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世界に選ばれし者たち2

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「ああもう! 狂気が多すぎて探知が難しいねぇ! イライラする!」
「更年期?」
「わたしゃまだ十七だよ!」
 銃弾の嵐を避けつつエーテは探知を続けているが、世界中に振りまかれている狂気のせいで狂気を振りまく本体を探し出せずにいた
「仕方ないねぇ、時間はかかるけどこの狂気の中普通でいられる人間を探すさね」
 エーテは目をつむって集中し始めた
 その間動けないためアモンが全員を守る鉄壁をあたりに張り巡らせた
 この鉄壁は簡易的に作り上げたものだが、ミサイルですら防ぐことを先ほど証明している
「ねぇずっとこの鉄壁出してた方がいいんじゃない?」
「いや結構疲れるんだけど」
「いいから出してなさいよ」
「はい・・・」
 レノンナに言われトホホとそのまま鉄壁を出し続けるアモン
 確かに疲れはするが少し疲労感があるだけであるため問題はなさそうだった
「よし掴んだ!」
 思ったよりも早く狂気を振りまく何かを見つけたエーテ
 かなり集中していたのか鼻血をタラリと流していた
「脳に負荷がかかったみたいだねぇ。ごめん、動けなく、なりそうだよぉ・・・」
 エーテはそのままコテンと倒れこみ、目を回して気絶してしまった
 そんな彼女をアーキアが背負った
「すごいな、気絶する寸前にこの地図を描いたのか」
 倒れ込むエーテの手からひらりと飛び出した紙切れ
 そこには一瞬で描かれた地図が乗っており、ここからの詳細な行き方までもが細かく書き込まれていた
 速記ではなくこれも彼女の能力の一つだ
 オートマティックと言って、自動で手が動き、機械のように正確に素早く自分のイメージ通りに書くことができる能力
「なるほど、この少し先を右に行って、そこからまっすぐ進む。砲台が並ぶビルがあるからそこは砲弾に注意しながら進むといいって書いてあるね。それからさらに先へ進むと巨大なドームがあるからそこにいるらしい」
「意外と近いわね」
「ああ、エーテありがとう。少し休んでくれ」
「ぐでぇ」
 眩暈と頭痛で気を失っても苦しんでいるエーテを気遣い、アーキアは揺らさないよう走った
 地図にかかれたように進み、砲台から放たれる大量の砲弾を受け流しつつ目的地へとあっさり到着した
「ここにいるなら警戒網くらい引いてそうな気がしたけど、何もないな」
「油断してるのよきっと。全世界が狂気に包まれてるんだからきっと止めに来るやつなんていないって思ってるはずよ」
「なるほどそれは一理あるな」
 とりあえずドームの中に全員で、正面から堂々と乗り込んだ
「狂気を振りまいてるやつはどこよ!」
 レノンナが大きく叫ぶ
「ひっ」
 どこからか小さな小さな悲鳴が聞こえ、暗がりから兎の耳を生やした小さな少女が現れた
 その子は震えながら近づいてくる
「あんたが犯人なの!?」
「ひゅえ! ご、ごめんなさい! ごめんなさい! 殴らないで下さい」
 暗がりから明るい所に出てきた兎少女は体のいたるところに傷やあざがある
 だが一番特徴的なのはその真っ赤に光る目だ
「あんた、なんでこんなことしてるの?」
「ひくっ、そ、それは、命令されて・・・。怖いおじさんが、ひぐっ、やらないとお父さんとお母さんを殺すって言われて」
 レノンナはそれを聞いて少女の目線に合わせてしゃがんだ
「ごめんなさい怖がらせて。大丈夫、お姉ちゃんたちが助けてあげるから一緒に行ってこの狂気を終わらせてくれる?」
「ひぐっ、でも、でも、やめたらお父さんとお母さんが」
「そのお父さんとお母さんはどこにいるの?」
「分からないの。怖いおじさんが連れてっちゃった」
「参ったな、助け出そうにも居場所が分からないのか」
 アーキアが困っている中、アモンが手を挙げた
「ねぇ、俺ならできると思うんだけど」
 そう言うとアモンは目の前から霞のように消え、直後また現れるとその両手に気を失っている男女を抱えていた
「ふぅ、一瞬しかできないけど、ウルの本拠地にこの子の両親がいた。同じ気配だからまず間違いないと思うよ」
 兎耳の男女、その二人を見て兎少女は目からポロポロと大粒の涙を流し始めた
「お父さん! お母さん!」
 二人に抱き着き、少女はわんわんと泣く
 その声で二人は目を覚ました
「アサメ!」
 二人も少女を抱きしめた
「ありがとうございます!」
 家族の再会に場は少し和んだ
「すぐ解除しますね」
 涙をぬぐった少女は世界に振りまかれた狂気を消した
 それにより世界は正常さを取り戻した
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