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第二章 風の世界<フーリアスター>編
36.リリースカード
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ユナが撃たれる直前まで、アリサはサルヴァを足止めしていた。
「魔力をふんだんに使う…」
「悪い、まだこの状態に慣れてなくてよ!」
雷の魔力で創り出した剣で、応戦するアリサ。
一方で、能力を使わずに応戦するサルヴァ。
いやこの場合は、させていないが正しい表現だろう。
アリサの目の精度は魔力が少なかった時とはうって変わって、相手のしようとしていることを、させない立ち回りをしていた。
今までのアリサなら、相手はこう動く、ならその後を対処しようだったのだが、相手がこう動く、ならその前に対処してしまおう、という差が出来たのである。
これにより、相手はアリサより劣っている場合、全てが後手に回ってしまう。
ただ、アリサは少しだけ気になるところがあった。
「お前、戦いに集中してないね?」
その証拠に魔眼は発動していなかった。
「気になるんだろ?ユナさんの返答。」
「…」
「いいさ、あたしも気になるからね。その後に思い切りやってもいいよ?」
といい座り込む。
「全てお見通しというわけか。」
半ば諦めたようにサルヴァも座り込む。
しばらくしてユナの声が響き渡る。
「そろそろ終わりそうだね。」
「ああ。」
と言いながら立ち上がる二人。
「どうする?続きをするのかい?」
「いや、お前たちはユナの仲間だ。俺にはどうしようも…‼︎」「‼︎」
硬直する二人。圧倒的な寒気と冷や汗が溢れ出る。
「なんだ…この殺気。」
「ボスの殺気だ。」
「ボス…は!マジかよこいつ!やりやがった!」
アリサは、最速で大原の元へと向かった。
それに呼応するように、サルヴァも追いかける。
その声は虚しく、未来を見たままになってしまった。
ユナは背中を撃たれ、大原にもたれかかっていた。
そしてそれを見下ろす一人の男。
「ユナ…さん…?」
もたれかかったユナを支える。
手は血で真っ赤に染まってしまった。
「二人同時にやったと思っていたが、死を見通す目で即死を避け、魔力でその男を守ったか。」
大原は無言で、ユナの中にある銃弾を取り出した。
そして、目の前の男に背を向け階段へと向かう。
「俺に背中を向けるなど、俺はそこの裏切り者とは違うぞ。」
問答無用で銃を発砲する。
魔力がこもった銃弾を見もせず斬撃で切る。
「何⁉︎」
大原はそのまま呟くように発する。
「賢者様」
「人使い荒くない?」
「申し訳ないとは思うけど、それしかないから。」
「…何か私に感謝の証みたいなことを考えておきなさい。」
「分かりました。」
「お…お…はら…さん」
「なんです?」
と話している時、後ろから大原の首元をナイフが通ろうとしていた。
「うるさいな。今、ユナさんが喋ってるだろ。邪魔すんなよ。」
土の壁を何十も展開する。
「あの…人を…ころさ…ない…で…下さい…」
絞り出すように言いながら、大原の手を力強く握り、大原の目を見た。
「…スゥ…ハア…。分かりました。あいつは殺しません。でも、少しだけ叱ってきます。それでいいですか?」
その言葉を聞いたユナは大原の手を離し、賢者に転移された。
その瞬間、土の壁が破られ、大原に向かう影があった。
「殺さない…か。まぁ上手くやれると思うしかないか。」
「‼︎」
大原がそう決心した直後、展開された壁が全て土の剣の形を模したまま空中で静止していた。
大原が手を前に出すと土の剣は、男の元へ向かって行った。
男は魔眼の力で、土の剣を撃ち落としていく。
「全く。殺されにくるとは哀れな。」
「悪いけど、そんな気は一切ないよ。俺たちは、お前を説得することに集中するからさ、覚悟しろ。」
そうして、アリサとサルヴァが合流した。
「サルヴァ、貴様…」
「もう良いじゃないか、ユナはこの人達を選んだんだ。今更殺す必要なんてないだろ。」
「アリサ、この子は。」
「味方だよ。だから、目の前のやつに集中しよう。」
しばし、静寂が流れた…
仕掛けたのはキラーズだった。狙いは大原…ではなくアリサ。
キラーズも雷をまといながら戦う。
どちらも音速を超えて戦っていた。
「狙い目がガチなんだが、」
「減らず口はここまでだ。」
そうしてキラーズは能力を発動させる。
アリサが気づいた時には、サルヴァがキラーズと鍔迫り合いをしていた。
そこに追いついた大原が炎の魔力弾を放つ。
だが、先ほどと同じように目の前から消える。
次に現れたのは、3人の前であった。
「早すぎる…この目でも視えなかった。」
「それもそうだ、ボスの能力は瞬間移動。任意の場所へ瞬時に移動できる。ただ転移とは違い移動距離には制限がある。」
「まぁ何はともあれ、奴が有利ってことだな。」
この地下二階という場では、壁を利用して機動力を保つことが出来、さらには瞬間移動で最速で仕掛けることができる。
「大原…少しだけ可能性があるのはこれしかない。」
「…まぁ俺も少しは考えたけど、どうする?」
「ぶち破る。」
「オーケー、頭上に注意しろよ!」
「何を⁉︎」
大原は魔力を溜め始める。
それをさせまいとキラーズは大原だけを集中狙いしたが、全てサルヴァとアリサによって防がれる。
アリサはこの数秒の間に未来を見て、キラーズの攻撃カ所を見極め、防いでいた。
しかし、未来で見えなかった範囲をサルヴァがかろうじて防ぐ。
「ちぃ!」
充填が完了したと同時に魔力弾を放つ。
地下二階の頭上を砕き、地下一階、一階と貫通していく。
「大原‼︎」
大原はアリサに捕まり地上へと向かった。
「やりすぎたか?」
「完璧よ。まぁひびは入ったと思うけど。」
「なるほど、ここでなら倒せると…」
そうして、地上へときたキラーズが言葉をこぼす。
「あそこよりましだろ。」
「ここならゆっくり話せそうだしな。」
距離は十分にあるが、一瞬で詰められる範囲。
しかし、大原はそれどころではなかった。
「どうしてそこまでユナさんにこだわるんだ。ユナさんには、人は殺せないことがここで分かったじゃないか。」
「それは情によるものだ。そればかりはわたしにもどうしようもないとは思うが、ユナの復讐心を尊重したいのだよ。」
「それが今は」
「無くなってはいない。完全にはな。私達は、魔王軍に恨みを持った者の集まりだ。その復讐心で私達は、魔王軍と同じくらいの悪の者を滅し、人を殺めてきた。暗殺者として仕事をしていても、人を殺すのは覚悟がいることだ。殺め続けた者には、後には引けぬ重圧がある。それをお前たちは、どう考える。」
「⁉︎」
ノーモーションから近づいてきたキラーズの攻撃をサルヴァが防ぐ。
「くっ…」
「お前もだサルヴァ、俺たち兄弟は誓い合ったじゃないか…共に魔王軍を絶滅させるとな‼︎」
サルヴァを大きく吹っ飛ばす。
そこからアリサが追撃に入る。
ライトニング・ラウンドスパーク。
アリサを中心に雷のドーム状の攻撃。
それをキラーズはあっさりとかわす。
大原も迎撃に入るが全て防がれる。
「俺たちは、この復讐心だけしかない。ここにいる者達は全てを魔王軍に奪われた。どうしてそこから解放されよう。」
「知らないよ。そんなもの。けど、俺はその生き方を否定することは出来ない。だけど、一人の女の子の生き方を、お前が勝手に決めつけて言い訳ないだろ。お前はお前の生き方を選べよ。だから、ユナさんはユナさんのいきたい方向に行かせてやれよ!」
「綺麗事をクドクドと、そんな夢物語があるなら、俺たちはとうにやっている!!」
そこでキラーズは消えた。
それを捉えることができているのはいつも、サルヴァであった。
「兄さん、これはもう意味のない戦いだ。」
「サルヴァ…私の能力の範囲を知っているだけあってよく防ぐじゃないか。まさかお前が、ここまで鬱陶しいとは思わなかったがな‼︎」
「くっ!」
ギリギリ全ての攻撃を防ぎ切ったサルヴァ。
ここでキラーズは少しだけだが隙を見せた。
攻撃は最後の一撃だけ大ぶりになっていた。
理由は恐らく怒りによる感情の制御。
この少しの隙をアリサは待っていた。
足下に向かって土がキラーズを包み込んでいく。
「これは…」
「砂鉄による行動制限。魔力を持ってかれはするが、お前には十分すぎる。」
アリサは、この瞬間移動に違和感を持っていた。
未来は見えなくとも魔力の流れで見えないものかと。
瞬間移動とは言っても結局は足で高速に動いているだけ。
有効的に使えているのは経験によるもの。
ならその経験から導き出せるのは。
「足に魔力操作してないと見た。」
その仮説は当たっていた。
アリサが予想したのは、瞬間移動による身体の負担の部分をどう解消しているのかだ。
いくらなんでもあのスピードで空気抵抗には体が抗えないだろう。
なら体を前面に押し出して、そこに魔力を集中させれば、高いポテンシャルを測れるのではと予想した。
故に、足には魔力が及んでいなかった。
これにより、この砂鉄の拘束に数秒取られてしまう。
その数秒の内に、大原は斬撃の剣に水と雷を混ぜ、包むようにキラーズに斬り込む。
キラーズは全身に雷が周り倒れ込んだ。
「よくあの一瞬の隙に、叩き込めたな。」
と吹っ飛ばされたサルヴァが戻ってくる。
「あいつにも情があったのさ。現にお前だけは集中的に攻撃していなかった。お前が攻撃を防ごうとするとアイツの攻撃に迷いが少しだけあったからな。」
とアリサが説明する。
「しかしアリサはどうしてこんな魔力が増えたんだ?」
と大原も話に加わる。
「まぁ、色々あるからとりあえず、ユナさんたちの元へ…‼︎大原!」
アリサが指差す方向を見ると、キラーズがフラフラと立ち上がった。
「大原お前!」
「いや、気絶させる威力で流し込んだ。どうなって…」
「何…簡単な…ことよ、地面に…流し込んだのさ…ギリギリ…だった…が」
「そんなになりながらまだやるのか。」
現に今キラーズからは殺意は感じられるが、フラフラとしている。
歩くのもままならない。
しかし、一人この状況で一つの逆転の策があることを知っていた。
「まずい。」
「おい!何を!」
サルヴァがキラーズに向かって飛び出す。
確実に気絶させるため、首元に峰打ちでナイフを振る。
だがそれよりも先にキラーズは、つぶやくように唱える。
「リリースカード・オープン…」
その瞬間、キラーズからは大量の魔力が放出される。
その衝撃波にサルヴァは巻き込まれ態勢を立て直す間も無く、腹部を刺された。
それは先ほどのキラーズよりも速く、キレがあり魔力もアリサが検知した魔力よりも大幅に伸びていた。
「30、40、50、な、何だこれ…どんどん魔力が増えてる!」
キラーズの方を見ると片目から血が出ていた。
いや、そもそも、目がそこには無かった。
「これどうするよ、アリサ。」
「正直無理。あれはもう人を捨ててるよ。」
「まぁ、どっちにしろ逃げられんもんな」
そうして、大原とアリサは目の前の化け物と対峙する。
「魔力をふんだんに使う…」
「悪い、まだこの状態に慣れてなくてよ!」
雷の魔力で創り出した剣で、応戦するアリサ。
一方で、能力を使わずに応戦するサルヴァ。
いやこの場合は、させていないが正しい表現だろう。
アリサの目の精度は魔力が少なかった時とはうって変わって、相手のしようとしていることを、させない立ち回りをしていた。
今までのアリサなら、相手はこう動く、ならその後を対処しようだったのだが、相手がこう動く、ならその前に対処してしまおう、という差が出来たのである。
これにより、相手はアリサより劣っている場合、全てが後手に回ってしまう。
ただ、アリサは少しだけ気になるところがあった。
「お前、戦いに集中してないね?」
その証拠に魔眼は発動していなかった。
「気になるんだろ?ユナさんの返答。」
「…」
「いいさ、あたしも気になるからね。その後に思い切りやってもいいよ?」
といい座り込む。
「全てお見通しというわけか。」
半ば諦めたようにサルヴァも座り込む。
しばらくしてユナの声が響き渡る。
「そろそろ終わりそうだね。」
「ああ。」
と言いながら立ち上がる二人。
「どうする?続きをするのかい?」
「いや、お前たちはユナの仲間だ。俺にはどうしようも…‼︎」「‼︎」
硬直する二人。圧倒的な寒気と冷や汗が溢れ出る。
「なんだ…この殺気。」
「ボスの殺気だ。」
「ボス…は!マジかよこいつ!やりやがった!」
アリサは、最速で大原の元へと向かった。
それに呼応するように、サルヴァも追いかける。
その声は虚しく、未来を見たままになってしまった。
ユナは背中を撃たれ、大原にもたれかかっていた。
そしてそれを見下ろす一人の男。
「ユナ…さん…?」
もたれかかったユナを支える。
手は血で真っ赤に染まってしまった。
「二人同時にやったと思っていたが、死を見通す目で即死を避け、魔力でその男を守ったか。」
大原は無言で、ユナの中にある銃弾を取り出した。
そして、目の前の男に背を向け階段へと向かう。
「俺に背中を向けるなど、俺はそこの裏切り者とは違うぞ。」
問答無用で銃を発砲する。
魔力がこもった銃弾を見もせず斬撃で切る。
「何⁉︎」
大原はそのまま呟くように発する。
「賢者様」
「人使い荒くない?」
「申し訳ないとは思うけど、それしかないから。」
「…何か私に感謝の証みたいなことを考えておきなさい。」
「分かりました。」
「お…お…はら…さん」
「なんです?」
と話している時、後ろから大原の首元をナイフが通ろうとしていた。
「うるさいな。今、ユナさんが喋ってるだろ。邪魔すんなよ。」
土の壁を何十も展開する。
「あの…人を…ころさ…ない…で…下さい…」
絞り出すように言いながら、大原の手を力強く握り、大原の目を見た。
「…スゥ…ハア…。分かりました。あいつは殺しません。でも、少しだけ叱ってきます。それでいいですか?」
その言葉を聞いたユナは大原の手を離し、賢者に転移された。
その瞬間、土の壁が破られ、大原に向かう影があった。
「殺さない…か。まぁ上手くやれると思うしかないか。」
「‼︎」
大原がそう決心した直後、展開された壁が全て土の剣の形を模したまま空中で静止していた。
大原が手を前に出すと土の剣は、男の元へ向かって行った。
男は魔眼の力で、土の剣を撃ち落としていく。
「全く。殺されにくるとは哀れな。」
「悪いけど、そんな気は一切ないよ。俺たちは、お前を説得することに集中するからさ、覚悟しろ。」
そうして、アリサとサルヴァが合流した。
「サルヴァ、貴様…」
「もう良いじゃないか、ユナはこの人達を選んだんだ。今更殺す必要なんてないだろ。」
「アリサ、この子は。」
「味方だよ。だから、目の前のやつに集中しよう。」
しばし、静寂が流れた…
仕掛けたのはキラーズだった。狙いは大原…ではなくアリサ。
キラーズも雷をまといながら戦う。
どちらも音速を超えて戦っていた。
「狙い目がガチなんだが、」
「減らず口はここまでだ。」
そうしてキラーズは能力を発動させる。
アリサが気づいた時には、サルヴァがキラーズと鍔迫り合いをしていた。
そこに追いついた大原が炎の魔力弾を放つ。
だが、先ほどと同じように目の前から消える。
次に現れたのは、3人の前であった。
「早すぎる…この目でも視えなかった。」
「それもそうだ、ボスの能力は瞬間移動。任意の場所へ瞬時に移動できる。ただ転移とは違い移動距離には制限がある。」
「まぁ何はともあれ、奴が有利ってことだな。」
この地下二階という場では、壁を利用して機動力を保つことが出来、さらには瞬間移動で最速で仕掛けることができる。
「大原…少しだけ可能性があるのはこれしかない。」
「…まぁ俺も少しは考えたけど、どうする?」
「ぶち破る。」
「オーケー、頭上に注意しろよ!」
「何を⁉︎」
大原は魔力を溜め始める。
それをさせまいとキラーズは大原だけを集中狙いしたが、全てサルヴァとアリサによって防がれる。
アリサはこの数秒の間に未来を見て、キラーズの攻撃カ所を見極め、防いでいた。
しかし、未来で見えなかった範囲をサルヴァがかろうじて防ぐ。
「ちぃ!」
充填が完了したと同時に魔力弾を放つ。
地下二階の頭上を砕き、地下一階、一階と貫通していく。
「大原‼︎」
大原はアリサに捕まり地上へと向かった。
「やりすぎたか?」
「完璧よ。まぁひびは入ったと思うけど。」
「なるほど、ここでなら倒せると…」
そうして、地上へときたキラーズが言葉をこぼす。
「あそこよりましだろ。」
「ここならゆっくり話せそうだしな。」
距離は十分にあるが、一瞬で詰められる範囲。
しかし、大原はそれどころではなかった。
「どうしてそこまでユナさんにこだわるんだ。ユナさんには、人は殺せないことがここで分かったじゃないか。」
「それは情によるものだ。そればかりはわたしにもどうしようもないとは思うが、ユナの復讐心を尊重したいのだよ。」
「それが今は」
「無くなってはいない。完全にはな。私達は、魔王軍に恨みを持った者の集まりだ。その復讐心で私達は、魔王軍と同じくらいの悪の者を滅し、人を殺めてきた。暗殺者として仕事をしていても、人を殺すのは覚悟がいることだ。殺め続けた者には、後には引けぬ重圧がある。それをお前たちは、どう考える。」
「⁉︎」
ノーモーションから近づいてきたキラーズの攻撃をサルヴァが防ぐ。
「くっ…」
「お前もだサルヴァ、俺たち兄弟は誓い合ったじゃないか…共に魔王軍を絶滅させるとな‼︎」
サルヴァを大きく吹っ飛ばす。
そこからアリサが追撃に入る。
ライトニング・ラウンドスパーク。
アリサを中心に雷のドーム状の攻撃。
それをキラーズはあっさりとかわす。
大原も迎撃に入るが全て防がれる。
「俺たちは、この復讐心だけしかない。ここにいる者達は全てを魔王軍に奪われた。どうしてそこから解放されよう。」
「知らないよ。そんなもの。けど、俺はその生き方を否定することは出来ない。だけど、一人の女の子の生き方を、お前が勝手に決めつけて言い訳ないだろ。お前はお前の生き方を選べよ。だから、ユナさんはユナさんのいきたい方向に行かせてやれよ!」
「綺麗事をクドクドと、そんな夢物語があるなら、俺たちはとうにやっている!!」
そこでキラーズは消えた。
それを捉えることができているのはいつも、サルヴァであった。
「兄さん、これはもう意味のない戦いだ。」
「サルヴァ…私の能力の範囲を知っているだけあってよく防ぐじゃないか。まさかお前が、ここまで鬱陶しいとは思わなかったがな‼︎」
「くっ!」
ギリギリ全ての攻撃を防ぎ切ったサルヴァ。
ここでキラーズは少しだけだが隙を見せた。
攻撃は最後の一撃だけ大ぶりになっていた。
理由は恐らく怒りによる感情の制御。
この少しの隙をアリサは待っていた。
足下に向かって土がキラーズを包み込んでいく。
「これは…」
「砂鉄による行動制限。魔力を持ってかれはするが、お前には十分すぎる。」
アリサは、この瞬間移動に違和感を持っていた。
未来は見えなくとも魔力の流れで見えないものかと。
瞬間移動とは言っても結局は足で高速に動いているだけ。
有効的に使えているのは経験によるもの。
ならその経験から導き出せるのは。
「足に魔力操作してないと見た。」
その仮説は当たっていた。
アリサが予想したのは、瞬間移動による身体の負担の部分をどう解消しているのかだ。
いくらなんでもあのスピードで空気抵抗には体が抗えないだろう。
なら体を前面に押し出して、そこに魔力を集中させれば、高いポテンシャルを測れるのではと予想した。
故に、足には魔力が及んでいなかった。
これにより、この砂鉄の拘束に数秒取られてしまう。
その数秒の内に、大原は斬撃の剣に水と雷を混ぜ、包むようにキラーズに斬り込む。
キラーズは全身に雷が周り倒れ込んだ。
「よくあの一瞬の隙に、叩き込めたな。」
と吹っ飛ばされたサルヴァが戻ってくる。
「あいつにも情があったのさ。現にお前だけは集中的に攻撃していなかった。お前が攻撃を防ごうとするとアイツの攻撃に迷いが少しだけあったからな。」
とアリサが説明する。
「しかしアリサはどうしてこんな魔力が増えたんだ?」
と大原も話に加わる。
「まぁ、色々あるからとりあえず、ユナさんたちの元へ…‼︎大原!」
アリサが指差す方向を見ると、キラーズがフラフラと立ち上がった。
「大原お前!」
「いや、気絶させる威力で流し込んだ。どうなって…」
「何…簡単な…ことよ、地面に…流し込んだのさ…ギリギリ…だった…が」
「そんなになりながらまだやるのか。」
現に今キラーズからは殺意は感じられるが、フラフラとしている。
歩くのもままならない。
しかし、一人この状況で一つの逆転の策があることを知っていた。
「まずい。」
「おい!何を!」
サルヴァがキラーズに向かって飛び出す。
確実に気絶させるため、首元に峰打ちでナイフを振る。
だがそれよりも先にキラーズは、つぶやくように唱える。
「リリースカード・オープン…」
その瞬間、キラーズからは大量の魔力が放出される。
その衝撃波にサルヴァは巻き込まれ態勢を立て直す間も無く、腹部を刺された。
それは先ほどのキラーズよりも速く、キレがあり魔力もアリサが検知した魔力よりも大幅に伸びていた。
「30、40、50、な、何だこれ…どんどん魔力が増えてる!」
キラーズの方を見ると片目から血が出ていた。
いや、そもそも、目がそこには無かった。
「これどうするよ、アリサ。」
「正直無理。あれはもう人を捨ててるよ。」
「まぁ、どっちにしろ逃げられんもんな」
そうして、大原とアリサは目の前の化け物と対峙する。
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