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神と白黒鬼神1

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 彼女は、どうしてあんなにも悲しそうに無理矢理笑ってるんだろう
 それになんだか動きがおかしい
 本当に些細な違和感だけど、こちらを攻撃しようとする際に少しだけ、ほんの少しだけピクリとためらってる気がするんだ
 彼女は皮を異空間から取り出しては脱ぎ捨て、攻撃してはまた別の皮をかぶる
 しかも皮ごとに全く違う力を使って来るから対処法が分からない
 攻撃の癖もその皮の持ち主だった人の記憶なんかを使ってるのか、全くの別人として動くんだ
 拳による拳撃ばかりかと思いきや皮を被り変えて魔法、脚撃、剣に槍にナイフに超能力、とにかく皮さえ変えれば何でもできる
 でもすごいのがサニアさんで、能力の女神だからか彼女と同じように能力を変えて反撃している
 どうやら彼女にとってサニアさんは天敵みたいで、サニアさんが相手を始めてからはほとんど一方的にやられてる
 そして攻撃しながらの苦しそうな表情、だんだんと笑っていた彼女の表情が崩れ、しまいには大声で泣きながら皮を変えて攻撃してき始めた
「助け・・・」
 声が、聞こえた
「苦、し」
 か細い声で今にも壊れてしまう薄いガラスのような声
「やだ、もう、やだよ」
 澄んだ声、不思議だ
「お願い、もう家に帰りたい」
 誰の声だろう
「殺す、殺して皮をはいで私のものに」
「違う! 私はそんなことしたくない!」
 禍々しくて頭が痛くなるような声と澄んだ声がいいあらそっているように聞こえる
「さぁ私に身を任せて。殺すのって楽しいでしょう?」
「楽しくない! もう、やだ、私を、殺して」
 透明な声が抵抗している
 僕はその声に話しかけてみた
「助けがいるの?」
 声が少し止んで
「助けて!」
 叫んだ
 私はその声の持ち主が誰だかわかった
 目の前の皮を被った少女は僕に助けを求めてるんだ
「サニアさん、少しの間彼女を止めておいてください」
「え? ええ分かった! 何か考えがあるのね」
 サニアさんが能力をいくつか発動した
 どうやら彼女も皮を被る少女の様子がおかしいこと二気づいていて、本気を出していないみたいだ
 まぁサニアさんは能力を何千個も一度に発動することもできるからね
 神々の中でもかなり特殊な存在らしい
 そんな彼女が動きを止めるためにいくつかの能力を発動させている
 どうやら動きを止めるための能力を二十ほど発動させて彼女を止めるつもりみたいだ
 縛られ痺れさせられてさらにがんじがらめになって一気に動けなくなった
 新しい皮もかぶれない
 彼女はもはや何もできないだろう
「今よリディエラちゃん!」
 よし、ここからは僕の出番だ
「待ってて、今助けるから」
 狂ったように笑い続け、涙を流して叫ぶ彼女にそう言うと僕は彼女の額に触れた
「マインドダイブ」
 精霊の力、心を癒すための力
 これは初めてやるけどなんだか成功する気がしてたんだ
 
 彼女の心は檻に閉じ込められていた
 その折にはヘドロのようなものがべっとりとへばりついていて気持ち悪い
 そのヘドロには顔があり、不気味な笑い声を出していた
「お前たちが苦しめてるんだな」
 そのヘドロはグチュグチュとスライムのように蠢きながら大きな一つの塊になる
 そいつは僕をグッと見つめ高笑いを始め迫ってきた
「ああ、お前からは悪意しか感じない。なんておぞましい、吐き気すらするよ」
「あはぁ、アハハハハハハハハハ!」
 耳障りな声だ
 ヘドロは僕を思いっきり飲み込んだ
「悪意、これは世界の悪意そのモノなんだ。気持ち悪い、頭痛で頭が割れそうだ。まったく、こんなものが頭にいたんじゃおかしくもなるよね」
 奴はいつまでたっても飲み込み切れない僕に違和感を感じたみたいだ
「ああ、そうだよ。悪意なんか僕には効かない」
 神力を解放
「エデン」
 僕の体がまばゆく光り、ヘドロ、悪意を吹き飛ばした
「アハハハハハハ・・・」
 消える時まで馬鹿笑い、狂った笑いを振りまきながら消えて行った
 すると心を閉じ込めていた檻がガラガラと壊れていき、晴れ渡り小鳥が囀り始めた
「ありがとう」
 透き通った透明な声が聞こえた気がする
 これで恐らく彼女は元に戻ったはずだ
 僕は目を閉じて心の世界から飛び出た
「リディエラちゃん!」
 ハクラちゃんが飛び出してきた僕をがっしりと抱きしめる
 でもハクラちゃん小さすぎてきりもみしながら転んでしまった
「ありがとうハクラちゃん」
「いたたた、いえいえ」
 僕はハクラちゃんを起こすと皮を被る少女の方を見た
 彼女は微動だにせずただジッと立ってる
「サニアさん」
「ええ、もう拘束は解いてる。どうやら悪いものは取れたみたいね」
「はい」
 彼女はガクリと膝をつき倒れ込む
 無理もない、あいつに心を侵食されてて相当疲れてるはずだからね
 とにかく彼女を介抱するためにサニアさんが取り出した布団に寝かせた
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