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無能の異世界人8
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チヒロ・サカシタ
彼女は元の世界では両親に宝のように可愛がられて育ってきた
何不自由なく箱入りで育てられ、それでいて真っ直ぐに育った
両親はいつも周りには優しく接するように言い聞かせており、彼女は優しく本当にいい子で、幼い見た目だが優しさと可愛らしさから男女問わず人気があった
しかしそんな生活の最中彼女は異世界へと飛ばされてしまった
偶然開いた異世界への扉に飲み込まれたのだった
目を覚ますと全く知らない世界
何もわからない世界で彼女はなんとか生き抜いてきた
時には襲われ、危うくの所で逃げるなど、人の悪意にも多く触れてきた
その結果彼女は勇者としての力を目覚めさせたのだが、彼女は戦うのが怖かった
魔物や人と戦いたくない。それが彼女の思い
優しく生きなさい。両親からの言葉を胸に生きる彼女には何かを傷つけるということができなかったのだ
「だから無理なんだって」
「なんで! あなた達は異世界から来たんでしょう!? 私を返して! 家に帰りたいの!」
言い争うが本当はサカシタも不毛な争いだと分かっている
それでも言わずにはいられなかったのだ
そして頬を涙が伝う
「だって、だって、私こんなとこになんて来たくなかったんだもん! 幸せだったのに! お父さんとお母さんに会いたい!」
わんわんと大泣きし始めるが、五人ともどう声をかけていいかが分からない
それもそうだ、彼ら自身普通の少年少女として元の世界では過ごしていたのだ
当然彼らだって自分の居場所に帰りたい
「勇者だなんて言われて、戦いに出されて、私強くないもん、世界なんて守れないもん」
愚痴は次から次へと口から飛び出す。今までの苦労が感極まってあふれ出したのだろう
五人はその愚痴に黙って付き合い、時折共感の相槌をうつ
それから二時間ほどサカシタはしゃべり続け、やがて疲れたのかふっと眠りに落ちてしまった
彼女は歳は十七とすでにティーンエイジャーだが、精神的には見た目通りの少女なのだろう
そんな彼女を優しく介抱するレノンナ
面倒見のいい彼女は同じくらいの歳だが幼く見えるサカシタを妹のように思ったのだ
「はぁ、これが勇者ねぇ」
「そういうこと言うもんじゃないわよ。この子だって混乱してるんだからしょうがないわ。これが普通なのよ」
勇者と聞いてはしゃいでいたエーテだったが、予想以上に想像以下だったためにがっかりしている
スースーと寝息を立てるサカシタはとても十七には見えず、りえよりも年下に見えた
そのためかレノンナの庇護欲が爆裂しているようだ
やがて目を覚ましたサカシタは、子供のように急に眠ってしまった自分に恥ずかしくなったのか、レノンナの膝枕からガバッと起きあがると顔を真っ赤にして慌てた
「ごごごごめんなさい! その、よだれが」
「いいのよ。あなたも大変だったんでしょう? 私達でよかったら力になるから」
「あ、ありがとう」
その言葉でどうやらサカシタはレノンナに懐いたらしく、それからはレノンナの妹のようにべったりと付いて歩くようになった
「さてひとまず勇者には会えたさねぇ。でもあれよ、この世界では見たことない恰好をした奴らってのがきになるよねぇ」
「そうね、ねえサカシタちゃん、そう言う情報って聞いたことない?」
「えっと、あそうそう、私数日前にその一団をこの街で見たんだ。あれは確かにこの世界にはいない。だって一昔前のオタクみたいな恰好の一団だったんだもん。人数は五人で、なんかよく分からないことをぶつくさと言ってたわ」
「そいつらってどこに行ったか分かる?」
「うーんずっと見てたわけじゃないけど、東口にある馬車乗り場に向かってたから、そこから行けるベイルクートって街に言った可能性があるわ」
「ふむ、じゃあそこに行ってみるかね。で、勇者ちゃんや、君はどうする?」
エーテの質問にサカシタはびくっと体を震わせるが、すぐに返答した
「一緒に行く!」
腐っても勇者な彼女は一応その集団が何か悪いことを企んでいないかを調べる必要があると考えた
だからこそ、怖くても向かうことにしたのだ
ほんの少しだが、彼女にも勇気が芽生えているのだろう
彼女は元の世界では両親に宝のように可愛がられて育ってきた
何不自由なく箱入りで育てられ、それでいて真っ直ぐに育った
両親はいつも周りには優しく接するように言い聞かせており、彼女は優しく本当にいい子で、幼い見た目だが優しさと可愛らしさから男女問わず人気があった
しかしそんな生活の最中彼女は異世界へと飛ばされてしまった
偶然開いた異世界への扉に飲み込まれたのだった
目を覚ますと全く知らない世界
何もわからない世界で彼女はなんとか生き抜いてきた
時には襲われ、危うくの所で逃げるなど、人の悪意にも多く触れてきた
その結果彼女は勇者としての力を目覚めさせたのだが、彼女は戦うのが怖かった
魔物や人と戦いたくない。それが彼女の思い
優しく生きなさい。両親からの言葉を胸に生きる彼女には何かを傷つけるということができなかったのだ
「だから無理なんだって」
「なんで! あなた達は異世界から来たんでしょう!? 私を返して! 家に帰りたいの!」
言い争うが本当はサカシタも不毛な争いだと分かっている
それでも言わずにはいられなかったのだ
そして頬を涙が伝う
「だって、だって、私こんなとこになんて来たくなかったんだもん! 幸せだったのに! お父さんとお母さんに会いたい!」
わんわんと大泣きし始めるが、五人ともどう声をかけていいかが分からない
それもそうだ、彼ら自身普通の少年少女として元の世界では過ごしていたのだ
当然彼らだって自分の居場所に帰りたい
「勇者だなんて言われて、戦いに出されて、私強くないもん、世界なんて守れないもん」
愚痴は次から次へと口から飛び出す。今までの苦労が感極まってあふれ出したのだろう
五人はその愚痴に黙って付き合い、時折共感の相槌をうつ
それから二時間ほどサカシタはしゃべり続け、やがて疲れたのかふっと眠りに落ちてしまった
彼女は歳は十七とすでにティーンエイジャーだが、精神的には見た目通りの少女なのだろう
そんな彼女を優しく介抱するレノンナ
面倒見のいい彼女は同じくらいの歳だが幼く見えるサカシタを妹のように思ったのだ
「はぁ、これが勇者ねぇ」
「そういうこと言うもんじゃないわよ。この子だって混乱してるんだからしょうがないわ。これが普通なのよ」
勇者と聞いてはしゃいでいたエーテだったが、予想以上に想像以下だったためにがっかりしている
スースーと寝息を立てるサカシタはとても十七には見えず、りえよりも年下に見えた
そのためかレノンナの庇護欲が爆裂しているようだ
やがて目を覚ましたサカシタは、子供のように急に眠ってしまった自分に恥ずかしくなったのか、レノンナの膝枕からガバッと起きあがると顔を真っ赤にして慌てた
「ごごごごめんなさい! その、よだれが」
「いいのよ。あなたも大変だったんでしょう? 私達でよかったら力になるから」
「あ、ありがとう」
その言葉でどうやらサカシタはレノンナに懐いたらしく、それからはレノンナの妹のようにべったりと付いて歩くようになった
「さてひとまず勇者には会えたさねぇ。でもあれよ、この世界では見たことない恰好をした奴らってのがきになるよねぇ」
「そうね、ねえサカシタちゃん、そう言う情報って聞いたことない?」
「えっと、あそうそう、私数日前にその一団をこの街で見たんだ。あれは確かにこの世界にはいない。だって一昔前のオタクみたいな恰好の一団だったんだもん。人数は五人で、なんかよく分からないことをぶつくさと言ってたわ」
「そいつらってどこに行ったか分かる?」
「うーんずっと見てたわけじゃないけど、東口にある馬車乗り場に向かってたから、そこから行けるベイルクートって街に言った可能性があるわ」
「ふむ、じゃあそこに行ってみるかね。で、勇者ちゃんや、君はどうする?」
エーテの質問にサカシタはびくっと体を震わせるが、すぐに返答した
「一緒に行く!」
腐っても勇者な彼女は一応その集団が何か悪いことを企んでいないかを調べる必要があると考えた
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