499 / 1,022
勇者の苦悩5
しおりを挟む
夢の中で一人の巫女服を着た少女がくるくると回りながら箒で床を掃いている
時折箒もくるくるとまわし、まるで踊るかのようだ
少女はアイシスに気づくと箒を一瞬で消してぺこりと頭を下げた
「初めまして、わちきはレコ、勇者アイシスに新しい力を与えるために遣わされた十二獣神が一人です」
レコという少女は狐耳をピコピコと動かし、人懐っこい目でアイシスを見つめる
動物的愛らしさにアイシスも思わず顔がほころんだ
「何笑っているのですか? まあいいですけどとりあえずこの力を受け取りなさいな」
レコは手を伸ばすとアイシスの手を掴み、そこに力を流し込んだ
「今から力を流し込むから気を楽にしてくださいね」
レコの手は柔らかく小さいため、アイシスの庇護欲が高まる
「レコ、様とおっしゃいましたね。あの、俺はなぜ突如としてこのような力を授かることになったのでしょうか?」
「あれま、聞いてないのですか? まったくトコもエコも何をやっているのでしょう。きっとリディエラに力を与えたことで気を抜いて忘れてるのね。全くしょうがないですね」
先だって力を与えた二人に呆れつつレコは敬意を語りだした
「リディエラが力を得て精霊神になったのは知っていますか?」
「いや俺は、知らないです・・・。そうなのですか?」
「はい、彼女は今別の世界で戦っていると思います。それでですね、あなたには私達の力を受け取ってもらって、さらに別世界で活躍してもらいます! その名も大勇者育成計画!」
「大勇者?」
「そうですそうなのです! 大勇者とは世界をまたにかける最強最高の勇者! アイシス、あなたにはそれだけの力があるのです!」
アイシスは驚きで何も言えなくなってしまった
そのまま息を整えて頭を整理する
「それで、俺もリディエラと同じように、旅立って世界を救える、皆の役に立てるのか?」
「それはあなた次第ですね」
レコは指をピンと立てて説明する
「まずは私達の力をしっかりと受け取ってもらって、それを体になじませるところから始めてくださいな。リディエラは迷宮でその力を急いで身に着けてもらいましたが、あなたの場合はゆっくりとなじませる必要があります。でないと力に耐えきれずに精神が崩壊する可能性があります」
「ゴクリ」
生唾を飲み込んで緊張が走る
しかしアイシスの心は決まっていた
(この力でみんなを、キーラを守れるなら、やるしかねぇな)
「大丈夫です。俺やってみせますよ。だからこれからもご享受お願いします!」
アイシスはこれからも力を身につけていくだろう
そして力を受け取るアイシス
その体に金色の狐がスリスリとまとわりつき、体の中へと消えて行った
「これで終わり、もしまた会えたら、その時はお話しましょうね」
レコの笑顔を見ながら夢は覚めて行った
目を覚ますとキーラが横で寝息を立てている
自分の手を見てにぎにぎと開いて閉じる
「うん、力はしっかり受け取れたか」
アイシスは起きあがると朝風呂に入るためにキーラを起こさないよう立ち上がる
朝に風呂に入るのはアイシスとリドリリくらいで、浴場には誰もいなかった
「リドリリの奴もう入ったのか」
すでに使った痕跡があることでリドリリは既に起きていることが分かった
魔王の秘書官でもあるため朝起きからの書類整理などがあるのだろう
「ふぅ、少し汗もかいたようだな」
湿った肌を撫でつつアイシスは服を脱いで浴場へと歩く
体にかけ湯をした後は石鹸でしっかりと体を磨き、髪を洗って整え、石鹸を流した後はゆっくりと湯船につかる
少年のような性格と体つきだが女磨きを忘れない、それがアイシスだった
風呂を出てすぐに鍛錬を始めしばらくするとキーラが起きてきて食事に誘ってきた
アイシスは鍛錬を終え、キーラと共に和気あいあいと話しながら食堂へと足を速めた
魔王城の食堂は様々なメニューに溢れ、しかも非常においしい
キーラとアイシスは毎日その料理を堪能していた
二人は日替わりの定食を頼むと目を輝かせた
今日の定食は二人の好きなカレーだったからだ
キーラは異世界人が広めたカレーが大好物で、それをアイシスに教えたことでアイシスまでもがカレーの虜になっている
そんなカレーをかき込んでお替りを頼み、それもすぐに平らげて二人そろって修行に戻った
アイシスはもちろんのことキーラも強くなろうと日々努力している
そんな二人を書類整理の終わったリドリリは微笑ましく眺めていた
時折箒もくるくるとまわし、まるで踊るかのようだ
少女はアイシスに気づくと箒を一瞬で消してぺこりと頭を下げた
「初めまして、わちきはレコ、勇者アイシスに新しい力を与えるために遣わされた十二獣神が一人です」
レコという少女は狐耳をピコピコと動かし、人懐っこい目でアイシスを見つめる
動物的愛らしさにアイシスも思わず顔がほころんだ
「何笑っているのですか? まあいいですけどとりあえずこの力を受け取りなさいな」
レコは手を伸ばすとアイシスの手を掴み、そこに力を流し込んだ
「今から力を流し込むから気を楽にしてくださいね」
レコの手は柔らかく小さいため、アイシスの庇護欲が高まる
「レコ、様とおっしゃいましたね。あの、俺はなぜ突如としてこのような力を授かることになったのでしょうか?」
「あれま、聞いてないのですか? まったくトコもエコも何をやっているのでしょう。きっとリディエラに力を与えたことで気を抜いて忘れてるのね。全くしょうがないですね」
先だって力を与えた二人に呆れつつレコは敬意を語りだした
「リディエラが力を得て精霊神になったのは知っていますか?」
「いや俺は、知らないです・・・。そうなのですか?」
「はい、彼女は今別の世界で戦っていると思います。それでですね、あなたには私達の力を受け取ってもらって、さらに別世界で活躍してもらいます! その名も大勇者育成計画!」
「大勇者?」
「そうですそうなのです! 大勇者とは世界をまたにかける最強最高の勇者! アイシス、あなたにはそれだけの力があるのです!」
アイシスは驚きで何も言えなくなってしまった
そのまま息を整えて頭を整理する
「それで、俺もリディエラと同じように、旅立って世界を救える、皆の役に立てるのか?」
「それはあなた次第ですね」
レコは指をピンと立てて説明する
「まずは私達の力をしっかりと受け取ってもらって、それを体になじませるところから始めてくださいな。リディエラは迷宮でその力を急いで身に着けてもらいましたが、あなたの場合はゆっくりとなじませる必要があります。でないと力に耐えきれずに精神が崩壊する可能性があります」
「ゴクリ」
生唾を飲み込んで緊張が走る
しかしアイシスの心は決まっていた
(この力でみんなを、キーラを守れるなら、やるしかねぇな)
「大丈夫です。俺やってみせますよ。だからこれからもご享受お願いします!」
アイシスはこれからも力を身につけていくだろう
そして力を受け取るアイシス
その体に金色の狐がスリスリとまとわりつき、体の中へと消えて行った
「これで終わり、もしまた会えたら、その時はお話しましょうね」
レコの笑顔を見ながら夢は覚めて行った
目を覚ますとキーラが横で寝息を立てている
自分の手を見てにぎにぎと開いて閉じる
「うん、力はしっかり受け取れたか」
アイシスは起きあがると朝風呂に入るためにキーラを起こさないよう立ち上がる
朝に風呂に入るのはアイシスとリドリリくらいで、浴場には誰もいなかった
「リドリリの奴もう入ったのか」
すでに使った痕跡があることでリドリリは既に起きていることが分かった
魔王の秘書官でもあるため朝起きからの書類整理などがあるのだろう
「ふぅ、少し汗もかいたようだな」
湿った肌を撫でつつアイシスは服を脱いで浴場へと歩く
体にかけ湯をした後は石鹸でしっかりと体を磨き、髪を洗って整え、石鹸を流した後はゆっくりと湯船につかる
少年のような性格と体つきだが女磨きを忘れない、それがアイシスだった
風呂を出てすぐに鍛錬を始めしばらくするとキーラが起きてきて食事に誘ってきた
アイシスは鍛錬を終え、キーラと共に和気あいあいと話しながら食堂へと足を速めた
魔王城の食堂は様々なメニューに溢れ、しかも非常においしい
キーラとアイシスは毎日その料理を堪能していた
二人は日替わりの定食を頼むと目を輝かせた
今日の定食は二人の好きなカレーだったからだ
キーラは異世界人が広めたカレーが大好物で、それをアイシスに教えたことでアイシスまでもがカレーの虜になっている
そんなカレーをかき込んでお替りを頼み、それもすぐに平らげて二人そろって修行に戻った
アイシスはもちろんのことキーラも強くなろうと日々努力している
そんな二人を書類整理の終わったリドリリは微笑ましく眺めていた
0
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
私がいつの間にか精霊王の母親に!?
桜 あぴ子(旧名:あぴ子)
ファンタジー
サラは幼い頃から学ばなくても魔法が使えた。最近では思っただけで、魔法が使えるまでに。。。
精霊に好かれる者は、強力な魔法が使える世界。その中でも精霊の加護持ちは特別だ。当然サラも精霊の加護持ちだろうと周りから期待される中、能力鑑定を受けたことで、とんでもない称号がついていることが分かって⁉️
私が精霊王様の母親っ?まだ、ピチピチの10歳で初恋もまだですけど⁉️
余命半年のはずが?異世界生活始めます
ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明…
不運が重なり、途方に暮れていると…
確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。
お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…
収納持ちのコレクターは、仲間と幸せに暮らしたい。~スキルがなくて追放された自称「か弱い女の子」の元辺境伯令嬢。実は無自覚チートで世界最強⁉~
SHEILA
ファンタジー
生まれた時から、両親に嫌われていた。
物心ついた時には、毎日両親から暴力を受けていた。
4年後に生まれた妹は、生まれた時から、両親に可愛がられた。
そして、物心ついた妹からも、虐めや暴力を受けるようになった。
現代日本では考えられないような環境で育った私は、ある日妹に殺され、<選択の間>に呼ばれた。
異世界の創造神に、地球の輪廻の輪に戻るか異世界に転生するかを選べると言われ、迷わず転生することを選んだ。
けれど、転生先でも両親に愛されることはなくて……
お読みいただきありがとうございます。
のんびり不定期更新です。
異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~
樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。
無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。
そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。
そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。
色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。
※この作品はカクヨム様でも掲載しています。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる