上 下
606 / 1,022

世界に選ばれし者たち7

しおりを挟む
 王宮はまさしく砂漠の王宮というにふさわしい出で立ちで、どこかタージマハルを思わせる真っ白な美しい宮殿
 そこにはオアシスもあるようで水の匂いが漂ってきていた
 いくら涼しい風のなか歩いていたとはいえかなりの距離を歩いてきた一向
 当然体力的にも限界で、喉もカラカラだった
「ここで少し休ませてもらおう。水くらいはくれるでしょ」
 街の様子を見るに水遊びができるほどに潤っているようだ
 ここに住む人々はただの人間のようで、平和に暮らしているように見える
「ようこそタジアーラル王国へ」
 にこやかに挨拶してくれる国の兵らしき男性
 兵とは言っても武装は最小限で、他に侵略する国や危険がないかのような風体だ
「別の国からですか? となるとこちらの方向と言うことはオボルの国ですかね?」
「ええ、そんなところよ」
「大変だったでしょう? 国同士国交は結んでいるとはいえ遠いですもんね」
 兵士は一人に一杯の水を配ってくれる
 全員ありがたく頂戴して飲み干した
「それにしてもあなた達、軽装ですね? 荷物はともかく、水はおろか食料も見当たらないのですが」
 まずいと全員が思った
 特に異世界から来たことがばれても問題はないかもしれないが、できうる限り大事にはされたくなかった
「あ、なるほど、マジックアイテムですね?」
「え、ええそうよ、ほら」
 マジックアイテムの概念はこの世界にもあったようで一様にほっとする
 そのまま実際に持っている収納空間から食料を取り出して見せた
 ただ水のストックは本当にきれていたためここで補充するしかないが・・・
「なるほど珍しい。いえね、私こういったマジックアイテムを見るのは初めてでして。世界から魔物の脅威がなくなってからもう五十年は経ちますものねぇ」
 一応知っている体を装ってみるが、情報収集がてら彼に色々話を聞けた

 この世界は五十年ほど前まで数多の魔物の脅威に怯える世界だったらしい
 人々は街から出れないほど世界は魔物に埋め尽くされており、この国もそのため壁が高く築かれていた
 しかしその五十年前のこと、三人の勇者が立ち上がり、魔物の元となっていた瘴王という魔物の王を倒す旅に出た
 長く険しい旅の果てに彼らはついに瘴王を倒し、やがて徐々に魔物が減っていき、この世界から魔物は全て根絶されたそうだ
 ちなみに家畜など普通の動物はいるらしい
「それではよい観光を」
 色々と情報も聞けた
 この世界に現在全くと言っていいほど脅威はなく、砂漠がほとんどを占める世界のため領土をめぐっての争いもない
 国同士の関係も良好とのこと
 食料問題もオアシス付近に造られている国ばかりなので自給自足がちゃんと成り立つようだ
 そしてこの国はそんな国々の中では小国で、オアシスを含んだ数キロ四方ほどの領土しか持たない
 しかしながらオアシスが非常に大きいため成り立っているらしい
「それにしても水が豊かな国だな。おいエーテ、直飲みは流石にだめだろ」
「でもほら、あそこの子供達はやっているねぇ」
「そりゃ子供はそうでしょう」
 水から引きはがされあーんと声をあげるエーテ
「いやでもうまかったよ。よく冷えてる。恐らく地下水が豊富なんだと思うよぉ」
 エーテの言う通り地下から湧き上がっているここの水
 砂漠地帯ながら雨はちゃんと降るようで、その雨がしみ込んで地下に溜まり湧きだしているのだ
 水辺を離れて街を散策することにした一向
 二手に分かれて行動を始めた
 エーテ、アーキア、りえが同じチーム、残るレノンナ、アモン、ライナが同じチームだ
「何で私がこいつと一緒なのよ!」
 レノンナがライナがいることに激昂していたが、じゃんけんで決めたことなので覆ることはなかった
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話

島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。 俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。

みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ! そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。 「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」 そう言って俺は彼女達と別れた。 しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

収納持ちのコレクターは、仲間と幸せに暮らしたい。~スキルがなくて追放された自称「か弱い女の子」の元辺境伯令嬢。実は無自覚チートで世界最強⁉~

SHEILA
ファンタジー
生まれた時から、両親に嫌われていた。 物心ついた時には、毎日両親から暴力を受けていた。 4年後に生まれた妹は、生まれた時から、両親に可愛がられた。 そして、物心ついた妹からも、虐めや暴力を受けるようになった。 現代日本では考えられないような環境で育った私は、ある日妹に殺され、<選択の間>に呼ばれた。 異世界の創造神に、地球の輪廻の輪に戻るか異世界に転生するかを選べると言われ、迷わず転生することを選んだ。 けれど、転生先でも両親に愛されることはなくて…… お読みいただきありがとうございます。 のんびり不定期更新です。

チート転生~チートって本当にあるものですね~

水魔沙希
ファンタジー
死んでしまった片瀬彼方は、突然異世界に転生してしまう。しかも、赤ちゃん時代からやり直せと!?何げにステータスを見ていたら、何やら面白そうなユニークスキルがあった!! そのスキルが、随分チートな事に気付くのは神の加護を得てからだった。 亀更新で気が向いたら、随時更新しようと思います。ご了承お願いいたします。

転生幼女は幸せを得る。

泡沫 ウィルベル
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!? 今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

僕の従魔は恐ろしく強いようです。

緋沙下
ファンタジー
僕は生まれつき体が弱かった。物心ついた頃から僕の世界は病院の中の一室だった。 僕は治ることなく亡くなってしまった。 心配だったのは、いつも明るく無理をして笑うお母さん達の事だった。 そんな僕に、弟と妹を授ける代わりに別の世界に行って見ないか?という提案がもたらされた。 そこで勇者になるわけでもなく、強いステータスも持たない僕が出会った従魔の女の子 処女作なのでご迷惑かける場面が多数存在するかもしれません。気になる点はご報告いただければ幸いです。 --------------------------------------------------------------------------------------- プロローグと小説の内容を一部変更いたしました。

処理中です...