閃々の雷。
雷の如し速さで相手に一閃を与える技。
それを…防いで見せた。
すぐさま距離を離す。
だが防いだ衝撃でフードから顔が見えた。
「!お前は、あの時の!」
「ああ。久しぶりだな、アリサ。もっと早くに挨拶しようと思っていたんだけどね。」
フー・ヨック。
アリサが風の世界で初めて陣形を教えたチーム、スカイアローズのリーダーだ。
「あの時は悪かったと思ってる。でも、君があのままついてきていてもきっと今のように生き生きとした顔は見られなかったと思うからね。」
「結果論だけどな。それで、あたしの陣形は役に立ったか?」
「ああ、アレンジは利かせているけど、最初のをベースにしてある。」
「そりゃ良かった。けど、ここは勝負の場だ。この話は後にして、やろうか。」
「もちろん。今の一撃で加減は無用と見た。」
フーは手の甲を見せる。
茶色い紋章みたいなものが光り輝いている。
「龍の証⁉︎」
「君のおかげでここまで強くなれた。今こそ使う時だ!」
地面から砂が巻き上げられ、剣に収束する。
巨大な大剣が出来上がる。
「いくらデカかろうと当たらなきゃ意味ないぞ。」
「ああ、でもこれはどうだ!」
大剣が舞台全体に振り回される。
アリサは空中に退避したが、すぐに竜巻に囲まれる。
「空中じゃ、身動きがとれないだろ?」
フーは風の魔力を用いて、斬撃を放つ。
未だに大剣は回されているがどのような工夫がされているのだろう。
結論から言えば、回されてはいない。
いわゆる余韻だ。
フラフープを回しているときに途中で体を止めても、回り続けるあれだ。
余韻は長くは持たない。
が空中にやれば、人は身動きが取れない。
常人ならば。
竜巻に舞い上がっていた砂を磁力で集め、足場にし退避するということをしなければ、きっと被弾しただろう。
「な!?」
斬撃を放ち続ける。
だがそこに不自由はなかった。
「悪いが気絶するくらい流すから、我慢してくれ。」
空中から標的に向けて落ちる、ライトニング・飛電・斬雷。
雷の魔力を多く含んだ木刀は、フーに触れ、多くの電流を流し込んだ。
「フー選手気絶!よって勝者、アリサ選手!」
「あれが、大原対策の一つだな。」
「あー確かに。」
「ありゃま。」
磁力で足場を作り空中での高速移動。
大原は空中での自由は効くが、瞬間的な速さではどうだろうか、という考えのもと編み出した。
気絶していたフーは目が覚めるとアリサを見て話し始める。
「強くなったなアリサ。」
「…でしょ?」
「さあさあ!どんどん行きましょう!続いては!」
続いてのヤローは… …まぁ難なく三本取った。
「おい!これでいいわけないだろ!ちゃんとやれよ!人数いるからって俺を…」
「続いて第五試合!イノス選手 対 リコル選手!」
戦いは、一瞬で決着した。
「こっこれは!最速!最速だ!前回優勝者ガラム選手を超える一瞬の出来事だ!」
「ほっほ。良いキレじゃ。」
「…あんな一瞬で、あの量の斬撃を放てるか?」
「俺には無理だな。」
「大原でも無理なら、じゃあどういう原理で…」
「…ふーんなるほどね。流石はマスターブレイブの弟子って事かしらね。」
賢者は含みのある発言をしたことで、麗華は察した。
「まさか、心気ですか?」
「なんです?それ。」
「心気っていうのはね、心を沈め、魔力を沈め、意思さえも沈めることで、時間が飛んだみたいに速く動くことが出来ることよ。」
まぁ、私もなんでそんなことが出来るのか知らないんだけどね。
「時間が…飛ぶ…あ、麗華さんのお母さん…」
「そうです、私も使えたら良いのですが…」
自覚が無いのね。
あの時使えていたのに…。
その間に龍也が三本取り、勝ち進んだ。
「おお、鮮やか。」
「静と動。機動力と、キレで来たんだね。大原よりいんじゃない?」
まぁしょうがない。
「続いては!」
とコールした実況に釣られ、2名舞台に上がる。
「これの次が、グリムか。」
「全く、待ちくたびれたよ。」
「勝者!カリタ・ライ!」
「じゃあ行こうか。」
「続いて第九試合!折り返し地点になりました!
グリム選手 対 タザフ選手!」
タザフは、奇怪な動きをする剣舞を操る。
腕から足へ、全身を使い剣を振るう。
だがそれをいなし、避け、攻撃を仕掛ける。
ただそれだけだった。
それだけなはずなのに、観客からはおそらくだが、ただ舞っているようにしか見えなかっただろう。
戦っているものはどうだろう。
真逆だ。
攻撃をしてもいなされ反撃される。
何をしても無駄だと言わしめん剣舞の腕、キレ。
魔力を最小にしての勝利を刻んだ。
「なんだ…あの剣舞…キレが凄い。」
「人を魅入らせる。剣舞においては、ここの誰にも負けてないだろう。」
「ま、何はともあれ、ここにいる知り合いは全員一回戦突破だ!」
試合はまだ続いてはいるが、俺たちは互いを褒め称え、今日の試合を終えた。
「これからくじを引いてもらいます。中に番号が書いてある紙が入っているので、引き次第私に番号をお伝えください。」
ということでまずは、ガラムが先行する。
その後にラムズが並びぞろぞろと。
そうして俺の番となった。
ただくじを引いた。
願ったりするのはしないたちなもので。
「ありゃ」
紙に書いてあったのは、縦の伸ばし棒一本だ。
「大原選手一番ですね。」
対戦相手は…あの人か。
アリサ、龍也も引き全員が引き終わった。
これで全員の対戦カードが決まった。
「さて皆さま、これから後半戦が始まるというところでですが、お知らせがあります。
第一回戦を全て終えたのち、明日の10時までに優勝予想が出来るようにしておきますので、ぜひご投票をお願いします。」
「優勝予想ですか…」
観客席にいたユナ達は、一様に考え始める。
「大原君でしょ」
賢者は、軽い感じで語る。
「魔力も多いし、色々出来そうじゃない。それに、あの目があるから被弾はしないでしょ。」
「賢者様、また増えてますよ。」
この一時間の休憩の間にまた買っている賢者。
威厳というものがなさすぎる…
「単純に考えればそうですね。ですが、アリサさんや龍也くん、グリムくんそれにマスターブレイブの弟子もいます。予想はこの五人に絞られるでしょう。」
「…それを確かめるために、第一回戦を見るとしましょうか。」
「さぁ!お待たせしました。対戦カードが届きました!結界にホログラムを表示しますので、ご覧下さい‼︎」
トーナメント表が360°全体に表示される。
「これは、大原くんとアリサさんが三回戦で当たりますね」
「優勝候補のぶつかり合い。ここに来ますか。」
「さあさあ!早速行きましょう!第一回戦初戦!
大原将希選手 対 シンバ・イセン選手です!」
控え室から両者歩いて来る。
シンバというものは、なんというか。
「侍ね。」「頭がぴょんしてる。」「風情…」
といったいった感じだ。
両者は互いに近づいていき、握手を交わす。
「賢者に認められた力を見せてもらうとするか。」
「あまり期待されると期待はずれになった時が怖いですね。」
「では両者互いに後ろを向いてください。笛の合図と共に一歩前進を。五歩目に到達したとき、長めに笛を吹くので、戦闘の意思を見せてください。」
そうして、両者は後ろを向く。
戦闘の意思を見せる?
抜刀とかで判断するのではなく?
考えていると笛を吹かれた。
ピッ! 一歩
ピッ! また一歩
ピッ! 歩くごとに
ピッ! 空気が、
ピーーー! 変わっていく。
大原は剣を抜いて構え、シンバは剣の鍔に手を添えるだけ。
審判が手を挙げる。
無音。
その瞬間の観客席の期待度が伝わって来る。
「試合…開始!」
手を振り下ろされたと同時に、最速の斬撃が飛び込んで来る。
ああなるほど。
抜刀で判断しないのはこのためかと。
男は居合いの使い手だからだ。
大原はかろうじてこの一撃を防いだ。
「流石というべきか…奇襲・急雷を捌くとは。」
「いや、防げただけで当たってないとは限らないようですよ。」
見ると腰の辺りにかすり傷が残っていた。
「シンバ選手!一本!」
おお!
観客は驚きのあまり声に出てしまうほどだ。
「早い。そして鋭い。」
「よーいどんで始まる戦いなら強いわね。いわゆる早打ち。抜くが早いか。奇襲には持ってこいね。」
「居合の達人というところかのう。あれを直撃しなかっただけでも上出来だがのう。」
マスターブレイブの解説が入る。
「雷の魔力を右腕に溜めていたのじゃな。外に漏れないように内側で。準備の差が大きく出てしまったかのう。」
「なるほど。さあ開始早々に一撃をもらってしまったぞ!どうする大原選手!」
「この大会に向けて準備してきたんだ。一回戦で負けるわけには行かんのでね。」
そういうと、男は大原の周りの地面にに斬撃を撃ち込む。
すると地面にあった砂が大原の周りを包み込む。
「砂を利用した剣舞。砂塵雷渦当たれば終わりの状況でお前はどうする!」
少しずつ大原に向かって縮んでいく。
剣舞による斬撃の渦。
なるほど、よく出来ている。
まぁ、関係がない。
ただ剣を前に出して、突破すればいい。
大原は渦に向かって剣を突き出した。
剣は斬撃に触れていく。
風邪を起こす。強い風。
貫通力のある鋭い風。
言うなれば、螺旋の突きと言ったところか。
渦の一部を貫く。
そのまま脱出と同時に、相手も巻き込む。
「何⁉︎」
間一髪でかわす。
視線は僅かな時間技に吸い寄せられた。
その一瞬を大原は逃さない。
様々な戦いを通してきた経験上、人はその技に魅入られる傾向にあった。
それはそうだろう。
強い技があれば魅入られる。
だがそこにそれを撃った本人に意識が回らない。
だからこそ、剣舞とは魅入られるほどのキレが必要なのだ。
グリムは凄いと修行中に何度思ったことか。
俺にはただ、一瞬しか魅入らせられない。
剣が砂に触れ、三つの鋭い斬撃となって襲う。
サンド・ネイル。
由来は三度の攻撃。ただのシャレだ。
シンバは両腕と頬に一撃を与えられた。
これによる3発の直撃。
「よそ見したらやられるってことだな。」
「両腕、頬に一撃が入ったため大原選手三本!勝者、大原選手!」
大きな歓声が上がる。
「当然だね。こんなところで負ける奴じゃない。」
「あいつ、魔力の使い方が上手くなったな。」
「ああ、それも本気を出さずに…」
グリム、アリサ、龍也は予想通りの展開であった。
だが、それを聞いたガラムは少しだけ気に入らなかった。
(本気を出してないだ?ふざけるな。この場にふぬけた奴は必要ない。俺が本気を出す前に潰してやる。)
舞台の上に上がっていくガラム。
それを見たラムズは、怖いねぇと溢すのだった。
「完敗だ。まさか正面から来るとは思わなかった。」
「いえ、多分ですけど居合のままだったら軌道が読めなくて一撃をもらっていたと思いますし。」
「なるほど。実は少しだけ悩んでいたんだ。このまま居合いを続けるかどうか。君に届いたんだ。自信を持って続けるとしよう。」
そして二人は固い握手を交わした。
観客席からは盛大な拍手が送られた。
「さぁ!どんどん行きましょう!続いて第二試合…」
というところで控室に戻っていく。
その途中でガラムさんと会ったが、威圧感を振りまいて舞台へと上がっていった。
気合い入ってるなぁと思っていると、アリサ達が俺の元まで来てくれた。
「まずは一番乗りだな。」
「ああ、次の相手はほぼ確実に決まっているようなものだけどね。」
「まぁだろうな。」
「それにしても強くなったよ。剣の能力にかまけてると思えば、魔力の使い方が上手くなっている。僕ともぜひ対戦して欲しいものだね。」
「ありがたい話です。グリムとはまた戦いたいと思っていたので。」
そんな話をしているとモニターから歓声が聞こえてきた。
全員がモニターを見ると、大原の次の相手が決まった。
「一撃!一撃で気絶させた‼︎これが前回優勝者!ガラム・ダイコーだああ‼︎」
「何も言うことは無いのう。ただひたすらに実力の差が現れた。」
速く、重く、鋭い。
正しく重厚の一撃で仕留めた。
これが、ガラム・ダイコー。
「さぁ次の対決に参りましょう第三試合は…
ラムズ選手 対 レアル選手の対決です!」
「ふふ、魅せてあげましょうかねぇ。予測不可能な戦いを。」
続いての試合は、ラムズが終始圧倒していた。
揺らめくように相手の突きをかわして一撃を与えると、今度は最速で懐に入り一撃。
最後に、相手の剣舞を利用して一本を取った。
「うむ、見事な動き。型がない動きというのは、メリットでもありデメリットでもある。メリットだけを活かせば強い。相手がどう動いてくるか分からないのは、間違いなく強いことじゃろう。」
「さぁ!どんどん行きましょう!第四試合は…」
「あたしだな。んじゃあチャチャっと終わらせますか。」
「アリサ選手 対 フー・ヨック選手です!」
フー・ヨック。
抽選会場でもあのフードを外さなかった。
剣の腕前は確かにあるが、何か違和感がある。
二人とも握手を交わし、笛の合図で五歩進んだ。
試合開始の宣言をされる。
相手は攻めてこない。
なら、最速で…!
ライトニング・閃々の雷。
雷の如し速さで相手に一閃を与える技。
それを…防いで見せた。
すぐさま距離を離す。
だが防いだ衝撃でフードから顔が見えた。
「!お前は、あの時の!」
「ああ。久しぶりだな、アリサ。もっと早くに挨拶しようと思っていたんだけどね。」
フー・ヨック。
アリサが風の世界で初めて陣形を教えたチーム、スカイアローズのリーダーだ。
「あの時は悪かったと思ってる。でも、君があのままついてきていてもきっと今のように生き生きとした顔は見られなかったと思うからね。」
「結果論だけどな。それで、あたしの陣形は役に立ったか?」
「ああ、アレンジは利かせているけど、最初のをベースにしてある。」
「そりゃ良かった。けど、ここは勝負の場だ。この話は後にして、やろうか。」
「もちろん。今の一撃で加減は無用と見た。」
フーは手の甲を見せる。
茶色い紋章みたいなものが光り輝いている。
「龍の証⁉︎」
「君のおかげでここまで強くなれた。今こそ使う時だ!」
地面から砂が巻き上げられ、剣に収束する。
巨大な大剣が出来上がる。
「いくらデカかろうと当たらなきゃ意味ないぞ。」
「ああ、でもこれはどうだ!」
大剣が舞台全体に振り回される。
アリサは空中に退避したが、すぐに竜巻に囲まれる。
「空中じゃ、身動きがとれないだろ?」
フーは風の魔力を用いて、斬撃を放つ。
未だに大剣は回されているがどのような工夫がされているのだろう。
結論から言えば、回されてはいない。
いわゆる余韻だ。
フラフープを回しているときに途中で体を止めても、回り続けるあれだ。
余韻は長くは持たない。
が空中にやれば、人は身動きが取れない。
常人ならば。
竜巻に舞い上がっていた砂を磁力で集め、足場にし退避するということをしなければ、きっと被弾しただろう。
「な!?」
斬撃を放ち続ける。
だがそこに不自由はなかった。
「悪いが気絶するくらい流すから、我慢してくれ。」
空中から標的に向けて落ちる、ライトニング・飛電・斬雷。
雷の魔力を多く含んだ木刀は、フーに触れ、多くの電流を流し込んだ。
「フー選手気絶!よって勝者、アリサ選手!」
「あれが、大原対策の一つだな。」
「あー確かに。」
「ありゃま。」
磁力で足場を作り空中での高速移動。
大原は空中での自由は効くが、瞬間的な速さではどうだろうか、という考えのもと編み出した。
気絶していたフーは目が覚めるとアリサを見て話し始める。
「強くなったなアリサ。」
「…でしょ?」
「さあさあ!どんどん行きましょう!続いては!」
続いてのヤローは… …まぁ難なく三本取った。
「おい!これでいいわけないだろ!ちゃんとやれよ!人数いるからって俺を…」
「続いて第五試合!イノス選手 対 リコル選手!」
戦いは、一瞬で決着した。
「こっこれは!最速!最速だ!前回優勝者ガラム選手を超える一瞬の出来事だ!」
「ほっほ。良いキレじゃ。」
「…あんな一瞬で、あの量の斬撃を放てるか?」
「俺には無理だな。」
「大原でも無理なら、じゃあどういう原理で…」
「…ふーんなるほどね。流石はマスターブレイブの弟子って事かしらね。」
賢者は含みのある発言をしたことで、麗華は察した。
「まさか、心気ですか?」
「なんです?それ。」
「心気っていうのはね、心を沈め、魔力を沈め、意思さえも沈めることで、時間が飛んだみたいに速く動くことが出来ることよ。」
まぁ、私もなんでそんなことが出来るのか知らないんだけどね。
「時間が…飛ぶ…あ、麗華さんのお母さん…」
「そうです、私も使えたら良いのですが…」
自覚が無いのね。
あの時使えていたのに…。
その間に龍也が三本取り、勝ち進んだ。
「おお、鮮やか。」
「静と動。機動力と、キレで来たんだね。大原よりいんじゃない?」
まぁしょうがない。
「続いては!」
とコールした実況に釣られ、2名舞台に上がる。
「これの次が、グリムか。」
「全く、待ちくたびれたよ。」
「勝者!カリタ・ライ!」
「じゃあ行こうか。」
「続いて第九試合!折り返し地点になりました!
グリム選手 対 タザフ選手!」
タザフは、奇怪な動きをする剣舞を操る。
腕から足へ、全身を使い剣を振るう。
だがそれをいなし、避け、攻撃を仕掛ける。
ただそれだけだった。
それだけなはずなのに、観客からはおそらくだが、ただ舞っているようにしか見えなかっただろう。
戦っているものはどうだろう。
真逆だ。
攻撃をしてもいなされ反撃される。
何をしても無駄だと言わしめん剣舞の腕、キレ。
魔力を最小にしての勝利を刻んだ。
「なんだ…あの剣舞…キレが凄い。」
「人を魅入らせる。剣舞においては、ここの誰にも負けてないだろう。」
「ま、何はともあれ、ここにいる知り合いは全員一回戦突破だ!」
試合はまだ続いてはいるが、俺たちは互いを褒め称え、今日の試合を終えた。
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神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
超文明日本
点P
ファンタジー
2030年の日本は、憲法改正により国防軍を保有していた。海軍は艦名を漢字表記に変更し、正規空母、原子力潜水艦を保有した。空軍はステルス爆撃機を保有。さらにアメリカからの要求で核兵器も保有していた。世界で1、2を争うほどの軍事力を有する。
そんな日本はある日、列島全域が突如として謎の光に包まれる。光が消えると他国と連絡が取れなくなっていた。
異世界転移ネタなんて何番煎じかわかりませんがとりあえず書きます。この話はフィクションです。実在の人物、団体、地名等とは一切関係ありません。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
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勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
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チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
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万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
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神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
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そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
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