上 下
852 / 1,022

芽吹き14

しおりを挟む
「どうして、なんでバードが、あなたは、死んで、腕は私が、お葬式も、どうして」
 混乱して普段の口調をなくし、わなわなと震える
 しかしバードは目も虚ろで、何も理解していないように見えた
「待てエーテ! そいつから離れるんだ!」
 とっさにアモンがエーテを抱えて飛びのく
 そのエーテがいた場所に突き刺さる尖った触手のようなもの
「あ、ああ」
 エーテはバードの姿を見て目を見開いた
 体から飛び出すたくさんの触手
 まるで何かの魔物と合成させられたかのようだ
「バード、なんてことを・・・」
 かつての恋人の無残な姿
 彼の顔は裂け、目は吊り上がり、頭蓋がむき出しになっていた
 その頭頂部からは禍々しい角が生え、口からは黒い煙のようなものを吐き出している
「エーテ! しっかりしろ! あれは君の知ってる顔なんだろうけどまるで違うだろう!?」
 エーテはハッとする
 そうだ、あの時確かにバードは死んだ
 いや、死体を見た
 だからこそ彼と悲しい別れをしたのだ
「ああそうだねアモン、あれは、ただの化け物だ」
 倒せる、アモンの顔をした何か
 ただの化け物だと認識し、エーテは手を構えると相手の解析を始めた
「これは」
「どうしたエーテ?」
「こんな生物、見たことがない。何なんだこれは」
 その化け物はエーテの頭脳をもってしても理解不能だった
 消化器官にあたるものがまるでなく
 それなのに口はガバッと開いている
 さらには魔力を感じないのだが、それにもかかわらず何らかの力の気配を感じた
「この力、僕は知ってる」
 驚くことにアモンがその答えを導き出した
「これは恐らく超能力と言われる力だろう。かつて僕がいた地球って世界でごくまれに人間が持っていた力、でもこんな化け物が持っているのなんて見たことない」
「ともかく人間が持つ力なら対抗できるはずだねぇ」
 ようやくいつもの調子に戻ったエーテ
 彼女はさらに解析を進めた
 すると、この化け物は死体を素体に造られたことが分かった
 だが隠蔽が巧妙にされている
「こんなことができるのは、姉か、もしくは私の知らない研究者くらいさねぇ。素体はバードだ、恐らく姉の負の遺産ってわけだ」
 バードはこちらに手を向けると、地面から大岩が浮き上がり、一斉に飛んできた
「岩を浮かせる程度なら問題ない!」
 まわりにいた天女たちも一斉に攻撃に転じたが、どういうわけか何人かがピタリと動きを止め、その場から動かなくなった
「ど、どうしたのあなた達?」
 エンナが近くにいた天女の様子を見たが、明らかに異常だった
 その天女は白目をむき、まるで頭の中をいじくられているかのような表情
 そして天女の一人が突如、宙に浮きあがり、バキバキと体が変形して破裂した
「キャァアアア!!」
 エンナは仲間の天女が弾けて死んだことにショックを受け、その場でしゃがみ込む
「エンナ、下がってなさいな!」
 危険と判断したエーテはすぐに無事な者達を下がらせ、動かない天女たちを解析した
「これは、頭に何か、いやこの化け物か、こいつ頭の中から攻撃してる!」
 予想以上の力を持っていた化け物
 無事な天女たちは恐れおののいた
「早くあいつを倒さないと、他の天女たちまで!」
 そうこう言っているうちにまた数人が弾けとんだ
「く、あいつを攻撃するよ!」
 今度はエーテたちが攻勢に出た
 だがりえはそれに加われずにいる
 あまりのことに彼女もショックを受けているようだった
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

余命半年のはずが?異世界生活始めます

ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明… 不運が重なり、途方に暮れていると… 確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

収納持ちのコレクターは、仲間と幸せに暮らしたい。~スキルがなくて追放された自称「か弱い女の子」の元辺境伯令嬢。実は無自覚チートで世界最強⁉~

SHEILA
ファンタジー
生まれた時から、両親に嫌われていた。 物心ついた時には、毎日両親から暴力を受けていた。 4年後に生まれた妹は、生まれた時から、両親に可愛がられた。 そして、物心ついた妹からも、虐めや暴力を受けるようになった。 現代日本では考えられないような環境で育った私は、ある日妹に殺され、<選択の間>に呼ばれた。 異世界の創造神に、地球の輪廻の輪に戻るか異世界に転生するかを選べると言われ、迷わず転生することを選んだ。 けれど、転生先でも両親に愛されることはなくて…… お読みいただきありがとうございます。 のんびり不定期更新です。

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

処理中です...