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新国アンデッドの国2

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 呪いと縄でぐるぐる巻きに拘束された少年は歯をギリギリと鳴らして悔しがっている
 自分の能力に絶対的な自信があったのか、まさか捕まるとは思っていなかったのだろうね
「お前ら覚悟しろよ! 僕の仲間が助けに来たらお前らなんかすぐに殺されるんだからな! いや、お前だ、黒いでか胸鬼! お前は僕の仲間たちと徹底的に辱めて殺してやるから覚悟ぶげぇ!」
 腹が立って思わず思いっきり殴っちゃった
 大切な友人を侮辱するような発言で頭に血が上ったみたいだ
「せ、精霊様、気絶させては話が聞けません」
「ごめんつい」
 少年に水をかけて目を覚まさせてやる
 顔はボコっと腫れてしまったけど、治療する気はない
「で、君は誰で何が目的でエルナリア姫を攫おうとしたのかな?」
「答える訳ないだろバーカ」
 イラっとしたけど今度は殴るのを我慢できた
「精霊様、ここは私にお任せください」
 クロハさんが少年の頭に手を置く
「なんだよ! 何をしても僕は吐かないぞ! それよりもうすぐ僕を助けに仲間が来るはずだ。逃げなくていいのか? アハハハ、まぁ逃げても捕まえて滅茶苦茶にしてやるけどね!」
 クロハさんはそんな言葉にひるみもせずに呪力を少年に流し込んだ
「あえ?え、あ、がぁああああああ!! お、前! 何を! 僕の頭に変なモノを流し込むなぁあああ!!」
 そう叫んで少年はおとなしくなったかと思うと、白目をむいて泡を吹いた
「うわぁえぐいよお姉ちゃん」
「まぁ心が壊れたらこいつを助けに来たその仲間とやらを尋問すればいいでしょう」
 どうやら呪力で脳から無理矢理記憶や情報を引き出してるみたいだ
 無理矢理だから当然脳や心に負荷がかかり、しかも激痛が走るらしい
 下手な拷問よりもヤバイよこれ
「ふむふむ、なるほど、精霊様、こいつから情報を引き出したのですが、こいつどうやら下っ端のようで大した情報はもっていません」
 クロハさんが少年から引き出せた情報は、名前とエルナリア姫を攫えという命令を下した誰かの姿、そしてこの世界に来ているこいつの仲間の顔と名前くらいだ
 ただこいつらはそれぞれ偽名を語っていたらしく、それが本当の名前かは分からないらしい
 まぁこいつに至っては記憶を引き出したから本名がわかったんだけどね
 で、こいつの名前はエドガー・リベインと言って、別世界の犯罪者だった
 少年のように見えるけど実年齢は二十代後半で、女性を凌辱して殺すのが趣味のとんでもないやつだった
 能力は気配遮断で、相手からの認識を阻害して自分の居場所を分からなくするらしい
 ただそんな能力もハクラちゃんの勘には敵わなかったみたいだけどね
 
 それからエルナリア姫を攫うよう言ったのはこの世界にも来ている異世界人らしいことだけ分かった
 こいつに至っては名前すらわからず、この世界に来た異世界人たちのリーダーを務めているようだ
 そしてこの世界に来たのはこいつを含めて十人
 今まで生き人形の二人、魔族の男、スライム少年、エマさん、この犯罪者と六人とは出会って撃破していることから、残りは四人か
 それぞれ何処にいるのかはこいつには知らされていないらしい
 まあエマさんも知らないし、分かっているのはそのリーダーだけなのかも
「ほ、げぇえ、んがああ」
 あ、この少年もう駄目かも
 心が壊れて来てる。古代魔法の治療で治るかな?
 そう思って魔法を発動させようとするとクロハさんに止められた
「精霊様、こいつは生かしておいてもろくなことはしません。ここで殺しておきます」
「え?!」
 クロハさんはさらに呪力を流し込み、完全に心を破壊してしまった
 こうなってはもう元に戻らない
 段々と衰弱して死んでいくだろう
「クロハさん・・・」
「記憶を見たのです。こいつは・・・。子供を多数手にかけています。その全てを記憶に残し、記録に残し、子供を殺して高らかに笑っているのです! このような者がもしこの世界で生き残りでもしたら、罪のない子達を殺さないとも限りません」
「そっか・・・」
 クロハさんに手は汚してほしくなかった。できればこいつは精霊の国で管理し、その罪を償わせるつもりでいたけど・・・
 僕はエドガーの亡骸をブラックホールに放り込んだ
 スライム少年を放り込んだ簡易式のものではなく、内部で崩壊させるタイプの一番重力が強いタイプだ
 この中で亡骸は完全に分解されるだろう
 願わくばその魂が罪を償い、まっとうな人間として生まれ変わりますように
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