上 下
554 / 1,022

利善とレイドの異世界旅1

しおりを挟む
「それじゃ、私帰るから、案内はそこの、エリファラウスに、お願いして」
 この世界に来てすぐウェアは次元の扉の前にいた男に二人を託した
「やぁ、君たちは新しい仲間だね。ようこそアドラント異世界交流世界へ」
 エリファラスと言う男は非常に巨漢で筋肉の塊のような男だが、丁寧で物腰も柔らかく、好感の持てる青年だった
「良かったら私に案内させてもらえるかな?」
「ああそれは助かる。よろしく頼むよ。それじゃあウェア、ここまで送ってくれてありがとう」
「うん、応援してるから、頑張って。あと人質のこと、お姉ちゃんに任せて、きっと大丈夫」
「ありがとうございますウェアさん!」
 ウェアにお礼を言って別れるとエリファラスの後に続いて異世界の協力者たちが集まる街へと繰り出した
 どうやら二人が最初にいた場所は次元の扉があるだけの場所だったようで、そこは何人かの強力な力を持った能力者達が守っていた
「君たちのことはゼアさんから聞いていたよ。人質を取られているって言うのによくウルと戦う決意をしてくれたね。感謝するよ」
「いえ、私達にできることがあるなら・・・」
 ウルと戦う決意はできているが、弟が未だ囚われの身であるレイドはその胸中心配でたまらない
 いくらディスが助け出そうとしてくれているとは言っても、その手に弟を抱くまでは落ち着いていられるわけがなかった
 しかしそれでもレイドは戦うことを決意している
 自らの手で家族を取り戻すために
「さてまずはここ、多くの異世界人との交流ができる大広場だ。ここでは自分たちの能力で相性を見てパーティを組んだり、能力を合わせて新しい力を生み出したりできるんだ。ただあまりにも強力な力を持ってるとうまく合わせれなかったりするからそこは要注意だね」
 エリファラスの説明の後その場にいた能力者達に自己紹介をすると、拍手の元皆に歓迎された
 それぞれの目に正義の火がともっており、誰も彼もがその能力を人々のために使ういわば善なる人々だった
 ウルは悪意の塊である者たちが多い、それに対抗するためには善意を持った能力者達が必要なのだ
「それじゃあ次はこっちだ」
 エリファラウスの後を歩き、食堂や娯楽施設、図書館、能力開発研究所など数多くの施設を見て回った
 その中には神々が待機している場所までもあり、いかに多くの力ある者たちが協力しているのかがよくわかった
「これだけの数の協力者がいてもウルは強力すぎて勝てるかどうかわからない。それに、何のために奴らが世界を滅ぼそうとしているのかも全く実体が掴めていないんだ・・・。いや弱気になってすまない
。どうにも年を取ると考えすぎてしまってね」
 恐らくエリファラスも不安なのだろう
 この先ウルとの戦争が起きれば数多くの世界が大きな被害を受けるだろうし、この世界で仲良くなった者と死別する可能性も高い
 エリファラスは自分のいた世界では巨漢の勇者と呼ばれる心優しい勇者だった
 そのため戦っていた魔王とも和解し平和な世界を築いた実力者である
 しかもその魔王は彼の妻でもあるため、彼女と世界を守るためにと立ち上がったのだ
 そんな彼でも不安に陥るほどウルは得体がしれない
「大丈夫ですよエリファラスさん! きっと世界は守られます。だってこんなにもたくさんの世界を守ろうとしてる人たちが立ち上がってるんです。私もここでなんだか勇気をもらえました」
「そうか、そうだね。君は人質まで取られているのに私の心配まで・・・。君は強い子だ。そうだ、私達は絶対に負けないさ! ありがとうレイド君」
「ところであんたの能力はどんなのなんだ?」
 今まで黙っていたが利善は興味本位でエリファラスに能力について聞いてみた
「お、ちょうど演習場が見えてきたからそこで私の能力を見せよう」
 彼が向かった場所は演習場と呼ばれる巨大施設で、ここでは科学や魔法に関する能力者が様々な研究によって作り出した能力者達の訓練場でもある
 かなり出力の高い能力による攻撃にも十分耐えれるだけの設備があり、神々でも壊すことは容易ではないだろう
「ちょっとそこで待っててくれないかな、能力を使う許可を得て来るから」
「許可がいるんですか?」
「ああ、私の力は破壊することに特化してて危険だからね。まあ制御はできるから問題ないんだけどね」
 この施設を使う能力者はその力によって入場を制限されることがある
 そのランクはFからSSSランクにまで分けられていて、FからBまでの能力者は許可証なく入場できる
 そのランク分けの基準は、FからBまでがサポーターやサイドキックたちで、Aからは勇者や救世主、英雄といった実力者たちだ
 SSランクにもなると世界を一人で救うことができ、SSSランクに至っては複数世界を救った大勇者や大英雄くらいで、数人しかいない
「私はAランクでね、ホールという能力を持ってるんだ。まあ説明するより診てもらう方が早いかな」
 エリファラスはそう言うと訓練場の中心に立った
「オッケー始めてくれ」
 彼の掛け声とともに彼の周囲にターゲッターと呼ばれる的が出現した
 その様子を二人は固唾を飲んで見守る
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

余命半年のはずが?異世界生活始めます

ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明… 不運が重なり、途方に暮れていると… 確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

収納持ちのコレクターは、仲間と幸せに暮らしたい。~スキルがなくて追放された自称「か弱い女の子」の元辺境伯令嬢。実は無自覚チートで世界最強⁉~

SHEILA
ファンタジー
生まれた時から、両親に嫌われていた。 物心ついた時には、毎日両親から暴力を受けていた。 4年後に生まれた妹は、生まれた時から、両親に可愛がられた。 そして、物心ついた妹からも、虐めや暴力を受けるようになった。 現代日本では考えられないような環境で育った私は、ある日妹に殺され、<選択の間>に呼ばれた。 異世界の創造神に、地球の輪廻の輪に戻るか異世界に転生するかを選べると言われ、迷わず転生することを選んだ。 けれど、転生先でも両親に愛されることはなくて…… お読みいただきありがとうございます。 のんびり不定期更新です。

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

処理中です...