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第三章 雷の世界<エクスター>

47.大原の魔眼

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 「俺の魔眼のこと、ですか。」
 「ミーナには、伝えておいたのよ。説明はさせたはずだけど。」
 「まぁいいからいいから、早く見せて、その賢者様が頼み事をするほどの魔眼を。」
 「答えで分からんのですか?」
 「能力、魔力、大抵は分かるけど、魔眼までは分からないよ。記述はあるけど、魔眼はある、なしだけだから。」
 難儀なものだ。
 ということで、手っ取り早い方法で、行う。
 「賢者様。」
 と言い、取り出した剣を賢者に渡す。
 「分かってるわ。分かってるけど、心配よ。」
 「大丈夫、だって、上手くやってくれるでしょ?」
 「全く、いくわよ。」
 大原はその場で目を瞑り、立ち尽くす。
 賢者は、それを見るや、首元に剣を振るう。
 それを、大原はかわし、賢者に反撃を取ろうとした。
 その際、目を開き、黄色い目をカリナは確認した。

 「な、なんだこの目は… 早急に調べないと。ちょっと待ってて。」
 と、別室へと行ってしまった。
 「うん、やっぱりユナさんの予想は正しそうですね。」
 「死に直結する時に発動する魔眼…けど本当にそれだけなのでしょうか?」
 「っていうのを調べてもらってるのよ。」
 けど、この魔眼は、この感覚は、小学生時代に幾度か起きている。
 死に直結した時に発動するのが手っ取り早いけど…他にもあるのだろう。

 待つこと5分ほどだろうか、調べるのに集中したのか、へろへろだった。
 「これ…だと…思うよ…」
 とパソコンを見せてくる。そこには一つの日記のようなものがあった。
 タイトルは、完璧者パーフェクターとは?
 著者は木島 優希という人が書いたものだった。
 それを思い浮かべて、大原は取り出した。
 「ページ数は、182ページだよ…」
 とそのページをめくって見る。

 輝かしい目
 
 彼には、能力の他に興味深いものがある。
 それが、特殊な目だ。
 これを二次元に捉えて魔眼と呼ぶことにした。

 この魔眼は、彼が初めてのケースなのではと思った。
 
 目の色が黄色くなったことで、初めて確認された。
 他の世界には、多種多様の魔眼があるらしいのだが、その中でも異質なものらしい。
 
 発動の条件は、いまだに不明。
 だが、予測はできる。
 今回は、二つの発動条件の可能性をあげて行きたいと思う。

 一つは、死に関する時に発動することだ。
 彼は戦いの最中、殺される場面がいくつかあった。
 それは私たち、他者から見ても明らかだった。
 しかし、あの魔眼が発動してからは、死ぬような攻撃でも、対処法が分かっているかのように、動いていた。
 
 もう一つは、怒りによるものだ。
 彼はある事件の際、怒りに身を任せて動いていた節がある。その際にも、あの魔眼が発動していた。

 恐らく他にも発動条件があるのだろう。
 それは、是非探してみてほしいと思う。

 この魔眼の能力は、本人にもぼんやりとしか語れない。
 完璧者パーフェクターが聞いて呆れるほどだ。
 
 彼曰く、魔眼発動中は、どう対処するべきか、自分が今できる最大限のことができるという、アバウトな解答だった。

 だが、彼は奇妙な事を言っていた。
 手本を見せてもらったかのような感覚に陥る、と言っていた。
 
 私はそこに着目した。
 彼にいくつかの質問をして、ある仮説を立てられた。
 それは、投影トレースの可能性だ。

 投影トレースとは何かと言われれば、難しい言葉を繰り返す必要が出てきそうなので、簡潔にまとめると、コピーだ。
 
 これに関しての説明は、どこぞのきのこにお任せしたいものだ。

 これはあるライトノベルからの引用のようなものだ。
 (ライト…ノベルか定かではないが)
 
 ある似たもの同士が戦い、相手が圧倒する中、主人公は、相手の戦い方を自分に落としこみ、相手に追いつこうとする。

 つまり、相手の戦闘経験を、自分のものにしたのだ。
 これは、相手がいる事で使用できる。
 が、彼の魔眼はそうではない。
 自分だけという存在が、手本を見せてもらう感覚に陥っている。
 
 どういうことか。
 仮説ではあるが、これは、未来の自分の行動を見せられているのではないか、ということだ。
 
 死にそうな場面を打開することができる理由は、未来の自分が、そう対処したからだといえば、オカルト的だが、可能性はあるだろう。

 だが、これは未来視という魔眼ではないのか。
 ということも調べたが、それとは違う。

 未来視は、未来を見通す。
 その先にある展開を見ることができる。
 
 だが、この黄色の目をした魔眼は、未来の自分が行動したことしか行えない。
 
 例を挙げるとすると、
 じゃんけんをするとしよう。
 未来視を持つものは、相手が何を出すかを見てから、勝負に挑む。
 さらには、自分以外の未来を見ることが出来る。
 黄色の目をした魔眼は、未来ではこうしたら勝ったよと、未来の自分が耳打ちしながら行っているようなもの。
 しかし、自分以外の者には教えない。

 と言ったものだと考えている。


 ここから先は、考察の荒波だったので、後でじっくりと読もう。
 「どう?当てはまるところはあった?」
 「この仮説は当たっていると思います。」
 即答だった。
 当然だ。自分があの感覚になったのは、死の直前と怒りによるものが、多かったからだ。

 「あんまり決めつけるのもよくないよー。決めつけるなら、日々実験して結果を集めて、納得できるように説明できないといけないよー。ゆっくり確信をついていけるといいね。」
 「そうですね。少しだけ、使い方というものを理解したってところで落ち着こうと思います。」
 「なら、名前をつけませんか?」
 とミーナが提案をした。
 確かに、この文章の中には、黄色の目をした魔眼と長ったらしい名前が書かれていた。
 「魔眼に名前。やってみよ!そうなったらめちゃくちゃ考えなきゃ!」
 とカリナは、子供らしくはしゃいでうーむと頭を抱えていた。
 ホワイトボードにいろいろ書き込んだりしていた。
 「名前を考えるの好きなんですか?」
 「うん!だって、名前には答えがないから!名前には人の想いがのるから、どうやっても私には正しい答えはでないんだよ。」
 なるほど。
 名前には答えがないのか。
 

 俺たちも考えることにする。
 投影トレースという名前もいいけど、そのままな気がする。
 未来の自分が今の自分に…力を貸してくれている…
 うーむ。難しい。
 そもそもとして、未来の自分が今の自分に力を貸すとは、どんな因果関係なのか。
 「「あっ」」
 大原とカリナは、同時に名前を思いついた。
 同時ということもあって、お互いに意見を出し合うことにした。

 「じゃあそっちからで。」
 「分かりました。俺が考えた名前は、「因果の目」です。なぜかというと…」
 「ちょっと待って?」
 とカリナが話を遮る。
 メモがわりにしていたホワイトボードを見せる。
 そこには、大きく、因果と書かれていた。
 「え?同じ?」
 「多分だけど、理由も一緒だよね。」
 「「なんの因果があるんだよ。」」
 というくだらない理由で、つけられた。
 ここで、大原の黄色の目をした魔眼は、「因果の目」と名付けられた。

 その後、様々な話をして、俺たちはライトニングに戻ることにした。
 「面白い話が沢山聞けたよ。ありがとー!」
 と無邪気な笑顔を見せる。
 「私もカリナ博士と話せてよかったです。色々と勉強になりました。」
 とカリナと握手を交わすミーナ。
 そのあとぶんぶん振り回さなければ平和だったのだが。
 「…ぜぇ…ぜぇ…あの女、許せない…」
 カリナから、再注意人物になってしまったミーナ。
 「大原さんは、また来てもいいからね。今日出来なかった色んな事をしたいから。」
 「ありがとうございます。魔眼のことを教えてくれた借りもあるので、そのうちお邪魔したいと思います。」
 と握手を交わす。
 「賢者様!また会いに来てね!」
 と賢者に抱きつく。
 「ええ、また来るわね。」
 まるで、母と子のような抱擁をしていた。
 きっと、そういうところで絆を深めていったのだろう。

 そうして、俺たちは賢者様に捕まり、ライトニングに戻っていった。
 
 
 






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