245 / 1,022
妖怪族の国44
しおりを挟む
さてお次はどこかな? スキップしてガチャガチャと音を立てるセトカちゃんの後をついて次の目的地へ
始終セトカちゃんはご機嫌で、鼻歌も歌っている
「つきましたでござる! 割れ物再生工場ー!」
「割れ物再生? 割れた物が再生されるの?」
「そうでござる! 拙者たちはいずれ必ず寿命が訪れ、割れて死んでしまう。でもここはその割れ物たちを再生して再び体に戻れるようにするのでござる! 記憶は失うけど、彼らはまた付喪神としての生を受けるのでござるよ」
九十九族、付喪神は死してその記憶をなくし、また新しい体に宿る。それも大切にされた道具に
「これを見てくださいでござる」
セトカちゃんが手にしたのは欠けた器で元々は宿屋のおかみさんだったそうだ。優しくて活発な人で、セトカちゃんもよくお菓子をもらっていたそうだ。つい先日転んだ拍子に欠け処が悪くて亡くなってしまった
他にもここにはたくさんの亡骸があり、その亡骸をここで炎によって弔っているのだ
いわばここは火葬場のようなものなのかもしれない
火葬場、普通なら観光地にするような場所じゃないけど、ここは新たな命を生む場所でもあるのだ
きっとセトカちゃんはそれを知ってほしかったんだと思う
「では次へ参りましょう!」
この次はセトカちゃん一押しの場所らしい。なんと異世界技術の髄を集めた場所だ
「ふっふっふ、実はここが一番見せたかった場所なのでござる! 見て驚き下され! その名も大大大カラクリ工房!!」
機械音と共に日本家屋風の建物が変形し、いかにもな研究所のような建物となり、さらにその周囲を建物を照らすためのライトが囲う
看板には大大大カラクリ工房と書かれてるね
セトカちゃんのアドリブじゃなくて本当にそういう工房だったのか
「ここでは異世界から来たカラクリ博士数人の元、世界中から集まった方たちによって、より良い生活を目指すための研究がなされているのでござる!」
中に入ると白衣を着た様々な種族の人達が出迎えてくれて、その中で一番高齢の男性が僕たちの前まで来た
白いひげに白髪、黒縁眼鏡のおじいちゃんで、彼こそこの工房を作った異世界人の工房長。名前はトーマス・B・リットーさん
「ようこそ我が工房へ。いやはや生きているうちに精霊様に会えるとは思いませんでしたぞ」
握手を求めてきたので快く応じると、トーマスさんの手がポロリと落ちた
「うわぁあああ、と、取れちゃった! どどどどうしようテュネ! そ、そうだ! 精霊召喚!」
僕は大慌てで癒しの精霊カイユを呼んだ
「あらー、お久しぶりですねリディエラ様。誰かお怪我をされたのですかー?」
ぐるりとあたりを見渡してトーマスさんに目を止めるカイユ
「あらら? いないみたいですねー」
「え?」
そんなはずはない。 だって現にトーマスさんの手が
「これ、作り物ですよリディエラ様」
あ、よく見るとおもちゃだ。恥ずかしくて僕は顔を真っ赤にした
「ほっほっほ、いやぁ申し訳ない。ついつい可愛らしいお嬢さんを見ると驚かせたくなりましてな」
「トーマスおじいちゃん! 悪い癖でござるよ!」
びっくりしすぎてまだ心臓がドキドキしてる、気がする(心臓はない)けど、トーマスさんが御茶目だってことは分かった
でもこれ以上はやらないでね。僕はともかく、テュネが般若のような形相に・・・
「ではこれまでの研究成果を見せるでござるよ」
「ふむ、まずこれを見て下され」
それは今いたずらに使ったおもちゃだ。それを拾い上げると手首から線を伸ばしてこめかみに刺した
比喩ではなく本当に刺したのだ
「ああ、このこめかみが気になるのですかな? これは皮膚の内側にチップが内蔵されてましてな。おっと、チップがまずわからないでしょう。簡単に説明すると、脳の働きを助けるカラクリというわけです。これにこの線を接続すると、ほれ」
そのおもちゃの腕がまるで本当の腕のように動き出した。滑らかに。少しカシャカシャと機械音がするけど、これはすごい発明だ!
「これはですな、手を失った方の義手として作ったのです。こうやってチップに接続することで脳からの電気指令を直接この義手に伝えることができ、さらには触覚までをも再現するという優れものです」
トーマスさんの発明はこれだけじゃなくて、他には自在に動く義足、空を飛ぶ荷車、付喪神化させるための機械人形、テレビのようなものなどなど、日常生活が便利になるような物ばかり
まだまだ実用化はできてないけど、これからどんどん発展すること間違いなしだね
特に機械人形はすごくて、AIを搭載したハイテクな人形で、研究テーマは“AIに魂は宿るのか?”らしい
説明を聞いてもいまいちわからなかったけど、凄そうなのは分かる
セトカちゃんも初めて見る物がいくつかあったみたいで目がらんらんと輝いていた
実に有意義な時間だったと思う
これからも研究を続けてもらって、この世界をより良くしてもらいたいものだね
黒族の科学者にもここを紹介しようかな? 多分同じ研究者どうし気が合うと思うんだ
始終セトカちゃんはご機嫌で、鼻歌も歌っている
「つきましたでござる! 割れ物再生工場ー!」
「割れ物再生? 割れた物が再生されるの?」
「そうでござる! 拙者たちはいずれ必ず寿命が訪れ、割れて死んでしまう。でもここはその割れ物たちを再生して再び体に戻れるようにするのでござる! 記憶は失うけど、彼らはまた付喪神としての生を受けるのでござるよ」
九十九族、付喪神は死してその記憶をなくし、また新しい体に宿る。それも大切にされた道具に
「これを見てくださいでござる」
セトカちゃんが手にしたのは欠けた器で元々は宿屋のおかみさんだったそうだ。優しくて活発な人で、セトカちゃんもよくお菓子をもらっていたそうだ。つい先日転んだ拍子に欠け処が悪くて亡くなってしまった
他にもここにはたくさんの亡骸があり、その亡骸をここで炎によって弔っているのだ
いわばここは火葬場のようなものなのかもしれない
火葬場、普通なら観光地にするような場所じゃないけど、ここは新たな命を生む場所でもあるのだ
きっとセトカちゃんはそれを知ってほしかったんだと思う
「では次へ参りましょう!」
この次はセトカちゃん一押しの場所らしい。なんと異世界技術の髄を集めた場所だ
「ふっふっふ、実はここが一番見せたかった場所なのでござる! 見て驚き下され! その名も大大大カラクリ工房!!」
機械音と共に日本家屋風の建物が変形し、いかにもな研究所のような建物となり、さらにその周囲を建物を照らすためのライトが囲う
看板には大大大カラクリ工房と書かれてるね
セトカちゃんのアドリブじゃなくて本当にそういう工房だったのか
「ここでは異世界から来たカラクリ博士数人の元、世界中から集まった方たちによって、より良い生活を目指すための研究がなされているのでござる!」
中に入ると白衣を着た様々な種族の人達が出迎えてくれて、その中で一番高齢の男性が僕たちの前まで来た
白いひげに白髪、黒縁眼鏡のおじいちゃんで、彼こそこの工房を作った異世界人の工房長。名前はトーマス・B・リットーさん
「ようこそ我が工房へ。いやはや生きているうちに精霊様に会えるとは思いませんでしたぞ」
握手を求めてきたので快く応じると、トーマスさんの手がポロリと落ちた
「うわぁあああ、と、取れちゃった! どどどどうしようテュネ! そ、そうだ! 精霊召喚!」
僕は大慌てで癒しの精霊カイユを呼んだ
「あらー、お久しぶりですねリディエラ様。誰かお怪我をされたのですかー?」
ぐるりとあたりを見渡してトーマスさんに目を止めるカイユ
「あらら? いないみたいですねー」
「え?」
そんなはずはない。 だって現にトーマスさんの手が
「これ、作り物ですよリディエラ様」
あ、よく見るとおもちゃだ。恥ずかしくて僕は顔を真っ赤にした
「ほっほっほ、いやぁ申し訳ない。ついつい可愛らしいお嬢さんを見ると驚かせたくなりましてな」
「トーマスおじいちゃん! 悪い癖でござるよ!」
びっくりしすぎてまだ心臓がドキドキしてる、気がする(心臓はない)けど、トーマスさんが御茶目だってことは分かった
でもこれ以上はやらないでね。僕はともかく、テュネが般若のような形相に・・・
「ではこれまでの研究成果を見せるでござるよ」
「ふむ、まずこれを見て下され」
それは今いたずらに使ったおもちゃだ。それを拾い上げると手首から線を伸ばしてこめかみに刺した
比喩ではなく本当に刺したのだ
「ああ、このこめかみが気になるのですかな? これは皮膚の内側にチップが内蔵されてましてな。おっと、チップがまずわからないでしょう。簡単に説明すると、脳の働きを助けるカラクリというわけです。これにこの線を接続すると、ほれ」
そのおもちゃの腕がまるで本当の腕のように動き出した。滑らかに。少しカシャカシャと機械音がするけど、これはすごい発明だ!
「これはですな、手を失った方の義手として作ったのです。こうやってチップに接続することで脳からの電気指令を直接この義手に伝えることができ、さらには触覚までをも再現するという優れものです」
トーマスさんの発明はこれだけじゃなくて、他には自在に動く義足、空を飛ぶ荷車、付喪神化させるための機械人形、テレビのようなものなどなど、日常生活が便利になるような物ばかり
まだまだ実用化はできてないけど、これからどんどん発展すること間違いなしだね
特に機械人形はすごくて、AIを搭載したハイテクな人形で、研究テーマは“AIに魂は宿るのか?”らしい
説明を聞いてもいまいちわからなかったけど、凄そうなのは分かる
セトカちゃんも初めて見る物がいくつかあったみたいで目がらんらんと輝いていた
実に有意義な時間だったと思う
これからも研究を続けてもらって、この世界をより良くしてもらいたいものだね
黒族の科学者にもここを紹介しようかな? 多分同じ研究者どうし気が合うと思うんだ
0
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
余命半年のはずが?異世界生活始めます
ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明…
不運が重なり、途方に暮れていると…
確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
収納持ちのコレクターは、仲間と幸せに暮らしたい。~スキルがなくて追放された自称「か弱い女の子」の元辺境伯令嬢。実は無自覚チートで世界最強⁉~
SHEILA
ファンタジー
生まれた時から、両親に嫌われていた。
物心ついた時には、毎日両親から暴力を受けていた。
4年後に生まれた妹は、生まれた時から、両親に可愛がられた。
そして、物心ついた妹からも、虐めや暴力を受けるようになった。
現代日本では考えられないような環境で育った私は、ある日妹に殺され、<選択の間>に呼ばれた。
異世界の創造神に、地球の輪廻の輪に戻るか異世界に転生するかを選べると言われ、迷わず転生することを選んだ。
けれど、転生先でも両親に愛されることはなくて……
お読みいただきありがとうございます。
のんびり不定期更新です。
転生したら弱いものまね士になったけど結局活躍した。それはいいとして、英雄になったら隣に住んでたエルフとベッドの上でファンタジーが始まった
ぐうのすけ
ファンタジー
会社帰り、俺は突然異世界に転生した。
転生した異世界は貴族屋敷……の隣にあるボロ屋の息子だった。
10才で弱いと言われるものまね士のジョブを授かるが、それでも俺は冒険者を目指す。
所で隣のメイドさん、俺をからかうの、やめてもらえますか?
やめて貰えないと幼馴染のお嬢様が頬をぷっくりさせて睨んでくるんですけど?
そう言えば俺をバカにしていたライダーはどんどんボロボロになっていくけど、生きておるのか?
まあ、そんな事はどうでもいいんだけど、俺が英雄になった後隣に住んでいたエルフメイドがベッドの上では弱すぎる。
お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…
異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~
樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。
無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。
そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。
そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。
色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。
※この作品はカクヨム様でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる