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悪意を植え付けられた者達11

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 そして転移したブラックの前にいたのは、女神にしては異様すぎる力を持った少女
 その少女はキッとブラックをにらみつけるといきなり攻撃を仕掛けてきた
「ほほぅ、よく訓練されている」
 ブラックはその少女、ルニアを見て感嘆の声を上げた
 敵とみなし、すぐに攻撃を仕掛けて来るその判断力に喜んだ
 自分と対等に戦える存在。そして命を賭した戦いができる高揚感
 二人はお互いにらみ合い、力の測り合いを行う
 そしてブラックは気づく
 目の前にいる少女は確かに強いが、自分の脅威にはならないと
「ふん、期待外れだったか。まぁあの男から力を得た俺を超える力などそうそうはない」
 ブラックは自分の力に絶対的な自信を持っていた
 負けたこともなく、今まで自分を脅かしえる者はアウルくらいだった
 少女の力は調べるまでもなく、ウルの大幹部クラスの力しかない
 それは自分より数段劣っている
 ブラックは残念そうに息を吐き出したが、次の瞬間少女の体を粉みじんに吹き飛ばしてしまった
 ここまで弱いと苦しめて殺すよりも一瞬で殺した方が面倒臭くないと思ったからだ
 弱すぎると拷問途中ですぐに死んでしまう
 それは自分の思う理想の殺し方ではない
 相手はとにかく徹底的に苦しめ、希望を全て奪ってから殺したい
 そしてそれは弱いものに適用される物ではなく、自分を殺しうるような強い者に対して行いたい
 それがブラックの願いだった
 今まで心の底から殺しを楽しめたことなどない
 たった今殺した少女も自分を満足させはしなかった
「ふん、やはり俺を楽しませてくれるのはアウルくらいだな」
 だがそれはブラックの勘違い、そして自尊心から来る過ちだった
 今殺したと思った少女
 それはただの幻影だった
 それに気づいた時、ブラックは終わっていた
「どんな夢を見ているのかしら? まあ知らなくていいことよね」
 ブラックの亡骸を前に少女、ルニアは何の傷も負うことなく立っていた
 ブラックは何をされたのか理解することもなく、永遠の夢に閉じ込められたまま死んだ
 もはや救いようのない魂
 ルニアはブラックの魂を刈り取るとそのまま浄化の輪に乗せた
 いずれ魂が浄化され、いっぱしの人間に生まれ変われるよう願いを込めて
 ルニアの異放の力、優しい夢
 相手を苦しませることなく死に至らしめるという優しく残酷な、異放と女神の力だった
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