セブンスワールド〜少年、世界を知る〜

七瀬界

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第二章 風の世界<フーリアスター>編

34.ともにかけた記憶

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 「あはははは!」
 「死なない!なんで?なんで?」
 楽しそうに俺たちに攻撃してくる女の子達。
 しかしそこには純粋な殺意があった。
 彼女達は多種多様な武器を使って俺たちを翻弄している。
 しかし、彼女たちにも必殺がある。
 毒に塗られたナイフ。
 片手に常備し、隙を見せた瞬間すぐに振ってくる。
 それに加えて、息のあったコンビプレイ。
 それでも耐えられているのは、大原の特殊な黄色の目。
 脳内に攻撃に対応するための知識が入り込んでくる。
 しかしそれでも防戦一方。
 「キツイな。」
 「悪い大原。制限時間が決まったよ。」
 と龍也が俺の肩を掴みながら立ち上がる。
 「10分は持たせる。けど出来るなら5分で。」
 「分かった。上手くやってやる。」
 何故、毒をもらった龍也が立ち上がれるのか。
 それは一時的に剣に吸収させているからだ。
 しかし、その場合、魔力も吸収されてしまう。
 毒がどこまで廻っているか分からないからだ。
 故に制限時間。龍也の魔力がなくなる前に勝負をつけなければならない。
 
 「もう一人の方も立ち上がったよ?」
 「へぇ、じゃあ苦しんで死んでもらおうかな?」
 すると、多々ある武器の中から拳銃を抜き、発泡した。
 なんとかかわしたが、もう一人は投擲してきた。
 それを龍也が防いで攻撃に転じようとした時に、銃と投擲の挟み撃ちにあう。
 そこを大原が斬撃を操り防いだ。
 しかしながら相手もそれを防ぐと分かった上での攻撃。集中的に貯めた魔力砲を撃ち出す。
 それを見て、龍也は剣を前へ突き出し吸収する。
 その隙に、幾多もある壁を足場にして、龍也に向かう。
 大原が防いで、少女にかすり傷を負わせる。
 「すごいねお兄さん。私たちにはたくさん死んでるお兄さん見えるのに、まだ生きていてかすり傷負わせるなんて。」
 「…」
 答える必要なんてものはなかった。
 この子達を説得する知識がまるでないからだ。
 違う道へと進ませてあげたいが、今回の目的はこの先にいる。
 「大原…うっ」
 体の負荷が大きい。魔力を吸い取った分俺の魔力に変換されたが、そろそろ限界だ。
 「あっちは防がれちゃったけど、こっちは終わりそうだね。」
 ただゆっくりと死期が近づいてくる。
 ただ相手はゆっくりとは来ていなかった。
 最短で油断なく首元へとナイフを突き刺そうとする。
 それを、ただ添えるように防いだ。
 「もう限界なはずなのに…!」
 「龍也!お前大丈夫…じゃねぇけど、戦えそうだな。」
 「ああ、こんな速度じゃあ殺せないことを教えてやらないと。」
 龍也の瞳は、緑に輝く。
 極限集中状態ゾーン
 スポーツ選手や、スポーツ漫画などに使われる。
 自身の実力を100%にすることができる。
 不必要な物を捨て、ただ自身のメリットだけを摘出する。
 しかし、魔眼のゾーンは少し違う。
 実力を出すのはもちろんだが、魔力量が1.5倍になる。
 本来、これは誰もが使用できる可能性がある状態だ。
 今回のゾーンもその例に漏れない。
 この能力者時代では、能力や魔力を視認しながら戦うため、目のほうに集中されていた。
 故に、一番ベーシックな魔眼と言っていいだろう。
 今回の龍也は、死ぬ寸前でのゾーン。
 走馬灯が見え、時間がゆっくりになるあの状態なのだ。
 それを利用して、少女達のコンビ攻撃を防ぎながら、攻撃に転じていた。
 
 「な!?」
 「痛っ!」
 流が言っていた事が今なら少しだけ分かる。

 「どんな剣舞を作るか?」
 「そう。俺たちなら俺たちなりの剣舞を作れると思うんだよ。」
 そういいながら、ベッドに横になる流。
 「俺にはあんまり想像つかないんだけど、どんな感じとか説明出来るか?」
 「そうだねー、剣舞という漢字には、舞という字が入っているから、キレがあるんだけど、受け流しながら舞うみたいな…」
 「何言ってるん?相当難しいこと言ってるぞ?」
 「確かに。うーむ、なら桜とか、川みたいな感じって言えばいいのかな?」
 「桜と川?」
 「そう。桜は綺麗だけどその木はどっしりと構えている。そこからひらひらと舞い散る桜を攻撃のイメージとする。花びらは風に乗るし、川とかにも流れる。雷には合わないけど、まぁ剣舞だしそこまで物理的に考えなくていいかな。」
 「へぇ…ちゃんと属性的な面でも考えてるんだな。」
 「龍也もやって見ようよ。」
 「機会があればな。」
 「へへ、二人で完成させてみんなに驚いてもらおう。」
 「どこで披露するんだか。」

 まだ俺たちの剣舞は完成してない。
 それに、まだお前の意思は終わってねぇ。
 これからも、俺たちで、この剣舞を完成させるんだ!
 
 「次で」
 「終わらすよ!」
 「次で、できる…」
 素早い動きで翻弄する少女達。
 その速度は常人には見えなくなるほどだ。
 その場で立ち尽くしながら二刀を持つ龍也。
 それを見た大原はゆっくりと地下へと進む階段へと向かう。
 「へー仲間を見捨てちゃうんだ。」
 「そうだよね死ぬところなんて見たくないもんね。」
 高速で動く少女達の声がする。
 「そうだな。その心配は無いと思うが、子供がなぶられるのはちょっとな。」
 
 「ならすぐに殺して、あなたも殺してあげる!」
 「殺陣 ジェノサイドゾーン」
 高速で動きながら、範囲を狭めていき、いじめ倒す技。
 「うん、よく見える。」
 近づいてきたタイミングで両方のナイフを受け流し、回転しながらカウンターを与えた。
 「ぐはっ!」
 「ゴホッ!」
 両刀に当てられた彼女達は、地面を転げ落ち、そのまま気絶した。
 「散華の川流さんかのかわながれ
 「そうだな、こんな名前がいい、だろ?流。」
 そのまま倒れ込む龍也。
 見届けた大原は先へと進む。
 「賢者様。お願いできますか?」
 「任せておきなさい。君は君のなすべきと思ったことをすることに集中しなさい。」
 そうして、その場を後にする賢者。
 大原は進む。
 この先の決戦の場へ。

 
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