上 下
321 / 1,022

三獣鬼と三妖鬼5

しおりを挟む
 ぐぬぬ、これは由々しき事態じゃないっすか?
 いつから鬼ヶ島の鬼仙と鬼人たちはこんなに弱くなったんすか
 あたしは今鬼ヶ島の訓練場に来てるっすけど、体たらくがすぎるんす
 あたしがちょっと小突いただけで吹っ飛んで行っちゃう輩ばかりで不甲斐ないんす
「おいこらお前ら! やるきあるんすか!? ああ!?」
 喝をいれてみたっす
 普段あたしはあんま怒んないすよ? でもこれじゃ鬼ヶ島を守ることなんてできないと思うんす
 だからあえて厳しくする、これも愛っす
 厳しい目を見た分成長したときの喜びもひとしおなんすよね
 でもまああまり厳しくしすぎるのも逆効果っす
 飴と鞭を使い分けるのが肝心なんす
「いいかお前ら! これから一人一人に課題を与えるっす! かなり厳しい試練っすけど、これを乗り越えたとき一回り成長できるはずっす! 一日でこなせる課題だから頑張るっすよ! それと、試練を無事終えた暁にはソウカの手作り料理をごちそうするっす!」
「ほ、本当ですか!?」
「ソウカさんの料理が食える、だと?」
「うおぉおお! やる気が満ち溢れるぜ!」
 うんうん、ソウカ料理の効果は上々のようっすね
 さすがソウカ、あの子おっとりで優しいから男性人気があるっす
 何度も告白されてるらしいっすけど、本人がその辺疎いからみんな撃沈されてるんすよね
 それに一応鬼ヶ島一の豪商の娘っすから逆玉も狙えるっす
 だからこそ悪い虫がつかないようにあたしらで気をつけてるんすよね
 でもまあ本人があの調子じゃ当分貰い手がなさそうっすけど
「よしお前ら! 頑張ってくるっすよ!」
 一人一人にあった特訓メニューを伝え、走って行ってもらったっす
 帰ってきたらすぐに食べれるようソウカに頼んでおかないとっすね

 さて、次は子供達の所へ行くっす
 未来を担う大事な子供達っす
 実はあの中から将来童子に進化できそうな子が幾人か見つかったんすよね
 あたしじゃ導けないかもしれないっすけど、一応これでも童子っす
 ここ数百年童子に進化出来た者はいなかったんすけど、あたしらが成れたことに触発されたのか、どんどんその素質ある鬼仙がふえてきてるんすよね
 ただ鬼人たちは仙力が無いからなることはできないっす
 でもそれは童子に進化できないというだけであって、鬼人たちには他の進化の可能性があるっす
 それは獄卒鬼だったり、牛頭鬼や馬頭鬼、幽鬼、死鬼などなど多種多様っす
 現に鬼人で進化した人なら何人もいるっす
 彼らはみんな一様に強いっすね
 ちなみに三幽鬼は先祖に幽鬼がいたから幽鬼の力を持って生まれた特殊な鬼仙っすね

 子供達のいる道場へ向かうとすでに子供達は自主的に訓練を始めてたっす
 ちゃんと教えたとおりに練習しているみたいっすね
 ほんとに素直でいい子たちっす
 その中でも一番の実力を持つ鬼人の子、名前はサクヤっす
 この子はすでに進化の兆しを見せてる非常に優秀な生徒っすね
「先生!」
 お、あたしに気づいて子供たちが駆け寄ってきたっす
 一応言っておくっすけど、子供達には大人たちのような厳しいことは言ったりやらせたりしてないっすよ?
「先生、今日はどんな訓練をするんですか?」
 みんな目を輝かせてあたしを見てくるっす
 この目にあたしは弱いんすよね
「今日は妖術の扱い方について勉強するっすよ。じゃあ妖術とは何か? はいセイガ君!」
「は、はい! 妖術は僕達鬼人や鬼仙といった鬼族、妖怪族の皆さんに生まれつきある力のことです」
「よくできましたっす! ちゃんと授業を聞いてたっすね」
 あたしはセイガ君をなでなでしたっす
 恥ずかしそうに喜んでるっす、可愛いっすね
「それじゃあ妖術の授業に入るっす。みんな一列に並ぶっすよ」
 あたしは手取り足取り根気強く妖術について教えていったっす
 妖怪族の国であたし自身が習ったことを思い出しながら、丁寧にっす
 そのかいあってか、授業が終わるころにはみんな妖術の初歩、妖気の探知ができるようになって、半数が自分の妖術がどんなものかを把握できるようになったっす
 まあ把握できなかった子も次の授業で分かると思うっすよ
「先生ありがとうございました!」
 うんうん、元気な子供達の声は癒しになるっすね
 子供たちが帰っていく中後片付けをしているとコクウさんが来たっす
「アカネ、ご苦労様です。私では妖術の扱い方を教えれないので助かりましたよ」
「またまたー、何言ってるんすか、島一番の妖術使いの癖に~」
「いや、アカネ、君じゃないとあのようにうまくは教えれないだろう? 私はかなり教えるのが下手なものでね」
「確かに、コクウさんは口下手っすもんね」
「そう、なんですよ・・・。クロハ様にももっと人と話すようにと言われているのですが、如何せん人見知りなもので」
 そうなんす、実はコクウさんは鵺族の長になるべくして生まれたのに、この上がり症と人見知りが災いして自ら退いたんすよね
 あたしらとは普通に話せるんすけど、あまり接していない人たちに対しては途端に口どもる(言葉が引っかかってうまく出せなくなる)っす
 でも優秀なんすよ? あたしらはみんなコクウさんを尊敬してるっす!
「それで、何か用っすか?」
「ああ、これを渡しておこうと思いましてね」
 コクウさんは一枚の紙を取り出して私に渡したっす
「あ、モモネさんからっすね。ふむふむ、ほおほおなるほどね、どうやら三人供無事桃源郷に着いたみたいっす」
「そうですか、それは一安心ですね。では私は執務に戻いります」
「うん、お互い頑張るっす」
 コクウさんは自室へ戻って行ったっす
 あたしも頑張るっすよ!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。

みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ! そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。 「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」 そう言って俺は彼女達と別れた。 しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。

転生幼女は幸せを得る。

泡沫 ウィルベル
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!? 今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!

ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません? せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」 不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。 実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。 あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね? なのに周りの反応は正反対! なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。 勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

収納持ちのコレクターは、仲間と幸せに暮らしたい。~スキルがなくて追放された自称「か弱い女の子」の元辺境伯令嬢。実は無自覚チートで世界最強⁉~

SHEILA
ファンタジー
生まれた時から、両親に嫌われていた。 物心ついた時には、毎日両親から暴力を受けていた。 4年後に生まれた妹は、生まれた時から、両親に可愛がられた。 そして、物心ついた妹からも、虐めや暴力を受けるようになった。 現代日本では考えられないような環境で育った私は、ある日妹に殺され、<選択の間>に呼ばれた。 異世界の創造神に、地球の輪廻の輪に戻るか異世界に転生するかを選べると言われ、迷わず転生することを選んだ。 けれど、転生先でも両親に愛されることはなくて…… お読みいただきありがとうございます。 のんびり不定期更新です。

まさか転生? 

花菱
ファンタジー
気付いたら異世界?  しかも身体が? 一体どうなってるの… あれ?でも…… 滑舌かなり悪く、ご都合主義のお話。 初めてなので作者にも今後どうなっていくのか分からない……

処理中です...