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守り人16

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 ココエエは自分を介抱してくれたアンデッドたちにお礼を言った
 二人とも見た目以外は完全に普通の人、どころかむしろ穏やかで優しい
 通常のアンデッドなら普通理性を失っている者が大半だ
「それにしても驚いたわ。普通の人間がこの世界に来るなんて何十年ぶりかしら?」
「そうだねサダ、僕のおじいさんの時代だったかな? 六十年以上になると思うよ」
 どうやらこの世界にはアンデッドしかおらず、しかもこのアンデッドたちは死体から生まれたのではなくこういう種族だと分かった
 当然一種族であるため繁殖も出来る
 だから家族という概念があったのだ
「いやぁ驚いたよ。昔話には聞いてたんだけど、人間という種族のこと、僕らがアンデッドって種族だってこと、なるほど確かに僕らとは全然違うなぁ」
「ひぅ!」
「ご、ごめん、顔が近かったね」
 ココエエはアンデッドが怖い
 もともとこの姿がデフォルメの彼らにとって、アンデッドが怖いという感覚はまったくなかった
 幽霊のように消える、ゾンビのように腐っている、スケルトンのように骨だけなど、ホラーの定番のようなものがこの世界の普通なのだ
「あの、改めてありがとうっさ。あたちはココエエ、主様をさがしてるっさ」
「主様?」
「そうっさ。あたちらの主様はとってもかわいくてすっごく可愛くて、強くて頼りになって優しいんっさ」
「その人のことが好きなんだね」
「うん! 大好きなんだっさ。でも、あたちらは長い間眠っていたから、今はどこにいるのか分かんないんっさ」
「そっか、それは大変だね。僕らも何か情報がないか村長に聞いてみるよ。サダ、少し行ってくるからこの子のことを頼めるかい?」
「ええ任せて、フフ、いいシュミレーションになりそうね。私達の子供の」
「ちょ、サダ、恥ずかしいじゃないか」
 少しイチャイチャした後、ゾンビのジョージは村長の元へと走って(ゾンビなので歩くほどの速さが精いっぱい)行った
「ジョージは頼りになるから大丈夫よ」
 不安そうなココエエに優しく話しかけるサダ
 彼女は髪が長く顔が隠れており、その眼力だけで人を呪いそうだ
 だがもうココエエは恐れない
 目の前にいる幽霊は優しく、母親のようだったから
「ありがとうっさサダさん」
 サダに注いでもらった紅茶をコクリと飲む
「おいしいっさ」
「これはね、自家栽培してる紅茶の葉っぱで作ってるの」
 サダの作る茶葉は美味しいとこの村でも重宝されているらしい
 和気あいあいと話しているとジョージが村長を連れて戻っていた
「ひぃ!」
 村長もまたゾンビで、いきなりの登場にココエエは少し驚いた
「おお、驚かせてしまったかな? わしは村長のジェイじゃ」
 ジェイ村長は優しくココエエに語り掛けた
 どうやら子供好きらしい
「ココエエっさ」
「そうか、ココエエちゃんというのかね。しかしすまないねぇ、君の言う主様については分からないんじゃよ」
「そっか、ありがとうっさ!」
 情報は得ることはできなかったが、自分の知らない種族として成り立ったアンデッドを知れてココエエは晴れやかな心持ちになっていた
「ココエエは主様を探さなくちゃいけないから、もう行くっさ」
「あら、もう少しゆっくりしていけばいいのに」
「急がないと、主様を守るのがココエエたちの使命なんっさ!」
「そうか、気をつけてな。ほらこれを持って行きなさい」
 大き目の袋をジョージから受け取る
 その中身は数日分の食料だった
「これは?」
「旅先で食べなさい。わしらはそんなに食べなくても魔力があれば生きていけるからのぉ」
「色々ありがとうっさ!」
 親切なアンデッドたちと別れ、ココエエはこの世界にある他の街へと歩き出した
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