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第四章 火の世界<ヴォルスター>編

52.修行1

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 「あのーよろしいでしょうか?」
 レグルスと硬い握手を交わしていると、横から話しかけられた。
 見ると、背の小さいお爺さんがそこにいた。
 「…いつからいました?」
 「最初から、いさせていただきました。」
 マジで気が付かなかった…。
 「私が火の世界の長、ボルタ・セビラスです。」
 「大原将希です。すみませんでした、気づかなくて。」
 「ほっほ、賢者以外は気づかなかったようですから、安心して宜しいでしょう。」
 他のみんなにも挨拶を交わすボルタさん。
 
 よっこらせと椅子に座るボルタさんは、俺たちの方を向いて話し始めた。
 「話は聞いています。どうぞ、レグルス様のご指示の下修行してくだされ。そして、火の世界を自由に行動してもらって構いません。どうぞ、ごゆっくりお楽しみ下さい。」
 「はい、そうさせていただきます。」
 そうして、部屋を後にする。

 「そういえば、シェルミルさんに伝言を頼んでたのって、ここで修行をさせるためですか?」
 「賭けではあったがな。風の世界にいた事は知っていたのでな。賢者に伝われば御の字ってところだったな。」
 なんという賭け事なのか。
 賭け事よりも確実に出来ることをしたいですね。
 そんなこんなでエレベーター前に来た。
 
 「修行はそれぞれで行ってもらう。期間は二週間。剣豪大会に合わせて行わせてもらう。講師は全員俺が見る。指導者としては最悪だろうが、間違いなく強くなるということもない。」
 「最低ですね」
 「そうかな?巫女さん。俺が指示しても、結局は自分達のやる気で変わる。やるかやらないかは常に自分で決めることだ。そこに、他者が入ったら強制も良いとこだ。やらないならやらんでいい、ただその代わりに無惨な死に方になるだけだがな。」
 
 確かにそうだ。
 強くなる術を知っていても、自分がそれを実行出来なければ意味がない。
 この人に近づく…いや超えなければ、魔王を倒すなんて夢のまた夢だ。
 
 「そこには、はっきりとした目標だな。今回の目標は、俺に一撃を入れること。これぐらいになってもらわないとな。」
 
 中々に舐められている。
 だが、本気で戦ったとしても一撃当てるなんて事は…と思ったが、俺は賢者に1発与えたことを思い出した。
 「あれは、私が攻撃しなかったから当たっただけですぅ。」
 「まだ何も言ってないでしょ。」
 「ならこっちを見ないでくれる?」
 それで察しているのは、相当気にしてる証拠だと思うんですが。

 「とりあえず、これで大方は分かったか?」
 「質問、講師はレグルスさんだって言ってたっすけど、どうやって俺たちを見るんですか?」
 「それはだな、俺の能力で可能にできるからだ。」
 
 そう言った瞬間、レグルスが二人になった。
 「これは、分身?」
 「そうだ、俺の能力は分身、魔力、身体能力を犠牲に分身できる。」
 「なるほど、それで修行をして、本体にみんなで一撃を狙うってことか。」
 「いや?分身に一撃だ。」
 「「え?」」
 ちょいと、そんな差がありますのん?
 「今すぐにやってもいいが、時間がない、早く行くぞ。」
 そうして、レグルスは一体になり、エレベーターに乗り込む。

 「暑すぎるでしょ!!」
 「じにまずーー‼︎」
 俺と、神谷さんは地表に連れて来られた。

 「…なんで?」
 アリサは地下4階の教育の間で教師となった。
 「ちゃんとこの後組み手やるから頑張れよー」
 「はあ!?」
 アリサは意味がわからないまま、教壇に立たされた。

 「…なんで?」
 龍也は、地下5階の飲食の間で、レストランでホールを担当することになった。
 「ちゃんと後で組み手やるから、頑張れよー」
 「うぇ!ちょっ!」
 「君が新人さんかい?ほらぼさっとしてないで早く着替えてくる!」
 龍也は厨房の裏へと消えていった。

 「私は、分かりやすいですね。」
 地下10階、武道の間へとユナは連れて行かれた。
 「そうだ、お前は正直に言って、あのメンバーの中で一番弱い。ならば、徹底的に経験を積む。それがお前には手っ取り早い。」
 「なるほど、では早速お願いします。」
 そうして、死を悟る目デッドアイを開眼する。


 「大原はこれを着ろ。」
 渡されたのは、Tシャツと半ズボンだった。
 「あ…ありがとうございます…」
 「その間に巫女よ。お前には、この地上の怪物を相手にしてもらう。」
 「こ、この暑い中ですか?」
 「暑さは魔力でなんとかなる。さぁ行け!」
 「は、はい~‼︎」
 レグルスの分身と共に、怪物に向かっていく麗華さん。
 それを横目に、俺は着替え終えた。
 
 「それで俺は何を?」
 「お前さんは魔力がたんまりある。が、単純な魔力なしのパワーがない。」
 「アリサとかなさそうですが?」
 「あの嬢ちゃんこそやばいだろ?お前さん吹っ飛ばされるよ?」
 そんなに凄いんか、後でゴリラって伝えておこう。
 「そのためには、筋力増強させる。理由は単純、魔力の消費を抑えるためだ。自身の力がつけば、魔力の消費の量も自然と少なくなる。それを促進させるのがこれだ。」
 レグルスが、リモコンのような物のスイッチを押すと、体が重くなった。
 「た、立てな…っ!」
 「上下合わせて200kgを着ながら、あの山の山頂まで登ってもらう。」
 目の前にある、高い山、2000メートルほどだろうか。
 ただ、山道ってだけで、険しい道のりではないが、これを着ていくとなると、とてもキツイだろう。
 「魔力は使ってよし、なんでもいいから山頂に辿り着ければいい。それと、お前さんにはこれを渡しておく。」
 潰れている俺に、レグルスさんは何かを渡してきた。
 「こ、この瓶は?」
 「魔力回復液だな。これを飲めば、魔力と疲労感が回復する。」
 大原はそれを取り出すと、魔力操作でなんとか立ち上がる。
 「5万で、やっと立ち上がれた…」
 「とりあえずはそれだけだ、明日からは、筋トレ等を追加するからな。」
 「き、聞きたくなかったあああ!」
 叫び声を上げながらも、山を登っていく大原。

 それぞれの修行が始まった。
 
 
 
 
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