上 下
214 / 1,022

妖怪族の国25

しおりを挟む
 気絶したため後からテュネに聞いた話なんだけど、カイトさんはショートソード一本でフェンリルを圧倒し、世界を喰らうといわれるフェンリルの力さえも切り裂いて見せたらしい
 力を切り裂くっていうのがよく分かんないけど、フェンリルは無事倒せたみたいだね
「大丈夫ですかリディエラ様?」
 僕を心配そうに見つめるテュネの顔
 その周りにエンシュたち、そしてクノエちゃんとレナちゃん
 で、彼女たちの後ろに一人の少年が立っていた
「お、目が覚めたみたいだね妖精王女ちゃん。名前はリディエラ? リディちゃんでいいかな?」
「は、はい、あの、ここは?」
「ここはわちの屋敷です。失礼ながらわちの部下たちに運ばせました」
 どうやら僕は魔力切れで昏倒していたらしい
 実はこの魔力切れによる昏倒、人間であればさほど問題はない
 それは体があるから。体が魂を保護しているから魔力さえ回復すれば元に戻る
 でも精神生命体である精霊や神や天使、神仙や鬼神、龍神、竜神何かは違う
 魔力切れを起こすことがほぼない精神生命体は、魔力や気力といった目に見えない力によって体を保護している
 つまりその魔力が切れるということは、存在を失うってことだ
 不老不死だといわれる精神生命体も、こうなればさすがに危ない
 今回も前回も、テュネたちが僕の体を保護してくれていたおかげで助かったんだ
「ご、ごめん。僕、また・・・。」
「無事ならばそれでいいのです。私達がリディエラ様を守れなかったのがいけないのです」
 四大精霊は一斉に涙を流す
 僕が死にかけた悲しさと、守れなかった悔しさで
「はいはいはいはい、しんみりはそこまで! 僕が間に合ったんだからよしとしてよ」
「しかしカイト様」
 ん?テュネが様付け? 彼は一体何者なんだろう
「さてリディちゃん。僕の名前はさっきも言った通りカイト・タキガミだ。今から四億年ほど前にこの世界に来た異世界人で、不老不死の能力と力量の破壊というスキルを持った元勇者だ。まぁ他にもスキルはあるんだけど今はいいや」
 カイトさんはもともとこの世界の勇者だったらしい
 四億年前の魔王をこの世界に流れてたった数日で倒し、さらには様々な場所で今まで放置されていたSSSランク以上の異世界から侵入してきた魔物を退治して回ったという
 この世界最強種の精霊達ですら手を焼くほどの魔物たちをだ
 でも四億年前の日本人だとしたら、彼はあまりにも現代的な話し方をしている気がする
 あの頃日本人はまだいないはず・・・
 じゃぁこの人って何なの? 
 まさかここに来るときタイムスリップまでしたってこと?
「不思議そうな顔をしてるね」
 カイトさんは僕に耳打ちするように話しかけた
「僕は本当に四億年前の日本から来てるよ。君たちの知らない超古代の日本さ。そう、神代《じんだい》の時代。日本神話は知っているよね?」
 どうやらこの人は僕が転生していることを知っているみたい
「は、はい。確かアマテラス様の出生や神々のおとぎ話のことですよね?」
「あれは本当にあったことでね。僕が生きていたのはその時代さ。そして僕は五色人文明と呼ばれる、始まりの人間の生き残り。五色の王のリーダー、黄金人のカイト」
 とんでもない話を聞いた気がする
 全ての世界の人間の祖。それはウガヤフキアエズ様、正式な名前はヒコナギサタケウガヤフキアエズ様という神様で、五色人はその人間の元になった人達らしい
 その中でも黄金人という日本人の元になった種族は五色人のリーダーだったらしい
 つまり彼は、日本人の祖ってこと?
「リディちゃんの考えていることで大体あってるよ。まぁ黄金人の役目はもう終わってるし、僕はここで気楽に暮らすと決めたんだ」
 彼のほとんどの力はここに来る以前から持っていたらしい
 この世界に渡った時に手に入れた能力はたった一つだけ。それが不老不死の能力だった
「僕のかつての仲間はみんな死に絶えた。でも僕はこの世界に来れて幸せだよ。母さんにも会えるしね」
 彼の母親はウガヤフキアエズ様の妻、あの有名な海神ワヅツミ様の娘、タマヨリヒメ様だ
 神話にも登場する有名な女神さまだね
「さてと、僕がここに来たのはあのフェンリルを倒すためだけじゃない。一番の目的はあの遺跡に封じられていた得体のしれないモノ。あれはこの世界だけじゃない。全ての世界に影響を及ぼすモノだ。そしてもう一つ。君に会いに来た」
「僕に、ですか?」
 話が大きすぎて油断していた。まさか僕に話が及ぶと思ってなかったから
「うん。まだ話せないけど君の人格、人望、力。どれをもってしても素晴らしいと思う。これからもっと旅を続けて力をつけるといい。その時にまた会おう」
 自分の用件だけ伝えてカイトさんは消えた
 文字通り目の前で消えちゃった
「相変わらずですね、あの方は」
 そっか、テュネたちは勇者を全員知ってるんだった
 それにしても、とんでもないことを知ったような・・・
 まぁでも旅を続けるようにカイトさんも言ってたし、このまま続けよう
 次は妖猫族の国。レナちゃんにまた会う約束をしてから僕の回復を待って妖猫族の里へと出立した
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

「自重知らずの異世界転生者-膨大な魔力を引っさげて異世界デビューしたら、規格外過ぎて自重を求められています-」

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
 ネットでみつけた『異世界に行ったかもしれないスレ』に書いてあった『異世界に転生する方法』をやってみたら本当に異世界に転生された。  チート能力で豊富な魔力を持っていた俺だったが、目立つのが嫌だったので周囲となんら変わらないよう生活していたが「目立ち過ぎだ!」とか「加減という言葉の意味をもっと勉強して!」と周囲からはなぜか自重を求められた。  なんだよ? それじゃあまるで、俺が自重をどっかに捨ててきたみたいじゃないか!  こうして俺の理不尽で前途多難?な異世界生活が始まりました。  ※注:すべてわかった上で自重してません。

転生幼女は幸せを得る。

泡沫 ウィルベル
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!? 今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

僕の従魔は恐ろしく強いようです。

緋沙下
ファンタジー
僕は生まれつき体が弱かった。物心ついた頃から僕の世界は病院の中の一室だった。 僕は治ることなく亡くなってしまった。 心配だったのは、いつも明るく無理をして笑うお母さん達の事だった。 そんな僕に、弟と妹を授ける代わりに別の世界に行って見ないか?という提案がもたらされた。 そこで勇者になるわけでもなく、強いステータスも持たない僕が出会った従魔の女の子 処女作なのでご迷惑かける場面が多数存在するかもしれません。気になる点はご報告いただければ幸いです。 --------------------------------------------------------------------------------------- プロローグと小説の内容を一部変更いたしました。

チート転生~チートって本当にあるものですね~

水魔沙希
ファンタジー
死んでしまった片瀬彼方は、突然異世界に転生してしまう。しかも、赤ちゃん時代からやり直せと!?何げにステータスを見ていたら、何やら面白そうなユニークスキルがあった!! そのスキルが、随分チートな事に気付くのは神の加護を得てからだった。 亀更新で気が向いたら、随時更新しようと思います。ご了承お願いいたします。

地球からきた転生者の殺し方 =ハーレム要員の女の子を一人ずつ寝取っていきます

三浦裕
ファンタジー
「地球人てどーしてすぐ転生してくんの!? いや転生してもいいけどうちの世界にはこないで欲しいわけ、迷惑だから。いや最悪きてもいいけどうちの国には手をださんで欲しいわけ、滅ぶから。まじ迷惑してます」  地球から来た転生者に散々苦しめられたオークの女王オ・ルナは憤慨していた。必ずやあのくそ生意気な地球人どもに目にものみせてくれようと。だが―― 「しっかし地球人超つえーからのう……なんなのあの針がバカになった体重計みたいなステータス。バックに女神でもついてんの? 勝てん勝てん」  地球人は殺りたいが、しかし地球人強すぎる。悩んだオ・ルナはある妙案を思いつく。 「地球人は地球人に殺らせたろ。むっふっふ。わらわってばまじ策士」  オ・ルナは唯一知り合いの地球人、カトー・モトキにクエストを発注する。  地球からきた転生者を、オークの国にあだなす前に殺ってくれ。 「報酬は……そうじゃのう、一人地球人を殺すたび、わらわにエ、エッチなことしてよいぞ……?」  カトーはその提案に乗る。 「任せとけ、転生者を殺すなんて簡単だ――あいつはハーレム要員の女を寝取られると、勝手に力を失って弱る」 毎日更新してます。

わがまま姉のせいで8歳で大聖女になってしまいました

ぺきぺき
ファンタジー
ルロワ公爵家の三女として生まれたクリスローズは聖女の素質を持ち、6歳で教会で聖女の修行を始めた。幼いながらも修行に励み、周りに応援されながら頑張っていたある日突然、大聖女をしていた10歳上の姉が『妊娠したから大聖女をやめて結婚するわ』と宣言した。 大聖女資格があったのは、その時まだ8歳だったクリスローズだけで…。 ー--- 全5章、最終話まで執筆済み。 第1章 6歳の聖女 第2章 8歳の大聖女 第3章 12歳の公爵令嬢 第4章 15歳の辺境聖女 第5章 17歳の愛し子 権力のあるわがまま女に振り回されながらも健気にがんばる女の子の話を書いた…はず。 おまけの後日談投稿します(6/26)。 番外編投稿します(12/30-1/1)。 作者の別作品『人たらしヒロインは無自覚で魔法学園を改革しています』の隣の国の昔のお話です。

神の使いでのんびり異世界旅行〜チート能力は、あくまで自由に生きる為に〜

和玄
ファンタジー
連日遅くまで働いていた男は、転倒事故によりあっけなくその一生を終えた。しかし死後、ある女神からの誘いで使徒として異世界で旅をすることになる。 与えられたのは並外れた身体能力を備えた体と、卓越した魔法の才能。 だが骨の髄まで小市民である彼は思った。とにかく自由を第一に異世界を楽しもうと。 地道に進む予定です。

処理中です...