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無能の異世界人10
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王都だけあってかなり大きな街に五人は目を輝かせた
サカシタは既に何度か訪れたことがあるようで自分の庭のように街を紹介して回った
中でも食堂が数多く乱立している商業区画はこの街で一番大きな区画で、貴族街が隣接しているものの貴族たちが口出しするようなことがなく、非常に過ごしやすい区画となっていた
と言うのもこの国の王が商業区画や学区は、貴族と平民の分け隔てをしないことを旨とした政策を打ち出してからはいざこざがなくなったのだ
王は国民の自主性を尊重し、民に根付いた政策を打ち出すことで貴族からは恨まれているが平民たちに愛されている
恨みを持つ貴族もそこまで多くないためたまに命を狙われることはあってもそこまで大きな問題にはなっていないようだ
「腹ごしらえでもするかねぇ? あたしゃお腹が空いたよ」
「まあ結構馬車に揺られてたものね。持ってた干し肉だけじゃそんなにお腹も膨れないし。サカシタちゃん、どこか美味しいお店知らない?」
「あ、それならいいとこがあるよ! 故郷の料理に似ててお母さんの味を思い出すの」
もう二年もこの世界にいるため彼女は母親の味が懐かしいのだろう
勇者としてこの世界に飛ばされたはいいが、魔王の動きもなく何をすれば帰れるのかもわからない
そのため途方に暮れていた時に五人が来たのだ。すがりたくもなるだろう
その店に着くといつも頼んでいるのかすぐに店主が挨拶に出てきた
「勇者ちゃん、いつものだね。それと、今日は友達も連れてるのねぇ。それじゃあお連れさんは何がいいかねぇ」
その店主はふくよかで優しそうなおばさんで、五人ともその溢れる母性に一気に包み込まれた
サカシタはいつも頼んでいるという煮込み定食で、五人はそれぞれおばさんのおススメを頼んだ
なんとこのおばさんは人を見ただけでその人の好みが分かるそうで、それはある意味能力に近いものだった
「そこのお嬢ちゃんはヒラシタのムニエル、そっちのお嬢ちゃんはペレットのから揚げとキャベツ炒め、そっちのお嬢ちゃんは卵包み味付きご飯、お兄さんはテトラ鳥のシチューセット、そっちのお兄さんはケーリーケラコ草のサラダセットだね」
サカシタの料理を作って提供した後、次から次へと五人の定食を作っていき五人の前にはすぐに料理が置かれた
それぞれがそれぞれの定食を食べてみると、まさにその時食べたかったものだったようで、その美味しさに至福の時間を過ごした
六人とも満腹になり大満足で店を出るとさっそくギルドへ向かった
そのギルドはたくさんの冒険者であふれかえっていたが、勇者サカシタを見つけたとたん全ての冒険者の視線が一点に集まった
「おお勇者ちゃんじゃないか! 今日はあの依頼だろ! ちょっと待ってな」
受付にいたおじさんが引っ込んでまた戻ってくる
その手には依頼書が一枚握られていた
「これだこれ、どうやらバスクの村近くの街道に現れるみたいでな。そいつは普段姿を見せない、と言うか見えないらしい。何とか逃げ切れたらしい商人が伝えてくれた情報によると気づいたら後ろにいて友人が喰われたそうだ。相手は一口で人間を丸のみにする。討伐に行った冒険者が一人も帰って来ていないことからSランク認定された。勇者ちゃん、君の力が必要だ」
「う、うん、怖いけど、今は仲間がいるから大丈夫、きっと大丈夫」
「ええそうよサカシタちゃん、私達があなたを守ってあげる」
すっかりサカシタを妹として可愛がっているレノンナ
サカシタもそれで勇気が湧いたのかやる気満々になっている
「じゃあ行ってくるよ!」
この日、勇者サカシタが初めて勇気から行動した日となった
夕方、無事バスクの村についた一行は翌日に討伐をすることにし、その日は村の宿を取った
宿とは言っても観光地ではないこの村の宿は民泊のような場所で、六人で過ごすには少し狭かった
しかし村長が討伐に来た勇者一行ということで、特別に広い村の集会所を貸し出してくれたおかげでゆったりと過ごせた
そして次の日の朝、用意された食事を終えた六人はさっそくその丸呑み魔物を探すために街道へと繰り出したのだった
サカシタは既に何度か訪れたことがあるようで自分の庭のように街を紹介して回った
中でも食堂が数多く乱立している商業区画はこの街で一番大きな区画で、貴族街が隣接しているものの貴族たちが口出しするようなことがなく、非常に過ごしやすい区画となっていた
と言うのもこの国の王が商業区画や学区は、貴族と平民の分け隔てをしないことを旨とした政策を打ち出してからはいざこざがなくなったのだ
王は国民の自主性を尊重し、民に根付いた政策を打ち出すことで貴族からは恨まれているが平民たちに愛されている
恨みを持つ貴族もそこまで多くないためたまに命を狙われることはあってもそこまで大きな問題にはなっていないようだ
「腹ごしらえでもするかねぇ? あたしゃお腹が空いたよ」
「まあ結構馬車に揺られてたものね。持ってた干し肉だけじゃそんなにお腹も膨れないし。サカシタちゃん、どこか美味しいお店知らない?」
「あ、それならいいとこがあるよ! 故郷の料理に似ててお母さんの味を思い出すの」
もう二年もこの世界にいるため彼女は母親の味が懐かしいのだろう
勇者としてこの世界に飛ばされたはいいが、魔王の動きもなく何をすれば帰れるのかもわからない
そのため途方に暮れていた時に五人が来たのだ。すがりたくもなるだろう
その店に着くといつも頼んでいるのかすぐに店主が挨拶に出てきた
「勇者ちゃん、いつものだね。それと、今日は友達も連れてるのねぇ。それじゃあお連れさんは何がいいかねぇ」
その店主はふくよかで優しそうなおばさんで、五人ともその溢れる母性に一気に包み込まれた
サカシタはいつも頼んでいるという煮込み定食で、五人はそれぞれおばさんのおススメを頼んだ
なんとこのおばさんは人を見ただけでその人の好みが分かるそうで、それはある意味能力に近いものだった
「そこのお嬢ちゃんはヒラシタのムニエル、そっちのお嬢ちゃんはペレットのから揚げとキャベツ炒め、そっちのお嬢ちゃんは卵包み味付きご飯、お兄さんはテトラ鳥のシチューセット、そっちのお兄さんはケーリーケラコ草のサラダセットだね」
サカシタの料理を作って提供した後、次から次へと五人の定食を作っていき五人の前にはすぐに料理が置かれた
それぞれがそれぞれの定食を食べてみると、まさにその時食べたかったものだったようで、その美味しさに至福の時間を過ごした
六人とも満腹になり大満足で店を出るとさっそくギルドへ向かった
そのギルドはたくさんの冒険者であふれかえっていたが、勇者サカシタを見つけたとたん全ての冒険者の視線が一点に集まった
「おお勇者ちゃんじゃないか! 今日はあの依頼だろ! ちょっと待ってな」
受付にいたおじさんが引っ込んでまた戻ってくる
その手には依頼書が一枚握られていた
「これだこれ、どうやらバスクの村近くの街道に現れるみたいでな。そいつは普段姿を見せない、と言うか見えないらしい。何とか逃げ切れたらしい商人が伝えてくれた情報によると気づいたら後ろにいて友人が喰われたそうだ。相手は一口で人間を丸のみにする。討伐に行った冒険者が一人も帰って来ていないことからSランク認定された。勇者ちゃん、君の力が必要だ」
「う、うん、怖いけど、今は仲間がいるから大丈夫、きっと大丈夫」
「ええそうよサカシタちゃん、私達があなたを守ってあげる」
すっかりサカシタを妹として可愛がっているレノンナ
サカシタもそれで勇気が湧いたのかやる気満々になっている
「じゃあ行ってくるよ!」
この日、勇者サカシタが初めて勇気から行動した日となった
夕方、無事バスクの村についた一行は翌日に討伐をすることにし、その日は村の宿を取った
宿とは言っても観光地ではないこの村の宿は民泊のような場所で、六人で過ごすには少し狭かった
しかし村長が討伐に来た勇者一行ということで、特別に広い村の集会所を貸し出してくれたおかげでゆったりと過ごせた
そして次の日の朝、用意された食事を終えた六人はさっそくその丸呑み魔物を探すために街道へと繰り出したのだった
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