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白黒 童子姉妹の冒険15

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 快晴!と言いたいところだけど、この場所に日は照らなくて、この眩い明りはこの場所全体が光っているから
 この光のすごいところはちゃんと太陽の動きと連動しているところ
 日が昇れば明るくなって、日が沈めば暗くなるから、外と変わらないのよね
「えーっと、修行と言ってもこのゲートから敵が来ないと何もやることがないんだよね。まぁ一日一回は必ずゲートが開く。来るまでは何もすることがないねー。僕が教えてもいいんだけど、実戦をしてみる方が身につきやすいからね」
 実戦かぁ。経験を積んでいくことこそが最大の修行になるもんね

 それから数時間、何事もなく時間が過ぎて行って、あまりにも暇だったので紅茶を飲みすぎてしまい、トイレに走る
 おトイレはカイトさんの家にあって、水洗式という最先端のおトイレで、棒をひねると水が流れるという優れもの
 鬼ヶ島にも欲しいなぁ。なんてことを思っていたら、突然天井が壊れてカイトさんの家が倒壊した。ってちょっと! まだ途中なんだけど!
 あわてて股布をあてがって外に飛び出ると巨大な鳥が飛んでいた
 どうやらあの鳥の羽ばたきで家が壊れちゃったみたい
 乙女の花摘みを邪魔するなんて許せない!
「大丈夫かいハクラちゃ・・・、ちょっと! 下下!」
 カイトさんが顔を真っ赤にして何かを言っている
 下を見ると、着物がはだけ、股布の紐もほどけて大事なところがあらわになっていた。
「キャッ! カイトさん見ないでくださいよ!」
「阿保! 早う仕舞わんか!」
 アンミツ姫に怒られてすぐに着物を整えると大きな鳥を見た
 真っ赤な羽に大きな金色の嘴、爪は私の背丈くらいありそうで、目はギラギラと輝いていた
「神話級、シームルグだね。神鳥と言われているけどこのシームルグ、いつも来る神話級と同じように気が狂っている」
 カイトさんがさっき教えてくれたんだけど、この次元の扉を通って来た神話級たちは、本来なら温厚なはずのものでも凶暴化しているらしい
 このシームルグだって絶対に人を襲わず、むしろ人々を助けてくれる優しい鳥の筈なのに、今は私達を取って喰ってやろうという気配がありありで、びりびりとした殺気が肌を撫でる
「次の攻撃、来ます!」
 お姉ちゃんの宣言通り爪による攻撃が繰り出された
 それをステップで躱して刀で斬りつけるけど、シームルグの脚は鋼のように硬くて刃を通さなかった
「なにをやっておるのじゃ! 通常攻撃が効くはずなかろう。仙力と気力、それと方力も込めるのじゃ。ちょっとやそっとでは攻撃は通らぬぞ」
 慌てすぎて力を籠め忘れていたけど、アンミツ姫に言われた通りに力を籠め、未だ地面に爪が食い込みもがいているシームルグの片翼を切り裂いた
「ギィイイイイイ!」
 今度は刃が通り、少しだけど切り裂くことができた。でもその拍子に突き刺さっていた爪が地面から抜けてシームルグが自由の身となった
 狂気に満ちた目をこちらに向けると、翼で風を巻き起こしてぶつけてきた
 これは刀で防ぐことは不可能らしく、また相手を切り裂く、もしくは時間経過で消えるまで追って来るらしい
 なんて厄介な攻撃なんだろう
 風の刃から逃げ続けながらも隙を見ては攻撃するけど、風の刃は段々と増えて逃げ場が無くなって来た
「神力、天障壁《あまつしょうへき》」
 カイトさんの作り出した防御壁
 目に見えない透明な壁で、あらゆる攻撃から身を守ってくれる物なんだけど、これを出している間はカイトさんは動けなくなる
「ふぅ、何個か打ち消せたみたいだね。そうそう何度も出せる技じゃないからとっとと倒しちゃうよ!」
 カイトさんは飛び上がってシームルグの注意が自分に向くよう挑発してくれた。私達に倒せって事みたいね
「気方力、死国呪縛《しにくにのじゅばく》!」
 お姉ちゃんのオリジナル技がシームルグを捕らえて動きを制限する。でもこの技、本来なら捕らえただけで圧殺してしまうという怖い技なんだよね
 シームルグは動きが制限されただけみたいだけど、どれだけタフなんだろう
「魔仙術、覇浄天元《はじょうてんげん》、七星閃《しちせいせん》!」
 七つの星を線で結ぶように刀で描く私の技で、一閃一閃が必殺の斬撃となる
「これでも仕留めきれないか」
 シームルグは既にお姉ちゃんの呪縛を打ち破ってまた攻撃態勢に入っている
「む! ハクラ、避けるのじゃ!」
 この技を放った後は少しの間動けなくなる。その隙を狙われてシームルグの口から光の矢のようなものが発射された
 まずい、避けきれない
「鬼剣術奥義、三途流し」
 危ないところをお姉ちゃんが剣術で受け流してくれた
 地面が深くえぐれていることから、当たっていたら今ごろ私は弾け飛んでいた
「もう動ける?」
「うん、ありがとうお姉ちゃん」
 どうやら動けなくなる私が攻撃されないように注意してくれていたみたい
 さすがお姉ちゃん!
「二人で行くわよ。構えて!」
「うん」
 二人の刀を交差させる
 白と黒の美しい刀身を合わせて力を籠めていく
「気力、仙力、方力、魔力」
「「鬼剣術極《きけんじゅつきわみ》! 二極星、黒白流星《こくはくながれぼし》!」」
 二人で同時に高く高く飛び上がり、シームルグの頭上へ
 そこから一気に刀を振り下ろして二つの流れ星のように鋭く速く切りつける
 切り口は白と黒の炎によって炎上し、その命を蝕んでいった
 しばらくするとシームルグの焼けた死体が転がる
「いい具合の焼き鳥になったね。それにしてもここまで強くなってるとは意外だったよ。次は僕の力なしでもいいんじゃないかな?」
「そうじゃのぉ。この結界はもういらぬかもしれんの」
 カイトさんがパチンと指を鳴らすと、ガラスが割れるような音がして周囲に張られた結界が崩れ去った
 この結界でシームルグは少し弱体化してたみたい
 今度は私達の実力だけで倒して見せるよ!
 さて、今夜のご飯はシームルグの焼き鳥です
 カイトさんの秘伝のたれに漬けられて味がしみこみ、とってもおいしかったよ!
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