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プロフェッサー

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 男はヒトではなかった
 大世界が始まってからずっと彼は潜んでいた
 何者にも見つからず、息をひそめて、異放が何をしているのかを見ていた
 彼が何なのかは異放ですら理解できないだろう
 それもそのはずで、彼は異放者が世界を創り始める前、無の空間になぜか発生したモノだ
 蠢くモノ
 生命体としての活動はなく、本来意思もなくただあるだけの存在
 それが遥か昔、神々と異放者ツキとの戦争や、闇の消失、世界に様々な要素が加わったことで意思が生まれた
 そこから彼は既に生まれていたヒト族や神々を観察し、自分の体を創り出した
 彼は生きとし生ける全てのものが好きになった
 それは愛などではなく、ただ自分の遊び道具として面白そうという感情
 子供が虫の羽や足をもぎ取るような、そんな無邪気な邪悪
 そこからプロフェッサーと名乗り始め、人間に化けて社会に溶け込んだ
 医者、研究者など、人の体をいじくるにはうってつけの体を作ったのだ
 いくつもの人族を研究し、壊し、改造し、極悪非道な実験を繰り返した
 どこをどう言う風に切れば生きたままより長くもがき苦しむか、何を取りつければ絶望させれるかなど
 そのおかげか、彼はヒト族の体に詳しくなり、アウルと出会ってからはヒトを改造してさらにその実験を加速させていった
 アウルと出会ってから数十年後、彼はとある女性に目をつけた
 彼女は光り輝く魂を持った今までにないほど純粋な人間だった
 名前はヴィータ
 勇者にも選ばれそうなほどの力と聖女のように清らかな心
 妹を可愛がりすぎるのが玉に傷ではあったが、誰からも愛されていた
 そんな彼女を襲い、輝くような純粋な心を壊した 
 その時の悲鳴は未だにプロフェッサーの心に深く刻み込まれている
 今までで一番最高の悲鳴として
 ヴィータはプロフェッサーの心を植え付けられて奇行に走り始め、やがてマッドサイエンティストのように気が狂ってしまった
 そんなヴィータに興味をなくし、使い捨ての玩具としてアウルに紹介した
 すぐに大幹部として頭角を現したが、プロフェッサーの興味はもう失われていたのだ
 そんな彼女がいつの間にかプロフェッサーの技術を奪い、自らを改造するまでに育った
 再び彼は興味を持ち、そして逃げだしたヴィータをあっさりと捕まえて、自分の今までの技術全てを注ぎ込んで、異形の改造人間を創り出した
 その際に植え付けておいた自分の心を抜き取り、正気に戻しておいた
 泣き叫び、苦しむ姿を見るために
「鬼畜が!」
 レノンナは全てを理解した
 みんなにもらった力がプロフェッサーの過去を見せたのだ
「エーテ、お姉さんの敵は私が取るわ。こんな、こんなやつを、私は許しておけない」
「すまないレノンナ、頼んだよぉ」
 そしてプロフェッサーをにらみつける
「はんっ、アウルに種を植え付けられたただのクズがさ、僕にそんな目を向けるなよ。お前らはただ僕の玩具になって苦しんでればいいんだ」
 プロフェッサー、いや、正式名称ムは、その顔のない空間から声を発して馬鹿にしたように笑う
「異放さんたち、力を貸してください」
「もちろん」
 レノンナの援護に異放四人とルニアがつく
 今この中で最もムを倒せる力があるのがレノンナだった
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