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第二章 風の世界<フーリアスター>編

32.赤い瞳

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 無風の夜叉のアジトの裏手には森が生い茂っている。
 そこでは、暗殺能力を向上させるための訓練場のような場である。
 その場には、経験が浅い者から、ベテランまで、ほとんどが使用する場であり、訓練場としてはよく使用されている。
 またそこには、見張りがついており、スナイパーライフルを持ち、隠密していた。
 そこを、一瞬にして倒していく二つの影があった。
 訓練している者たちはそれに気づかない。
 
 「俺いらなくない?」
 「効率は良かったですよ?」
 「なら…いんだけど…」
 「さあ、戻りましょう。作戦は終えましたし。」
 「ああ、行こう。本陣突撃。」

 
 その頃、アジトの2階では。
 「ん?アイツら付き添いがいないぞ?」
 とたまたま外を見ていた者が発した。
 外には、ただ歩いている二つの姿があった。
 依頼人なのか、違うのか。判断しかねていたその時。

 最速で斬撃が迫ってくる。
 殺気を感じた、そのその者は「侵入者だ!」と叫びながら雷の魔力を注ぎ込まれ気絶した。
 それに反応した者たちで、ライフルや爆薬など、殺す準備を整えていた。

 「2階に15、3階に10、1階には15、場所なんかはまぁ細かく伝えなくていいか。」
 「ありがとう。後は全部取り出す。」
 そうして、アジトの方へ手を掲げ、全てを包むように拳を握り、目を瞑る。
 「… …ふっ!」
 そうして斬撃を20、30と繰り出す。
 それらの斬撃はアジト内にいる者をピンポイントで命中させていく。
 大原が取り出したのはアジト内の情報。
 情報が取り出されたからピンポイントで当てれたのだ。
 それはもはや、能力を逸脱したものとは知らずに、大原は使用していた。
 しかしながら、その攻撃を耐える者もいる。
 大原とアリサを迎撃しようとする者十数名ほど。
 一斉にして撃ち出された弾丸は、全て撃ち返された。
 「取り出す能力」
 相手の弾丸の所有権を取り出し、魔力を通じて跳ね返したのだ。
 このような能力の応用は、超能力に近しいものを持っていた。
 異変に気づいた者たちが、入り口から出てくる。
 ナイフ、刀、毒ガスなど殺すための道具を持った男たちが大原達の目の前に現れる。
 だが、大原とアリサはただ歩く。
 それだけでもう事足りるのだ。

 駆けつけた麗華と龍也によって入り口から出て来た者たちを撃退した。
 「作戦通りにしたっすよ。」
 「よし、森からの援軍は疲弊した暗殺者だけだ。そして、ここから分かるのは、地下に多々いる実力者達。その中にユナさんはいる。」
 と説明する。
 「了解。乗り込むよ。」
 
 「何事だ?」
 「侵入者と聞こえましたが、どのような状態なのでしょう?」
 「なら、我々が調べて来ますよ。生き残りの者をそちらに回します。行きますよキルスさん。」
 「ホイホイっと。ではお掃除して来まーす。」
 部屋から出て行く二人を見届け、侵入者とは誰なのかを模索するキラーズ。
 「こちらに来たら確定と言えるか…。今は侵入者の撃退を優先とし後日作戦会議を開くこととする。」
 「しょうがないな。」
 「侵入者も殺していいの?」
 「それを覚悟して来ているだろう。二人で世話してあげなさい。」
 「はーい!」「どう殺そっかなぁ。」
 と談笑するミサイズ姉妹。
 「もしかして…」
 「多分あの人達はここまでくる。」
 「やはりか。」
 「大丈夫。あの人達の手は分かってる。だから、私が必ず…」
 「俺も一緒に行ってやる。ブランクもあるやつ一人に任せられない。」
 「ありがとうございます。」

 「ここは!」
 アジトの中は、洞窟のようだった。
 隠密などで使える穴が至る所にある。
 床も砂だらけだった。
そして正面に地下に行く階段がある。
 そこへ向かおうとすると、階段が爆発した。
 「こんにちは、そしてさようなら。」
 爆発の影響で煙幕が貼られ、アリサに向かって強襲する。
 「っぶねぇ!」
 かろうじて、未来視フューチャーアイによって未来が見えたことで死角からの攻撃を回避できた。
 「ありゃ、これをかわすかね。」
 と煙幕の中から声が聞こえてくる。
 「大原、ここはあたしらに任せろ。地下の方に魔力反応が多々あるが、お前たちなら上手くやれんだろ。」
 「ああ。頼んだ。」
 「大原!必ずたどり着けよ!」
 「任せろ。」
 そういいながら地下に向かう階段に駆け込む。
 「そう行かせるとでも?」
 と大原と龍也の前に立ち塞がる。
 「知るか。どけよ。」
 と2階と3階にあった斬撃を、相手に向かわせた。
 その隙に大原達は地下へと向かった。
 「やれやれ、飛んだ奇襲でした。」
 「お前たちが言うか?」
 煙が晴れてゆく。
 そこにいたのは男二人。
 一人はナイフを持っており、もう一人は能力の発動の準備をしていた。
 「ありゃ、女の子だけじゃん。やりにくいなぁ。」
 「何、侵入者です。殺す事が出来なくとも、再起不能にしてしまえば良いのです。ですが、それをするなら急いだほうがいいですよ。私がすぐに殺して差し上げますから。」
 「はいよ。まぁ俺も殺すんだけどね。」
 「気楽なもんだな。」
 臨戦態勢になるアリサ。
 「一人で何が出来るのさ。時間稼ぎが出来るとでも?」
 「ん?あたし言ったよな?あたしらに任せろってさ。」
 瞬間、背後からそれぞれに強烈な一撃を喰らわせた。
 「神谷転生」
 それぞれ壁に叩き込まれた。
 「なるほど。油断大敵でしたね。」
 「いてて。女の子の一撃じゃないよ~。」
 「神谷の巫女、ですか。なら我々も加減は必要なさそうだ。」
 「だね。うん。覚悟してもらうね。」
 そういいながら、瞳を赤く染める。
 「これは、ユナさんの殺気と同じ…」
 「死を悟る目デッドアイ。発動条件は単純。人を何百と殺す事。死までの過程を見ることが出来る、か。」
 そうしてアリサも青く瞳を染め上げる。
 「麗華。あたしの指示に従わないと死ぬよ。」
 「了解しました。」
 「では、行きますよ。狩りの時間です。」
 「来る‼︎」
 そうして激突して行く。

 地下へと向かった二人は地下1階に辿り着こうとしていた。
 地下1階は武器弾薬がたんまりとあった。
 2階と3階にあった武器弾薬は、簡易的なもので、ここが一番の武器庫と呼んでも過言ではない。
 「こんにちは!お兄ちゃん達。」
 と目の前の女の子達が挨拶をして来た。
 「こんな子達まで…」
 「どうしたらこの道に入ってそんな笑顔に出来るんだ?」
 そう、この姉妹は笑顔だったのである。
 にも関わらず赤い瞳を宿していた。
 年は小学生ぐらい。一体いつからこの場にいたのか。二人には想像もできなかった。
 「けど、ここは突破させてもらう。」
 「一気に行く。」
 二人は臨戦態勢に入る。
 龍也は二刀を、大原は斬撃の剣を取り出す。
 「わぁ楽しくなりそうだね!リラ!」
 「うん!はやくやろ!ミラ!」
 そうして、一瞬にして懐に入られ。
 大原はなんとか防いだが、龍也は一撃をもらった。
 「龍也!」
 「大丈夫。かすりき…うっ…かはっ…」
 「!待ってろ!」
 かすり傷に手を当て毒を取り出す。
 「クソ!完全には取り出せなかった…。」
 そう、曲がりなりにも大原は中学二年。
 人体の構造など、下ネタぐらいしか分からない。
 故に、全身の細かなところにまで毒を取り出すことは出来なかった。
 「大丈夫。ってことは少なくとも俺はここまでだな。」
 「何言って…」「勘違いすんな。死ぬってわけじゃない。こいつらを倒しても俺は先に進めないってだけだ。俺の役目はお前をユナさんのところに行かせること。ここは絶対に押し通る!ここで、仲間の為に命張ってやる!それは、あの時出来なかった後悔をまたしたくないから…だから、最短で倒すぞ、大原。」
 フラフラとしながら立ち上がる龍也。
 そこには、大原があったことのない流の背中が見えた気がした。
 「ああ。一気に終わらそう。」
 そうして姉妹に向き直る。
 
 それぞれの戦いが今始まる!
 
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