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大勇者と救世者8

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 タニアはすっかり綺麗になり、とてもあの汚れ切った少女には見えない
 それに怠惰と聞いていたのは、あの場から動けなかったからだけで、もともとは一人でずっと生きてきたのだとか
 彼女の種族は魔族で、ボサボサの髪を整えると小さな角が頭の横に生えているのが見える
 まだ幼いため角はあまり長くないが、れっきとした魔族だ
「僕こそが大幹部ダート! 闇の力を持つ魔人です!エヘン!」
「違うだろうタニア、ほら、なんて言うんだっけ?」
「うう、僕ね、知らなかったとは言え、この世界の人達にいっぱい迷惑かけちゃってたの。本当にごめんなさい!」
 ダートことタニアが反乱軍たちに謝る
 反乱軍もまさかこんな少女が世界全体を闇に包み、この世界を危機に陥れた存在だとは信じれなかった
「すまないお嬢ちゃん、どうにも信じれないんだが・・・」
「ああそれもそうだな。タニア、少しだけ力を見せてあげてくれないか?」
「うん」
 すっかりアイシスに懐いたタニアは嬉しそうに力を使う
 すると先ほどまで晴れていた空が一気に闇に包まれて、また目先も見えないほどに真っ暗になった
「ま、まさかこんな子が・・・。それでタニアちゃん、君はどうしたいのかな?」
「んとね、僕、いっぱい迷惑かけたから、これからみんなのお手伝いがしたい。今大変なんだよね? だから僕、僕」
「よし分かった! じゃあタニアちゃんにはいろいろ手伝ってもらおうかな」
 タニアが使える闇の力はただ暗くするだけではない
 その闇を使っての空間移動、闇生物の召喚、闇そのものを人型にしての戦闘などなど万能といってもいい
 かなり強い力なだけ扱いが難しいが、タニアは幼いながらも見事にそれを使いこなしていた
 天才的なセンスで闇を操るため、ウルでは大幹部待遇だったというわけだ
 だが洗脳ができなかったため、代わりに気づかれないよう胸に心臓の動きを止める装置を植え付けられていた
 強すぎる闇の力のために洗脳ができなかったようだ
「僕がんばります!」
 今まで苦しめられたこの世界の人々ではあったが、タニアもまた被害者である
 彼女はこれから憎まれることもあるだろうが、その時は守ろうと誓う反乱軍の人々
「これでこの世界は解放されたのか?」
「あ、そう言えば」
「どうしたタニア」
「僕にいつもご飯を運んでくれてたお姉さんがいない」
「そうなのか? そいつはどんなやつなんだ?」
「いやなやつ! いつも僕をいじめてて、でも闇の力が怖いから直接手出しはしてこなかったよ」
「なるほどな、世話係を任されていたウルの残党だろう。もう本拠地に逃げたかもしれないな。一応救世界の人達に捜索させてくれないか?」
「おっけー」
 ミシュハに頼むと、彼女は救世界に準備のため戻って行った
 あとは救世界の人々がこの世界の事後処理をする手はずとなっている
 アイシスのこの世界での役目は終わったと言えるだろう
 ちなみにタニアはこの世界での手伝いが終わった後は救世界にてミシュハが面倒を見ることとなった
 もともと子供好きな彼女は喜んでタニアを引き受けたというわけだ
 アイシスは一旦救世界へと渡り、次なるウルに占領された世界を目指すことにした
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