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第三章 雷の世界<エクスター>

42.効率と再会

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 一方、アリサ側はというと。
 「魔力監獄を全て解除したんだね。」
 「…うん。」
 すると急にお父さんが抱きしめてくれた。
 「すまなかった…。アリサは雷の世界でも一番魔力が高かったから、それを利用するもの達が現れる可能性があった。あの子たちにしてやられていたことを、いなくなってから知った。」
 少し安心したような声音で話す。
 「本当は、私たち家族に心を開いて欲しかった。けどそんなことになっているのなら、いくら家族でも心を開かないのは当然だ。」
 「違うよ!」
 それだけは、それだけは否定しないといけなかった。
 「あたしは、お父さんとお母さんとの生活は楽しかったよ。あたしを、愛してくれてるのも、分かってた。だからこそ、信じてくれる二人のために、あたしはあたしなりに強くなろうって、思って、家を出たんだよ…。」
 「アリサの判断は、正しかったのね。」
 クレアはアリサに歩み寄る。
 「だって、あの子たちに会えたんだから。信頼、してるんでしょ?」
 「うん。」
 その目はただ幼かった目とは違い、確かな成長を実感する目であった。
 
 本来なら、アリサの魔力監獄は全て解放する訳ではなかった。
 魔力監獄の解除の条件は三つあった。
 一つは、仲間と共に戦うこと。
 これは、来るべき戦いに置いて必要なものだった。
 二つ目は、仲間を信頼すること。
 これは、範囲が広く、家族をも信頼しても解放される。
 しかし、双子の姉に虐げられたらアリサは、解放はされることなく幼少期を過ごした。
 そして、この最後の条件が、本来解放されることのないものだった。
 仲間の為に命をかけること。
 そんな風に命をかけてでも、戦うのならばきっと、その人達との方が良いのではと告げられた。
 そしてそれは、親から離れる一つの要因となるものと覚悟した。
 それでも、アリサは仲間と同等、いやそれ以上に、家族を愛してくれた。
 何よりも、それが、ライトニング夫妻にとって、1番の誤算であり、ありがたい誤算であった。
 そのおかげで、信頼できる仲間に出会え、今こうして抱きしめられるのだから。

 そんな話をしていると、アリサにある道具が送られる。
 ぱっと見カチューシャのようだが、なんらかの効力があるのは間違いなかった。
 それをつけて、モニターを見ると指示される。
 「見てるけど、何するの?」
 「アリサ、君の未来視は間違いなく凄いものだ。」
 とお父さんに言われる。
 「しかし、それを見るのは本人。伝えるには、口頭で伝えるか、事前に話すしかない。しかし、これならばそのロスを少なく出来るかもしれない。」
 ということで使用例を説明してくれる人を紹介してくれた。
 「…へぇ、こりゃ期待できるものかもね。」
 そうして、製作者と共にこの道具の説明等を受ける。

 
 大原たちはそれぞれの持ち場に着いた。
 全体的に仕事中。
 仕事のルールも聞かされていない。
 ここからどう役に立てというのか。
 「大原はその人から、あたしが示すところに運んであげな。」
 と脳に直接響くような感覚でアリサの声が聞こえてきた。
 とりあえず実行に移す。
 「それ、あそこに運べばいいんですよね」
 「お、おおそうだが…」
 「俺が運んどきますよ。」
 「ありがたい。それが終わったら、今度はこっちも頼むよ。」
 「分かりました。」
 と仕事が舞い込んでくる。
 しかし、あのアリサの声はどうやって…。

 「龍也は、それを運んだらその機械に魔力を注いで。やり方は勝手に教わってるから問題ない。」
 「麗華はそことあそことあそこに運んできて。ってかどんだけ運んでんの…」
 「ユナさんは土の魔力で手伝ってあげて。その後はまたこちらから指示する。」
 とそれぞれにアリサが指示するようになった。
 「これキツイわ休む暇が…」
 「戦っているアリサはそんなことはないんだがな。」
 「そりゃ、自分の目線でやってるからね。指示するのもみんながいる時だし。」
 体を伸ばすアリサ。
 「ほら、あんたも仕事があるんだろう?久々に会ってやりなよ。」
 「会うことは出来ないかな。実験室にこもっているから。でもまぁそうだな、そろそろお暇しよう。頑張れよ、アリサ。」
 と言い残しその場を後にした。
 「さて、この目もなんとか強くしないとなあ。」
 そうして、再び指示を続ける。

 午後7時ごろ。
 仕事はスムーズに進行した。
 初めての場所であったが、アリサの指示によって俺たちにもできる仕事が多く出来た。
 仕事を終え、それぞれ帰路にたつ。
 働いている人からは、また頼むよと言われた。
 病み上がりの運動としてはちょうど良い感じだ。
 それに、特訓の成果もついている。

 入院中
 大原は眠っている最中、ディルギッドと共に特訓していた。
 その際教えられたのは、魔力操作の安定。
 大原は全体に魔力を注いでいるのだが、これがまばらであるらしい。
 胴体が1000だとしたら、下半身は800頭あたりは1200とかなりの差が出てきている。
 「魔力の多さでなんとかはなってはいるが、そうはうまくいかないだろう。戦いながらでも安定させる、それはこの場所でもできる簡単なことよ。」
 とアドバイスされ、それを退院した今、実行しているのだ。
 
 俺たちはこのライトニングタワーにいさせてもらうので、夕飯を頂こうとしている。
 長いテーブルに真ん中に花の入った花瓶が置かれ、ナイフとフォーク、スプーンが綺麗に置かれている。
 さらには、シャンデリアのおまけ付き。
 そこに、俺たちと向かい合うようにライトニング夫妻、ライトニング姉妹が座っている。
 豪華すぎる。
 俺は緊張しているのだが…食い意地をはっている男もいれば、ナイフを見てウズウズとしてしまっている元殺し屋。ぼけーっとする神谷の巫女。
 「この場所に不釣り合いすぎる…」
 「あたしも大雑把だし、大丈夫でしょ。」
 と言われる。アリサが言うなら大丈夫だろう。
 「お待たせして申し訳ないです。」
 と聞き覚えのある声がする。
 「問題ないんだよ。君が会いたいものもいるわけだし、ゆっくりするべきだよ。」
 「ではお言葉に甘えて。」
 そうして、ライトニング姉妹の隣に座る。
 「久しぶりだな。大原、ユナさん、麗華さん、龍也君。」
 「ああ、約束通りきたよ、ミーナさん」
 「お久しぶりです。」
 「俺の名前まで、覚えてくれたのか…」
 「久しぶりです。ミーナさん。」
 そうして、ミーナ・シェルミルとの再会を果たした。
 
 
 
 
 
 
 
 

 
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