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獣人族の国再び11
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三つある部屋の内今度は真ん中の部屋に入ってみた
えーっと、あの不気味な出で立ちの女性?男性?どっちかわからないほど髪が長い犬耳の人影が立ってた
その人はカクカクとした動きで少しずつこっちに近づいてくる
「ヒィイイイ! 幽霊ですよ! 幽霊!」
「いや違うと思うよ、ほら、肉体がちゃんとあるから」
その不気味な人は首をゴキゴキと動かすと髪の毛を掻き上げた
一見すると美しい男性なんだけど、胸があるから女性か
その人はニタリと笑った
「汝らの生を我が元に遣わしたるは我が神が御意志、終焉たるこの場にて汝らの生を終わらせ仕る。我が名は犬神妹尾。主より賜りし名、そして汝らを屠る名としれ」
「えっとつまり」
「殺すって言ってるんですよあの人!」
「え?」
幽霊のようにスーッとこちらに動いてくる妹尾さんはつかみどころがない
肉体を持っているはずなのにその肉体が霞みたいに揺らいでるんだ
「影葬術、影縫い」
スルリスルリと僕らの間を縫って、流れるように動いた手が僕とハクラちゃんのみぞおち辺りを撃ち抜いた
え? お腹に穴が開いてる
かなり痛いけど、なんとか
そう思っていたら今度は胸を貫かれた
一瞬、気が遠くなって体が維持できなくなって、慌てて魔力を空中から吸収した
本気でこの人は殺しに来てる
「死を望むか若者よ、それとも諦めて戻るか、我は止めぬ。尻尾を巻いて逃げるがよい」
「尻尾を巻くのはそっちですよ!」
胸に穴の開いたままのハクラちゃんが隙をついて妹尾さんの手を切り飛ばした
「ほぉ、セニハヤムシテカラクニウチ、汝らの認識を改めねばならぬ。なれば本に我が力を見せねばなるまいな」
ひぃ、何かわけのわからない言葉が出てる!
妹尾さんの力の流れが変わって、怨念と呪力渦巻くような気持ちの悪い力になる
「う、お姉ちゃんより強い呪力を感じる。なに、これ」
「知らぬのも当然、我が世界では犬神はどう造られると思う?」
「造られる? 生まれるじゃなくて?」
「造られる、だ・・・。我らは人の手によって呪術の化身として作られる。その方法は、極限まで腹をすかせた犬の前に餌を置き、首だけを出して地面に埋める。そして十日後、飢えに飢えた犬の首を落とす。するとどうだ、恨みに狂った犬の霊は犬神として復活だ」
「も、もしかして」
「ああ、我はそのようにして造られた。恨みによる怨念で我は生まれたのだ。そこいらの呪力程度とは比べ物にならぬ我が呪力で、汝らを永遠の嘆きの中に捕らえてやろう」
髪の毛がウネウネと波打って、彼女の呪力が今まで見たことの無いほどの大きな力になっていくのを感じる
見ているだけで、接しているだけで恐怖を感じる
ハクラちゃんも怯えて足が震えていた
今まさにそこにある恐怖、それが僕ら二人をすくませて放さない
怖い怖い怖い怖い怖い。震えが止まらない
恐怖で死にそうなほどのプレッシャーに押しつぶされそうになってる
死ぬ、死がもう目の前に迫って、目の前が真っ暗になって、死を迎えた
二度目の死は痛くなかったし、そのまま魂を掴みだされたかのようだった
ああ、そんな、今度こそ、僕は、幸せに、だって、まだ僕は、何もできてない
母さん、テュネ、エンシュ、アスラム、フーレン、今まで出会った人たちの顔が浮かんでは消える
あれ? 死ぬってこんなに寂しくて、絶望的で、悲しくて
そうだった、死ぬのってとても苦しいんだ
「・・・様! 精霊様! しっかりしてください!」
ハクラちゃんの声が聞こえて来る
そのとたん僕は闇の中から光を見つけ出せて、そこに向かって手を伸ばした
パリーンとガラスの割れるような音がして、視界が開けたかと思うとハクラちゃんが横に立ってゆすっていた
「よ、よかった、目が覚めたみたいで」
「ふむ、少し脅かしすぎたか。だが鬼の方はすぐに覚めたのだがな。性格の図太い者には効きにくい傾向にあるのだ」
「そりゃ精霊様は繊細で私なんて飛んでもなく図太い性格してますから・・・。図太いです、から」
「え、あの、これってどういうこと」
妹尾さんがニコリと微笑んだ
なんて女性殺しな破壊的スマイル
彼女は既に呪いの力を治めていて、驚くほど綺麗でかっこいい女性になっていた
「恐怖でも人は死ぬと分かったか? 安心せい、我の怨念は既に主様のおかげで解けておるわ。汝らはまだ怨念というものが分かっていなさそうだったのでな。我が味合わせてやった。どうだ? 怖かったであろう?」
「そりゃ怖いなんてものじゃ。本当に、死んだかと・・・。う、うぅうう」
「ま、待て泣くな! それでは我が悪いようではないか! 我はただちょっと脅かそうと、そ、それに主様だって我が汝らの相手になった時は目いっぱい怖がらせてやれと」
「いえ、安心して涙が出ただけですから」
「そ、そうなのか? いや、すまぬ」
精神的に一気に疲れた
ハクラちゃんの方はお姉ちゃんに殺されると言う幻想を見せられたらしい
お姉ちゃんは自分が死んでも妹を守る人だからって簡単に見破ったらしいけどね
僕の方は一度目の死が怖かったからその恐怖を増幅させられたみたい
何にせよ本当に疲れた
「まぁ結果見事に我の力をはねのけたのだ。本当は死ぬ直前まで追い詰める予定だったが、これなら先に進んでも精神をやられることはないだろう」
最後はなにやら満足そうな妹尾さんに見送られて僕らはまた三つの扉の前に立った
えーっと、あの不気味な出で立ちの女性?男性?どっちかわからないほど髪が長い犬耳の人影が立ってた
その人はカクカクとした動きで少しずつこっちに近づいてくる
「ヒィイイイ! 幽霊ですよ! 幽霊!」
「いや違うと思うよ、ほら、肉体がちゃんとあるから」
その不気味な人は首をゴキゴキと動かすと髪の毛を掻き上げた
一見すると美しい男性なんだけど、胸があるから女性か
その人はニタリと笑った
「汝らの生を我が元に遣わしたるは我が神が御意志、終焉たるこの場にて汝らの生を終わらせ仕る。我が名は犬神妹尾。主より賜りし名、そして汝らを屠る名としれ」
「えっとつまり」
「殺すって言ってるんですよあの人!」
「え?」
幽霊のようにスーッとこちらに動いてくる妹尾さんはつかみどころがない
肉体を持っているはずなのにその肉体が霞みたいに揺らいでるんだ
「影葬術、影縫い」
スルリスルリと僕らの間を縫って、流れるように動いた手が僕とハクラちゃんのみぞおち辺りを撃ち抜いた
え? お腹に穴が開いてる
かなり痛いけど、なんとか
そう思っていたら今度は胸を貫かれた
一瞬、気が遠くなって体が維持できなくなって、慌てて魔力を空中から吸収した
本気でこの人は殺しに来てる
「死を望むか若者よ、それとも諦めて戻るか、我は止めぬ。尻尾を巻いて逃げるがよい」
「尻尾を巻くのはそっちですよ!」
胸に穴の開いたままのハクラちゃんが隙をついて妹尾さんの手を切り飛ばした
「ほぉ、セニハヤムシテカラクニウチ、汝らの認識を改めねばならぬ。なれば本に我が力を見せねばなるまいな」
ひぃ、何かわけのわからない言葉が出てる!
妹尾さんの力の流れが変わって、怨念と呪力渦巻くような気持ちの悪い力になる
「う、お姉ちゃんより強い呪力を感じる。なに、これ」
「知らぬのも当然、我が世界では犬神はどう造られると思う?」
「造られる? 生まれるじゃなくて?」
「造られる、だ・・・。我らは人の手によって呪術の化身として作られる。その方法は、極限まで腹をすかせた犬の前に餌を置き、首だけを出して地面に埋める。そして十日後、飢えに飢えた犬の首を落とす。するとどうだ、恨みに狂った犬の霊は犬神として復活だ」
「も、もしかして」
「ああ、我はそのようにして造られた。恨みによる怨念で我は生まれたのだ。そこいらの呪力程度とは比べ物にならぬ我が呪力で、汝らを永遠の嘆きの中に捕らえてやろう」
髪の毛がウネウネと波打って、彼女の呪力が今まで見たことの無いほどの大きな力になっていくのを感じる
見ているだけで、接しているだけで恐怖を感じる
ハクラちゃんも怯えて足が震えていた
今まさにそこにある恐怖、それが僕ら二人をすくませて放さない
怖い怖い怖い怖い怖い。震えが止まらない
恐怖で死にそうなほどのプレッシャーに押しつぶされそうになってる
死ぬ、死がもう目の前に迫って、目の前が真っ暗になって、死を迎えた
二度目の死は痛くなかったし、そのまま魂を掴みだされたかのようだった
ああ、そんな、今度こそ、僕は、幸せに、だって、まだ僕は、何もできてない
母さん、テュネ、エンシュ、アスラム、フーレン、今まで出会った人たちの顔が浮かんでは消える
あれ? 死ぬってこんなに寂しくて、絶望的で、悲しくて
そうだった、死ぬのってとても苦しいんだ
「・・・様! 精霊様! しっかりしてください!」
ハクラちゃんの声が聞こえて来る
そのとたん僕は闇の中から光を見つけ出せて、そこに向かって手を伸ばした
パリーンとガラスの割れるような音がして、視界が開けたかと思うとハクラちゃんが横に立ってゆすっていた
「よ、よかった、目が覚めたみたいで」
「ふむ、少し脅かしすぎたか。だが鬼の方はすぐに覚めたのだがな。性格の図太い者には効きにくい傾向にあるのだ」
「そりゃ精霊様は繊細で私なんて飛んでもなく図太い性格してますから・・・。図太いです、から」
「え、あの、これってどういうこと」
妹尾さんがニコリと微笑んだ
なんて女性殺しな破壊的スマイル
彼女は既に呪いの力を治めていて、驚くほど綺麗でかっこいい女性になっていた
「恐怖でも人は死ぬと分かったか? 安心せい、我の怨念は既に主様のおかげで解けておるわ。汝らはまだ怨念というものが分かっていなさそうだったのでな。我が味合わせてやった。どうだ? 怖かったであろう?」
「そりゃ怖いなんてものじゃ。本当に、死んだかと・・・。う、うぅうう」
「ま、待て泣くな! それでは我が悪いようではないか! 我はただちょっと脅かそうと、そ、それに主様だって我が汝らの相手になった時は目いっぱい怖がらせてやれと」
「いえ、安心して涙が出ただけですから」
「そ、そうなのか? いや、すまぬ」
精神的に一気に疲れた
ハクラちゃんの方はお姉ちゃんに殺されると言う幻想を見せられたらしい
お姉ちゃんは自分が死んでも妹を守る人だからって簡単に見破ったらしいけどね
僕の方は一度目の死が怖かったからその恐怖を増幅させられたみたい
何にせよ本当に疲れた
「まぁ結果見事に我の力をはねのけたのだ。本当は死ぬ直前まで追い詰める予定だったが、これなら先に進んでも精神をやられることはないだろう」
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