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第一章 風の世界<フーリアスター>仲間集め編

18.龍の試練

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ある時、20人程度の魔族のパーティが我のところにやってきた。その時の火の試練というのは結界を破壊すれば、同じように問い、龍の証を与える。というものだった。魔族も、力欲しさにくるものも少なくなかった。

 その者たちは、試行錯誤を繰り返し、我の攻撃を避けながらも、結界を破壊することに成功した。
 我にとって、人の子が何人来ようと同じことでしかなかったが、協力し、魔力を高めれば破壊できるということをその者たちは導き出したのだ。
 当然、汝らと同じように問いただそうとした瞬間、背後から忍び寄る者に気付かずに、呆気なく…。

 「龍神として情けなく思う。他の龍神も同じだろう。」
 「しかし、背後の反応の速さは素晴らしいものでした。そのような失態を犯すようには…。」
 「それについてだが、大原よ、我の全方位に攻撃をしてみよ。」
 「?はあ、分かりました。」
 わけがわからないが、何かの証明になるなら、やってみた方がいいだろう。
 そうして、ユナさんからもらった…、この剣の名前…考えておこう。とどうでもいいことを考えながら、俺は座りながら剣を振り抜く。
 一度斬撃には止まってもらい、全方位に展開させる。
 「いきますよ!」
 と宣言し、一つ一つの斬撃に指示を通す。
 斬撃は全て龍神に向かっていったが、弾かれる。
 「これが、我が油断した理由だ。」

 龍神がいる所に、強力な結界が張られていた。
 「これは、普通なら無理ですよ。」
 とミーナが説明する。
 「この結界は、魔力も何も通さない、今の人類ではたどり着くことは無理な要素が積み込まれています。これを作るには、神がいなければ不可能です。」
 神、この世界にも神なる存在がいるのか。最高で龍神までかと思っていた。
 「はは、これが作られたのは200年と少し前か。懐かしいのう、これからもこの歴史を紡いで欲しいと、わざわざお越しになったのだからな。」
 「神が、降りられたのですか?」
 「神々の反逆ラグナロクは御伽話でもなんでもない。本当にあったことなのだから。」
 その話を聞いた瞬間、全体に緊張が走る。
 「ラグナロクって?」
 と聞くと、ミーナさんが話してくれた。
 「ラグナロクは、神話とされていた昔話のような者だ。本来ある神話とは違い、オリジナル要素が沢山ある。それのおかげで、とてもリアリティがある昔話として、調べる人が多いほど有名なやつだ。」
 「内容は簡潔にいうと、人類の滅亡、二人の神の反逆、人の可能性、という構成で成り立っています。」
 とユナさんとミーナさんに説明される。
 
 「この内容を聞く限り、人類滅亡を一度はしてるってことですか?」
 「正確には違うが、物心ついたものが全員死んだという方が正しいだろう。」
 つまりそれは…「赤ん坊や、子供は生き残ったということですね。」
 「そうだ。そして、その者たちを育てたのは魔族だ」
 今の俺たちがいるのは、魔族のおかげ…。
 「と、話が逸れてしまったが、通常この場には誰一人として入ってくることは出来ない。何故入れたのか、未だに謎ということだ。」
 この結界は、神が作ったもの。神の存在が明らかになった今、これを解除できるのは…「神だけ…」
 「そう、可能性がある事として神となんらかの繋がりがあるものが疑われている。その可能性があるのが、神谷の巫女とギルドは予想しているらしい。」

 神谷の巫女。その人に会えば何かが分かるかもしれないな。
 「未だにわからない事だらけだが、これだけは言える。魔王の考えはおかしいという事だ。止めなければならない。分かるな、人の子よ。」
 はい、と全員が力強く返事をする。
 「では、これで我の知る限りのことは話した。もし龍神のテリトリーで戦場になった場合、我らも力を貸すことを約束しよう。」
 龍神が仲間になった!と考えていいだろう。これは心強すぎる。
 「はい、ではまた、今度は神々の反逆ラグナロクのお話も聞きたいです。」
 「褒美を待っている。」
 (食いしん坊なだけでは?)とアリサは思った。

 洞窟の外に出ると昼頃らしく、復興作業から休憩している人が多くなっている。
 グルル~と俺のお腹から音がする。
 「そういえば、寝たきりだったから腹減った。」
 「獣の鳴き声みたいだったな」
 「エリックさん、あの音の真似出来る?」
 「…失礼極まりないですなアリサ様。…出来ますが。」
 という感じで、俺たちもお昼を一緒に食べることになった。
 集落の人たちは、龍の証を見て驚いていた。
 今回は操られていたから判定が甘いのかねと、予想する人もいた。
 そんなこんなで、昼飯を食べ終えた俺たちは復興作業を手伝う事にした。
 俺は、昼飯を食べて少し動けるようにはなった。とはいえ、流石に安静にしとけということで、魔力は使えるので、浮いて、下にある物を能力で取り出して渡したり、魔力を提供したりして、手伝ったりした。
 光の使者は家の修理を、ミーナは便利なアイテムを渡したり作ったり、ユナさんは木を切ったり、土でサポートしたり、アリサは図をみたりして、お偉いさんと話したり、とにかくこの復興作業で俺たちとこの集落の人たちは仲良くなったのだ。
 「そういえば、なんでウオラさんここにいるんですか?」
 道具の片付けをしている時に聞いてみた。
 「そりゃお前、龍神の力を有した武器を作るためよ」
 なんと夢のある。それが成功すれば強力な武器になる。
 「出来ますかね?その武器。」
 「やってやるさ。俺はこの世界が好きだ。みんな、ゆっくりゆったり過ごしてる。それが戦場になる事が決まったんだ、出来そうなことをやって、貢献しないとな。」
 「頑張って下さい。ウオラさん」
 「おうお前もな、大原」
 と握手を交わすのだった。

 集落の中心部に戻ると、なんやらお祭り騒ぎだった。
 キャンプファイアー並みに立ち上る炎。
 その周りで、沢山のご馳走が並んでいる。
 「ほら、大原も食え食え!今日はご馳走だ!」
 とアリサがめちゃくちゃ食べながら言ってくる。
 「なんの祭りなんです?」
 「龍神復活祭だそうです。」
 「大原がいないから、昨日やりそびれたんだよ。」
 と光の使者もこの祭りを楽しんでいる。
 「ほれほれ、食わねーと太らんぞーほれほれ。」
 とミーナさんが少し顔を赤らめて言ってくる。
 「酔ってますねー。そういう貴方こそ太りますよ。」
 と返すと、「太りませーん、意外とそういうの考えてます~。んぐんぐ、~~サイコー‼︎」
 とめちゃくちゃ呑んでいる。全く、中学生にはその豊満なやつはキツいんですよ。ちくしょう、柔らかかった。
 という少し残念に思いながら、俺も大食いに参戦する。少し離れた場所に、ユナさんもいたけど、意外と食べていた。

 「の、飲みすぎた…。うっ、」
 「食べすぎた。」「美味すぎた」「もう無理です」
 ということで酒豪(ミーナ)と食べすぎ三人衆を除いて、みんなで片付けをする。
 「大原さん、次はどこへ向かうのでしょう?」
 と聞いてくる。
 「うーん、神谷の巫女さんには会ってみたいなあとは思うけど、ここからどのくらいか分からないしなぁ。」
 「ここからなら、ギルドに向かう途中にありますよ。飛行船にも乗れますし。」
 「飛行船かー、乗って見てもいいかもね」
 と隣を見ると、左手を握り拳にしている。
 そんな乗りたかったんだと、もしかするとアリサよりも子供ぽいかもしれないと思った。
 
 その日は、集落で一夜を過ごした。
 翌日、「オロロロロ」
 と二日酔いで吐いている人を横目に今後のルートを話し合っていた。
 「なるほど。大原たちは、神谷の巫女に会いに行くと。」
 「うん、そっちは属性龍エレメンタルドラゴンを救いに行くんだね。」
 「ああ、君達は当初の仲間集めに勤しむといい。機会があれば、龍を救いにくるといい。」
 「ここでお別れか、お互いに頑張って行こう。」
 「ああ、次会う時は恐らく、魔王軍退治の時だろう。」
 「だな。」
 と固い握手を交わす。
 「お二人もお気をつけて。」
 「グリム様のおもり頑張って下さい。」
 「中々酷いねユナさん!」
 「おお…、じゃあなぁまた会えたらいいなぁ…」
とミーナがギリギリ戻ってきた。
 「強くなれよ!」
 「おう!」
 そうして俺たちはそれぞれの道を辿って行くのだった。
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